Web拍手お礼文「新しい旅」(6)〜(10)



お礼文6   「新しい旅」(6)

大きなビーバーの後について、コリーとジャレの二人は歩いていきました。ジャレは少し不満です。どうせビーバー
の家なんて木の枝でできていて、食べ物も木のかけらとか川の魚と大したものでないことに決まっています。それよ
りも早く女王様の住むお城に行ってこの前もらった、白い塊をもう一度食べたいと思いました。あれは本当におい
しかった、なんて名前だったか・・・・確か「ホワイトチョコレート」とか・・・・

「さあ、つきました、ここがわたしの家です」

ビーバーに言われて二人は驚きました。想像していたよりもはるかにりっぱな家、ちゃんと窓やドアそしてエントツ
までついていて煙が出ています。これならばなにかごちそうが出てくるかもしれないとジャレは思いました。案内さ
れるままに家の中に入り、お茶と小さなお菓子をもらいました。

「ジャレ、すごいじゃないか!ビーバーの家でこんなもてなしを受けるなんて」
「う、うん、そうだな」
「何もなくてすみません。この国は百年も冬が続き、食べ物もほとんど取れないのです。何もかもあの冬の魔女の
のせいです。でもあなた方のような人間がきてくれて一安心です。きっとライオンもすぐにあらわれるでしょう」
「ライオン、ライオンが来るといいことがあるのか」
「この国を、そしてこの世界を作ったのは一頭の大きなライオンなのです。言い伝えでは人間がこの国にくる時
その偉大なライオンも現われ、冬の魔女を倒すと言っています。そして再び春がくるのです」
「それはすごい!それじゃあ俺達もその魔女を倒すために戦うのか!」

コリーは目を輝かしてビーバーの話を聞いています。けれどもジャレはもうホワイトチョコレートが食べたくて
食べたくてたまらなくなりました。別のことを考えようとしてもだめです。もうがまんできません。

「コリー、僕さっきからなんか寒くて、やっぱりもどって毛皮をとってくるよ」
「毛皮なら、このビーバー家にたくさんありますよ。ちょっとサイズは小さいかもしれませんが・・・」
「いい、やっぱり自分のじゃないと、すぐここに戻ってくるから・・・・」
「俺も一緒に戻ってやろうか、外は吹雪だ。道に迷ったら危ない・・・」
「いらない!君なんか必要ない・・・一人で行かせてくれ・・・手を離せよ!」

引き止めるコリーの手を強引に振り解き、ジャレは激しい雪の降る外に出てしまいました。遠くにははっきり
女王様のお城が見えます。ジャレはお城の方に向かってフラフラと歩き出しました。

「行かなくちゃ・・・もう一度あのお菓子・・・コリーには分けてやらない・・・僕だけのもの・・・ああ
早く食べたい・・・あのお菓子、誰にもやらない、僕だけのもの・・・早く食べたい・・・はやく・・」

フラフラ歩くジャレの後ろをたくさんのオオカミがついてきましたが、ジャレは少しも気づいていません。



お礼文7   「新しい旅」(7)

「ああ、早く食べたい・・・・僕だけのもの・・・誰にも渡さない・・・早く食べたい・・・たべたい・・・」

冬の魔女にもらったホワイトチョコレートの味が忘れられないジャレは吹雪の中1人でフラフラと城に向かって歩いて
いきました。後ろからはたくさんのオオカミがついてきます。でもジャレは少しも気がついていません。ようやく
冬の魔女の住む城にやってきました。その城は高い城壁に囲まれています。魔女が門の前に立っていました。

「よくきましたね。お前1人で来たのですか?」
「はい、友達は変なビーバーの家に入ってなかなか動こうとしないのです。僕1人で先に来てしまいました」
「そうでしたか、寒かったでしょう。早く中に入りなさい。その前にこれを・・・・」

魔女はカップに入った黒いドロリとした熱い飲み物をジャレに渡しました。それは甘くてなんておいしいのでしょう!
ジャレの体はポカポカと暖かくなり、そして急に眠くなってきました。我慢できずに座り込んでしまいその場で眠り
込んでしまいます。冬の魔女はジャレが眠ったのを確かめると周りにいたオオカミに命じました。

「こんなにあっけなく人間を捕らえることができるとは・・・これでもうあのライオンも私に手出しはできない。お前
達、そうあせらずともよい。この人間をおとりにしてもう1人の人間とライオンをおびき出せばよい。勝利は我らのも
の。早く鎖で縛って牢に入れておきなさい。決して逃げられぬよう固く鎖で縛るのだ!そう、鎖で自由を奪えばよい」

