(19)告白

ブリトニーとのデートについてはいろいろな週刊誌や雑誌が写真付きで載せてくれた。おかげで俺は安心してコリンのところに泊まれるようになった。兄貴をだましているという後ろめたさがまったくないわけではないが、それでも二人でたわいのないことを話しながら眠る夜というのはなにものにも代えがたい。それにスポーツクラブでのレッスンもだんだん本格的になってきた。ダンスの振り付けは到底1度では覚えきれず夜コリンに習って復習をしなければならない。剣術も同じで、こうした技術を学んでなかった俺には骨の折れることばかりだ。

「じゃあ、もう一回ダンスの振り付けやるぞ、8ビートのカウント、ステップを踏んで、はい、そこでターン・・・」
「ちょっとまってくれ、ステップがうまく踏めない」
「なんだよ、こんなの簡単だろう・・・頭で考えるからいけないんだよ、体で覚えろ、体にリズムを刻み込んで・・・」
「わかっているさ、わかっているけど足がうまくいうこときかないんだよ。俺、お前のようにアイリッシュじゃないし・・・子供の頃ダンスや音楽なんて全然・・・」
「それは関係ない。とにかく今は覚えることだ。いいな・・・ダンスが終わったら次は剣術だ。お前、今の腕前じゃ真っ先に殺されるぞ」
「戦闘シーンそんなに多いのか」
「たぶんな、監督はそれこそがアレキサンダーの生涯だと言っていたし、あと少し乗馬もやっておいた方がいいかもしれない」
「大変だ・・・」
「しっかりしろ・・・お前以外にヘファイスティオンをやれるやついないんだから・・・俺は役者として女優とのラヴシーンだったらいくらでもできる。だけど相手が男だったら・・・お前以外、例え演技でもそんなことはできない。お前を知ってしまったら、もう他のやつとは・・・」
「コリン・・・」
「お楽しみは後だ・・・まずやることを先にやれ、いいな」
「わかっているよ」

たっぷり2時間ぐらいレッスンの復習をさせられ、汗びっしょりになったところでシャワーを浴び、ようやくベッドにいける。その後がまたコリンの場合はたいそう長くなる。何度繰り返しても決して飽きることがないその行為。自然に反した男同士の愛の営みは屈辱的なスタイルをとり、激しい苦痛も同時に味わうことになるのだが、それでもその痛みが引いたその瞬間、この世の中にこれ以上のものは決してないと思える快楽に身を包まれる。俺もコリンもともに登りつめ、同時に達することができるようになるほど、身も心も一体化していた。





「ジャレッド、お前にだけは正直に話しておこうと思って・・・・」

南の島にバカンスに行ったマットとトモがコリンのアパートに、まあ俺もそこに住み着いているのだが、やってきた。

「マット!トモ!随分日焼けしたな。まあ、上がれよ」
「お前達の邪魔にならないか」
「ここしばらくずっと一緒に暮らしていたから別にかまわないさ。コリンは買い物に行っている。なんか買ってきてもらおうか」
「気を使わなくていいさ。夕食はもう食べてきた。まだ荷物も持ったままだけど、なんだか真っ先にお前に会いたくなって空港から直接来た」
「早く中に入れ。俺達のことはどうせイーモンからいろいろ聞いているからいまさら驚かないだろう」

