(42)記憶の海に沈むもの
ジャレッド兄弟を2人きりにするため、俺はイーモンと外を歩いた。アイルランド国内では俺の顔と名前はかなり知られている。それでも兄貴と2人、街をブラブラ歩いて適当にカフェで休んでも誰も声をかけてこないのがうれしい。2人ともサングラスをかけているので、今はプライベートな時間だと理解してくれるのだろう。店の奥の目立たない席に座り、コーヒーを注文して一息入れた。俺が煙草を口にくわえると、それほどヘビースモーカーでない兄貴も吸い出した。
「ついに体験してしまった」
「おめでとう、よかったじゃないか」
「お前、どうしてそう明るい顔であっけらかんと言えるんだ。実の兄弟が、男と体験したと話しているんだぞ」
「兄貴が女と体験したと聞けば驚くけどさ、今更男との話を聞いても何も思わない」
「向こうは初めてだった」
「そりゃ、ストレートな人間なら初めてだろう。ジャレッドもそうだった。まあ、慣れればそういうヤツの方が喜ぶかもしれないが・・・・」
「俺はあの人の人生をメチャクチャにしてしまったかもしれない。こんなことがなければ、普通に結婚して幸せな家庭を築いていたかもしれないのに・・・・」
「兄貴にとってそれがベストなのか。好きな相手が普通に結婚して幸せになってくれればそれでいい。だが、本当にそうか?もちろん大部分の人間は普通に結婚してそれで違和感は感じない。だけど俺達のように同性にしかパートナーを見出せない人間もいる。普通かどうかなんて関係ない。兄貴は彼が生涯のパートナーだと確信したんだろう」
「俺がそう思っても、向こうがどう感じているのか、本当のところはわからない」
「俺だってジャレッドのこと一生愛せるかどうか自信はない。ただ、今はアイツと一緒にいて楽しいし、sexの相性も最高だ。二人で刺激し合い、歴史上の人間に生きた感情を注ぎ込むという目的もある」
「お前、もうすぐキャンプに入るんだろう。自信はあるか」
「あるもないも俺以外にあの役ができる人間はいない。相当鍛えられると思うけど・・・・」
「それだけ自信があれば大丈夫だ」
「兄貴はこれからどうする?」
「もし、シャノンの都合がよければしばらく一緒にアイルランドを旅したい。やっぱり俺はアイルランド人なんだよな。別に何があるというわけではないけど、国に戻っている時が一番落ち着く。目の前いっぱいに広がる麦の穂を揺らす風、パブの賑やかな話声、そんな感覚を二人で共有し、俺のことをもっとわかってもらいたい」
「うらやましいな。俺達はこれからキャンプ場で目一杯しごかれるという時に・・・・」
「二人ならそれも楽しいだろう。どんな過酷な状況でも一緒にいるだけで幸せを感じる、それがパートナーだ」
「兄貴に言われなくてもわかっている」
充分時間を潰してから俺達はホテルへ戻った。四人で夕食を食べ、それからまた別々の部屋に別れた。もちろん兄弟で同じ部屋というのではなく、それぞれのパートナーと一緒である。
「ああ、いい、ジャレッド、お前もうまくなったな」
「うまくやらないと、痛い思いをするのはこっちだ」
広いダブルベッドの上、裸で仰向けになって寝た俺の上に、同じく裸のジャレッドがまたがった。膝をついて俺のものをくわえれば、ヤツの扇情的な尻が俺の顔のすぐ上にくる。明りは暗くしてあるが、こんなものを目の前で振られ、敏感な部分を口に入れられては何もしないうちに全部吐き出してしまうおそれがある。俺は目を閉じ、舌だけ口の外に出した。
「ふうーん・・・・ああー・・・・・うふーん」
ジャレッドの甘い喘ぎ声に気をよくした俺は固く目を閉じ、舌先に感じる場所を犬のようにしつこく舐めた。
「ここがいいのか」
「少しずれている」
「嘘つけ、お前は全身が性感帯だろう。幸せなヤツだ」
「ああー・・・・ふうーん・・・・ふう・・・・なんていうか、もうちょっと下、下の方・・・・」