オオカミ達は寝ているジャレの体を口先で軽くつついたり、服をくわえたりしながら冷たい雪の上を引き摺ります。

「やめろ!ジャレをどうしようっていうんだ!これ以上何かしたら承知しないからな!おいジャレ、起きろ!」

とっさに飛び出してきたのはコリーでした。ジャレの様子をおかしく思い、後をつけてきたのでした。コリーは
剣を構え、オオカミ達と魔女を睨みつけます。

「おや、もう1人の人間もここに来るとは都合がいい。何を怖い顔しているのです。さあ、暖かい飲み物を・・・」
「俺はだまされないぞ!ジャレに何を飲ませた。ジャレ、早く起きろ!目を覚ませ」
「あ、コリー・・・だめだ・・・コリーにはあげない・・・僕だけのもの、甘くておいしい・・・」
「そうです。お前の欲しがる甘いお菓子はみんな私のところにあります。さあ、いらっしゃい、ジャレ・・・」
「はい、女王様・・・」
「おい、ジャレ、しっかりしろ!お前俺のこと忘れたのか・・・コリーだよ・・・」
「来るのですジャレ!お前の欲しいものはすべて私の手の中にあります。ホワイトチョコレート、ホットチョコ」
「やめろ、ジャレ!行くな!」

止めるコリーの手を振り解き、ジャレはフラフラと魔女の方へ向かって歩き出しました。

「武器を捨てなさい。私が一言命ずれば、このオオカミ達は簡単に彼を食い殺してしまう。剣を捨て、大人しく
鎖につながれるのです。人間さえ手出しをしなければ、ライオンの率いる軍隊など敵ではない」
「俺達をどうする気だ!」
「城の塔の先、一番目立つ場所に鎖で縛り付けておくのです。お前達2人縛られた姿を見、叫び声を聞いたらあの
慈悲深いライオンがきっと助けにくるでしょう」
「おとりにする気なら俺1人で充分だろう。こんな吹雪の中にさらされたら、ジャレは凍えて死んでしまう。俺1人
を鎖で縛り付けろ。俺とジャレは種族が違う。寒さにも空腹にも弱い種族なんだ。だから頼む、お願いだ!」

コリーは魔女にむかって剣を捨て、跪きました。魔女はカラカラと大声をあげて笑いました。

「いいだろう、その男を鎖で縛って動けないようにし、引き摺って連れていけ、けっして殺さないように・・・」

ジャレはあまりの恐ろしさと寒さで声を出すこともできません。ただガタガタ震えながらコリーの方を見ました。

「心配するな。俺は<ウルフ族>の男だ。オオカミなんかに負けたりはしない」

コリーは小声でそう言いましたが、吹雪の音に消されてジャレの耳には届きませんでした。



お礼文8 「新しい旅」(8)

ジャレは慌てて魔女の城を離れ、来た道を走ってビーバーの家に向かいました。彼の後ろには何匹かのオオカミも
ついてきていましたが、気にしません。早くあのビーバーに会い、そしてこの国でもっとも強いと言われるライオン
に助けを求めなければコリーは吹雪の中、死んでしまうかもしれないのです。急がなければ・・・でも吹雪はます
ます激しくなります。ジャレの足先は寒さで赤くはれ、歩くたびに突き刺すような痛みを感じました。

「おい、そこの人間、どこへ行こうとしている」

珍しい男に声をかけられました。頭と体の上半身は人間ですが、下半身は馬で4本の足と尾がついています。物語
で聞いたケンタウロスに似ている、とジャレは思いました。前に会ったのは山羊の体で2本足のフォーン、弓と矢
を持っていてこちらのほうがずっと強そうです。

「教えてください。この国で一番強いライオンはどこにいるのですか。僕の友達が冬の魔女に捕まって殺されそう
になっているのです。早く助けないと・・・お願いします」
「お前の後ろにオオカミが後をつけてきた。裏切らないために見張られているのか?どうせ魔女の手下となって
あの方をおびき出そうとしているのだろう。その手には乗らない。あの方がいなくなられてはこの国は滅びる
だまされて出ていかせるわけにはいかない」
「それならあなたでもいいです。一緒に来て友達を助けてください。あなたは弓も矢も持っている」
「こんな弓矢で魔女を倒せるとでも思っているのか。我々ケンタウロスにはそれほどの力はない。オオカミにだ
って集団で襲われれば命を落としてしまう。我々の仲間はたいそう数が減っている。命を落とすわけにはいかない」
「じゃあどうすればいいです。誰かあの魔女をやっつけられる人いないのですか」
「誰もが魔女を怖れている。誰も手出しはしない。逆らえば吹雪の中にさらされ、冷たい氷の塊となってしまう。
お前は別の国に住む人間だろう。早くもとの世界に帰れ。それが一番だ」
「友達が捕まえられているんです。吹雪の中・・・それを置いて一人だけ帰るわけにはいきません」
「気に毒だが、その人間はもうとっくに氷の塊となっている。人間がこの寒さにさらされては生きてられない」
「あなたにはもう頼みません。ライオンのいる場所を教えてください」
「無駄だというのがわからないのか!」
「無駄ではない!コリーは生きている!僕にはわかる・・・彼は僕の身代わりになって・・・僕はバカだから
甘いお菓子なんかにつられてフラフラ歩いていって・・そんな僕を助けようとして・・・僕は弱い種族だから
吹雪にさらされたらすぐに死んでしまうからって・・お願いだ・・・彼を助けて・・・死なせないで・・・」

