(9)ジレンマ
日の光がまぶしく感じた。いつの間にか嵐はおさまり、日が昇っていた。俺とコリンは狭い寝台の上、ほとんど全裸に近い格好で重なり合うように寝ていた。体を動かそうとすると尻の辺りがズキズキと痛む。あれは夢ではない。ついに俺はある一線を越えてしまった。だが周りの景色はいつもと同じである。15,6の頃、初めて女と体験して、これで世界は大きく変わると思っていたが、なにも変わりはなかった。今も同じようなものかもしれない。いや、そんなことはない。俺には同性愛の趣味はない。これはあくまでもこういう閉じられた環境にいるからこそ起きてしまった、いわば事故のようなものである。この島から日常の生活に戻ってしまえば、ここでのことはすべて思い出になるだけだ。
コリンが俺の体の上に手を載せてきた。今まであの部分だけ見ていてたがよく見ると彼の体は腕も胸もいい筋肉がついている。自分の細く貧相な体とは大違いだ。彼は彼なりにスターとしての体を維持するための努力を続けているのだろう。ただ遊んでいるだけでスターでいられるほどこの世界は甘くはない。最近俺もようやくそのことに気づいてきた。
「ジャレッド、起きているのか」
「ああ、目が覚めた」
「お前、尻痛くないか?」
「多少痛いがたいしたことない」
「それはよかった。俺の初めての時の相手は3日間まともに歩けなかったと怒っていた」
俺は3日どころか1週間まともに歩けそうもない。だがそれを素直には言いたくない年上の意地がある。
「お前の初めてっていくつぐらいの時だ?」
「15,6ぐらいかな」
「意外と遅いんだな。俺と同じくらいじゃないか」
「相手は男だ。きのうのお前みたいにヒイヒイ言って泣き喚いていたが、俺も途中では止められなくて最後までやってしまった」
「相手も同じ歳か」
「ああ、同級生だった」
「15,6じゃさぞかし痛がっただろう」
「たぶんな、だけどそいつは3日後には俺のところにやってきて、もう一度やって欲しいと言いやがった。それからしばらくは俺もそいつも病みつきになった。会えば必ずやっていたよ。その後相手は変わったけど、俺は十代の時は男ばっかりだったな」
「それがどうして女に代わった?」
「映画スターは美人女優とのゴシップがないとつまらないだろう。だけど女でこれだというやつはいなかったな。だからいつも相手を変えていた」
「男ではどうだ」
「やっぱり一番最初の同級生がよかったかな。あの頃はお互いバカなことばかりやって、テクニックも何もあったもんじゃないけど一番純粋でいられた。最初の相手っていうのは忘れられないよ・・・だけど今は変った」
コリンは俺の体を抱き寄せた。ヤバイ、いつまでも裸のまま初体験の話なんかするんじゃなかった。
「お前が一番だよジャレッド。こんなにぴったり合う相手がすぐそばにいるなんて幸せだ」
「ぴったり合うって何が?」
「うまく言えないけど、なんかこうお前といると、違うんだよ。俺の中の何かが目覚めて、違った自分になれる」
「言っておくけど、俺は同性愛の趣味はない。お前に抱かれたのも、あくまでもここだけの体験だと思っている。どうせ二人っきりでこんな島にいるんだ。ここにいる間はお前の好きにしていい。だけど元の世界に戻った時は、俺は今までどおりの生活をする。やっぱり俺は女しか愛せない」
「そうか、せっかくあうやつと出会えたと思ったのにな」
「俺が気に入らなければオーデションは不合格にして他のいい相手を見つければいい」
「いや、それとこれとは別だ。お前が役にふさわしいと思えば俺は喜んでお前を推薦する」
コリンは寂しそうな表情をした。俺だって別にこいつのこと嫌いって言うわけではない。嫌いというよりも好きという感情の方がもっと多い。いや好きというよりもなんかこうかけがえのない相手のように思えてくる。だが俺は同性愛者ではない。どこかでこう線を引いてここだけのことにしておかないとズルズルと引き込まれてしまう。男同士は女を相手にするよりも遥かに魅力的なものかもしれない。これだけ有名な女優を好きなだけ相手に選べるコリンのような男まで、結局最初の相手を忘れさせなくさせるのだから・・・そして俺の最初の相手は・・・
「おい、いつまでもこんなところでしゃべってないで、朝食を食べて外、見ておこうぜ。きのうの嵐でどこか壊れていたら大変だ」
「そうだな」
俺は立ち上がって服を着た。動くたびに下半身がズキズキと痛む。3日間まともに歩けなかったという話を思い出す。いやあれは15,6だからそうなるのであって、俺の体はもう30を越えた大人なのだから、初体験のやつと同じダメージを受けるはずはない。だが、15,6の時はコリンのモノだってまさか今と同じ大きさではなく、体に合ったぐらいの大きさだろう。俺のあそこは歳はとっても使ってないのだから固くなっているはずで、そこに無理な大きさのモノを無理やり・・・俺の方がダメージが大きい。
「俺の方が絶対ダメージは大きい!あいつが3日なら俺は1週間まともに歩けない!」
「はあ?・・・・なんのことだ」
「いや、なんでもない。嵐で受けたダメージが大きいと困ると思って・・・1週間ここで暮らすんだから」
俺の体のダメージは相当のものだったけど、嵐のダメージはそれほどひどいものではなかった。俺達は朝食を食べ、外に出て後片付けをした。歩くたび、動くたびに体はズキズキと悲鳴を上げているが、俺は意地で平気なふりをした。俺達はまた砂浜に腰掛けて冗談を言ったり、海で泳いだりした。それは子供の頃に行ったキャンプと同じ感覚、あのことさえ心配しなければ限りなく楽しいバケーションである。だが楽しい時間はあっという間に過ぎ、また夜がやってきた。
「今夜は前からやっていいかい?」
「俺はよく知らない。前でも後ろでも好きなようにやってくれ」
俺を簡易ベッドに押し倒して、コリンが耳元でささやいた。前でも後ろでもどっちでもいい。どうせ俺にとっては拷問だ。好きにしてくれ。俺はこの時には何も考えられない。あと数日の辛抱だ。そうしたら俺はもう二度とこんなことはやるもんか!
