ロード・オブ・サッカー(4)
舞台 ゴート国立公園キャンプ場
登場人物 ジャレッド(大王、ヘファイスティオン)
カール(指輪、エオメル)
ヴィゴ(指輪、アラゴルン)
オーランド(指輪、レゴラス)
ジョンリス(指輪、ギムリ)
イアン(指輪、ガンダルフ)
イライジャ(指輪、フロド)
サム(指輪、サム)
ビリー(指輪、ピピン)
ドミニク(指輪、メリー)
ピーター(指輪、監督)
今日は朝から天気もよい。春の日差しがぽかぽかと暖かい。ビリーはうきうきしながら貸切バスが置いてある集合場所に向かった。まだ誰も来ていないらしい。今日から1週間、ゴート国サッカー代表選手の合宿がキャンプ場で行われる。ビリーはいつも補欠で試合に出ることなど滅多にないのだが、それでも仲間と一緒の合宿はうれしくてたまらない。前日はなかなか寝られず、今日も1時間も早く集合場所に来てしまったぐらいである。続いてビリーと仲のよいドミニクがやってきた。彼もビリーに負けないくらい大きな荷物を持ってきている。
「おはよう、ビリー、僕が一番だと思ったけど、君の方が早かった」
「おはよう、ドミニク、随分大きな荷物だね。何を持ってきたの」
「今回は山のふもとのキャンプ場で合宿だっていうからさ、寒いといけないと思って着替えをたくさん用意してきた」
「コンビニとかもない山奥に行くんだろう。食料が心配だ」
「サムが1週間分、みんなの分用意して先に行っているだろう。僕達のこともよくわかっているよ」
「そうかなあ、この前の合宿で、君と僕が毎晩街に出て夜食を食べていること気づいてないよ」
「それは大変だ!何か買ってくる。まだ集合時間まで時間があるよな」
ドミニクはあわてて走っていってしまった。彼とビリーは体は小さいがよく食べる。合宿先のホテルで出される食事だけではとうてい満腹せず、いつも抜け出しては何か夜食を食べに行っていた。今回はかなり山奥に行くのでそれもできないらしい。
「おい、ビリー、その荷物はなんだ。まさかみんな食料じゃないよな」
キャプテンのヴィゴがやってきた。人一倍まじめな彼もまた集合時間よりかなり早めに集まる。
「そうだよ。だってキャンプ場の近くにはレストランとかないんでしょ」
「当たり前だ、まあ、食事のことはサムがしっかり手配してくれるから心配しなくていい。今回の合宿は不自由な生活をしながら仲間同士助け合い、チームワークを高めることが目的らしい」
「ねえ、ショーンとかデヴィッドも来るの?」
「残念ながら今回は都合が悪くて来られない」
「つまらないな、僕、ショーンに教えてもらいたかったのに・・・」
「向こうもいろいろ都合があるからな、あ、監督、おはようございます」
監督のピーターがカールを連れてやってきた。
「紹介しよう、今度新しく代表選手に選ばれたカールだ。ヴィゴ、君はこの前の試験見ていただろう」
「はい、素晴らしい脚力の選手がいると感心して見ていました」
「カール、キャプテンのヴィゴだ。選手としての力はもちろん、面倒見も抜群にいい。わからないことはなんでも彼に聞けばいい」
「はい、よろしくお願いします」
オーランド、ジョンリス、イライジャと合宿参加予定の選手が次々とやってきた。ドミニクも大きな買い物袋を抱えて戻ってくる。
「サムは先に行っているし、あと来ていないのはイアン爺さん、まあ彼は神出鬼没だから後からひょっこり現われるだろう。そのほかには・・・ジャレッド!ジャレッドはいるか?またあいつは遅刻か」
「あ、たぶん練習場だと思うので、俺ちょっと呼びに行ってきます」
「悪いなヴィゴ。面倒なことばかりやらせて・・・
「いえ、選手をまとめるのもキャプテンの役目ですから」
朝、荷物を持ったジャレッドはまず先に練習場へと向かった。集合時間までまだ1時間以上ある。合宿先ではどうせ1日中サッカーばかりやっているのだけれど、それでも少しでも時間があればボールに触りたかった。軽く柔軟体操をして、ランニングをしてからリフティングを始める。彼の足は自由自在にボールを操ることができた。少し慣れたところで今度は目を閉じてリフティングをする。目を閉じていても足の感触と音で今ボールがどこにあるかはっきり見える。目を閉じたままゴールに向かって蹴飛ばしても、ゴールの枠に当たって自分のところに跳ね返ってくる、何度続けてボールを枠に当てることができるか・・・・1回2回・・・おかしい、ボールが戻ってこない。
「ジャレッド!時間だぞ。早くこい!」
声が聞こえて慌てて目を開けた。ヴィゴがゴール前でジャレッドのボールを掴んで立っている。
「目を閉じたまま、ゴールの枠に当てるとは大した才能だ。だが集合時間を過ぎている。早くこい」
「あんたはキーパーじゃないだろう。俺の球だ。返してくれ。まだ続けてはできない。跳ね返る時微妙に角度がずれてしまうんだ」
「何言っているんだ!早く用意しろ。バスはもう出発するぞ」
「こんな朝早くから合宿所に行かなくてもいいだろう」
「今回の目的地は遠くだ。早く出発しなければ日が暮れてしまう」
「なんでわざわざそんな遠くまで・・・俺、不参加にしておけばよかったな」
「お前、合宿のしおりも読んでないのか」
「面倒だから表紙の集合時間だけ見ておいた。持ち物や場所はどうでもいい。どうせ遠征でしょっちゅう外国へ行っているんだ。荷物や行き先はどっちだっていい。俺はサッカーさえできればそれでいいんだ」
