WEB拍手お礼文「吹雪の夜」 (1)〜(5)




拍手お礼文1  「吹雪の夜」(1)

昔、あるところに<ウルフ族>と<ゴート族>という二つの種族の人間が住んでいました。
<ウルフ族>は肌の色は褐色で髪と目の色は黒、背が高く、たくましい体をしています。
力が強く争いを好む種族でもあり、族長の地位をめぐってしばしば激しい争いを繰り返し
てきました。一方の<ゴート族>は肌の色は白く、髪は金色、目の色は青で男も女も小柄
で美しい顔立ちをしています。争いを嫌い、神の声を聞く巫女が代々国を治めてきました。

<ウルフ族>の国と<ゴート族>の国の間には険しい山脈があり、この二つの種族の人間
が出会うことは滅多にありませんでした。ただどちらの種族も男は二十歳になった年に大人
になるための儀式があり、山脈を越えて別の国へ行かなければなりません。

<ウルフ族>の男は二十歳になると<ゴート族>の男を一人捕まえ、奴隷にするという掟
がありました。<ゴート族>の男を捕まえたら直ちに男のシンボルを切り取り、陵辱して
自分のものにします。捕らえられた<ゴート族>の男はあまりの苦痛で絶叫して喉をつぶし
屈辱で意志を失い、後は話すことも抵抗することもまったくしない従順な奴隷になってし
まいます。このような奴隷を最低一人連れて戻らなければ<ウルフ族>の男は国に戻って
も一人前と認められません。

一方<ゴート族>の掟は、一人で山を越えて<ウルフ族>の国に入り、その国にしか生えて
いない食物の苗を持ち帰るというものでした。<ゴート族>にとって<ウルフ族>の国に
入ることは大変危険なことでしたが、その危険をくぐり抜けた知恵と勇気のある者だけが
次の子孫を作ることが許されるのでした。

「お前はバカだ。こんな雪の降る季節に山を越えていこうとするなんて」
「こんな雪の季節だから向こうは油断している。僕は1本ではなく全種類の苗を持ってきてやる」
<ゴート族>のジャレはこう言って仲間が止めるのも聞かずに山へ向かっていきました。

「お前はバカだ。こんな雪の降る季節に山を越えていこうとするなんて」
「こんな雪の季節だから向こうは油断している。俺は1人だけでなくたくさんの奴隷を連れてきてやる」
<ウルフ族>のコリーもこう言って仲間が止めるのも聞かずに山へ向かっていきました。

山の頂上近く、吹雪に巻き込まれた二人は偶然同じ洞窟に避難しました。中は真っ暗で相手の顔は
全く見えません。寒さに震え、いつしか二人はしっかりと抱き合っていました。
「お前は勇気のあるやつだ、こんな吹雪の中、わざわざ山にくるなんて。俺はお前が気に入った」
「僕も君が気に入った。こんな季節に山を越えようとするやつが他にもいたなんて・・・・」
「どこの出身だ・・・いや、そんなことはどうでもいい、名前はなんという」
「ジャレという名前だ。君は?」
「コリーだ。俺達気が合いそうだな」

激しい吹雪の夜、種族の違う二人はお互いの正体も知らずにしっかりと抱き合って眠りにつきました。


                                   −つづくー


拍手お礼文2   「吹雪の夜」(2)

朝になりました。吹雪はおさまり、日の光が暗い洞窟の中を照らしました。先に目を覚ました
のは<ウルフ族>のコリーの方です。コリーは一緒に寝ていた相手の顔を見て驚きました。長
い金色の髪、透き通るような白い肌、青い眼、間違いなく自分とは違う<ゴート族>の男です。

もともと<ウルフ族>の男は同じ<ウルフ族>の女よりもはるかに美しい<ゴート族>の人間
に強い憧れを抱いていました。けれども違う種族の人間との間に子供が生まれることは、固く
禁じられていました。そこで<ゴート族>の男をさらって抵抗できないようにし、愛するよう
になったのです。そうした習慣が長い間続き、今では<ウルフ族>の男は<ゴート族>の男を
捕まえて奴隷にしなければ一人前と認められなくなったのです。

違う種族への憧れから捕らえていたので、奴隷といっても彼らは重労働をさせられることは少
なく、その仕事は身の回りの世話と夜の相手ということがほとんどでした。そして美しい顔立
ちの男ほど、市場で高い値段で取引され、子孫を残すために結婚した同じ<ウルフ族>の妻よ
りもはるかに大切に扱われるということもしばしばありました。

しかしいくら大切に扱われるといっても、<ゴート族>の男にとって男のシンボルを切り取ら
れ、奴隷として扱われることは何よりも苦痛で屈辱的なことでした。<ゴート族>から見た、
<ウルフ族>の人間はどんな怖ろしい獣よりも怖ろしく悪魔にも等しいほど憎むべき存在でした。