ジャレの目から涙が溢れました。ケンタウロスはそんな彼をじっと見つめています。

「そこをどいて!早く助けに行かなければ・・・・」
「お前の足は凍りかけている・・・急いで手当てをしなければ足を失うことになるぞ!」
「彼の体は吹雪にさらされて全身が凍りそうになっているんだ!行かなければ・・・急いで助けを・・・」

ジャレはフラフラと歩き出しました。足の痛みは激しくゆっくりとしか歩けません。

「誰か助けて・・・僕のせいでコリーは・・・僕がだまされたばっかりに・・・誰か・・たすけて・・・」

吹雪の中、空を見上げると大きな影が通り過ぎました。

「あれは・・・ライオン・・・」

そうつぶやいてすぐ、ジャレの意識は遠くなりました。彼は雪の上にバタリと倒れてしまいました。


お礼文9  「新しい旅」(9)

目を覚ました時、ジャレはライオンの背中の上にいました。それだけではありません。どうやら空を飛んでいる
ようなのです。これは夢だ、夢に違いない、と叫んでいるジャレの心に声が響きました。

「夢ではない。下を見るがいい。今、この国の運命を決める戦いが始まろうとしている。予言の通り2人の人間が
この国に来て、冬の魔女を倒す時が来た。多くの者が戦いのため、城へと向かっている」

ジャレが下を見るとたくさんのけもの、いや上半身は人間で馬や山羊の足を持つケンタウロスやフォーンなどが
大きな群れを成して走っています。彼らは皆手に弓矢や剣を持っていました。

「あなたは誰ですか?いまこの声も僕の耳ではなく心に直接聞こえたような気がしました」
「お前の目にはライオンの姿で映っているだろう。だが違う姿に見えるかもしれない。私はこの国を作り長い間
支配してきた。平和と秩序は長く保たれた。あの魔女がやって来るまでは・・・」
「でも魔女はたった1人で手下もオオカミやクマなんかですよね。それならきっと勝てると思います。こっちの方
がいろいろ武器も持っていますし、数だってずっと多い・・・」
「わからない・・・・冬の魔女は狡猾だ。あらゆる手段を使って人間を味方に引き入れようとする。我々が人間に
対しては手出しができないことを知っている。ところでもう1人の人間、今魔女に捕らわれている者は魔女からもら
った食べ物を食べたか?菓子でもなんでもよい」
「お菓子ってあの白い、ホワイトチョコレートですか?」
「そうだ、なんでもよい。魔女からの食べ物を食べていればこの寒さでも凍りつくことはない。もしまだ食べてなけ
れば非常に危険だ。急がなくては・・・・」
「魔女からもらった物を食べてないとすぐ凍えてしまうのですか?魔女にも言われました。・・・・だから僕、もら
ったホワイトチョコレート、すぐにコリーにも分けてあげました。僕達はどんな食べ物も2人で分け合っていました」
「そうか、それならば安心だ・・・しっかり捕まっていろ、魔女の城は近い、寒さは厳しくなる一方だ・・・」

ライオンの背中にしがみいて空を飛びながら、ジャレはガタガタと震えてきました。寒さだけではありません。彼は
嘘をついていました。魔女からもらったホワイトチョコレート、あんまのおいしさに1人で全部食べてしまったのです。
でもそのことをライオンに素直に話すこともできません。魔女の食べ物を口にせず、吹雪の中にさらされたコリーは
どれほどの寒さに凍えているのか・・・それもチョコを独り占めしてしまったジャレの身代わりになってです。

「城は近い、ここから先はどんな罠が仕掛けられているかわからない。皆の者、用心しろ!魔女との戦いにそなえ、
最大の注意深さと大胆さを併せ持ってこの道を進め!予言の日は近い。冬の魔女を倒せー!」

ライオンの大きな叫び声に下を走っているケンタウロスやフォーンも答え、大きな唸り声となって辺りに響きました。

「ついに姿をあらわしたのだね、ライオンの姿で・・・随分たくさんのけものたちをひきつれて来たじゃないの、で
もそれで私を倒せるとでも思っているのかしら、こっちには予言の人間が味方をしているというのに・・・」