マットとトモはアパートの中に入った。同じバンドのメンバーでしょっちゅう一緒にいたのに何かぎこちなく、変な感じがする。しばらくあってなかったからだろうか。

「ジャレッド、トレーニングは順調に進んでいるか」
「まあな、寝る直前までいろいろやらされて大変だけど・・・」
「シャノンはこのこと知らないんだろう。空港で雑誌買ったらさっそくお前のことが載っていた。島にいた間、ずっとテレビも新聞も雑誌も見ないで10日以上もボケーっと暮らしていたから・・・・」
「ブリトニー、ジャレッドと交際中、婚約間近か、と出ていたぞ。もちろんうそだろうけど・・・」
「ああ、あれはちょっと俺とコリンが考えてやったことだ。・・・兄貴をだましてしまったけど・・・」
「やっぱりシャノンには話さない方がいいかな・・・」
「俺はそう思う、マット、お前はけっこうそういうことふざけて言っていたけどさ、俺なんか絶対そういう気はないとシャノンも信用してくれていたし・・・」
「どうせ俺は最初からその気があって、シャノンには信用されてなかったよ」
「そういうわけじゃないけどさ・・・やっぱりいきなり言ってショックを与えるのは・・・ほら、ジャレッドだってコリンと住むことにして出て行っただろう。ブリトニーとつきあって、同棲していると思っているから喜んではいるのだけど、やっぱり内心は寂しいんじゃないのか。ジャレッドがいなくて・・・・」
「そうだよな、確かにシャノン、見た目はああだけど、けっこう寂しがりやのところあるからな」
「ジャレッド、誰かきているのか」

大きな買い物袋を持ってコリンが帰ってきた。昼や夜はほとんどレストランで食べていたが、朝食用のパンやシリアルなどはたまにコリンが買出しに行っていた。二人一緒に買い物とか行けたら楽しいのだろうけど、さすがにそんな危険なことはできない。

「ごめん、コリン、留守中に勝手に入らせて、マットとトモだ」
「かまわないさ、久しぶりだな・・・二人とも随分日に焼けている。どれくらいバカンスに行っていた」
「11、12日だ」
「俺の兄貴はすぐ帰ってきたんだろう」
「ああそうだ、急に用事ができたと言って・・・・」

コリンが帰ってきたことで、ますますマットとトモはそわそわしはじめた。何か言いたいのにそのきっかけをつかめないような・・・

「コリン、あそこはいいところだった。あれだけのホテルに泊まれるなんて・・・」
「ああ、俺は今年は撮影に入るからもうどこへもいけない。よかったらまたチケット使ってくれてかまわない」
「いや、俺達はもう充分楽しんだから、今度はシャノンとイーモンが・・・」
「バカ!マット、お前は本当にバカだよ。何で今ここでその名前を出すんだ」
「だって、イーモンはいずれはそのつもり・・・」

言い終わらないうちにトモはソファーの上でマットの上に馬乗りになり、口を押さえつけていた。

「悪い、コリン、世話になっておきながら、こいつはどうしようもないバカだよ。マット、お前はもう口利くな」
「なんだよ、偉そうに!俺の下でキャーキャー喜んでいたくせに・・・」
「何もしゃべるなーこのやろう!」

マットとトモは取っ組み合いのようになっていた。

「ちょっと待て、俺もジャレッドも話の内容はだいたいわかっている。イーモンが10日前ぐらいにここへ来た。2人のことも思ったとおりになっているし・・・・」
「なんだ、そうか、それなら話は早い、俺、トモと結婚したいんだ」

マットの突然の告白に他の3人は返す言葉もなくポカンとしていた。とんでもないやつだ。南の島に行って実はやってしまったとか、愛し合うようになったとか、その程度の告白は当然あるだろうと予想していた。だがそれがまた結婚となると・・・わかってない・・・マットのやつ全くわかってない・・・こいつは俺と同じ、口ではいろいろ言ってもやっぱり初心者だ。そのわけのわからないやつにいきなり押し倒されたトモは気の毒に、最初はきっと大変な目にあったに違いない。俺も最初のうちは拷問のように感じたけど少しずつよくなって・・・トモも俺と同じタイプか・・・けっこうニコニコしている。

「なんだか、混乱してきたようだ。ここは落ち着いてよく問題点を話し合った方がいい。俺とジャレッドとマットとトモ、それにシャノンとイーモン、それぞれ何を望んでこれからどうしたいのか、きちんと話そう、いいな」

コリンが俺達の話を取りまとめた。やっぱり俺のコリンだ。だけどきちんと話して何をどうするっていうんだ?あーなんだかまた面倒なことに巻き込まれそうだ。


                                               −つづくー



後書き
  いきなりの告白、わかっていてもそういわれるとかなりショック、わかっているのかわかってないのかいろいろごちゃまぜになってきました。とりあえず話は続きます。
2006、4、7


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