(43)記憶の断片
男同士のsexでは慣れるということはない。いや、普通のサイズだったらやがては慣れ、快感になっていくのかもしれない。だが、コリンのそれは普通サイズではないため、俺はsexのたびに拷問と同じ苦痛を味わうことになる。こんな苦労は俺だけだと信じている。でなければ人類が生まれてから今日までずっとゲイなどという関係が世界中で行われ続けるわけがない。国によってはゲイというだけで殺されるところもあるのだから、なおさらもっと快楽がなければ続かないだろう。
「ジャレッド、いつも思うけどお前本当に抱く前に神妙な顔つきをするな」
「当たり前だ。俺にとっては拷問だといつも言っているだろう」
「それが快楽に繋がるんだろう。お前はマゾだから」
「ああ、俺は世界一のマゾだよ」
兄貴は俺に男同士のsexだけは絶対止めろと忠告した。自分が男と関係を持ちながら弟にやるなということもないと思うし、実際俺は兄貴よりもずっと前からコリンと関係を持っていたのだが、シャノンはそれを知らない。知らないと言えばマットとトモが関係を持ったことも知らないであろう。いつの間にかバンドのメンバー全員がゲイになっていて、そうじゃないのは兄貴だけという状態になっていた。その兄貴がコリンの兄イーモンに愛を告白され、自分もその気になってしまったから話はさらにややっこしくなる。俺もそうだが、今までずっと普通に女とやってきたヤツほど、男との体験で溺れてしまう。兄貴もまたイーモンに夢中になった。まあ本人が幸せならそれでいいが、兄貴はバンドの中で自分一人がゲイでおかしな人間であると悩んでいる。悩む必要など何もないのに、なぜか俺もマットやトモも自分がゲイだとシャノンには告白できずに今に至っている。
「何ニヤニヤしている」
「いや、たまには俺がお前の上に乗って、自分で入れる角度や力を調整すればそれほど痛みを感じなくて済むかと・・・・もうすぐ撮影前の合宿だろう。お前とヤリ過ぎて尻が痛いから今日のトレーニングは休みたいとは言えないし・・・・」
「合宿中はやらなければいい」
「それじゃ、俺が我慢できない」
「なんだ、お前、拷問のように痛いんだろう」
「そうだけどさ、なければなくてどうも落ち着かない」
「じゃあ、試してみろ。俺はお前が相手ならどんなやり方でも満足できる」
「ああ、そうするさ。いいか、お前俺がいいと言うまで絶対に動くなよ」
俺はベッドの上で裸で大の字になっているコリンの上にまたがって、巨大なモノに舌をつけた。よく舐めて湿らせておけば、少しは痛みが軽減できる。
「ああ、ジャレッド、いいよ・・・・お前、舐めるのうまいな・・・・」
「自分の身を守るためだ。全くこんなモノが自分の体に入るのかと思うと、いつもながらゾッとするよ」
「本当にそう思うのか?お前の顔、うれしくてたまらないように見える」
「うれしいさ、俺はマゾだから」
充分にツバをつけてから、俺はコリンのそれを指で押さえ、自分の体の中に埋め込もうとした。穴の位置さえ合わせれば、後はひとりでに体の重みで中に入っていくし、それが受け入れる側が調節できて一番体に負担をかけないやり方であると何かの雑誌に載っていた。慎重に体を合わせて埋め込もうとするのだが、どうも思い切りよく入れることができない。
「なんだ、ジャレッド、ちっとも入ってないぞ。俺が手伝ってやろうか」
「よせ、やめろ、勝手に動くな」
「そうじゃない、それ!」
「うわー・・・・・あああー・・・・何するんだ!」
ふいに下から突かれて俺は悲鳴を上げた。男同士愛し合うのに使うのは体の中で一番敏感で神経が多く通っている。ちょっと角度が違い、摩擦を感じるだけでも死ぬほどの痛みが尻の先から頭まで突き抜ける。
「もういいだろう、俺がやってやる」
「少しは手加減しろよ。もうすぐ合宿が始まるんだから」
「口で言うことと顔つきが違う。お前はもっと強い刺激を欲しがっている」
コリンは立ち上がり、俺の両足を持ち上げて広げ、高く上げた。俺の男のシンボルも貫かれようとしている穴もコリンの目からは丸見えだ。何度も繰り返した行為なのに、俺の顔は赤くなる。
「兄貴達も近くにいるし、あんまり無理しない方がいいか」
敏感な場所にゼリーのチューブを押し付けられた。一瞬ヒヤリと感じたが、すぐに熱い指で中に押し込まれベタベタになる。
「ああー・・・・ぎゃああああー・・・・ぐわああー・・・・やめろ!・・・・・うわあああー」
自分のすさまじい叫び声が耳に響く。確かに俺はバンドのボーカルをやっていて人一倍声はでかいが、それにしてもこの声はどうだろう?
