
4、君の翼になって
彼と一緒に遠征に行くようになって、僕は初めて彼が夜うなされていることを知った。
明るい太陽の下、あれほど強く猛々しく光り輝いている彼が、夜の闇の中で、弱々しく
手をのばし、助けを求める。僕はあわててその手を強く握り締める。
「ああ、ヘファイスティオン、お前は今どこにいた?」
「ここにいるよ、いつも君の近くにいる」
「もっと近くに来てくれ、いつでもお前を感じていたい」
薄暗い天幕の中で、僕達は生まれたままの姿になった。彼は僕の首の後ろに手を回し、口付けをする。
彼の手が僕の長い髪に触れる。僕の体は緊張し、辺りの空気がピンと張り詰める。彼は僕の髪をなでながら口の角度を変える。初めて感じる彼の舌。舌をからませようとするがうまくいかない。僕のひざはがくがく震えている。
「お前は震えているね。怖いのか」
「怖くないさ、君のためならどんなことでもできる」
彼は僕の体をベッドの上に倒した。足を大きく開かせ、強く抱きしめてくる。
「どこにも行かないでくれ!お前だけはどこにも行かないでくれ!」
僕の胸に、腹に、足の間に、彼は激しく体をこすり付けてくる。僕は彼の頭や体をやさしくなでた。
「もっと近くにお前を感じたい。いいかい」
「いいよ」
僕はうつ伏せになって目を閉じた。これから自分の身に起きることに恐怖を感じていないわけではない。でもこれで彼を救えるならばどんなことでも耐えられる。彼の指が僕の体に差し込まれた。悲鳴をあげそうになるのを懸命にこらえる。指の数は増やされ体の内部から刺激されていく。今までにない感触に体をずらし、声を上げそうになるのを懸命にこらえる。
「痛くないか」
「大丈夫だよ」
遂にその時はきた。僕は固く目を閉じ、歯をくいしばった。体を開かされ、引き裂かれるような痛みを味わった。そしてかれのものは槍のように体を貫き刺す。これほどの苦痛は感じたことがなかった。
「俺は本当は恐怖でいっぱいだ。次の戦いで勝てるだろうか。もし負けたら、もし俺が殺されたら、どんなふうに殺されるのか。槍で刺されるのか、剣で切られるのか、それとも馬から落ちて踏み潰されるのか、考えれば考えるほど怖ろしくて眠れなくなる」
泣きながら彼は僕の体に激しく打ち付けてくる。耐え難いほどの激しい痛み。でも僕は声を上げずに耐えていた。もしできることなら僕は彼の翼となって、彼を守り、はばたかせたい。そのために僕の体がひきちぎられても・・・彼を守ることができるなら・・・
「アレキサンダー、僕は君の翼になるよ。君を守り、君を遠くへはばたかせる。だからもう何も怖れないで・・・僕の体を君にあげるから」
激しい痛みで薄れ行く意識の中、僕の体は引き裂かれていった。ばらばらになった僕の体は彼の体をやさしく包んでいる。僕達は一つになって宙を漂っていた。
夜、僕の目の前で彼はいつもうなされている。僕はその手を強く握り締める。
「怖がらないで、僕は此処にいるよ。僕が君の翼になって守ってあげるから、君は安心して眠ればいい。君のためなら僕の体は引き裂かれても・・・
後書き
「神話への挑戦」とはかなり違う、ヘファイスティオンに弱音を見せる大王。でもヘファイスティオンは「君のためなら自分は引き裂かれても・・・」とやっぱりMです。
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