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美しい笑みと涙
2007・7・13

               
6月の終わり、伊良部に小中高生6名と先生3名(まてぃだ教室)が来島。お迎えした。テーマは「地球の美しさに触れる」だった。

北海岸の断崖の上から広大なリーフを見下ろした。その日は暑いが晴天で、海は様々なエメラルド色に息づき、はっきりと雲の影がそこを流れた。

下地島空港の滑走路、通過するジャンボ機のお腹に皆で何度もわーとのけぞった。
いつになく、その西側の砂浜が白く輝いていて、アメリカからの高校留学生のアフリカ系とアジア系のカップルが、楽しそうに寄り添って写真に収まった。

鍋底に降りる。波の音がちゃぽーんちゃぽーんとし、水はあくまでも澄み、その色は赤から藍に溶けていき、みんな心がのびたように、長い時間いた。
その帰り、中三の子は普段からは想像もできないほど見事に先頭で岩場を登った。先生唖然。

昼が過ぎ、渡口の浜のそば屋にいった。浜が見える。よしずの天井が涼しい。そばはうまかった。
気がつくと、隣の先生が泣いていた。気がついて、からかう子に「クースよ」と言いながら、泣いていた。
決して、人の前では食事をしない小三の子が、そばに手をつけ始め、やがて、最後の一滴のつゆまで飲み干してしまったからだ。その子は何も言わないが、顔には美しい笑みが感じられた。自分も涙が湧いた。

昼過ぎはみんなが楽しみにしていた釣りだ。
いらぶ探険隊のメンバー推薦の、渡口の浜の堤防に行った。正解だった。大人はただ観ていた。
不慣れな子も多かったが、ゆっくり、仕掛けを準備していく。実にゆっくり。でも確実に。今度は、なかなか、針を海にほおれない。と、今、高校浪人している子が、腰をいれて鮮やかに投げた。かっこよかった。
向こうでは、堤防の真下の透明な潮溜まりの熱帯魚に針をたらしている二人がいる。なんと、釣れている。中二の子はよく先の小三の子のサポートをしている。二人の純粋な釣り時間。

夕方の帰りの船の時間が近づいていた。どうする?長山の鍾乳洞に行くか?
一人の子のうなずきと先生の意欲が勝り、行く事に。そこは、本当に美しい白い、無垢な、鍾乳石の世界だ。一人ひとり、ロウソクの灯りで眺めた。そうして、港に着き、別れた。

ぱっと、その子が力を出す。その子が見える。その瞬間が昔の教員時代からたまらなく好きだった。
今日も、そんな姿を観る事が出来た。美しい自然にいだかれ、子供の美しい笑顔、そしてそれを支える先生の美しい涙に出会った日だった。