(47)命の灯火(**)
ボロミア25歳 ファラミア20歳(13歳) デネソール73歳(49歳) クローディル48歳(37歳)
俺はイシリアンに行ったファラミアのことは忘れるよう心がけてきた。父上は弟を呪われた子だと信じ、ミナスティリスにいる限り執拗に責め、ついには命までも奪ってしまうだろう。ファラミアは俺のそばにいては幸せになれない。イシリアンにならば命がけで愛してくれる者がいる。彼らに任せればよい。
「ボロミア様、明日はいよいよ総攻撃ですね。考えられている作戦を教えてください」
山一つ向こうにある城をじっと見ていた俺に副官のクローディルが話しかけてきた。
「指揮官以外はできるだけ殺さず捕虜にしろ。ゴンドールに不満を持って反乱を起こした者達が昔の城にたてこもった。いさぎよく罪を認め、悔い改めてくれるならばきっと国の役に立つだろう」
「その命令は聞かなかったことにします。彼らは反乱の時多くの女や子供を人質として連れ去りました。そのほとんどが惨殺されたことをお忘れですか。捕虜としてミナスティリスに連れ帰ればデネソール様は彼らを拷問にかけ、親類縁者まですべて見せしめのために処刑するでしょう」
「同じゴンドール人で戦うなど、できれば避けたかった」
「仕方のないことです。もしあなたにためらいの気持ちがあるならば、私が兵を率いて城へ突撃しましょう」
「この俺をそんな卑怯な男と思っているのか。お前は俺の心など見抜いていながらわざとそう言う」
「あなたのお心なら誰よりもよくわかっています。明日の攻撃のことよりも、ファラミア様のことを考えていらしたのですね」
「忘れるのがあいつのためだということはよくわかっている。それなのに俺は・・・・」
「私でよければいつでもあなたのお相手をいたします」
20以上も年上のクローディルは俺の初めての相手であった。その頃はまだ女も経験していなかった。俺は彼を抱き、戦いとはどういうものであるかをいやというほど教わった。薄暗い天幕の中、がっちりとした体格の男を抱き寄せると汗と血の臭いがした。野営生活が続き充分体を清めることもできずにいたのだが、この男の血の臭いは殺した相手の返り血を浴びたためだけではない。指で触れただけでもはっきりとわかるほどの背中についた無数の鞭と火傷の痕・・・
「また新しい傷がある。父上の狂気は続いているのか」
「ボロミア様、あなたは優しすぎるのです。戦場で男を抱くのに傷跡など気にする必要はない、ただ欲望のはけ口にすればよろしいのです。若い兵士を抱いてその気になられたら困るとおっしゃったのはあなたでしょう」
「ああ、そんなことも言った。女がいない戦場で、これから戦いが始まろうとしている時ほど興奮してくる」
「それは私も同じです。この喜びを若い兵士になど奪われたくはない・・・ああ、指など使わないで下さい、あなたの手が汚れてしまいます」
「いいではないか、明日この手は多くの人間の血で真っ赤に染まる。少しぐらい汚れていた方がよい」
俺は男のそそり立つものに手を添え、片方の手の先を秘部へと埋め込んでいた。
「いい顔をしている。だがお前は父上に鞭打たれ、焼き鏝を押し付けられる時にもっとよい声を出すのだろう。俺はそんなことはできない。ここまでが精一杯だ」
「おやめください。執政の子であるあなたにそのようなことを・・・どうかそれ以上・・・」
「戦場で顔色一つ変えずに多くの人も化け物も殺すお前が羞恥心で顔を赤らめるとは・・・もっと足を広げ、腰を上げるがいい。父上の前ではもっとあられもない格好もするのだろう」
「ボロミア様、どうかもうお許しください」
「俺もお前も同じ種類の人間だ。戦いの前、血に飢えた獣のように欲望が高まり、激しく情を交わさずにはいられない。お前はヌメノールの血を濃く持ち人の心が読めるというのに簡単に獣のようにもなれる。だからこそ父上が手放さないのだろう。ああ、もう我慢できないのか。俺の手の中に吐き出していいぞ」
