ボロミア23歳 ファラミア18歳(12歳)
マブルング63歳(50歳) アムロス18歳(14歳) マルディル23歳(18歳)
僕はミナス・テリスに3日間滞在した。3日間の間に3回その行為を体験した。3回とも僕は縛られて動けなくされ、その間中泣き叫んで最後には意識を失った。2回目の時ボロミアはもうやめようと言ってくれたが、今度は逆に僕の方がそれを求めていた。そうしなければもうボロミアに近づけなくなるような気がして怖かった。
その行為は僕はちっとも好きではない。なぜあんなところを使って愛し合わなければいけないのだろうか?僕にはそれは恐ろしい痛みであった。あんなに痛いことがこの世の中にあるのかと思うほどの痛みであった。鞭で打たれて気を失ったことがあるけれど、あの痛みに比べれば鞭などは何でもないことのように思えた。男同士で愛し合うことは不自然なことだからあんなに痛い思いをしなければいけないのだろうか。ましてや僕とボロミアは本当の兄弟だから・・・決してしてはいけないことをしているから・・・苦しまなければいけない。
今僕はマブルングと一緒にミナス・テリスの城門を出た。ここからイシリアンまでの道は何度も通っている。初めの頃は歩くのが遅いと言われ続けた僕も少しは速く歩けるようになった。だが通いなれたその道が今は全く違うものに見える。ミナス・テリスを出てしばらくは、草木の生えてない荒れた土地を歩かなければならない。雨がめったにふらない大地は乾ききっている。
「水がほしい。雨が欲しい」
「ファラミア、城門を出たばかりじゃないか、もうのどが渇いたのか?」
「すみません、僕じゃなくて、この土地がそう言っているように聞こえて・・・」
「確かにこの辺りは乾ききっているが・・・お前はおかしなことを言うやつだな」
「すみません、変なことを言って」
僕の耳には聞こえた。この大地が必死で水を求めているのが・・・もっとたくさん雨が降ればここにも草木が育つのだろうに・・・僕のあの部分に激しい痛みが走った。思わずしゃがみこんでしまう。
「どうした、気分でも悪いのか」
「すみません。少しだけ休ませてください」
「お前はよく調子が悪くなるな」
歩けないほどの痛みに襲われた。でもボロミアとのことは、絶対に話してはいけない。僕はまた立ち上がってとぼとぼと歩き出した。
オスギリアスの街の近くを通った。この街からはまだミナス・テリスの白い塔がはっきり見える。
「オスギリアスは昔はゴンドールで一番大きな街だったのですよね」
「そうだな、千年以上も栄えた都だった。だがここはモルドールに近すぎた。オークが度々進入してくるようになり、人々はこの街を捨てて、新しくミナス・テリスに都を作った。オークの侵略を拒むためにいくつもの城門をつけ、高い塔を築いた」
「この街から、ミナス・テリスはよく見えます。捨てられた街は新しい街をいつも見ていたのですね。人の住まなくなってボロボロに壊れた街が、日の光に輝く真っ白な塔をいつも見ていた」
「お前は感受性が鋭いな。そんなことまで考えていたのか」
「いつもというわけではないですが、なんだか今日はいろいろな声が聞こえてきて・・・」
いつも感じないことを感じてしまう、僕はどうなってしまったのだろう。乾いた大地や捨てられた街の悲しみを強く感じてしまう。このオスギリアスの街は僕によく似ている。僕もいつも同じような気持ちでボロミアを見ていた。遠征から戻るたびにミナス・テリスの街中の人から大歓声で迎えられる兄はいつも偉大で光り輝いていた。何一つ活躍することができない僕はそんな兄を黙って見つめるだけであった。ボロミアのようになりたい、ボロミアに愛されたい・・・僕の思いは満たされることはない。
小さな村のそばを通った。村といっても今は誰も住んでいない。オークの大群がやってきた。あれだけ大勢いるのになんの音も聞こえない。オークは家に火をつけ、そばにいる人間を手当たり次第に殺している。激しい炎、逃げ惑う人々、だけどどうしてなんの音も聞こえないのだろう。僕の耳がおかしくなったのか。オークが向かってくる。助けて!・・・声が出ない・・・
「ファラミア、どうした」
「オークが、オークの大群が・・・」
「何も見えない。一体どうした」
はっと気がついたとき、目の前に見えるのは壊された村の跡だけであった。
「今、確かにオークが見えて・・・」
「困ったな、そんな幻まで見えるとは・・・ミナス・テリスで何かあったのか?」
「いいえ、何もありません。いつも通りです・・・いつも通り兄上は英雄として迎えられ、僕は全く無視されて・・・」
「あんまり自分の感情を溜め込むな。いやなことがあったら何でも話せ。俺には話しにくくても、イシリアンにいる仲間になら話せるだろう」
「はい・・・」
