コリントスの誘惑(1)
レオニダス 48歳
ディリオス 43歳
レオニダスが先王の娘ゴルゴを妃に迎えて王位についてから10年が過ぎた。彼はスパルタの戦士としても類稀な強靭な肉体を持ち、戦士の心を一つにまとめることができる優れた指揮官であったが、他の多くのスパルタ人と同じように言葉を無駄に費やしているとしか思えない弁論などは苦手である。
「ディリオス、コリントスの会議はいつ頃であったかな」
「もうすぐです。そろそろ出発の準備をなさった方がよろしいかと思われます」
「俺はどうも堅苦しい会議とかは苦手だ。お前、代わりに出てくれないか」
「いえ、今度の会議はスパルタだけでなくギリシャ全体にかかわることです。スパルタ王であるあなたが行かないでどうするのです?」
「お前も来てくれるか、ディリオス?」
「もちろんです。出発前に今度の会議での議題をまとめておきますので、目を通してください。その後でスパルタ王としてどのような発言をしたらいいか、一緒に考えましょう」
「なんだ、いつものようにお前が考えてくれるのではないのか」
「スパルタの命運がかかっているのです。よく理解して意見を言ってもらわなければ困ります」
「その話は明日にしよう。お前がそうやって真剣に話す姿、なかなかそそられる。今までに何度他国の使者との話し合いの途中、お前を押し倒したくなったことか」
「陛下、私を押し倒すなら他国の使者などいない、二人だけの時にしてください」
「ならば今がその時、お前もそのつもりで話しに来たのだろう。今夜は誰も近づくなと命じてある」
「私はこれからの予定についてお話しするためにきたのです」
「これからの予定?今夜の予定は決まっている」
レオニダスはニヤリと笑った。ディリオスは訓練所にいる少年の頃、5歳年上で成人の儀式を終わらせたばかりのレオニダスの指導を受けた。個人指導を受けている間によくあるように二人はごく自然に肉体関係を持った。スパルタでは一般的に男同士の関係は認められているが、直接の挿入行為は受け入れる側を卑しめることとして禁じられている。だが、まだ王になる以前であったがレオニダスに対して絶対的な憧れと尊敬の念を抱いていたディリオスは、禁忌を犯してでも直接結ばれることを望んだ。スパルタの少年にしてはかなり体が細くひ弱である彼は強靭な肉体を持つレオニダスと結ばれてこそ力を得られると信じていた。やがてディリオスも無事成人の儀式を終え、レオニダスと同じ隊に配属されたが、それぞれが一人前の戦士になっても二人の関係は変わらなかった。二人ともかなり周囲には気遣っていたのだが、いつのまにか軍の間では公認の仲と認められてしまい、逆に二人について何か悪口を言った者の方が他の者から非難された。指揮官として特異な才能を見せた。それまでスパルタでは王と言っても軍の指揮をするくらいで特別な権限はなかったが、レオニダスが即位した時にはスパルタ中の戦士だけでなく兵役を解かれた老人や子供まで大勢集まり、議会の長老達を驚かした。レオニダスは普通の王ではない、聖なる力を持つ王だと誰もが信じた。
「待ってください。あなたは戦士として、指揮官として類稀なる優れた才能のある方です。でも会議の席では少し準備をされた方が・・・・」
「これがいつもの準備のやり方だ。お前の知恵を引き出すため、俺が必要なのだろう?」
戦士にしては色白のディリオスの頬が赤く染まった。上目遣いの青い瞳、30年前、自分に力を与えるために抱いて欲しいと跪いて懇願した少年は、今ではもっともらしい理由をつけて王に会いにくるようになり、間違っても自分から抱いて欲しいなどとは言わない。だが、30年間変わらない瞳は涙で潤み、レオニダスの次の行動を待っている。
「お前は素直じゃなくなった。こんなことではまだ妻を娶らすわけにはいかないな」
言いながらレオニダスの口がディリオスの唇に触れた。長い年月の間にどちらもりっぱな髭を蓄え、口付けの時には互いの顔を刺激する。その感触を確かめ、ゆっくりと舌を差し込めばディリオスの舌が絡みついてくる。
「ああ、陛下、何を・・・・」
レオニダスの手がディリオスの下半身に触れれば、薄い布をまとっただけのそこはたちまち固くなった。
「いつものことだろう、ディリオス。もうこんなに固くして・・・・しばらくお前と会う機会がなかったからな。ほら、気持ちがいいのか」
「ああ、陛下、そんなにされてはすぐに・・・・」
「名前で呼べ、二人だけの時は」
「レオニダス様、手を離してください。・・・・ああー・・・・自分では・・・・」
「いつもは冷静なお前もこうしていると乱れるのか。そろそろ結婚した方がいいのか。お前、今いくつだ?」
「43でございます」
