4、the sins of the flesh

僕は大きな罪を犯してしまった。それは決して消えることはないだろう。誘ったのは彼の方である。先に手を出したのも彼、僕は彼に罪をなすりつけて逃げてしまおうか?いや、それはできない・・・

「君が一緒に来てくれるとは思わなかった」
「どうして?」
「嫌われていると思っていた。あれから長いこと口を利いてくれなかった」
「これ以上、君に近づくのは怖かったから・・・」
「どうして?」
「僕達は男同士だから」
「そんなことは関係ない。僕は君が好きだから・・・・」
「僕だって君が好きだよ。でも僕達はこれ以上好きになってはだめだよ。これはいけないこと」
「そんなこと誰が決めた」
「神様はそうおっしゃっている。神様だけではない。神父様もみんなそう言っている」
「僕は神様なんて信じていない。僕が今信じられるのは君だけだ」

二人で映画館へ行った。町外れの小さな映画館、なんの映画だったか覚えてはいない。中は真っ暗でがらんどうであった。僕達は後ろから入って前の方の端の席にすわった。僕の目は必死でスクリーンを追いかけた。でも彼の目はスクリーンを見てはいない。じっと僕だけを見ている。

「君はきれいだ。みんないつも君だけを見ている。神父さんも学校のみんなも、そして校長先生も君に夢中だ。でもイグナシオ、君は僕のもの、僕だけを見つめて欲しい」
「エンリケ、やっぱりだめだよ。僕達はこれ以上のことをしてはいけない」
「どうして、君だって僕に魅かれている、何故自分にうそをつく」
「僕の心の中にはまだ神様がいる。それに弟のフアンも・・・たった一人の大切な弟だ」
「君の心の中のもの、僕がみんな追い出してやるよ」
「やめて、エンリケ!」

大きな声を出しそうになった僕の口をエンリケはふさいだ。彼は片方の手で僕の口をふさぎ、片方の手は僕のズボンの中へと差し込まれた。

「やめて!何をするの」
「あの時君は僕と抱き合ったのに、どうして今は拒むの」
「あの時はわからなかった。でも今ならわかる。これは罪だよ。お願いエンリケ!罪を犯さないで!」
「僕は怖くない。君を愛している」

エンリケの唇が僕の唇に触れた。それが合図となった。僕は体の力を抜き、エンリケの手に全てをゆだねた。彼の手は僕のモノを掴んだ。揉み解したり、強く掴んだり、彼の手の動きは性急だった。僕は体が熱くなるのを感じた。自分の意識がそこだけに集中した。

「もうやめて!我慢できない」
「僕に任せて」

彼の手は激しさを増し、もう片方の手は強く口をふさいでいる。目を閉じて身を任せた時、ふと体が軽くなった。今までにない快感を感じながら、僕は体液を流していた。

「今度は君が僕にやって欲しい」
「だめだよこんなこと。これは罪だよ」
「罪でもいい、僕は君を愛している」

「ダメだよイグナシオ、それ以上罪を犯してはいけない。神様の罰を受ける。僕はイグナシオが好きだから・・・」

弟のフアンの声が聞こえた。フアンは僕を愛している。そしてエンリケに嫉妬している。兄弟だから・・・・違う、僕はフアンを愛している・・・弟だからではない。弟と抱き合って眠り幸せを感じている。弟を愛している・・・・それはいけない・・・僕達は兄弟なのだから・・・誰を愛すればいい・・・誰を求めればいい・・・

「イグナシオ、君を愛している」
「僕も愛している」

僕達は唇を重ね合わせた。彼の舌が僕の口の中に入り、僕の舌に触れた。僕はエンリケの下着の中に手を入れ、同じ行為をした。僕の手のひらは濁った液体でベタベタになった。





夜、僕はいつまでたっても眠れなかった。昼間、映画館でしたことが頭から離れない。起き上がってエンリケの寝ているベッドの前に行った。エンリケもすぐに目を覚ました。僕達は黙ってトイレの方へ歩いていった。

「やっぱり君も眠れないのか」
「昼間あんなことをしたから・・・・」
「あれぐらい大したことない。本当はもっといろいろなことをやるのさ」
「エンリケ、君は怖くないの、罪を犯すことが・・・」
「怖くないさ、僕は神様なんて信じていない。愛し合うのに男も女も関係ないさ」
「それなら僕を愛して欲しい。もっと強く・・・」
「いいよ、イグナシオ」

今度は僕がエンリケを誘っていた。僕達は一つのトイレに入り、パジャマのズボンを下ろした。足を絡めて抱き合い、むき出しになった互いのモノをこすりあわせた。ただそれだけのことで、お互いすぐに熱を帯び、高まってしまった。僕はエンリケを愛している。これでいい。フアン、もう僕を追いかけてはだめだよ。お前は罪を犯してはいけない。僕はお前を愛している。だから罪を犯してお前から離れる。

「イグナシオ、気持ちいい?」
「気持ちいいよ、とっても・・・」
「僕もだよ」





突然足音が聞こえた。

「イグナシオ、イグナシオ!どこへ行った。消灯の時間はとっくに過ぎている」

校長先生のマノロ神父の声だった。

「どうしよう」
「し、静かに!物音を立てなければ大丈夫」

マノロ神父がトイレのドアを端から開けていく音がする。

「話し声が聞こえている。ここにいるのはわかっている!イグナシオ、早く出てきなさい!他の先生も呼んで鍵を持ってきてもらう」
「どうしよう・・・」
「とにかく外に出よう」

僕達はパジャマのズボンをあげてトイレの外に出た。

「そこで何をしていた」
「何もしていません」
「二人一緒にトイレに入って何をしていた!」
「僕がイグナシオに悩みを相談していたのです」
「悩み・・・そうか、その年頃になるといろいろ悩みも出てくるわけか・・・たった10歳でもう相談事を持ちかけて誘惑するとは・・・エンリケ、お前はこの学校にいてはいけない。他の生徒に悪影響を及ぼす。すぐにご両親に連絡するから荷物をまとめておきなさい」
「待ってください。エンリケは悪くありません。誘惑したのは僕の方です」
「イグナシオ、お前はだまされているのだ!すぐに主の御前で罪を告白して祈らなければ・・・一緒に来なさい。エンリケは部屋に戻りなさい」
「待って、悪いのは僕です」
「話は主の御前で聞く、早く来なさい!」

僕はマノロ神父に手を引かれて無理やり連れて行かれた。エンリケが心配そうに僕を見ている。心配しなくてもいい、大丈夫だから、僕は目で合図をおくった。



                                                 −つづくー



後書き
 このあたりは映画とだいたい同じですが(ネタバレになっている)ただ兄弟の子供時代の関係を元の映画よりも濃く書いています。そうしないとフアンの後の行動がどうも自分にすんなりと納得できないので・・・
2005、10、17



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