ハロウィンの夜

ボロミア22歳、ファラミア17歳

「父上、ミスランディアより聞いた話なのですが・・・」

僕は緊張しながら父の前で跪いた。ミスランディアという名前を出すだけで父の機嫌は悪くなる。

「魔法使いの話など、あまり聞きたくはない。手短に話せ」
「はい、遠い北の国では最近10月の最後の日に行うハロウィンという祭りが大変はやっているそうです」
「ゴンドールには古くから伝わる祭りがいくらでもある。わざわざよその国の祭りの真似などせんでよい」
「ですが、聞いたところによりますと、そのハロウィンの祭りの時には国内外から大勢の客が招待されるのです。人々は皆仮装して城に集まり、パーティーは一晩中続きます。去年の祭りの時、その国の王子が隣国の姫を見初められ、その後結婚されたという話です」
「何、王子が隣国の姫を見初めただと、それはどこの国の話だ」
「遠い国の話ですので、国の名前まではちょっと・・・」

父が急に身を乗り出してきたので、僕は慌ててごまかした。ハロウィンという祭りがあるということはミスランディアから聞いていたが、それをきっかけに王子が結婚したなどという話はまったくデタラメ、僕の作り話である。父は僕の兄、ボロミアが20歳になった時ぐらいから、兄の結婚話を次々に持ち出し、ゴンドール中の貴族の娘や隣国の姫の肖像画を兄に見せていた。でも兄は戦いにばかり夢中で結婚話には少しも興味を示さない。何故兄がそうなのか、本当の理由を僕はよく知っているが、そんなことは口が裂けても父には言えない。

「ファラミア、そのハロウィンとかいう祭りについて詳しく話せ!すぐに国中におふれを出し、遠征に出ているボロミアを呼び戻そう。10月の最後の日と言ったな。今から忙しくなる。ひょっとすれば年内に婚約、来年は世継ぎが誕生するかもしれん。なんとめでたいことじゃ・・・」

僕はただちょっと変わった祭りをやってみたかったのだが、父はものすごく乗り気になってしまった。すぐに祭りのことは国中におふれが出て、ミナス・テリスの街は飾りがつけられた。




「また変な祭りをやって、考えたのはお前だな」
「だってそういう時ぐらいしか兄上にお会いできないんですから」

僕は城門前の広場で兄を迎えた。話をしながら上目遣いで見つめれば兄はすぐ僕が何を言いたいか理解してくれる。

「お前が何を言いたいかよくわかっているよ、ファラミア。だけど仮装といって俺は何を着ればいいのだ」
「父上がお待ちです。今日のために特別の衣装を作らせたようです」
「俺はあんまり派手な格好は苦手だが・・・・」
「そんなこと言わないで父上を喜ばせてあげてください」
「お前はいつもの格好だけど何を着るつもりだ」
「僕はもうちゃんと用意してあります」
「そうだ、遠征先の村でお前の好きそうな菓子を手に入れた。食べてみるか」
「ありがとうございます」

兄に手渡されたかぼちゃの形をした小さな焼き菓子を食べた。パンに似ているがずっと甘くて少し香り付けのお酒の匂いがする。

「おいしい・・・」
「気に入ったか、お前に全部やる。たくさん食べろ」
「はい」

甘い焼き菓子を食べるとそれだけでもう体が温かくなり、気分が高揚してきた。




「ミスランディア、本当に魔法使いの衣装を借りていいのですか」
「もちろんじゃ、お前さんこそゴンドールの王の衣装など持ち出して執政殿にしかられはしないか」
「大丈夫です。ぜひ王様の気分で楽しんでください。今日は父上もとても機嫌がよいし・・・」
「お父上の望まれる通りにはならんと思うがの・・・」
「そんなことになったら・・・・僕はいやです」
「やっぱりお前さんは・・・・」
「いけないことだとはわかっています。でも僕は・・・・」
「ファラミア、今夜は魔法がかかり、奇跡が起こる夜じゃ。お前さんにこの魔法の杖も貸してやろう。たいした魔法は使えぬが、お前さんの願いぐらいはかなえられるだろう」
「ありがとうございます。そうだ、これボロミアからもらったのですけど、食べてみますか」