「ぐわああー・・・・・うわああー・・・・がああー・・・ふう・・・・・ああああー・・・・」
足を持ち上げられ、体を開かれて巨大なモノを突っ込まれれば、俺は絶叫し、獣のような叫び声を上げる。獣の咆哮と同じ声。人間が耐えられる痛みでないのだから、声も当然普通ではなくなる。マイクを持って歌っている時の声など問題ではない。本当の声は尻を突き破られた痛みから発し、体の内部を通って心臓を貫き、喉を潜り抜けて口から吐き出される。声に意味など必要ない。本当の声は、俺の歌はここから始まっている。
「ジャレッド、お前大袈裟過ぎないか?ちゃんとゼリーを塗ったぞ」
「お前のは特別大きいんだ!あああー・・・・・ひいいー・・・・」
「喉、大丈夫か?」
「俺の声は喉からではなく尻の穴から始まる」
「そうかもしれないな」
いっそう激しく貫かれ、俺はもう泣き喚いた。この声こそ本当の俺の声、激痛の中で例えようのない幸せと快楽を感じている。もっと強くやってくれ!俺の理性をズタズタに引き裂き、眠っている記憶を呼び戻してくれ!ああ、なんて気持ちいい、これこそ俺の求めていたもの・・・・・
長い1日が終わり、ようやく僕は自分の部屋に戻ることができた。今日もまた王の部屋へと呼び出された。僕の男のしるしは切り取られているのだから、そのことで快楽を感じるわけがない。その近くに手を触れられれば切られた時の怖ろしい痛みが蘇る。体に触れられ、挿入されて刺激を受ければ、体中の血が失われた僕の体の部分を目指して集まってしまう。痛い、ものすごく痛い、早くこんなことは終わって欲しい。でも僕は王の前で微笑み、感じている声を出す。お相手をして気に入られればたくさんの財宝がもらえる。どんなに素晴らしい宝石をもらっても、今の僕には何の役にもたたない。でもいつかこの王宮を抜け出してコリンのところに戻れるならば、きっと役に立つ。彼が普通に結婚していれば、もう僕を愛してはくれないだろう。それでもいい。彼の幸せを近くで眺め、少しでも役に立つことができれば・・・・そうじゃない・・・・彼に抱かれたい・・・・愛されたい・・・・気が狂いそうになる・・・・僕だけを愛して欲しい・・・・ずっと一人でいて・・・・お願いだから・・・・
「たった一人、こうして月を眺めていると気が狂いそうになる。今すぐにも王のところに行き、抱かれたい。私の望みはただ一つだ。たくさんの女や少年を与えられれば欲望は満たされるが、心が満たされることはない。みんな変わってしまった」
僕は古い本を読み出した。僕が読める文字で書かれた箇所は少ししかない。
「裏切り者の彼を、私はこの手で拷問にかけた。石打の刑にしろと強く主張したのも私だった。彼のことは子供の頃からよく知っていた。長い間一緒に学び、訓練を受けてきた仲間の一人だった。彼は目に涙を浮かべ、私に助けてくれと言った。お前の性格はよく知っている、きっと助けてくれると信じている、と言った。だが、私は彼を助けたりはしなかった。子供の頃から一緒に学んだ仲間ということが何の助けになる。あの頃はみな純粋に理想を夢見て生きていた。だが、今は違う。戦いに勝ち、莫大な財宝と領土を手に入れた今、かっての仲間が次々に反旗を翻してきた。その度に王がどれほど苦しみ、悩みながらかっての仲間を殺す命令を下したことか。少しの油断が全てを壊してしまう。彼らはもうかっての仲間ではない。常に行動を見張り、時には見せしめとして強い態度も必要だ」
難しい言葉もたくさん出てくる。僕はこれを完全に読むことはできない。
「目を閉じれば苦しげな彼の顔が浮かんでくる。せめて父に命令されてしかたなくやったと自供させ、命を助けようと思ったが、彼は最後まで父の関与を口にすることはなかった。あれほどの拷問でも彼は父親の名誉を守りぬき、たった一人で死んでいった。私の守りたいものはなんなのか?私は王の命と名誉、守りたいのはそれだけだ。ならば何を嘆いている。私のしたことは正しい」
わからない、彼は何をしたのか。
