3、母の存在
僕の母は本当に美しい人である。小さな子供の頃、僕はいつも母に抱かれて眠りについた。柔らかな胸に顔を近づけるとバラの花の香りがした。母は大輪のバラの花、中でも青みがかった薄いピンク色のこの花をとりわけ愛していた。赤や黄色の強い色の花ではなく、白の宮殿によく映える淡い色のバラの花を、母は愛していた。
「アレキサンダー、お前はなんて美しい子なのでしょう。青い瞳、金色の髪、白い肌。あの男に似たところなどどこにもない。あなたは私だけの子。醜いあの男の子ではない。私と神の間の子」
そう言いながら、母は僕の髪をなで、唇に手を触れる。それから僕の服をゆっくりと脱がし、僕の体を手でなぞる。
「大丈夫、お前はまだまだ美しい。この体にどこもあの男に似たところなどない。お前の頬と唇は私の好きなこのバラと同じ色。恥ずかしいのかい。うっすらと染まったこの肌の色はますます美しい」
僕をベッドに横たわらせ、手に持ったバラの花びらを、少しづつ僕の体にふりまいていく。バラの香りに包まれて僕は目を閉じる。母なのだから、母を愛しているのだから・・・
「アレキサンダー、私だけの息子。私がこの世界で愛するのはただお前だけ」
母は僕の体をなで、いろいろな場所に口付けをする。僕は固く目を閉じていた。そしてそのまま母に抱かれて眠りについた。
その時、僕は10歳だった。突然父が僕と母の寝ている部屋に入ってきた。
「ここで何をしている!お前は夫である王が久しぶりに遠征から帰ってきたというのに、出迎えもせず、相変わらず息子とこのようなことを・・・どけ!」
父は僕を突き飛ばし、ベッドから引きずり下ろした。僕はあわてて部屋の隅に逃げた。父は母をベッドに押し倒し、その上に馬乗りになった。
「久しぶりの王の帰還をどうして素直に喜ばぬ」
「やめて!触らないで、汚らわしい」
「そうして抵抗しているのも始めのうちだけ、お前は抱かれてしまえば喜んでいたではないか。昔のように素直に抱かれろ!」
「あの頃は何も知らずにただただ怖ろしくて言いなりに・・・ああおぞましい・・・このような男に触れられていたとは・・・」
「わしはこの国の王だ。すべてを思い通りに動かせる。お前がいくら抵抗しても・・・」
「やめて!」
「なぜ、こうも嫌うのだ。わしらの間には子もおるではないか」
「アレキサンダーは私と神の間の子よ。お前の子ではないわ!」
「何をふざけたことを言っている」
「やめて!」
父は母の頬を何度も激しく叩いた。母の悲鳴と父の怒りの声。見てはいけないと思いながらも僕は全てを見てしまった。母が父に犯されるその姿を・・・長い時間が過ぎ、ようやく父は部屋を出て行った。
「母上、大丈夫ですか」
「お前も見ていたでしょう。あれがあの男の正体よ。王と言われ、英雄ともてはやされても、醜いけものと同じ姿。お前は決してあの男の息子ではない。お前は神の子よ。見ているがいい。あの男はこのままですむはずがない。今にきっと神の罰が下る」
遠征から戻った父は毎晩のように母の部屋にきた。僕はあわてて部屋の隅に隠れる。母はもう父に抵抗することはなくなった。声もあげず、ただその行為が終わるのを横たわってじっと待っていた。父が出て行くとすぐ、母はベッドの下に隠してあった大きなかごを取り出した。中に入っているのは何匹もの大きなへび。母はそのへびを取り出して一匹ずつ口付けし、ベッドの上に這わせて自分もその中に体を横たえる。へびが母の体の上を自在に這いまわる。母はうっとりとした声でへびに話かける。
「うふふ、気持ちいいわ。そう、そこよ。あの男に触れられて汚されたのよ。お前達、よくわかっているわね。その冷たい肌でさっきまであの男が触れて熱くなった私の肌をひやしておくれ。お前達は神の使い、アレキサンダーお前もここにいらっしゃい」
「母上、やめてください。へびは苦手です」
「怖がらなくてもいいのよ。へびは神の使い、お前の穢れも清めてくれる。お前にもあの男の血が流れている。汚らわしい血が・・・早く来てここに横になりなさい。そう、私のように服を脱ぎ、生まれたままの姿で・・・」
僕はへびなどは見るだけでも怖ろしいものであった。体中が振るえ、ひざががくがくした。でも母に逆らうことはできない。僕は言われたとおり服を脱ぎ、母の隣に横になった。たくさんのへびの目がこっちを見ている。僕はあわてて目をつぶり、母にしがみついた。足に、背中に、へびが這い回っているのを感じる。その冷たい感触に体がゾクゾクした。
「いい子ね。アレキサンダー。私が愛するのはお前だけよ」
「僕も母上を愛しています」
そう、僕は母を愛していた。だから何があってもそのそばを離れたり、まして言いつけに逆らうことなどできはしなかった。長い間・・・
後書き
これも映画のイメージから。ものすごく怖い母上だったので、これくらいのことはあったかなあと・・・
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