「もう40を越えたのか。お前はいつまでも若く見える。まだ30代だとばかり思っていた」
「陛下より5歳年下なのですから、ご自分の年齢を考えれば当然私の・・・・」
「俺が計算が苦手なことを知っていて・・・生意気な口はこうしてやる」
「ああー」
息もできないほどの激しい口付けにディリオスの足元はよろけた。だがここですぐ床に倒れれば力の強い王に何をされるかわからない。必死に踏ん張ると腰にまわす手に支えられた。
「お前もだいぶ腰が太くなった。それなりに年を取ったということか、それとも皆に隠れて贅沢なものを食べたのか?」
「贅沢なものなど食べていません。日夜訓練に励んでいます」
「いい肉付きだ、だがな、ここだけの話、あまり重くなると妻が苦労するぞ。ゴルゴはかなり力持ちだからよいが」
「お二人がお幸せで何よりです」
「お前にもすぐ見つけてやる。スパルタ1美しく、高貴な血を引き、素直で優しい娘と結婚させる」
「陛下、そのようなことおっしゃられても・・・・」
「いや、そうでなければこの俺が許せない。お前のこと、こんなにもいとおしい」
若い頃はかなり細身だったディリオスも長年の訓練と満ち足りた生活の中で少しずつ体に肉をつけていたが、レオニダスはそんなディリオスを軽々とベッドまで運んだ。
「へ、陛下、自分の足で歩きます」
抵抗しようとした時にはすっかりベッドの上で組み伏せられていた。がっちりとしたレオニダスの体の重さを感じながらディリオスは目を閉じた。子供の頃から憧れ続け、今も尊敬して止まないレオニダスに抱かれるのはディリオスにとって至福の時である。
「ああー、陛下、そんな場所を・・・・」
身につけていた衣服と腰布を剥ぎ取られ、大きく足を広げられたディリオスは体をよじって最後の抵抗をした。
「何が恥ずかしい。お前と俺がどれほど多くの回数交わったか、お前は記録してないのか」
「そのようなこと、公の記録には・・・・ああー・・・・ふううーん・・・・」
ゴツゴツした指が内部にねじ込まれ、ディリオスは甘い喘ぎ肥えを出した。レオニダスのやり方はその豪快な性格により実に激しく大雑把なものであったが、長年それに慣れ親しんできたディリオスの体は乱暴にかき回す指にさえすぐに反応してぐちゅぐちゅと卑猥な音を立て始めた。先ほどから膨らんでいたものは今にも精を吐き出しそうである。
「レオニダス様、手をどけてください。もう我慢できません」
「かまわぬ、吐き出せ。お前の全てを愛している」
「ああー・・・・レオニダス様・・・・」
「もっと名前を呼んでくれ。かわいいディリオス」
「もうだめです」
「スパルタ人ならギリギリまでねばって耐えろ。こっちの攻撃を始めるぞ」
レオニダスはディリオスの両足を肩に乗せ、ヒクヒクとうごめく後腔に自分のものをあてがい、激しく貫いた。
「ひいー、・・・・痛ああー・・・・・ああー・・・・」
「しっかり持ちこたえろ。お前はまだまだスパルタ戦士として一人前ではないな。ああ、なんて強く締め付けるんだ・・・くく・・・お前の体は素晴らしい」
「ああー、・・・・・うわあああー・・・・・」
ディリオスの悲鳴が広い王の部屋で木霊した。だがその顔はうっとりとしている。
「レオニダスさまあー・・・・ひいいー・・・・」
「これぐらいのことで声を上げるな。しっかり持ちこたえろ」
レオニダスの攻撃は続いた。ディリオスはヘトヘトになり、倒れこむようにして眠ってしまった。
「陛下の衣装はこの箱に入れておきました。王冠はこれ、着替えなどはこの中に全部入れてあります」
「槍とマントがまだ外に出ているぞ」
「コリントスへは戦いに行くのではありません。たくさんの国から使者が集まります。他の国の者と同じ格好をしてください」
「なんだか変な気分だ。槍や盾がないとかえって歩く時バランスをとりにくい。それになんかこう服が肌にはりついているようで気持ちが悪い」
レオニダスの言葉にディリオスはため息をついた。今に始まったことではない。レオニダスが王位についてから10年、他国で行われる会議や交渉には必ずディリオスが付き添った。細々とした仕事が嫌いな王に代わって、会議の資料を調べ、持ち物を点検するのはいつもディリオスの役目である。彼の準備は完璧で、その場にふさわしい衣装からアクセサリーまですべてそろえてくれるのだが、ついつい何か言ってディリオスを困らせたくなるのがレオニダスである。
「陛下、そろそろ出発しないと遅くなります」
「馬に乗るのか。俺は行進して歩いていく方が好きだが・・・・」
「戦ではありません。何度言ったらわかるのですか!槍は置いていくようにと言ったはずです」
「だが、途中でもし襲われたら」