「私は正しいことをした。それなのにこの苦しみはなんだろう?彼の処罰が終わってから、王は私を避けるようになった。あれほど私を愛し、全てを打ち明けてくれたのに今では他国の奴隷である少年だけを天幕に入れている。私達側近には命令を下すだけになった。それがなぜだか私にはよくわかる。私達はみな同じ子供時代を過ごし、互いに理想を語り合って大きくなった。その思い出が今、私や王を苦しめている。昔の仲間の顔を見るのは辛いのだ。王は私の顔を見ることさえ辛いと感じている。遠くで見守るしかない。この心が狂いそうなほど愛を求めていても・・・・」
求めている、これを書いた人は誰よりも愛を求めている、僕よりもずっと・・・・何があったのか詳しく知りたい。この時代のこと、これに何が書かれているのか、もっと詳しく知りたい。
「おい、コリン、起きろ!」
「なんだよ、ジャレッド、いきなり」
薄れゆく意識の中で、俺はまた前世の夢を見た。何か本のようなものを読んでいたのだが、そこに何が書いてあったかはっきりと思い出せない。
「お前、何か覚えてないか?俺は前世でヘファイスティオンの書いたものを手に入れ、読んでいるんだ。もしあの後お前に会ったら、絶対何かしゃべっているはずだ。思い出せ!」
「いきなりなんだよ」
「すごい重要なこと書いてあったんだよ。それがヘファイスティオンなんだ。彼はただ王に愛され周りの人間には嫌われただけの人間でない。その愛はなんていうかな、もっとこうすごい壮絶なものなんだよ。そこが書いてあったのに、うまく思い出せない」
「そりゃ、アレキサンダーの人生だって壮絶さ、特にヘファイスティオンが死んだ後なんて、3日も狂ったように嘆き悲しんだっていうぜ。俺、そこまでの演技ができるかどうか不安だ」
「そんなの簡単だ。お前は俺が死んだ悲しみを前世で体験している。それを思い出せばいいさ。それより、俺の記憶、うーん、あの本が見つかればいいのだけど、なんかお前の家に古い本とかないか」
「ジャレッド、俺はお前のこと頭のいいヤツだと思っていたけど、どうやら間違いのようだ。前世に持っていたものが、今の俺の家にあるわけないだろう」
「あ、そうか・・・・・ああ、どうしてこう曖昧な記憶ばかり出てくるんだ!」
「思い出して欲しいんだよ。前世のお前が・・・・」
「だって、もう急がないと撮影が始まってしまう」
「いいじゃないか、撮影が始まっても終わるまでには何ヶ月もかかる。ロケの最中にまたその土地で何かを思い出すかもしれないしさ」
「ああ、お前はいいよ。歴史上有名な人物だから資料は山のようにある」
「そのかわりイメージを壊さないようにするのが大変さ。有名な英雄だからみんなイメージを持っている。だが、俺はそんな絵に描いたような英雄を演じるつもりはない」
「どんなふうに演じるつもりだ?」
「俺のようにマザコンでゲイで狂気をもっていてエキセントリックで、それでもものすごいパワーとカリスマ性をもって世界を駆け抜けた男をやる」
「おい、ゲイなんてはっきり言っていいのか」
「あの時代、それは常識だろう」
「ああ、そうだった・・・・ああ、それにしてもお前、また思いっきりやったな。叫び過ぎて喉が痛い」
「本当の声は尻の穴から生まれて心臓を貫き、喉を通って口から出る」
「なんだ、そりゃ」
「お前が口走っていた。なかなかの名言だ」
「そんなことを言った覚えはない」
「きのう言ったことを忘れるヤツが、よく前世の記憶を覚えているな。まあ、お前といると本当に楽しいよ」
コリンはニヤニヤしている。俺はまたsexの最中に何か口走ったのだろうか。
「しょうがねえだろう。お前のが馬並みに大きいからだ」
「そのおかげで、お前はいろんなこと思い出し、思いがけないことを口走る」
「ああ、感謝しているよ。お前は本当によく俺を常識から解放し、知らない世界に導いてくれる。最高のパートナーだ」
そう言って俺も笑った。朝日がまぶしい。俺達はいつもこんなことをしている。
−つづくー
後書き
この話もずいぶん長く続いてしまって、その間にバンドのメンバーやジャレさんの雰囲気も随分変わったのですが(太くなったり痩せたり)この話では撮影前ということで前の登場人物のまま書いています。RPSは実際にはどんどん俳優さんの状況は変わってしまい、流行を追いかけるのができない私には苦手な分野なのですが、最初に感じたイメージを大切にして書き続けたいと思っています。
2007、9、26
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