「第71期本因坊戦第2局」「尼崎こども囲碁本因坊戦」関連毎日新聞記事
第71期本因坊戦第2局2日目 解説、クイズに沸く会場 攻防に愛好家熱視線 尼崎/兵庫
毎日新聞2016年5月25日 地方版
井山本因坊と高尾九段の対局の「次の一手」を当てて、記念品を受け取る参加者=兵庫県尼崎市で、石川勝義撮影
本因坊の雪辱に会場わく−−。尼崎市開明町の本興寺で開催された第71期本因坊決定戦七番勝負(毎日新聞社・日本棋院、関西棋院主催、大和証券グループ協賛)は2日目の24日、井山裕太本因坊が挑戦者の高尾紳路九段を破ってタイに持ち込んだ。都ホテルニューアルカイック(尼崎市昭和通2)であった大盤解説会には県内外の愛好家と関係者合わせて約150人が訪れ、2人の攻防を見守るとともに、プロ棋士らが繰り出す軽妙なトークや「次の一手」クイズなどを楽しんだ。【伊地知克介、石川勝義】
解説会は、水戸夕佳里三段らを聞き手に、後藤俊午九段らが盤面の動きを説明した。後藤九段は局面について「競馬にたとえれば、序盤に黒(高尾九段)がリードしたのに、白(井山本因坊)が猛烈に追いかけてきて、逃げ切れるかどうか、というところ。逃げ切るにはかなり苦しい」などと分かりやすく説明した。
棋士らは会場に「次の一手」クイズを出したり、参加者を壇上に上げて大盤上で一緒に展開を予想したり、工夫して場を盛り上げていた。
関西出身の井山本因坊が中押し勝ちを決めると、会場では大きな拍手が起きた。井山本因坊のファンという京都府長岡京市のアマチュア五段、村田文彦さん(66)は「1日目は形勢が悪いのかなと思ったが、2日目は持ち直したので安心して見ることができた。これまで関東の棋士が強い時代が長かったので、関西出身の井山本因坊には頑張ってほしい」と話した。
県内出身の棋士である後藤九段は尼崎市での本因坊戦開催を提案した人でもある。今回の開催を受けて「子ども囲碁本因坊戦に多くの子どもたちが集まってくれたのはうれしかった。尼崎での初開催を今後につながるものにしたいと思う」と話していた。
〔阪神版〕
第71期本因坊戦 第2局 大盤解説会、熱戦見守る きょうも午後1時半から /兵庫
毎日新聞2016年5月24日 地方版
対局を解説する坂口隆三九段(右)と聞き手の水戸夕香里三段=兵庫県尼崎市の都ホテルニューアルカイックで、三村政司撮影
尼崎対局、始まる−−。井山裕太本因坊に高尾紳路九段が挑戦する第71期本因坊決定戦七番勝負(毎日新聞社・日本棋院・関西棋院主催、大和証券グループ協賛)第2局は23日午前9時から尼崎市開明町の本興寺で始まった。尼崎市昭和通2の都ホテルニューアルカイックで大盤解説会があり、囲碁ファン約60人が熱戦を見守った。【伊地知克介、山本愛】
兵庫県内での本因坊戦は神戸市、姫路市などで過去計6回あるが、尼崎市での開催は初めて。対局場は本興寺の方丈の松の間に設けられた。見事な松のふすま絵を背景にした趣のある室内で、対戦が始まった。
大盤解説会会場では、対局の様子を同時中継の映像で見ながら、水戸夕香里三段らが聞き手となり、坂口隆三九段、今村俊也九段、後藤俊午九段らが解説を務めた。両対局者の人となりやこの日の様子などもユーモアを交えて語りながら、「早くも乱戦になってきました」「これは考えた手ですね」などと局面を解説し、場を盛り上げていた。
大盤解説会に初めて参加したという京都市北区、無職、小田泰雄さん(70)は「とても勉強になって楽しかった。尼崎のみなさんが熱意を持ち、和気あいあいと囲碁をされているんだな、という雰囲気が伝わってきた」と感慨深げ。また「最近、本格的に指導を受けながら、また囲碁を始めた。説明会に参加し、意欲も高まって良かった」と語り、笑顔を見せた。
一方、尼崎市の60代の主婦は「面白く、すごく勉強になった。(解説した)プロの棋士があんなにユニークな方だとは知らなかった。地元尼崎で本因坊戦が開かれて本当にうれしい。囲碁が尼崎で盛んというのも初めて知った」と話していた。
大盤解説会は24日も午後1時半から、都ホテルニューアルカイックで開かれる。入場料1000円。
〔阪神版〕
こども本因坊戦 300人が真剣勝負 /兵庫
毎日新聞2016年5月23日 地方版
こども囲碁本因坊戦で真剣に対局する子どもたち=兵庫県尼崎市昭和通2の都ホテルニューアルカイックで、伊地知克介撮影
第71期本因坊戦七番勝負第2局の関連行事として、こども囲碁本因坊戦(実行委員会主催、毎日新聞阪神支局など後援)が22日、尼崎市昭和通2の都ホテルニューアルカイックであった。約300人の児童・生徒が集まり、6部門で腕を競った。
