ロード・オブ・サッカー(2)
舞台 ゴート国、国立サッカー競技場
登場人物 カール(指輪エオメル)
デヴィッド(指輪ファラミア)
ヴィゴ(指輪アラゴルン)
オーランド(指輪レゴラス)
ジャレッド(大王ヘファイスティオン)
3月1日、この日ゴート国、国立サッカー競技場の近くの駅は大勢の人でにぎわっていた。毎年3月1日にゴート国プロサッカーチーム、略してGリーグの合同試験が行われ、国中からGリーグプレイヤーをめざす若者が集まってくる。選手志望の若者だけではない、いち早く今年活躍しそうな選手を見つけようとファンや雑誌記者まで集まり、大変な騒ぎである。何を隠そうこのゴート国では、執政とその息子二人までGリーグの現役選手として活躍しており、政界で活躍するにも歌手や映画俳優として有名になるにも、まずはサッカー選手として名前を売り出すのが一番と言われるほどサッカーが盛んな国なのである。
「すいません。国立サッカー競技場はどっちの方向ですか」
駅員に大声で聞いているのは、地方の村から出てきたばかりの若者カールである。
「ああ、サッカー場だったら1番のバス停から行って。大勢並んでいるけど臨時バスも出るから・・・」
「あんなに並んでいるんじゃ、いつ乗れるか、わからねえ!方角と距離さえ教えてくれれば走っていくからさ、どっちへ行けばいいんだ」
「東へ4キロの方角だ」
「東へ4キロか。わかった」
すぐにでも走り出そうとするカールの腕を掴む者があった。
「待ちたまえ、国立サッカー競技場まではまだだいぶある。受験者か」
「はい、受験番号103番のカールです」
「その番号ではすぐにでも試験は始まってしまうぞ。1時間前に受験者は集まるようにと説明書に書いてあっただろう」
「すみません、列車に乗り遅れてしまって・・・」
「いいわけはいい。急いでいるんだろう。俺も同じ場所へ行く。車に乗っていけ」
「ありがとうございます」
男の車に乗り込んだカールは驚いた。座席にゴート国代表のユニホームが無造作に置かれていたのだ。
「あの、あなたはもしかして代表のデヴィット選手では・・・」
「ああ、そうだ、確かに俺はデヴィッドだが・・・」
「ずっとファンだったんです。相手の動きを巧に読んで的確に守っているあのデヴィッド選手ですよね。俺、ゴート国代表が出ている国際試合、全部ビデオにとってあるんですよ。ずっと憧れていました。そんな有名な選手に会えるなんて夢のようだ。あとでサインをもらってもいいですか」
「いいけど、俺のサインを持っていても大して自慢にならないだろう。代表選手もみな今日は見に来る。キャプテンのヴィゴ、フォワードのオーランドにジャレッド、俺の親父は来ないけど兄のショーンだってくる。そっちのサインをもらった方がよっぽど友達に自慢できるだろう」
「そんなことないですよ。俺はディヘンダー目指していましたので、あなたの動きをいつも見ていました」
「学生のサークルとかにいたのか」
「いえ、俺のうちは牧場で、隣の牧場のやつといつも二人でサッカーやっていました。俺んちの納屋と向こうの家の納屋をゴールにして、まちがって馬や羊にボールを当てたらファール、イエローカードになって柵からのコーナーキックをやるんです」
「へー、牧場でのサッカーか」
人の心が読めるデヴィッドはとりあえずカールに合わせて話を進めたが、これは受からないだろうと確信した。自分も含めGリーグ選手になる人間はみな子供の頃からジュニアチームに入り、本格的な訓練をつんでいる。牧場で馬や羊にボールをぶつけないようになんてやりかたでボールをけっているやつが受かるはずはない。だが若者の夢を壊したくはないので、余計なことを言わずに話を聞いた。
「俺、サッカーが大好きなんですよね。ただもうボールを追いかけて走っているだけで幸せな気持ちになれて・・・親父にはしょっちゅう怒られていますけど・・・・家の手伝いもろくにしないでサッカーばっかり・・・・」
「そんなにサッカーが好きなのか・・・・」
