(23)逃亡
ベルトのしなる音、皮膚に当たる音、俺の微かな呻き声・・・鋭い痛みと熱は俺に異様な興奮と陶酔をもたらした。自分がマゾであるという自覚は昔からあった。コリンと付き合うようになってその自覚は確信へと変わった。コリンが俺に与える全てのこと、普通の感覚では痛みですら、俺には深い快楽になっていた。なぜそう感じてしまうのかはわからない。
「おい、ジャレ、もうこのくらいでいいだろう。お前の尻、すげえ熱くなっている。これ以上やると血が出て痕が残るぜ」
「わかった。じゃあこのまま貫いてくれ。俺が悲鳴を上げても遠慮するなよ。・・・・あー熱くてヒリヒリする・・・ハハッ・・・こんなことで興奮するなんて・・・・俺もよっぽど変だよな・・・コリン、お前は最高だよ・・・アー気持ちいい・・・・」
勝手なことをわめきながら俺は陶酔していた・・・俺の体は覚えている・・・ずっと過去の記憶を・・・
鞭で打たれるたびに僕は大きな悲鳴をあげ、泣き叫んだ。彼らは僕の悲鳴に興奮している。だから声が大きいほど、その泣き声が哀れっぽいほど早く終わらせてくれるに違いない。鞭の痛みを感じなくなるとすぐ、挿入の鋭い痛みを感じた。どれほどたくさんの回数同じ行為を繰り返されても僕の体がその痛みに慣れることはない。鞭で打たれるのとは違った悲鳴を上げれば、ますます興奮して体を強く揺さぶられる。欲望を叩きつけられた体に次の手が伸びる。繰り返し行われる行為で僕の体は血だらけになり、内部は液体でドロドロに汚される。意識があるのかないのか・・・痛みだけが体に響く・・・あとどれぐらい・・・・助けて・・・だれかたすけて・・・
何日もぐったりしてようやく起き上がれるようになった頃、僕はこの家の主人の命令で広い客間に連れて行かれた。僕のような奴隷など滅多に入れない部屋、中には見たことのない人がたくさん椅子に座っていた。きらびやかな衣装を身につけているが普通の人とはどこか雰囲気が違う。僕は思わず身を縮めた。
「やはり噂は本当だった」
「これだけの子は後宮の中にも、いや国中捜しても滅多にいない」
「なんて美しく神秘的な青い眼をしている」
ひそひそ声が聞こえ、僕は顔をそらした。そらしながらも彼らの顔をもう一度よく見る。どこかおかしい。顔は男の顔なのに、声が異常に高く、目を閉じて聞いていれば女の人が話すのを聞いているようだ。
「これだけの奴隷、さぞ気に入るに違いない。すぐに後宮に差し出せ。褒美は望むだけやろう」
「お待ちください。この奴隷は私の一人息子と同じ年齢、今年14になったばかりで、息子がたいそう気に入っております。どうか後宮に差し出すことだけはご勘弁ください」
「何をいっておる。服を脱がしてよく見せろ」
僕の薄い服はたちまち取られて丸裸にされた。
「まだ去勢はしていないのか。だがこの体中に残る傷跡・・・何が息子のお気に入りだ。高い金を取って客人の相手をさせているともっぱらの評判だ。まだまだ稼げるから差し出すのが惜しくなったのだろう。王の命令だ。その奴隷をただちに去勢し、10日以内に王宮につれて来い。もしできなければ、この家の者、すべての命はないと思え・・・」
「お待ちください・・・この奴隷は体も弱く、去勢などしたらきっと死んでしまいます。どうかご勘弁を・・・」
「もし死んだらそれはその時のこと。いいな、10日以内だぞ。その時までに用意をしておけ。10日後に迎えにくる。よいな、これはここにいる宦官からの命令ではない。王の命令だ」
「かしこまりました」
きらびやかな衣装を着た異様な人たちは出ていった。
「こうしてはいられない、すぐに去勢するのにふさわしいところを捜せ。彼は決して家から出すな。いいな」
家の主人はすぐそばにいる奴隷にこう命じた。僕にはなんのことだかまだよく理解できなかった。言われるままに服をつけ、いつも自分が寝ている小屋へと戻った。
「ジャレッド、いるか、話は聞いた。すぐに一緒に逃げよう。もう準備はしてある」
コリンが僕のいる小屋にきた。
「静かに・・・見つかったら俺が罰を受ける」」
「すまない、お前には気の毒なことをしようとしている。ジャレッド、お前自分が何されるかわかっているのか。去勢されて後宮に連れて行かれるんだ。そんなことさせはしない。すぐにここから逃げよう」
「でも、10日以内に行かないとみんな殺されるって」
「お前、自分が何されようとしているかわかってないな。後宮に連れて行かれるってことはその前にここを切られるんだ」
コリンは僕の股の間を触った。
「え、まさか・・・そんな・・・」
「まさかじゃない・・・あの使者達をお前も見ただろう。彼らは王宮にいる宦官でみんなここを切られている。つまりもう男じゃないんだ。お前にそんな酷いことをして連れていくなんて、そんなの許せない」
「でも今僕が逃げたら・・・・」
僕は見張りをしている同じ奴隷の者の顔を見た。
「ジャレッド、俺のことは気にせずにお前は逃げろ・・・そう思って彼に話した。お前がずっと稼いでくれたから俺達他の奴隷は今まで楽をしてこれた。お前はずっと大変な思いをしてきた。生まれてから今までいいことなんて一つもなかっただろう。それなのにこんなことで酷く痛い思いをして死ぬなんてあんまりだろう」
「まだ死ぬと決まったわけでは・・・」
「3人に1人は死んでいる。そうじゃなくてもお前は今までずっと酷い目にあって・・・助けてやれなくて悪かった・・・俺にはどうすることもできなかった・・・・だから逃げろ・・・俺のことは心配するな・・・そう簡単に殺したりはしないだろう」
「でも・・・」
「ジャレッド、俺と一緒に逃げよう。ずっと前から考えていた。俺が大人になったらここを出てお前と二人だけで生活しようと・・・それがちょっと早くなっただけだ。ここを出て一緒に暮らそう・・・あの時と同じように・・・・」
「あの時と同じように・・・・」
「そうだ、お前はよく覚えているだろう。俺達が洞窟で暮らしていたあの頃のことを・・・・ずっと捜してやっとめぐり合えた。もうお前を決して離さない。さあ、行こう」
「コリン・・・」
「早く行け、他のやつがここに来たらもう逃げられなくなる。お前はもう充分苦しんだ」
彼は僕の体を抱きしめた。傷跡に触れられ、小さな悲鳴を上げた。
「まだ、体が熱い・・・・ずっとこんな思いをして・・・・早く行け・・・・幸せになれ・・・二人で暮らして・・・幸せに暮らしてくれ・・・」
「ジャレッド、行こう」
コリンは僕の手を引いた。外は真っ暗だった。闇に紛れて僕とコリンは住み慣れた家を出た。夜の街は静まり返っている。不安と新しい希望、僕はコリンの手を強く握り締めた。
−つづくー
後書き
前世での話です。今のジャレとはなんの関係もありません(笑)しばらく前世のまま話が続きます。
2006、5、19
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