「こんなに美しい顔をした人間がいるなんて・・・」
コリーはつぶやきました。今まで美しいと言われる<ゴート族>の奴隷を数多く見てきましたが
これほど美しい人間を見たのは初めてでした。その白い美しい手と自分の黒い毛の生えた茶色い
手を見比べました。この手と同じように顔も自分は野生の獣と同じように見えるのでしょう。明
るい場所であって顔が見えていたならば、こんなふうに抱き合って眠ることなど決してありえな
いでしょう。美しい<ゴート族>の男は静かな寝息をたてています。

「何をしている。寝ている間に切り取ってしまえ。こんなに美しい奴隷を捕らえるなんて、お前
は幸運だ。みなに自慢ができ、数十人分の値段で売れるぞ。早くお前の小刀を取り出せ」
コリーの耳にこんな囁き声が聞こえました。

                                        −つづくー





拍手お礼文3   「吹雪の夜」(3)

「だめだ、俺はお前を傷つけることなどできない。俺が<ウルフ族>だとわかったらお前は
逃げてしまうだろう。だからもう少しでいい、このまま目をつぶっていてくれないか・・・」

コリーはジャレの顔の上にそっと手を置きました。彼の肌の色とあまりにも違う自分の黒い
毛の生えた褐色の手・・・・なぜだかわかりませんが涙があふれ出てきました。その涙が
彼の頬を伝わってジャレの顔の上に落ち、ジャレはそっと目を開きました。

「<ウルフ族>に捕まってしまうなんて・・・・」
「待ってくれ、お前を傷つけたりはしない、どうか逃げないで俺の話を聞いてくれ」
「やめてくれ!<ウルフ族>が何をするかよく聞いている。そんな屈辱的な目にあうぐらいなら
いっそうのこと殺された方がましだ!ここに僕の剣がある。さっさと殺してくれ」
「何を言う。俺はお前を殺すことも傷つけることもしない。信じてくれ・・・」
「怖ろしい<ウルフ族>を信用するなんて・・・・」

そう言いながらもジャレは相手の顔をじっと見ました。そこにいるのは確かに怖ろしい<ウルフ族>
の男です。でもその目はやさしさに溢れていました。

「君を信用してもいいのか・・・」
「ああ、俺はお前が思っているとおり、<ゴート族>の男を捕らえて大事な所を切りとるような野蛮
で残酷な<ウルフ族>だ。でも俺はお前が気に入った。さらって奴隷にするのではなく友達になりたい」
「<ゴート族>が<ウルフ族>と友達になるなんて聞いたこともない・・・でも僕達はなれるかもしれ
ない。あんな吹雪の夜にそれぞれたった一人で山を越えようとして、ここで出会って一晩過ごしたのだ
から・・・・君と友達になれるだろうか・・・」
「なれるさ、きっと、俺達は普通の<ウルフ族>や<ゴート族>ではない。誰にも負けない勇気を持っ
ているのだから。こんな吹雪の時にここまでやってくる大バカ者だし・・・」

コリーが白い歯を見せて笑いました。つられてジャレも少しだけ微笑みました。洞窟の外は雪と氷に
覆われた真冬の山ですが、二人は暖かい春の日差しを感じていました。

                                    −つづくー






拍手お礼文4   「吹雪の夜」(4)

「どうしてお前達<ゴート族>の男は時々俺達の国へ一人でやってくる。わざわざ危険を冒して」
「僕達は二十歳になったら<ウルフ族>の国へ行き、そこだけにある食物の苗を持ち帰らなければ
いけないという掟があるんだ。昔からそうやって食物の種類を増やしたし、そうしなければ一人前
と認められない。中には捕まって戻ってこない仲間もいるけど、みんなそれを乗り越えて生きてきた」
「俺達にも同じような掟がある。お前達<ゴート族>の国へ行って、最低一人は捕まえて奴隷にして
連れ帰らなければ一人前と認められない。中には途中で行き倒れ、戻ってこなくなった仲間もいる」

二人はそっとお互いの体をさすりあいました。種族や目的は違っても同じように危険を冒してここに
やってきた相手が目の前にいるのです。それもこんな雪の降る季節にわざわざ山に登るような・・・

「どうしてこんな雪の季節に山を越えようとした。他に仲間はいないだろう。危険とは思わないのか」
「そっちだってそうだろう。わざわざたった一人でこの季節に山を越えようとするなんて・・・・・」
「他のやつがたくさん来ていれば、奴隷を捕らえても横取りされる。この季節なら横取りはされない。
油断もしているだろうからたくさん捕らえて独り占めすることができる。俺達の国では顔のきれいな
奴隷をたくさん捕まえるほど自慢できるし、市場で売って大金持ちになれる。特にお前のような・・」