次の日の夕方イシリアンに着いた。緑豊かなイシリアンの森。でもこの森も悲しい記憶を持っている。たくさんあった小さな村はみなオークに襲われたくさんの人が殺された。殺された人の記憶が、血の匂いが、木の根元にも草の上にも残っている。どれくらい多くの人間とオークの血がこの森で流されたのだろうか。今この土地には野伏しかいない。そしてオークとの戦いは続き、たくさんの人が死んでいる。ここは決して安全な場所ではなかった。僕達は他の人に守られていたからここでのんびりと暮らすことができただけだった。安全な場所を少しでも離れれば、殺された者、傷ついた者の叫びやうめき声があちらこちらから聞こえてくる。
木の陰で、洞窟の中で、男同士で抱き合っている姿が見える。死と隣り合わせの毎日、誰もがみなほんのひとときの安らぎや刺激を求めて愛し合い、抱き合っている。でもまだ明るい時に、人に見える場所でそんなことをするわけがない。僕はまた幻を見ているのだろうか。ボロミアに抱かれた時の激しい痛み、屈辱的なあの格好、同じことをアムロスも僕にしようとしていた。愛しているという甘い言葉をささやいて・・・僕だけが何も知らなかった。愛し合うときどういうことをするか・・・
「おい、ファラミア、何ぼんやりしているんだよ。マブルングの話、ちゃんと聞いていたか。今から新しいところに行くんだよ」
アムロスの声だった。僕は今まで何をしていたのだろう。
「話しって何?」
「その様子じゃ何も聞いてないようだな。俺たちはもうここだけでなくて、実際にオークと戦わなければいけないような場所へ行くんだよ。でも安心しろ。俺とお前はちょうど同じグループに入れられたし、俺たちはどうせしばらくは戦いに参加するわけでなく、雑用係だよ。だけど同じ服を着て、間近で様子を見ることができる。その服だよ。早く着替えろ」
アムロスはとっくにもう野伏の服に着替えていた。おそろいの濃い緑の服、彼にはよく似合っている。
「早くしないと暗くなってくる。着替え、手伝ってやろうか」
「触らないで!」
僕はなにげなく触れたアムロスの手を激しく振り払っていた。
「着替えぐらい自分でできるよ。僕には触らないで」
「なんだよ、そう怒らなくても・・・俺たちのことはもうみんな知っているよ」
彼は僕の口にそっとキスした。僕は彼の頬を思いっきりたたいた。
「やめて!僕はもうそういうことするのいやなんだ。知っているんだよ。だからさわらないで」
「わかったよ。それならさっさと自分で着替えろ」
僕はテントの中で服を着替えた。この服は僕には大きすぎて、裾が地面に届くぐらいであった。
「用意ができたならいくぞ!これから行く場所はいつオークに出会ってもおかしくないようなところだ。用心していけ」
「はい」
マブルングの後を僕とアムロスはついて行った。あたりは暗くなっていたが、月明かりの道でもマブルングは同じ速さで歩いていく。さっきたたいたりしたから、アムロスは僕と口もきいてくれない。どうして僕は彼に触れられるのをあんなにいやがりたたいてしまったのだろう。今まであんなに仲良くしていたのに・・・
「さっきはごめん、怒っている?」
「怒ってはいないよ。ただびっくりしただけだ」
「自分でもよくわからなくて・・・急にいろいろなことを感じるようになって・・・」
「そういう時もあるんだろう、別に気にしてないからいいよ」
「よかった」
「二人とも大きな声で話すな。オークに聞かれたらどうする」
「すみません」
やがて10人ぐらいの人が集まっているところに来た。全員同じ緑の服を着ている。
「マルディル、2人を連れてきた」
マルディルと呼ばれた者がマブルングの近くに行った。10人の中で彼が一番若いように見えた。
「やっぱりその二人、俺の担当か」
「そうだ、文句があるのか」
「今いる新入りの中で一番扱いが難しく、問題が起きそうで、何かあったとき大変な二人だろう」
「よくわかっているな」
「いろいろな噂はここにはすぐ伝わってくる。一番近い場所だし・・・でもどうして二人まとめて俺に押し付ける。誰が決めた」
「大将のダムロドが決めたことだ。お前はそれだけ認められているんだよ」
どうやら僕たち二人はかなりいろいろ噂されていたらしい。マブルングは今度は僕たちに言った。
「彼がここのリーダーのマルディルだ。この中で一番若いが、一番実力がある。お前達はしばらくここで生活する。彼の言うことをよく聞くように」
「は、はい」
新しい生活が始まった。僕はぼんやりしている余裕はなさそうだった。
−つづくー
後書き
13話のようなことを経験したファラミア、周りの景色も人間関係も前とは違って見えてしまいます。でも現実は厳しくぼんやり考え事をしている暇はなさそうです。そのほうがいいのでしょう、たぶん・・・
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