僕は兄からもらった焼き菓子を魔法使いにも手渡した。

「厳しい戦いの日々でもこのような物を持ち帰るとは・・・ボロミア殿もよほどお前さんのことを・・・早く行くがよい。祭りが終わればまた遠征に行ってしまうのだろう・・・お前さんの願いがかなうとよいな」




城の中の大広間はたくさんの人でにぎわっていた。魔法使いやホビット、エルフのような格好をする人がたくさんいる。中にはオークやナズクルの衣装を着ている人も・・・今夜は無礼講だからどんな身分のどんな格好の人でも自由に城への出入りを許され、好きなだけご馳走を食べることができる。もちろん本物のオークなどは決して入ってこないように、ミナス・テリスの城門の近くにはいつもの倍以上の数の兵士が見張りを勤め、出入りする者を厳しくチェックしているのだが・・・ボロミアがどこにいるかはすぐにわかった。ひときわ目立つ濃い赤で金の刺繍がついた服を着ている。

「ファラミア、お前は魔法使いの衣装か。俺はいつもと変わりがない服だ」
「あとで、目立たない服を持ってきます。少しはこの格好で歩いてもらわないと、父上の機嫌が悪くなりますから・・・」
「せっかくお前と会えたのに・・・・」
「それならこれに着替えてください」

兄の手を引いて急いで広間を出て小さな部屋に入った。

「なんだ、ナズクルの衣装じゃないか。どうしてこんな物が?」
「さあ、わかりません。ゴンドールにはいろいろな物が伝えられていますから」
「お前が魔法使いで俺はナズクルか・・・・」
「こういう衣装の人、いっぱいいますから目立たなくていいです」
「それもそうだな」




僕達は大勢の人の間を変装した衣装で通り過ぎ、僕の部屋へと向かった。部屋の入り口に鍵をかけ、僕は帽子を、ボロミアはナズクルのマントをとった。

「ファラミア、会いたかった」

兄の唇が僕の唇に重なる。僕の顔は赤くなり、胸の鼓動が異常に早くなっているのを感じる。

「待ってください、兄上。部屋を暗くしてください」
「相変わらずお前はまじめだな。俺はお前の顔を見ながら抱きたい」
「だめです。これは罪なことです。僕達は兄弟で・・・」
「いやなのか」
「いやなわけないです。僕はずっと兄上を待っていました。兄上に会いたくてたまらず・・・・」

僕は兄の体にしがみついた。強く抱きしめられ、口の中に舌を入れられる。僕も舌を動かし、甘えた声を出した。でもこれ以上のことをお互いの姿が見えるままやってはいけない。カーテンを閉め、ランプを消すと部屋は真っ暗になった。下の方の広間や外からはパーティーのにぎやかな声が聞こえてくる。魔法使いの服を脱ぎ、杖をたてかけ、小さな声でつぶやいた。

「僕の願いはたった一つ、兄上にずっと愛されることだけです。他には何もいりません、だから僕の罪をお許しください」

裸になってベッドの上にうつ伏せになり、シーツに顔を埋めた。初めて兄に抱かれたのは僕が15の時、兄はやさしかったがその痛さに驚き、叫び声を上げていた。その後は遠征に出ている兄が帰ってくるたびにお互い求め合い、抱き合っていた。

「ファラミア」

兄の手が僕の体に伸ばされる。やさしくさすり、僕を刺激していく。

「兄上、何もせず、すぐに来てください」
「それではお前が辛いだろう。俺もいろいろ知ってしまった。どうしたら痛みを感じず、気持ちよくなれるか・・・」
「それではだめです。僕は気持ちよくなりたいわけではない。ただ兄上を感じたいのです。痛みが強ければ強いほど、離れていても思い出すことができます。強い痛みをください。僕が忘れられないほど強く」

シーツを握り締め、体を固くした。足を開かされ、体の中心に鋭い痛みを感じる。僕は声を殺して悲鳴を上げた。この瞬間をいつも求めていた。兄と一つになれるこの瞬間を・・・

「ファラミア、きつくはないのか」
「大丈夫です。もっと激しく入れてください」

目をきつく閉じ歯を食いしばった。声を殺そうとするがあえぎ声が出てしまう。激しい痛みの中、体も熱くなり呼吸が乱れてきた。僕はどうなっているのだろう。苦しくてたまらないのに、腰を上げ、足をさらに大きく広げた。僕の求めに応じて兄は一旦離れ、それから鋭く突いてきた。悲鳴とも絶叫ともわからない声が口から漏れ、唾液が漏れている。僕の体の穴からも粘液が流れているのがわかる。