コリーの目が<ウルフ族>特有の鋭い光を放ち、ジャレは一瞬ドキリとしました。いくら友達になった
といえ、相手は自分達<ゴート族>の大事な所を切り取り、奴隷にしてしまう怖ろしい<ウルフ族>
油断はできません。けれどもこの男を友達にして<ウルフ族>の国に入れば、彼の奴隷とみなされ、他
の<ウルフ族>に襲われることはまずないでしょう。ジャレの心にズルイ考えが浮かびました。この
男を友達と言って利用し、たくさんの苗を取ってこよう、そしてすきを見て逃げ出せばいい・・・・

「ねえ、コリー、僕達は友達だよね。君はいくらなんでも友達になった相手を傷つけて奴隷にするよう
な真似はしないよね。僕は君に頼みがあるんだ。一緒に<ウルフ族>の国へ行って、苗をとってくる
手伝いをして欲しいんだ。せっかく友達になれたんだ。もう少し君と一緒にいたいんだよ。たのむ!」
「そうだな、一緒に俺達の国へ行くか。俺の奴隷のふりをして行けば安全だ。ありったけの苗を集めてやる」
「本当!・・・うれしいな・・・君と友達になれてよかった」
「俺もお前と友達になれてうれしい」

こうして二人は手に手を取って雪の山を降り、コリーの故郷、<ウルフ族>の国へと向かいました。

                                     ーつづくー






お礼文5   「吹雪の夜」(5)

コリーとジャレの二人は<ウルフ族>の国に入りました。ジャレはびっくりしてあたりをキョロキョロと
見回します。敵の侵入を防ぐ高い城壁、たくさんの高い建物、足元の道まですべて石やレンガでできてい
ます。農業や牧畜を営み、木やわらでできた家に住む<ゴート族>の国とは大きな違いです。道行く人が
次々にコリーに話しかけますが、彼は適当にそれをあしらってどんどん歩いていきます。ジャレがしゃべ
ることはコリーから止められていました。<ゴート族>の奴隷は喉をつぶされてしゃべることができませ
ん。うっかりしゃべると奴隷でないということが、他の<ウルフ族>の人間にばれてしまうのです。

「よ、コリー、無事に帰ってきたか。心配したんだぜ、こんな時期に山へ行くから・・・だけど随分いい
奴隷を捕まえたじゃないか。うらやましいな。・・・・一晩でいい、ちょっと貸してくれないか?」
「だめだ、これは特別な奴隷だ。誰かに貸すわけにはいかない。俺は急いでいるんだ。そこを通してくれ」
「なんだコリー、久しぶりに俺達に会うのに、冷たいじゃないか。そのかわいい奴隷がそんなにいいのか。
よく見せてくれ・・・髪の長さも目の色も完璧だ。これは高く売れるぞ。下の方のさわり心地はどうだ」

たちまちコリーの友達十人ぐらいに取り囲まれてしまいました。彼らはあっと言う間に小柄なジャレをかか
えて走り去り、その中の一人がコリーを押さえつけて動けなくしています。連れ去られたジャレは石造りの
小さな小屋の中に入れられました。何人もの力の強い<ウルフ族>の男に押さえつけられて身動きはまった
くできません。あっというまにジャレは着ているものを全て脱がされ、裸にされてしまいました。

「おい、見ろよ。コリーのやつ、こいつのものをまだ切っていないぜ。さんざんもったいぶって後で楽しむ
つもりだったのかな。まあいい、この奴隷は最初に切ったやつのものになる。俺がやっていいかな・・・・」

その<ウルフ族>の中でもひときわ体が大きく残忍そうな顔をした男が言いました。他の男はただうなずく
だけで、ジャレの体を押さえつけています。鎌形の大きな刃物を持って男が近づいてきました。

「フフフ・・・暴れるんじゃない・・・動くとよけい痛い思いをするぞ・・・どこから切込みを入れてほ
しい・・・この固くなったところをすっぱり切るか、それとも柔らかい部分をゆっくりと・・・・この
きれいな顔が恐怖と苦痛に歪み、どんな悲鳴をあげるか・・・フフフ・・・楽しみだな・・・・・・」
「やめて・・・・そんなことをしたらコリーが怒って復讐をする。やめてくれ」
「せっかくの楽しみを奪うのだからな。コリーのやつなんと言ってお前をここにつれてきたんだ」
「僕達は友達になった。友達だから僕を傷つければきっとコリーが・・・・・」
「友達か・・・フフフ・・・うまいこと言ってだましたものだ。だがよく覚えとけ、<ウルフ族>と
<ゴート族>が友達になった話など聞いたことない。あいつだってゆっくり楽しみたくてお前を無傷で
つれてきたのさ、怖いか・・・怖いだろうな・・・さあ泣き喚け、お前の友達は助けにくるかな・・・」

ジャレは目をつぶりました。こんな男に切られるくらいならまだコリーの方が、いや友達だと言ってくれ
た彼を利用しようとした自分が悪いのです。それでも彼に助けを求めずにはいられません。

「たすけて・・・コリー・・・僕は君をだまそうとした。でも君は友達だよね、と・も・だ・ち・・・」

                                       −つづくー



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