この日朝には開会式があり、実行委員会の北村保子・尼崎市議が「碁は勝っても負けても勉強。負ければ次に頑張ろうと思い、勝てば相手を思いやる、ということが大切です。元気いっぱいに頑張ってください」と子どもたちにメッセージ。後藤俊午九段が「悔いのない戦いをしてください」と激励した。子どもたちは真剣な表情で盤に向かい、熱い戦いを繰り広げていた。
入賞者を表彰する井山裕太本因坊(左)=兵庫県尼崎市昭和通2の都ホテルニューアルカイックで、山本愛撮影
審判長の井山本因坊は午後3時半ごろ会場に到着。表彰式では、上位入賞者一人一人に「おめでとう」と祝福しながら賞状やメダルを手渡した。賞状を受け取った神戸大学付属小学校4年の亀田凜太朗君(9)は「井山本因坊はオーラがあり、とても緊張した」と笑顔。尼崎市立武庫の里小学校3年の安宅朔良君(8)も「井山本因坊に会い、もっと囲碁が強くなりたいと思った」と話した。
各クラスの優勝者(敗者復活戦除く)は次の皆さん。(敬称略)
【Aクラス】藤井理緒(大阪府豊中市)木村俊介(大阪市)
【Bクラス】西村仁(大阪府茨木市)宮野内樹(広島市)
【Cクラス】印丸友喜(大阪府高石市)飯沼裕太郎(三田市)
【Dクラス】戸田光樹(尼崎市)中川凌那(大阪市)
【Eクラス】中堀実理(伊丹市)白川達久(神戸市)白川晃久(神戸市)小山慧大(大阪市)西川遼太郎(伊丹市)横山誠太郎(尼崎市)
【Fクラス】土谷充輝(大阪市)竹内勇史(神戸市)西岡佑有菜(豊中市)河野大地(尼崎市)門川真穂(大阪市)
〔阪神版〕
第71期本因坊戦 第2局 決戦前夜、高まる期待 きょうから尼崎・本興寺/兵庫
毎日新聞2016年5月23日 地方版
前夜祭で激励を受ける井山裕太本因坊(手前右)と高尾紳路九段(手前中央)=兵庫県尼崎市昭和通2の都ホテルニューアルカイックで、山本愛撮
きょうから尼崎市で本因坊戦第2局−−。23、24日に尼崎市開明町の本興寺で行われる第71期本因坊戦七番勝負第2局で対局する井山裕太本因坊と挑戦者の高尾紳路九段は22日、尼崎入りした。今年史上初の七冠を達成した井山本因坊は関連行事のこども囲碁本因坊戦の審判長を務めた。尼崎市は実力制初代本因坊の関山利一(1909〜70)の出身地でもある。本因坊にゆかりある地での初の決戦に期待が高まった。【伊地知克介、山本愛】
都ホテルニューアルカイックで開かれた前夜祭には、荒木一聡副知事や稲村和美・尼崎市長のほか、ファンや関係者ら約200人が出席。井山本因坊と高尾九段の熱い戦いを祈り、大きな拍手を送った。
荒木副知事は「阪神間で初めての本因坊戦開催で、うれしく思う。それぞれの持ち味を発揮して、素晴らしい対局となることを楽しみにしている」などとあいさつ。また、主催者団体のひとつで関西棋院(大阪市中央区)の中川和雄理事長は「囲碁の歴史に残る戦いとなることを祈っている」と期待を述べた。
井山本因坊と高尾九段の2人は、参加したファンの求めに応じてカメラの前に立つなど、戦いを前に和やかなムード。地元のからたち幼稚園の小林沙笑(さえ)ちゃん(5)と、阿部紗己(さき)ちゃん(6)が、壇上の井山本因坊と高尾九段に赤いバラや黄色い花の花束を手渡すと、2人は顔をほころばせて受け取った。
約2時間の前夜祭の最後に、稲村市長が歓迎のあいさつに立ち「市制100周年の節目に、本因坊戦が開催される。関係者の皆さんの尽力に感謝したい」などと述べた。
井山本因坊ら対局場を検分
井山本因坊と高尾九段は22日夕、本興寺の方丈に入り、対局場を検分した。
2人は対局場になる「松の間」に入り、場所を確かめた。関係者は動線を確認したり、対局場の明るさについて話し合ったりして、入念に打ち合わせていた。方丈は松などを描いた見事なふすま絵で知られ、関係者らは写真を撮るなど、熱心に見入っていた。
本興寺は阪神尼崎駅近くの「寺町」の一角にあり、1420年創立の歴史ある寺。方丈は国重要文化財で、阪神大震災で被害を受けたが、建て直した。
〔阪神版〕
第71期本因坊戦第2局を前に 幼稚園に囲碁道場 集中力、学習能力向上にも /尼崎
「からたち幼稚園囲碁道場」で対局する子どもたち=兵庫県尼崎市武庫之荘5の武庫からたち幼稚園で、伊地知克介撮影
「黒石をどこに置くといいでしょう。正解は一つです」「えーっ」。