「兄上、僕はいったい」
「それでいいんだよ、ファラミア、お前が感じるままに動いて声を出せば・・・」
「でもこんなこと・・・わからない、僕は今どうなって・・・」
「お前の体には魔法がかかっている。今夜は無礼講だ。何もかも忘れて騒げばいい」
「あ、あにうえ・・・ヒーダメーこんなこと・・・・ウワー」

兄にもみくちゃにされ、自分がどこを向いているか、どんな格好をしているか、どんな声を出しているかもわからなくなってきた。暗闇の中、体中が粘液でベタベタになり、溶け、いつ自分の精液を出していたかも気がつかないほどだった。兄の舌が僕の一番敏感なところを舐め、僕の口にも兄のものが入る。そしてまた体を貫く鋭い痛み。泣き喚き、嬌声をあげ、激しい呼吸を繰り返しそして意識が途切れた。




気がつくと、部屋に明かりがつけられ、汚れた僕の体を丁寧に清めてくれている兄の姿が見えた。

「ファラミア、気がついたか」
「僕は何を・・・兄上、ごめんなさい」
「謝らなくてもいい。あれでいいんだよ。お前はいつもまじめすぎる。愛し合う時だって痛みをこらえてばかりで・・・もっとこう乱れてもいい」
「そんなにひどく・・・」
「よかったよ。やっとお前が本当に感じてくれて」
「今のが・・・」
「そうだよ、ファラミア、お前はいつも自分を縛ってばかりいる。俺達はやっと本当に愛し合うことができた。魔法がかかったみたいだ」
「魔法・・・」

魔法使いが貸してくれた杖を見た。僕に魔法がかかっていたのだろうか。兄弟で愛し合うことは罪なことだから痛いのは当然とおもっていた。それがあんな風に感じるなんて・・・これから僕達は罪や痛みを感じないで愛し合うことができるのだろうか。素晴らしい魔法をミスランディアは僕にかけてくれた。

「まだパーティーは続いている。そろそろ広間に戻らないと父上のご機嫌が・・・」
「でも兄上、兄上もいつかは誰か好きな人ができて・・・」
「それは決してない・・・いや二十年後にはそういうこともあるかもしれないが、今はお前以外のほかの誰かを愛するなんてことはとてもできない」
「本当ですか」
「ああ、俺はお前が生まれてからずっと魔法にかかっている。お前以外は愛せないらしい。お前に好きな人ができて結婚するまでこの魔法は決して解けない」
「兄上」

僕はもう一度兄の体に抱きついた。




僕達はまた着替えて、ボロミアはゴンドールの正装、僕は魔法使いの服装で大広間に戻った。父が真っ直ぐこちらに向かってくる。僕達が長い間いなかったので何か疑っているのだろうか。

「ファラミア!どこにおった?さっきからさがしていたぞ」
「兄上ではなく、僕をですか?」
「あの魔法使いを見ろ。やたらと陽気になってわしに絡んでくる。もう相手はできん」

父の指差した方角を見るとゴンドール王の衣装を着たミスランディアが、周りの人と一緒に激しく踊り狂っている。父に聞こえないよう兄に耳打ちした。

「兄上のくれたお菓子、強いお酒でも入っていたのですか?僕も体が熱くなりました」
「あれを魔法使いにも食べさせたのか!」
「はい、ミスランディアにも、それがなにか」
「なんていうことを・・・あれには・・・・」

兄の言葉を聞いて僕は驚いた。ハロウィンパーティーを来年も開くことは難しいかもしれない。このお祭りは一年限りの幻のお祭りになってしまうのだろうか?たくさんの魔法と奇跡が起きた夜だったのに・・・・



                                                     −おわりー




後書き
 akemi様の絵を見て思いついたハロウィンのお話です。まじめそうな人が多いゴンドール人の中でもとりわけ厳格なデネソール公、よっぽど他に目的でもなければ、無礼講の仮装パーティーなど行わないでしょう。そしてボロミアはお菓子の中に何を入れておいたのでしょう(笑)ハロウィンは過ぎてしまったけど、気分は充分に味わえました。akemi様ありがとうございました。



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