「手を縛ってもいいか」
「ああ、好きなようにしてくれ」
俺は彼の言葉などほとんど耳に入っていない。裸にされ、手首を縛られてベッドにくくりつけられた時、初めて自分がどういう格好にされているか気がついた。まあどうせ拷問を受けるのだから縛られていた方が雰囲気が出るかもしれない。コリンも裸になって俺を抱きしめ、キスをしてくる。ここまではきのうと同じ、たいして違いはない。二回目だから、初めてほど痛くはないだろう。コリンは俺の足を開き、彼のモノを俺のモノにこすりつけてくる。俺のモノもたちまち固くなるが、前から刺激されるとまるで女にでもなって犯されようとしているような妙な気分になる。
「どうだ、感じているか」
「俺は女じゃない。モノが立ち上がっても、穴は濡れたりしない」
「今日はもっとよくしてやるよ」
彼は俺の足を開いて持ち上げ、尻の辺りを舌で刺激してきた。
「ちょ、ちょっと待て、そんなとこ舐めるな」
「充分湿らせておかないと、後で痛くなる」
「俺は痛い方がいい。さっさとやってくれ」
「そうか、お前は痛いのが好きか」
俺はこの時とんでもないことを言ってしまったが、なにしろ男に尻を舐められるなんていう気持ち悪いことは早くやめて欲しかったので思わずそう言ってしまった。彼はまた俺の足を持ち上げ、尻の入り口辺りを彼のモノで刺激する。この格好だと本当に女になったみたいだ。おまけに俺のモノはパンパンに膨れ上がり、早くも限界にきている。
「早く入れてくれ。もう我慢できない」
「そんなに好きか」
「そうじゃない!我慢できない」
コリンは俺が騒いでいる顔をうれしそうに見ている。キスしたり、俺のモノを手で弄んだりしながらも、俺の欲望を解放させてはくれない。こんな時自分の手でやってしまえば手っ取り早いのだが、手は縛られて動かせない。
「どうにかしてくれ、我慢できない」
「まだ濡れてない」
「どうでもいい、じらすな、破裂しそうだ」
「そんなにほしいか、だけどまだまだ、楽しみはこれからだ」
彼はさらに自分の体を俺にこすり付けて刺激を与えてくる。俺は女のようなあえぎ声をあげた。自分の理性も感情もどこかへ消えていた。意識は全て下半身に集中し、新しい刺激を求めてビクビクとふるえていた。
「たのむ、お願いだ、早くくれ!」
俺はあえぎながら涙声で懇願していた。今なら彼が何を言っても聞き入れてしまうだろう。
「お前は男とやるのは嫌いなんだろう」
「そんなことない、好きだ」
「俺のこと好きか」
「好きだ」
「愛しているか」
「愛している」
「そうか、よく言った」
もう、何を言われ何を答えたかなどどうでもよくなっていた。俺の体は狂おしいほど彼を求めていた。これが本能というものなのだろうか?激しい痛みを、彼自身を全身全霊で求めている。
「それほどお前が求めているなら・・・」
彼は俺の足を開いて肩に載せた。俺も昔何度か女に同じような格好をさせた。その時の女の気持ちがよくわかった。俺も今・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
すさまじい痛みに襲われた。これはだめだ、耐えられない、せめて角度を変えて後ろから・・・俺は必死で泣き叫んだ。だが声が聞こえない。この格好では、足を持ち上げられ、喉が斜めになっているから全く声がでないのだ。下半身の刺激はすさまじいものである。俺の体は強い力で槍を差し込まれている。彼の体の重さが直接俺の大腸にまで響いてくる。怖ろしい痛みに絶叫する。だが声は全く出ず、縛られた手はむなしく空中をかきむしる。もし手が自由に動いたらきっと彼の背中を苦し紛れにかきむしっただろう。逃れることのできない地獄のような責め苦、声にならない声で絶叫し、のどが焼け付くように痛んだ。俺の体も心も全く別の世界に連れていかれそうになった。コリンは実に楽しそうな顔をしている。そしてこの俺も声をあげて笑っている。まさか・・・おかしくなっているのだろうか・・・俺の体も心もあえぎながらももっと強い刺激を求めていた。喜びにふるえ、笑い声をあげ、そして声にならない絶叫・・・・
オレハイマ、マッタクベツノ セカイニイル・・・スベテガシンジラレ ナニモシンジラレナイ
−つづくー
後書き
いやだいやだと言いながら、結局自分で墓穴を掘り、抜けられない世界へはまっていくジャレたん。コリンもそこまでするつもりはなくても結局彼に引きずられ、深い世界へはまっていきそうです。
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