「そのために護衛がいるのです。陛下は短剣だけ持って、盾も置いていくのです」
「お前、昨晩もベッドの上で・・・・」
「護衛の者がいる前です。寝室でのことは話さないでください」
「わかった、わかった。とにかくお前の言うとおりにすればよいのだな」
「それから王妃様にもご挨拶なさってください。しばらくスパルタを留守にしますから・・・・」
「なあ、ディリオス。ゴルゴは今朝機嫌が悪いんだ。お前からなんかうまいこと言ってくれないか」
「長く留守にするという前の晩になって、突然私を呼び出すからいけないのです」
「だが、俺とお前の関係はあれもよくわかっている」
「わかっていても納得できないのが女というものです。長く旅に出る前の晩くらい一緒に過ごして優しい言葉をかけて欲しい、そう王妃様は思われたはずです」
「お前、結婚もしていないのによくそういうことがわかるな」
「これぐらい誰でもわかります。あ、王妃様がこちらにいらっしゃいます」
「デ、ディリオス、頼む・・・・」
王妃ゴルゴが幼い息子の手を引いて歩いてきた。
「ゴルゴ王妃様、お見送りありがとうございます。旅のしたくは全て整いました。これからコリントスの会議に行って参ります」
「まあ、ディリオス。お前は昨晩王の相手をしながらよく朝早く起きて旅の支度を整えましたね」
「この会議では多くの国の代表が集まります。どの国が参加して、どの国は来ないか、そのことを陛下にお伝えしました。次にペルシャと戦うことになれば、総指揮をとるのはスパルタかもしれません。これは非常に名誉なことです」
「あらそうですか。そうなればお前はますます忙しくなる。あなた、何もかもディリオスに頼るというのはいい加減やめた方がいいのではないかと・・・・」
「わかっている。わかっているよゴルゴ、我が愛しの妻よ、そなたはこのスパルタに咲くどんな花よりも美しい」
ゴルゴは噴出し、隣にいる息子が不安そうな顔をした。王妃は母の顔になって息子にしゃがんで話しかけた。
「心配しなくていいのよ。王があまりにも突然似合わないこと言うから、おかしくて・・・・今度の会議がスパルタの運命を左右するかもしれないと聞きました。どうかお気をつけて・・・・」
「父上、槍や兜は持たないのですか?それに長老のような服を着て・・・・」
息子が不思議そうにたずねた。父レオニダスが出かけるといえばほとんどの場合が戦のためであり、それ以外の用事で出かける方が珍しい。
「今から行くのは戦ではないからな。お前によいみやげを買ってこれるかもしれない」
「コリントスにはアテネと同じように多くのサロンがあって女が歌や踊りのサービスをしていると聞きました」
「ディリオスを連れていくのだ。女など必要ない」
ディリオスが慌ててレオニダスの足を蹴飛ばしたが、時すでに遅く大声はゴルゴはもちろん、近くにいた護衛の兵にも聞こえていた。
「遅くなると危険です。さあ、行きましょう」
ディリオスの言葉にレオニダスも照れ笑いをして馬に乗り、ものすごい勢いで走らせた。
「陛下、待ってください。もう見送りの方達からは遠く離れました。余り速いと護衛がついてこられません」
「危ないところだった。ディリオス、やっぱりお前は頭がいい」
「言葉には少し気をつけてください。あなたはあまりにも率直に言葉を言い過ぎます。そこがいいところでもあるのですが・・・」
「何を言った、ディリオス。最後の方がよく聞こえなかったぞ」
「なんでもありません」
ディリオスの頬が赤く染まり、馬を走らせて行ってしまった。
「偉そうに俺に指図しても、あいつは昔からちっとも変わらない。40を過ぎて、自分の言葉で頬を赤らめるな!」
「陛下、なんだかとても楽しそうですね」
後ろから声が聞こえ、レオニダスはびっくりして振り返った。
−つづくー
後書き
25000hitのリクエスト、ちょろ様より「大人になったレオディリの甘い一夜」というお題をいただきました。そして会議を理由にしての熟年旅行を書き始めたのですが、なんだか王様、ベッドインと戦い以外ではこんなに情けない人だったの!という感じになってしまいました。旅先でいろいろな誘惑に巻き込まれながらもなんとか甘い一夜を過ごしてもらいたいと思います。ディリオスは私の中では独身というイメージが強いです。王様への愛が深すぎるため、自分の少年時代が家族の愛に恵まれなかったので家族を愛する自信がない、などいろいろな理由を考えているのですが、今回はレオニダス王がスパルタ1の娘と結婚させたいといろいろえり好みをしているうちに40を過ぎてしまったという設定にしました。
2007、8、1
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