「こんなに感じていながら贅沢言うな」
俺はさらに舌を突き出してジャレッドの体を嘗め回した。どこに舌が触れているかはわからない。声の出し方でよほどよい位置にきているのがわかる。
「俺、自分で入れてもいいか」
「ああいいよ、好きにしてくれ・・・・・ちょっと待て、自分で入れるって・・・・」
慌てて目を開いて頭を持ち上げると、ジャレッドの体は俺の大事なものの真上に来ていた。手で掴まれ、硬くそそり立った俺のものは先の方からドロリとした液体が滲み出た。
「これなら大丈夫だろう。でも、お前のは特別だからな。大きさも硬さも人間のものとは思えない。馬並みだ」
「お前、他のヤツのを見たことがあるのか」
「ねえよ、馬ならあるけどさ。絶対これはそれぐらいある。だから俺はいつも死ぬほど痛い思いをして・・・・他のゲイのヤツらはそれほどじゃないだろう」
「いやならやめろよ」
「俺はマゾだから」
ジャレッドは俺の腰近くに足を置き、ゆっくりと膝を曲げた。後ろ向きなので顔は見えない。今この瞬間にもどれだけ男をそそる扇情的な顔をしていることか。長く伸ばした髪が揺れ、ジャレッドの興奮した臭いを俺の鼻まで運んでくる。つかんだ俺のモノを突きたて、まさにその上に体を沈めようとしている。
「ああー・・・・うわー・・・ひいいー・・・・」
悲鳴は大袈裟だが、先端が尻に触れているだけで、少しも中には入っていかない。俺は笑いを噛み殺した。
「何やっているんだ。少しも入ってないぞ。やっぱり俺が入れてやろうか」
「お前のは特別大きいんだ!なんとかうまくダメージを受けない方法を考えないと、キャンプの時俺が困る!お前とやって尻が痛いから今日は休ませてくださいと監督に言えないだろう。だからこうして一生懸命・・・・・」
「はははは・・・・それなら頑張ってくれ。俺は何時間でもつきあうからさ」
「おもしろがるな!大体お前が馬並みではなく人並みだったら、俺はこんな苦労をしなくていいのだぞ」
「馬並みで悪かったな。お前の兄貴だって今頃は苦労しているさ。馬並みの兄弟だから・・・・」
「黙っていてくれ!集中して気合を入れなければいけないんだから。自分で調節すれば、俺の体はそれほど傷つけられない」
「もう慣れたんじゃないのか。俺達今までにどれくらい愛し合った?」
「慣れるわけないだろう!俺はその度に拷問されるか殺されるほどの苦痛を味わってきた。何か方法はあるはずだ。そうじゃなきゃ、今まで長い歴史の中でこんなにたくさんのゲイが出るわけない」
「普通の男はもっと小さいから大丈夫なのさ。お、ジャレッド、またやる気になったか」
「黙ってろ・・・・ふうー・・・・」
再びジャレッドは俺のモノを掴み、後ろ向きのまま腰を落として挿入を試みていた。時間はかかるが、ジャレッドのそんな官能的な後ろ姿を見るのも悪くはない。
「ああ、・・・・・ふう・・・・くそっ・・・・お前マゾだろう。いい加減覚悟を決めろよ。・・・・ああー・・・・ひいいいー・・・・うわああー、や、破れる・・・・だめだー・・・・・ぎゃあー・・・・やい、コリン、勝手に動くなよ」
「お前、男だろ。今更何が破れるんだよ」
俺は笑いを堪えるのに必死だった。マゾでありながら大袈裟なジャレッド。それでも俺が少し腰を動かしたから無事俺のモノはアイツの穴にすっぽりとおさまった。後ろ向きで俺の上に座ったジャレッドは口を閉じ、ピクリとも動かない。
「おい、ジャレッド、少しは動けよ」
「痛いんだよ・・・・ああー、体が貫かれたようだ。・・・・昔の人間も同じ痛みを味わった」
ジャレッドはゆっくり上下に動いた。そのあまりの気持ちよさに今度は俺が喘ぎ声を漏らした。
「感じるのか、俺も少しは慣れてきたようだ。この痛み、確かに俺は記憶しているよ。前世で、俺はお前に抱かれて幸せだった。でもその時は長くは続かなかった。