「お前のサッカー好きは認めるけど、早くしろ、みんな待っているぞ!あんまり協調性がないと代表からはずされるぞ」
「わかったよ。はずされるわけには行かないからな」
「監督、お菓子を食べてもいいですか」
バスが走り出すとさっそくビリーの声が上がった。
「食べていいですかって、君はもう食べ始めているだろう。少しの時間も我慢できないのか」
「はい、できません」
バスの中にどっと笑い声が広がった。
「練習中もか」
「練習中は食べないですよ」
「君も食べているばかりでなく少しは他の選手を見習って・・・・」
「見習っています。僕ヴィゴもショーンもオーランドも大好きだから、試合の時ずっと見ています」
うるさいやつだ、とジャレッドは思った。だいたいどうして俺の名前が出てこない。すぐ近くに100年に1度現われるかどうかというくらいの天才ストライカーがいるというのに・・・ヴィゴもショーンもオーランドも確かにうまいことはうまいし人気はあるが、でも天才と呼ばれるほどの人間ではない。今いくら人気があったって30年もして引退すればすぐに忘れられてしまうぐらいの技や技術しかもっていない。その彼らに比べて俺はどうだ。ゴート国にサッカーというスポーツがある限り、俺の名前はいつでも人々の口に上るだろう。ジャレッドのプライドと自尊心は限りなく高いものであった。
「あの、ジャレッドさんですよね。幻の天才ストライカーと呼ばれる」
幻は余計だ。俺はまだここにいる。だけど天才ストライカーという言葉の響きはなかなかいい。横を見ると見慣れない選手が座席を1つ空けただけのすぐ近くに座っている。
「初めまして、カールといいます。Gリーグ選手の試験に合格しただけでもうれしいのに、ゴート国代表選手に選ばれて合宿に一緒にいけるなんて夢のようです。よろしくお願いします」
「どこのポジションだ」
「俺、ディフェンダーかミッドがいいと思っています」
「だったらイライジャかドミニクを蹴落とせ。試験の時見た。お前ぐらいの実力があれば簡単に蹴落とせるだろう。その2人なら体も小さいし、大して役に立っていない。役立たずって言えばノーブル殿なんてその最たるもんだけど、昔の威光と執政の権限でなかなか引退してくれない」
「ジャレッド、そういう言葉を口にするな」
「はいはい、わかりましたよ、キャプテンヴィゴ、俺は本当のことしか言えくて、チームの和を壊すから大人しくしていた方がいいんだろう」
「そういうことだ。カール、席変わろうか」
「大丈夫です。俺、早く代表のみんなと仲良くなりたいから」
「俺はなりたくねえ、だけどキャプテンに嫌われたくないから寝ているよ」
バスは途中のお昼休憩をはさみ、長い時間かかって夕暮れのころやっとキャンプ場に到着した。先に来てテントを張っていたサムとイアン爺さんが出迎えにきた。
「ピーター監督、遅かったな。わしは待ちくたびれた」
「イアン爺さん!いつの間に」
「魔法使いと呼ばれるわしのこと。これくらいの場所を移動するのはわけのないこと」
「とか言って、きのうからここにいましたよ。監督、だまされないでください。もう日が暮れる。夕食の用意できてます」
サムが横から口を挟んだ。
「わーほんとうだ、いいにおい。ねえ、サム、きょうの夕食はバーベキューだね。いいマネージャーがいてくれて本当にうれしいよ」
真っ先に飛び出してくるのはビリー、続いてオーランドとジョンリスもバスから出てきた。
「素晴らしいところだ、森の湖を夕日が赤く染め、家路に急ぐ鳥たちのさざめき声がふりそそぐ。闇の森を一人さまよえば・・・・」
「オーリー、詩はいいから早く飯にしようぜ」
「イライジャ、顔色が悪いけど大丈夫か」
「悪い、サム、車酔いしたみたいだ。何も食べられそうにない」
「それなら後で何か消化のいいもの作ってもって行くよ」
「悪いな」
次々とバスから降り、最後にジャレッドが降りた。すぐにバッグからボールを取り出し、湖のすぐ側でリフティングを始めた。
「ジャレッドさん、みんなもう向こうに言っていますよ。行かないんですか?」
「今、いいところだ、俺に構わず先に行ってくれ」
「でも、みんな待っているようですよ」
「俺に構わず先に食べてくれ、とでも言ってくれ」
「でも、バーベキューが・・・・」
「なんだよ!うるさいな!」
ジャレッドは怒ってボールを手に取った。
「お前は何時間もバスに揺られてその後すぐ食事ができるのか。今日は何時間ボールに触れた?サッカーの練習なんてまともにできなかったじゃないか!何が代表選手の合宿だ!練習なんかいつもの場所で充分だ。俺にはきれいな景色もバーベキューも必要ない。ただサッカーさえできればそれでいいんだ!お前は1日ボールに触れなくても大丈夫なのか?俺は違う!いつもボールに触れていなければ不安になるんだよ。俺はサッカーを愛している。サッカーだけをやっていたい!ほかの事なんか考えたくもねえ、俺はサッカーが好きなんだよ」
「ジャレッドさん、俺もサッカーが好きです。一緒にやりましょう」
ジャレッドとカールの二人はみんなから離れ、真っ暗になってもまだパスの練習を続けていた。
−つづくー
後書き
仕事と昼食作りで細切れになった時間の合間に書いたこの話、話を作ることだけをやっていたいーという気持ちがこもっています(笑)なぜかカールとジャレッドが接近してしまったし、ど、どうしよう(汗)
2006、3、16
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