(16)熱帯夜

俺はジャレッドの方へ向かっていったボズをあわててレストランの外に引きずり出した。まさかこいつの憧れの対象がジャレッドだったとは・・・・確かにあいつはただ見ているだけなら一部の人間の崇拝の対象になるかもしれない。顔立ちはほっそりと整っており、声はセクシー、吸い込まれそうなブルーの瞳、さらに人を惑わすエキセントリックな発言とくりゃ、そういうタイプの男は夢中になってしまうだろう。俺はまあ、そういうわけでジャレッドに夢中になっているわけではない。なぜ俺がこれほどあいつに夢中になってしまうか、言葉ではうまく説明できない。まあそれはいいとして、とにかく俺はボズを連れて少し離れた場所のレストランに入った。幸い雑誌記者はこっちにはついてきていない。ジャレッドストーカー事件よりブリトニーの新しい恋人の方が一般雑誌には受けがいいからだろう。

「落ち着いたか、ボズ、お前いくら夢中になっているからってああいうことはやめろ」
「悪かった、コリン、おかげで助かったよ」
「冷静になれよ。俺はジャレッドなら多少は知っているけど、あいつは絶対ホモじゃない。100パーセントストレートな人間だ。そういう雑誌にはいろいろ書かれて人気投票でもトップになっているらしいけど、それと現実の彼とを混同するな。あいつは映画界でそれほど知名度はないけど俺よりずっと年上だし、いろいろ経験している。目を覚ませ」
「わかっているよ、わかっているけどさ」
「お前に一体何があったんだ」

俺はずばり核心に触れた。このあたりをきちんとしておかないとこいつはまた妄想にふけってとんでもないことをしてしまうかもしれない。人気歌手がファンに殺されたという事件だってある。妄想はそのままにしておくと後が怖い。

「まあ、よくある話だよ。軍隊に行って性格が変わるというのは実際に敵を殺したか、それとも仲間に犯されたか、大体そういうことだろう」
「お前はどっちだ」
「両方体験してしまった。立ち直れなくなるほど酷いやり方でな。それからいまだに後遺症が残って全く立たなくなった」
「それで女ではなく、きれいな男の方に妄想するようになったってわけか。どこでだ」
「全部しゃべらないとだめか」
「ああ、すっかり話して二度とこういうことしないと誓わないなら警察に突き出す。あいつ、ジャレッドは今度の映画で俺の相手役をやる。大事な共演者に何かあったら俺は許さない」
「もしかして、お前も・・・」
「俺のあいつに対する気持ちは共演者としてだけだ。俺のことはどうでもいい。お前のことを話せ」

俺はボズに対しては随分卑怯だし、傲慢な態度で話しているのだろう。だがあいつを守るためにはこれも仕方がないことだと自分に言い聞かせた。

「熱帯のジャングルのような場所だった。一言文句言ったら、生意気だということで徹底的にやられた。歩けなくなるほどな。殴られたりすりゃ傷ができるしすぐ訴えられてしまうけど、そういうことは絶対誰も言わない。一度目をつけられればやりたい放題さ。人間なんて残酷なもんさ。人が泣き叫び、必死で許しを乞うのを笑いながら見ている、俺なんかまったくそういう経験がなかったからそれですっかりおかしくなってしまった」
「へえ、そうか、じゃあお前、その体験を忘れられるぐらい強力なやつとやればいいんだよ。きれいな男に妄想するんじゃなくてさ、とんでもなく強いやつをパートナーに選べばそんなことは越えられるよ」
「とんでもなく強い男ってお前のことか」
「俺はだめだ。もう一生のパートナーを見つけてしまったから他のやつとはできない」
「だけどお前変わっているよな。普通そういうアドバイスをするか?」
「精神科医だったらしないだろうな。でもさ、俺はもっとすごい体験をしているやつを知っているけど、そいつはそのやり方で乗り越えた」
「そんなものなのか」
「ああ、そんなものだ」
「わかったよ、そっち方面で考えてみるよ。ありがとうコリン。お前が近くにいて俺は助かったよ。そうじゃなかったら本当に警察に突き出されていたかもしれない」
「まあ、あんまり悩むな。世の中にはいろいろなやつがいるからさ」
「お前はやっぱりビッグだよな。映画スターっていうだけでなくていろいろな意味で人間がビッグだ。俺と同じ年とは信じられない」
「まあ、俺もいろいろ経験しているから」





夜遅くになって、俺のアパートにジャレッドがやってきた。

「で、どうだったブリトニーとは」
「わりとうまくいったよ。最初レストランで食事をしている時、変な男が近づいてきたけど、お前がうまく連れ出してくれたし・・・」
「まあな、あいつのせいでその後の展開がわからなくなったけど・・・」
「その後美術館に行って、もう一度レストランで夕食を食べ、それからわかれてきた」
「そんなに長い時間一緒だったのか。気が合うのか、ブリトニーと・・・」
「お前の紹介だからな、まあ、記者もたくさんいたし、うまくいったんじゃないか。今日は兄貴も当然外泊すると思っているだろうし・・・朝やらなかったから俺・・・」
「なんだ、美人女優とデートしたばかりで、もうこっちがほしくなるのか」
「しょうがないだろう。お前が俺をそういうふうにしたんだから。今夜はたっぷり時間がある」

言い終わらないうちにジャレッドの手はもう俺の体を触り始め、勝手にズボンのベルトをはずしている。もともとゲイのやつより途中から目覚めたやつの方が激しくのめり込むと聞いたが、本当にそんな感じだ。





待ちきれないジャレッドはシャワーまで一緒に浴びて、その時から俺を熱くさせた。まだ3月で外は寒いはずなのだが、部屋の中は熱気に包まれている。もう充分大きくなった俺のものをさらに丁寧に舐め、甘えるような声を出してくる。

「ああー、早く入れてくれ・・・でもなるべくゆっくり・・・」
「どっちなんだよ。そのままでいいのか」
「ああ、そのままがいい。最初の瞬間の擦れるような・・・痺れるような感じがたまらねえ・・・はやく俺を痺れさせてくれ」

自分からうつ伏せになり、腰を振って誘ってくる。俺は笑いをかみ殺しながら指を1本だけ入れてみる。

「うわー!・・・・や、やめろ・・・アアー!・・・ちょ、ちょっと待て、そんな勢いよく・・・もうだめだー!死ぬー助けてくれー・・・ああー!
ぎゃー・・・ヒイイー・・・ちょっと何がおかしい」
「お前は最高だよ。指1本でこれだけ楽しめるとは」
「まだ本番じゃないのか」
「せっかくの夜だから楽しませてもらわないと」
「好きなようにしてくれ・・・アアー・・・・ツウウー・・・・痺れる・・・だめだー」

俺のものを入れればもちろん騒ぎはもっと大きくなる。

「痛いほうが気持ちいいんだろう。お前、本当にマゾだよな」
「そうなのかな・・・うわーちょ、ちょっと待て、この体勢じゃ苦しい・・・こ、声が・・・でない・・・」
「ちょっとさわぎ過ぎだぜ、ジャレッド」

俺は唇を重ねて押さえつけ、さらに激しく攻め立てた。終わりのない暑い夜が続く・・・



                                          −つづくー




後書き
 忘れられない体験にはさらに大きなショックを、と大胆な発言のコリン。それはジャレのようなタイプの人間にこそ通用することでは・・・
2006、3、17



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