立ち上がって一度俺から体を離すと、胸の上に抱きついてきた。ジャレッドの目に涙が光っている。俺はジャレッドを下に寝かせ、足を開いて俺のモノを差込み、胸を合わせて強く抱いた。
「お前とこうしていた記憶がある。前世で、俺はヘファイスティオンが書いたものまで見つけた。それなのに何が書いてあったか、肝心なことが思い出せない」
「二人の関係は単なる親友という枠を越えていた。身分も立場も何もかも忘れ、互いを求め愛していた。俺の上にしゃがんだお前はまるでヘファイスティオンが乗り移ったかのようだった。彼はただ素直に王に愛されただけの人間ではない。時には他の側近と激しく争い、友人を拷問にかけ、処刑したこともある。それらすべてのことをしてもいいと思うほど、彼はアレキサンダーを愛していた」
「俺、確かにそれを読んだ記憶がある。今の俺ではなく、ずっと前の俺が・・・・・そんな記憶が言葉にならずにたくさん漂っている。海のように広い中から、沈んだ言葉の一つ一つが俺に救い出されるのを待っている」
「・・・・・・・」
「前世の俺は、絶望の中で彼の書いたものを救いとした。その記憶は確かに俺の中にある。それなのに言葉でうまく説明できない」
「いいじゃないか。言葉でうまく言えなくても、お前の記憶の中にそれは確かにある。それだけで充分だ。これからロケ地に行けば、また何か新しく思い出すかもしれない」
「キャンプやロケ地では、こうやって抱き合ってもいられないだろうな」
「俺はやる。俺から煙草とこういう楽しみを奪ったら、何もやらなくなる」
「無理するな。主人公がそんなに我がままでは、監督が大変だぞ」
「アレキサンダーはそういう人間だ。強引で我がままで、時には酷く残酷な面も見せている。それでも多くの人間を魅了し、広大な世界を駆け抜けた。よほどのエネルギーがあったはずだ」
俺は少し腰を浮かし、ジャレッドの体の奥に向かって自分のモノを激しく叩きつけた。
「うわー・・・・ちょっと待て・・・・ぎゃあー・・・・痛い・・・・・ああー・・・・・」
「お前は大袈裟だ」
「お前が大き過ぎる!・・・・・ああー・・・・無理だ・・・・・破れる・・・・」
「お前の中の膜は今までに何度破れた?」
「ああー・・・・ひいいいー・・・・・」
のたうつジャレッドを押さえつけると俺の野生の血が騒いだ。昔、獣を獲って暮らしていた時代の記憶も蘇る。血の臭い、真っ暗闇となる夜・・・・様々な記憶を呼び戻すかけがえのないパートナージャレッド。
「そんなに大変か?」
「・・・・・・・」
ジャレッドは口をパクパクさせる。もう悲鳴を上げることもできなくなったらしい。だが、その表情は恍惚感に満ちている。俺はなおも腰に力を入れた。体中を血と汗と精液が駆け巡り、今にも突き破って外に飛び出しそうである。
「ああー・・・・うわー・・・・」
ひときわ大きな悲鳴が聞こえ、ジャレッドのモノの先端から液体が溢れ出た。
「愛している・・・・どこにも行かないで・・・・ずっとそばにいて・・・・」
ジャレッドとは別の、もっとかん高い子供のような声が、すっと耳に入ってきた。
−つづくー
後書き
パートナー、久しぶりの更新です。物語を書くというよりも、少しずつ記憶の底にある言葉にならない感情を探っていきたいと思いながらもなかなかうまくいかないです。10月に大きな転換期があり、今までと同じようには話が書けなくなるかもしれないので、その前にまとまりがつくものは区切りのいいところまで書いて次に繋げたい考えています。といっても基本的に文体はあまり変わってなく、この2人は冗談ばかり言ってじゃれあっています。
2007、9、14
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