ファラミアとファラミア
     
              〜 小さな訪問者 〜



 3.



 「あれ?ファラミアは?」

 ファラミアとエオウィンと話しているうちに、ピピンは小さなファラミアから目を離した。

 気付くと目の届くところに小さなファラミアはいなかった。

 ピピンは蒼くなった。

 目を離したら何をしでかすか解ったものではない。

 「大丈夫よ。この辺りにそんなに危ない場所はないから。」

 エオウィンが笑いながら言った。

 「エオウィン姫、危ないのは小さなファラミアではなくて、この家の中の物ですよ。

 あいつにかかると何でも破壊されてしまう。」

 ピピンはそう言うと大きな声で「ファラミア、ファラミア!」と呼びながら家の中を

 捜し始めた。

 「ファラミア、ファラミア・・・」

 居間の方から声がした。

 「ファラミア、ピピンが呼んでいるよ。」

 エルボロンが小さなファラミアに言った。

 小さなファラミアはまたベッドで飛び跳ねている。

 「ピピン、父上、小さなファラミアはここにいます。」

 エルボロンは部屋から顔を出して言った。



 「ピピン、父上、小さなファラミアはここにいます。」

 エルボロンの部屋から声がした。

 「子供は子供同志が良いのね。」

 エオウィンが笑顔で言った。



 小さなファラミアは「オルゴール」がどうしても気になった。

 見てみたかった。

 (あそこなら登れるかな?)

 小さなファラミアは本棚の棚板を足がかりにして本棚を登り始めた。




 エルボロンは部屋の中を見て驚いた。

 小さなファラミアがエルボロンの背丈以上の高さがある本棚に上っているのだ。

 「ファラミア、駄目だよ、危ないよ。降りて来て。」

 「でも、オルゴール・・・」

 ファラミアがそう言った時、本棚がぐらりと揺れた。

 エルボロンは慌ててファラミアの腰に手を回してファラミアを抱きかかえた。 

 本棚が得るボロンたちに向かって倒れてきた。

 エルボロンは夢中でファラミアを抱きしめた。



 エルボロンの部屋から大きな物音がした。

 ファラミアとピピンは顔を見合わせ、エルボロンの部屋へと走った。



 「ファラミア、エルボロン!」

 ファラミアが扉を開けると、そこには倒れた本棚、そして、小さなファラミアとエルボロンは

 その下敷きになっていた。

 「ファラミア!」

 ファラミアはすぐに駆け付けたエオウィンとピピンと三人で倒れた本棚を起こした。

 エルボロンは小さなファラミアを抱き抱えて蹲っていた。

 「大丈夫か?怪我は?」

 ファラミアが尋ねた。

 「へいき。」

 すぐに答えたのは小さなファラミアだった。

 小さなファラミアはすぐにピピンの元に走ってピピンに抱きついた。

 やはり恐かったらしい。



 「エルボロン・・・大丈夫か?」

 本棚のどこかにぶつけたのか、肘から血を流していた。

 「オルゴール・・・」

 エルボロンが呟いた。

 本棚の上に大切に置いていたオルゴール・・・

 床の上で部品が飛び散ってバラバラになっていた。

 「そんなことより、怪我の手当て。」

 ファラミアが言った。

 「宝物だったのに・・・」

 エルボロンの眼からポロポロと涙が零れた。

 「ボロ兄ちゃん、ごめんなさい。」

 小さなファラミアも事の重大さに気付いてエルボロンの隣に来た。

 「出ていって。」

 エルボロンが言った。

 「エルボロン、小さな子供のした事だろう。」

 ファラミアが厳しい声で言った。

 「いいから、出ていって!みんな出ていって。」

 エルボロンはそう言うとピピンたちを部屋から押し出した。

 そしてエルボロンは扉を閉めた。

 「エルボロン!」

 ファラミアの声に答えはなかった。



 小さなファラミアはすっかり元気をなくしてしまい、ぐずぐす泣きながらやがて

 泣き疲れて眠ってしまった。

 「ファラミア・・・エルボロンに謝らなきゃ。」

 ピピンもすっかりしょげてしまった。

 「いいえ、普段は聞き分けのいい子なんですけど。」

 ファラミアが言った。

 「あれは殿が悪いのですわ。」

 お茶を運んできたエオウィンが言った。

 「私のせいか?」

 ファラミアがエオウィンを見た。
 
 「ええ、全部殿のせいです。エルボロンはあのオルゴールを誕生日にもらった時に、

 私のところに 来ましたのよ。」

 「エルボロンが?」

 「ええ。あのオルゴールは殿が亡きボロミア様から頂いた大切なものだと、誰かから聞いた

 らしくて、『父上の宝物を私が頂いてもよろしいのでしょうか?』と尋ねられました。

 私は『そう思うのだったら、貴方が壊さないように大切になさい。』と言いました。

 きっとエルボロンは貴方に申し訳ない、と思っているのです。」

 「しかし・・・あれは・・・エルボロンにプレゼントしたものだよ。もうエルボロンのものだ。」

 「ファラミアに似た優しい子なのでしょう?

 だったら、ファラミアの気持ちを考えているんじゃないのですか?」

 ピピンが言った。

 「殿、エルボロンがピピンやギムリやレゴラスが来るのをとても楽しみにしているのはご存じ

 ですよね。」

 「ああ。」

 「その理由をご存じでしたか?」

 エオウィンがファラミアの顔を覗き込むようにして尋ねた。

 「それは・・・みんなが来ると賑やかで楽しいからだろう?」

 「それもありますが、一番の理由は、皆がここに来ていれば殿がここにずっといるからですわ。」

 「え?」

 ファラミアがエオウィンを見た。

 「いつも、ミナス・ティリスに執務にいらっしゃると、指折り数えて帰りを待っていますわ。」

 「ピピンが来ているんだって!」

 聞き慣れた声がした。

 「レゴラス、ギムリ!」

 「どうした、ピピン、不景気な顔をして・・・お前らしくもない。」

 ギムリが笑いながら言った。





愛情表現の下手なお父さんと、コンプレックスがある息子

うーん、2人とも頑張れ・・・

2005.05.31.Jeroen

執政家の人間てどうしてこうみんな不器用なのでしょう。でもその不器用さがたまらない魅力です。 
2005、6,6 NIMA