「そのようなこと・・・どうかお許しください」
「どうせ再びお前の体の中に戻るのだ。明日はこの手がねっとりとした血に染まる。さあ、早く」
男の低い呻き声が聞こえ、手のひらにべっとりとしたものを感じた。俺はそれを自分の欲望の先端に擦りつけ、指を入れていた場所へと近づいた。ほとんど真っ暗な天幕に血と汗とどろりとした性の臭いが充満し、俺は夢中で自分の欲望を秘部へと捻じ込んだ。慣れた行為も戦場にいるという興奮で異常なほど盛り上がっていた。
俺が戦う相手は反乱を起こしたゴンドール人のはずである。だが、暗い森の中でオークに取り囲まれている。2人の少年がオークに剣を向けている。振り返った1人はファラミア、だが不思議なことにオークはファラミアには致命傷を与えていない。もう1人の少年は次第に力尽きその場に倒れた。俺は何をしているのか。体が少しも動かず、声を出すこともできない。ファラミアはゆっくりとした動きで、だが確実にオークを倒していく。そしてオークがいなくなったところでもう1人の少年の方へと駆け寄った。すすり泣きの声が聞こえる。そしてファラミアは剣を握り締め・・・
「やめろ!、ファラミア、やめるんだ!」
「ボロミア様、どうしたのですか?」
俺はクローディルに抱きかかえられるようにして眠っていた。何か伝えようとしても体が震え、ただ口を開くだけで声が出ない。
「落ち着いてください。ファラミア様に何かあったのですね」
「・・・・・・・」
「私はあなたの心が読めます。ここは私に任せ、すぐイシリアンに向かってください」
「反乱は・・・どう制圧する・・・ここまで追い詰めた、あと少しだ」
「私があなたの代わりに指揮を執ります。でも、ファラミア様はあなたしか助けられない」
「わからない、ただ夢を見ただけかもしれない。俺にはヌメノールの血などないから未来のことは予知できない」
「それでも行ってください。ファラミア様にもしものことがあったら・・・私がすべて責任をとります」
「このことが父上の、いや執政の耳に入ったら、お前はただではすまされぬぞ」
「かまいません、それが私の喜びですから・・・」
「喜びなのか・・・お前は俺とのことも父上とのことも・・・」
「はい、だから何があってもファラミア様を助けてさしあげてください。あなた方兄弟は決してどちらかが死んで離れ離れになってはいけないのです。デネソール様にとってはフィンドラス様がそうでした。決して失ってはならない人を自らの手で殺さなければならない悲しみ、あなたにはそのような経験はして欲しくありません。そして私に何があってもお父上、デネソール様を支えて差し上げてください」
「死を覚悟しているのか」
「デネソール様に初めて仕えた日から、常に死は覚悟していました。少しでもあなたの役に立てたのならそれで充分です」
「お前の立場は俺が守る。すぐにミナスティリスに戻る。その時まで待っていてくれ」
「急いでください。他の者が起きる前にイシリアンに向かってください」
「わかった、後のことは任せたぞ」
その時俺はファラミアを救うことしか考えられなかった。すぐ馬に乗り、イシリアンへと向かった。一度も振り返らずに・・・
−つづくー
後書き
久しぶりの指輪の更新です。書く前に他の人のサイトにある昔書かれた作品を読んだり、自分の前の話を読み直したりして気持ちを整えました。だから書き始めるまでに数日かかり、それでも続きを書く決心ができたのは掲示板やウェブ拍手にメッセージを送ってくれた方のおかげです。本当にありがとうございました。ボロミアに救出に行かせるつもりだったのですが、別の話が長くなって、助け出すのは次回になってしまいました。
2008、3、4
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