城の前の大きな平原に魔女の手下であるオオカミやクマとライオンの部下であるケンタウロスやフォーンがずらりと
並びました。魔女の横にはコリーが長い剣を持って立っています。

「この人間は私の与えた物を食べ、冷たい吹雪の中に置かれた。体も心も冷たい石か氷のように固まり、もはや人間
であったことすら忘れている。さあ、行くのだ、お前は私の最も忠実なしもべとなった。怖れることはない。彼らは
決してお前を傷つけたりはしない。その剣であのライオンを一突きに刺し殺せ。そうすればもう一人の人間の命は助
けてやろう。行け!・・・今こそライオンを倒し、新しい世界を作る時が来た」

コリーは長い剣を振り上げ、ジャレ達の方に向かってゆっくり歩いてきます。その顔にはなんの表情もありません。

「だめだ!コリー・・・そんなことしたらだめだよ!」
「やめろ!彼はもう人間の心を失っている・・・・遅かった・・・何もかも・・・」

前に出ようとしたジャレを押さえ、ライオンがゆっくり前に進みました。ジャレは怖ろしくて目を閉じてしまいま
した。鋭い悲鳴と断末魔の世にも怖ろしい呻き声が聞こえてきます。ジャレは固く目を閉じ耳を両手でふさぎました。


お礼文10 「新しい旅」(10)

「おいジャレ、いつまで目をつぶっているんだ。目を開けてよく見ろ!」
「うわー!たすけてーーーー」

大騒ぎしながらもジャレはおそるおそる目を開けました。そこにはコリーが立っています。いつのまにか雪はやみ
みどりの野原が広がっていました。魔女の手下だったオオカミやクマがライオンのまわりにひれ伏しています。

「こ、これはどうしたの・・・いったいなにが・・・・」
「伝説は実現された。この国に勇気ある者と知恵ある者、2人の人間が現われ、知恵と勇気を使って魔女を倒し
た。知恵ある者は魔女の策略を見破ってその菓子を仲間に与えず、勇気ある者、魔女に支配されずにそれをたった
今倒した。ここに新しく2人の王が誕生した。勇気王コリーと知恵王ジャレである。2人の王に祝福あれ!」

ライオンの言葉にジャレは何がなんだかちっともわからず目をぱちくりとしています。

「一体どういうことなの?」
「つまりこういうことだよ、ジャレ。お前は魔女から菓子をもらっても何か罠があるに違いないと気がつき、俺に
は渡さずこっそり捨てた。もし俺がそれを食べて冷たい雪の中に立っていたら、完全に心は凍りつき、魔女に支配
されてみんなを殺していただろう。お前が機転を利かせてくれて助かった。俺は魔女に支配されているふりをして
隙を見て殺した。魔女さえいなくなればこの国の長い冬は終わり、雪もとけて春になる」
「そうか・・・やっぱり僕の思ったとおりになった。よかった」
「勇気王コリーと知恵王ジャレに王冠を!」「新しい王ばんざーい!」「あたらしい王に祝福あれ!」

まわりに集まったフォーンやケンタウロスやそのほかいろいろな種族の者や動物達は口々に叫び、コリーとジャレの
頭に大きな金の王冠をかぶせました。ジャレは本当は魔女の罠を見破ったわけではなく、魔女からもらったホワイト
チョコレートを1人で全部食べてしまっただけなのですが、このことは誰にも言わないようにしようと思いました。
こうしてコリーとジャレはこの国で王になり、幸せに暮らしました、と終わらせたいのですが数年後・・・

「申し上げます、勇気王様、これは決して私1人の考えではなく、すべての種族の者の共通の意見でございます。
知恵王様、最近はちょっと申し上げにくいのですが余りにも体がお太りになられまして、このままではご健康に
よろしくないかと、それにお2人が仲よろしいのはけっこうですが、そろそろお世継ぎのことも・・・」
「わかっている、わかっている・・・・」

コリーは頭を抱えて大臣であるケンタウロスの意見を聞いています。最近のジャレはお菓子の食べすぎでかなり
ふとくなっていました。コリーはそんなジャレもなかなかかわいいと思っているのですが、他の者はそうは思って
くれません。それに早くお世継ぎをと皆がうるさく言います。

「知恵王様、新しいお菓子が出来上がりました」「だめです、これは私が預かります」「僕のお菓子だ、返せ!」

新しくできたお菓子をさっと奪ってケンタウロスが走り、その後ろをジャレとコリーが追いかけます。3人は城
を出て森に来ました。夢中で走っているうちにいつのまにか洞窟の中にいます。

「あれ、この洞窟は見覚えがある」「ジャレ、お前すっかり痩せたじゃないか!」「変だなあ、どうしてここに?」

2人は元の洞窟に戻っていました。ジャレは王様になる前の痩せたままの姿で・・・・

                                       −おわりー

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