ロード・オブ・サッカー(19)
この章は左の絵よりリンクしてある選手紹介ページを参考にして
ごらんください。
ゴート国で一番豪華と言われているロイヤル第一ホテルで、華やかなパーティーが行われていた。だが集まった者は皆真剣な表情で、いつもなら真っ先にビールを飲むジョンリスやオーランド、そして食いしん坊のドミニクやビリーまでもが何も食べずに待っている。普段国賓を招いてのパーティーで忙しく、サッカーチームのパーティーや合宿にはほとんど顔を出さないノーブル氏と二人の息子、ショーン、デヴィッドも参加している。このパーティーはアニマル国ワールドカップに出場するゴート国の代表選手が発表される会場でもあった。たくさんのカメラマンや新聞、雑誌記者がいつ発表されてもいいようにノートとカメラを構えている。ピーター監督が一段高い舞台に上がると会場の緊張は最高潮に達した。
「やあみんな、今日はいつもと違って随分緊張しているじゃないか。ドミニク、ビリー、もう乾杯は済んだんだから飲んでいいんだよ」
「いえ、代表の発表が終わるまでは・・・・」
ドミニクは緊張した顔つきで答えた。代表選手はあらかじめ決まっているようなもので、突然変わるのは2,3人ぐらいであった。でも自分はその突然降ろされる2、3人に入れられてしまうかもしれない。4年前のカップだって代表入りはしたもののビリーと2人ほとんどベンチで待っているだけだった。今度は補欠でベンチ入りすることすらできないかもしれないと彼は思った。4年前に比べ、いい選手はGリーグにも次々現われている。普段合宿などではみんなを笑わせ、和やかな雰囲気を第一に考えるピーター監督だってワールドカップに出場する選手だけはシビアに選ぶに違いない。
「それでは皆様のご期待に応えて発表します。あ、カメラマンさん、写真は選手名を読み上げている時ではなくて今撮ってくださいね。そうそう、このにこやかな顔の時に・・・いいですか」
ピーター監督はカメラマンに向かってポーズを作ったりしている。やっぱり自分ははずされるのかとドミニクは気が気でない。発表が終わったあとはまったくメンバーが入れ替わっていたりして、それで監督は先に笑顔の写真なんか撮らせているんだ、それならそうとさっさと発表してくれればいいのに・・・・
「どうした、ドミニク、顔色が悪いぞ」
「あ、ショーンさん、やっぱり僕なんか代表に選ばれるわけないと思って・・・」
「お前らしくもないな、最後まであきらめるな、俺がお前とビリーは特別に稽古をしてやっただろう。あれだけがんばったんだ。例え代表に選ばれなくても恥じることはない」
「そうですね、ショーンさんには本当にお世話になって・・・」
ドミニクとビリーはショーンが大好きだった。体も小さく下手な自分達2人相手の練習を本当によくやってくれていた。この人についてやれるところまでやったのだからもう十分じゃないか、そんなふうにさえ考えられた。
「では発表します。ゴールキーパーはイアン氏、これはもう間違いありません」
「ベテランイアン氏が10大会連続ゴールキーパーですか」
「今大会ではどんな魔法を見せてくれるのでしょう」
「いやー楽しみですね」
発表があると記者達は口々に叫んだ。
「D.Fはイライジャ、ノーブル氏、ショーン氏、デヴィッド氏の4名です」
「また今年も陽動作戦ですか?イライジャ君は敵の目にとまりにくいですからね」
「まあそんなところだ。派手な攻撃はオーランドとジョンリスに期待して、その隙にこっそりボールを運んでもらおうと思っている」
「期待しています。後の守りはノーブル家親子でばっちりですね」
「ええ、守りの固さにおいて、あの家族にかなう者はありません」
ピーター監督はにこやかに記者達と話をしている。だが少し離れた場所ではこんな声もささやかれた。
「おい、またノーブル氏が出るのかよ。まさかイアン爺さんと張り合って」
「爺さんは魔法使いだからいいけどさ、ノーブル氏はいい年だというのに・・・・」
「し、声が大きいぞ、相手はゴート国の執政だぞ。滅多なこと言うな」
「執政なんてしょせん王がいない間の代役に過ぎないだろう」
「だがその王が長いことゴート国では不在なんだから仕方がない。伝説の王が帰還するのはいつのことか・・・」
「代表選手の中に王家の血筋を引く者がいるという噂が・・・」
「それは本当か・・・・」
「誰にも言うな、おい、デヴィッド氏が振り向いたぞ。あの人は人の考えが読めてしまうとか・・・」
「同じ会場でめったなこと言わない方がいいな、また別の場所でゆっくり話そう」
「続いてM・Dにはキャプテンのヴィゴ、ヒューゴ、そしてドミニクの3名だ」
「ドミニク、よかったな、選ばれたじゃないか」
「はい、ありがとうございます」
本人よりも先にショーンの方が名前を聞きつけて祝ってくれた。その心遣いがたまらなくうれしい。だが・・・・ドミニクはビリーの方をそっと見た。彼は涙をこらえているようだ。無理もない、F・Wに選ばれる可能性はほとんどない。普段は補欠で十分などと笑っているが、ビリーだって本当は先発の選手に選ばれたいに決まっている。
「そしてF.W。カール、オーランド、ジョンリスの3名だ。先発メンバーは以上、後は補欠にビリー、マネージャーにサムを任命する」
「カール選手とは、最近Gリーグに入ったばかりの新人選手じゃないですか」
「ああ、新人だが彼の走りは素晴らしい。羊を追いかけて山の中を走っていたそうだから」
「またこん大会でもオーランド選手とジョンリス選手の得点争いが見られるのですね。どちらが得点王になるか楽しみですね」
「今大会はそれにカールも加わる」
「ゴート国、点が入りすぎて試合をつまらなくさせてしまうかもしれませんね」
「いや、相手国にも強豪ウルフ国がある。油断はできません」
「ウルフ国ですか、ウルフ国といえば、幻の天才ストライカーと言われたジャレッド選手がウルフ国に亡命したという噂があるのですが、それは本当でしょうか?」
「ジャレッドのことについてはここでは何も話せません。亡命となれば彼の行った先の国の政治状況、国家間の問題なども絡んできますから、彼もまた素晴らしい選手でした。命の危険がない国へ行っていることを祈るばかりです」
「わかりました。それでは監督と選ばれた代表選手の皆様、舞台に上がってください。一言ずつ感想などをどうぞ・・・」
新聞記者達は慌てて会場の入り口の扉を閉め、舞台の上へと選手を誘導した。そうでなければ発表が終わったと同時に帰ってしまう選手がいるかもしれない。4年に1度のゴート国最大の祭典、その代表が選ばれた瞬間の特ダネ写真は1人も欠けることなく全員そろったものをぜひとも撮りたいからである。
−つづくー
後書き
やっと選手発表です。これからグループリーグ、決勝戦と進んでいく予定ですが・・・・
2006、7、20
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