プロ棋士の言葉に、子どもたちが生き生きと応える。何人も手を挙げ、「これが正解です」という声に「おー」の声。正解を示した子どもはうれしそうに席に戻る。別の教室では、幼稚園児同士で真剣に対局。負けると泣き出す女の子もいる。尼崎市武庫之荘5の「武庫からたち幼稚園」。園児と卒園生を対象に毎土曜日続けている「囲碁道場」には幼稚園から中学生までの子どもたちが元気に通い、熱心に盤に向かっている。
学校法人「からたち幼稚園」は尼崎市内で3園を運営している。保育に囲碁を取り入れるようになって15年を超えた。「道場」もにぎわっている。
園児たちのクラスを教えていたアマ七段の古川晃弘さん(56)はこの取り組みが始まったころから指導に取り組む。「どう教えるかは手探りでやってきた」と話すが、「子どもたちは素直に楽しみながら吸収していますね。覚えるのは早い」と手応えを感じている。「碁はオープンな勝負で、偶然性がない。負けをきちんと認める、というのはいい経験になると思いますね」。実際、負けて泣く子もいるが、その後で強くなることも多いという。
プロ棋士も教えている。北野亮八段は「子どもたちの発想に教えられることも多いですよ」と話す。約11年前から指導に当たる。「碁は人と人でするものなので、相手の考えを認めるとか、負けた相手に思いやりを持つなど、コミュニケーションを学ぶことができると思います」。
子どもたちの碁は、漫画「ヒカルの碁」のブームの後も、静かな人気がある。「集中力がつき、学習能力につながる」という視点からの保護者の支持もあり、全国的に多くの子どもが教室で碁を学んでいる。「大人は『碁は難しいもの』ととらえがちだが、子どもたちは柔らかい感性で覚えていくので、小さい子でも楽しめる」という声も少なくない。
からたち幼稚園の小西理理事長(51)は、本因坊戦の尼崎開催に尽力するとともに、こども囲碁本因坊戦の事務局を務めている。「自分たちのまちでトップ棋士の対戦があるということは、地元で囲碁に励む子どもたちにとって、喜びだと思う。碁のファンが増えるいい機会にしたい」と話している。
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23〜24日に尼崎市で市制100周年を記念し「第71期本因坊戦七番勝負第2局」が開かれる。関係者や囲碁を愛する人たちの間に期待が高まっている。【伊地知克介】
〔阪神版〕
第71期本因坊戦第2局を前に 歴史と文化、注目の寺 初のタイトル戦、準備着々 兵庫/尼崎
毎日新聞2016年5月22日 地方版
はかま姿の子どもたちと僧侶らが境内に入っていく。今月8日。本興寺(尼崎市開明町)が400年以上続けている伝統行事、「天童稚児お練り行列」。境内で出迎えたのは頭に刀と塔を載せ、にこやかにほほえむマスコットキャラクター「ほんこじさん」だ。本興寺が4年後に開創600年を迎えるのを記念してつくられた。「かわいい」と評判で、写真を撮る人もいた。
本因坊戦第2局の舞台になる本興寺は、歴史的・文化的に注目される寺だ。1420年に建てられた後、1617年、尼崎城築城に伴って現在の場所に移転した。対局場所になる国重要文化財の方丈は見事なふすま絵で知られる。建物では、開山堂、三光堂も国重要文化財だ。
昨年11月の寺の宝物を展示する「虫干会(むしぼしえ)」には例年を大きく上回る人が訪れた。多くの人々が注目したのは「数珠丸」。古くから「天下五剣」の一つとされる名刀で、1年に1度しか見られないこともあり、最近の刀剣ブームで注目度が高まっている。「刀剣女子」と呼ばれる女性たちが多く訪れて、話題になることも多くなった。
本興寺のある「寺町」というエリアも、阪神尼崎駅のすぐ南という立地にあり、静かで風情のある印象的な場所だ。尼崎城築城のとき、市内に分散する寺をこの地区に集中させたのが由来で、「城下町だった尼崎の空気をよく伝えている」と評価する声も多い。尼崎城の再建も話題にのぼる中、改めて関心が高まってきた。
さまざまな観点から注目される第2局の舞台。本興寺は初めてのタイトル戦の準備を少しずつ進めている。小西日遶(にちじょう)貫首は「寺町や本興寺の存在を知ってもらう機会になれば」と話す。
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本因坊戦第2局は23、24日に本興寺方丈で。両日とも午後1時半から都ホテルニューアルカイックの「鳳凰の間」で大盤解説会がある。解説は後藤俊午九段、聞き手は水戸夕香里三段。
入場料1000円。【伊地知克介】