サッカーばかりしていたというのはデヴィッドも同じだった。父に厳しく教えられ、1日に数時間は必ずサッカーボールをけっていた。だがそれを楽しいと思ったことは一度もない。Gリーグ選手になり、ゴート国代表選手に選ばれたことでやっと父や兄と同じスタートラインにつけたとほっとしただけだった。
「ほら、ついたぞ。これが俺のサインだ。他の選手のももらっといてやるから、終わったら代表控え室に来い」
「いえ、あなたのサインだけで充分です。これをお守りにして試験頑張ります」
「ああ、がんばれよ。じゃあな!」
カールはデヴィッドに礼を言い、競技場へ向かってまっすぐ走った。
「おい、キャプテン。新聞記者とか写真とっているぜ。いいのか、オーランドと並んで座っているとこ見られて・・・」
ジャレッドがヴィゴの隣に座っているオーランドを睨みつけながら言った。そう言っている間もこの二人はお互いに髪をなでたり、腰に手を回したりしてジャレッドを苛立たせる。
「かまわないさ、俺達の仲はとっくに公表されている」
「気になるんならジャレッド、お前別の場所から見ればいいだろう。席はたくさん空いているんだから、何も俺達二人の邪魔をしなくても・・・」
「邪魔するつもりはない。俺はホモじゃないから、男にはちっとも興味はねえ。ただ何百人もいる選手の中で、ヴィゴが注目する選手がいるかどうか、それだけが気になる」
「結果はどうせすぐに発表されるんだからそれ見ればいいだろう。向こうへいっていてくれないかな。そんなに睨みつけられたら落ち着かないよ」
「見られて困るようなこと人前でやるな!どうせ一緒に住んでいるんだろう」
「そうだけどさ、あ、ちょっと待ってヴィゴ・・・そんなとこさわったら・・・」
「勝手にやっていろ」
ジャレッドはこのオーランドがどうも気に入らない。同じフォワードで自分の方が遥かにストライカーとしての才能があるのにゴール数はだんぜんこいつの方が多いのはヴィゴがえこひいきをしているからだ。チャンスの時、必ずオーランドにボールを回してしまう。あの時俺の足元にボールさえあればと、何度悔し涙を流しただろうか。
「ジャレッド、俺は別にえこひいきをしているつもりはない。もちろんオーリーは世界中で一番愛しているけど、試合とプライベートはきっちり分けているつもりだ。試合の時には決して個人の感情は持ち込まない」
「これはプライベートな時間なのか」
「そうだ、別に試験を見に来いと強制されているわけではない」
「だけど、どんな選手が受かるか興味あるだろう。場合によっては来年の代表選抜にだって影響するかもしれない」
「ジャレッド、お前怖いのか。そうだよな、最近お前はまったくゴール決めてないからな、幻の天才ストライカーも今では・・・」
「なんだと、オーランド!よくも言ったな」
危うく殴り合いのけんかになりそうな勢いだったのをヴィゴが二人の間に入って止めた。
「雑誌記者が見てるぞ。こんなところでけんかでもしたら格好のネタにされる。お、少し変わった選手が出てきたぞ。103番カール、聞いたことない名前だな、あれ、あいつあんなとこからいきなりゴールを!・・あ、入った・・・まぐれじゃない!またあんな場所から・・・おい、見たか、あんな場所から立て続けに・・・大したキック力だ」
普段牧場でボールをけっていたカールにとって、国立競技場のサッカーコートはかなり狭く感じられた。ただ一度キックをすればボールはおもしろいようにゴールに入る。敵味方それぞれ11人ずつに分かれて試合を行うのだが、カールのいるチームばかりが得点を決める。もちろん勝ったチームにいるから合格するというのではなく、選手一人一人の動きを見て監督が一次予選通過者を選び、さらに一人ずつの試験が行われるのであるが・・・今年の合格者は7人であった。数百人の受験生の中、たった7人の合格者。かなりの狭き門である。その7人の中にデヴィッドが無理だと予想していたカールも含まれていた。
カールはやがてゴート国サッカー界に大きな旋風を巻き起こす。
−つづくー
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