ロード・オブ・サッカー(6)

                      舞台 ゴート国立キャンプ場
                      登場人物 ジャレッド(大王、ヘファイスティオン)
                             カール(指輪、エオメル)
                             ヴィゴ(指輪、アラゴルン)
                             オーランド(指輪、レゴラス)

「俺はお前の球が欲しい・・・・・このまま幻の天才ストライカーという名前で消えたくはない・・・確実に俺に球を回してくれるパートナーが欲しい・・・・生きるために・・・俺が生きるためにサッカーが必要なんだ・・・・サッカーが・・・」

地面に座り込み、空を仰いで途切れ途切れに言葉を吐くジャレッドの姿をカールは美しいと思った。それは言葉ではなく祈りであった。カールはジャレッドの背中をそっと抱きしめた。彼は震えている。寒さのためではない。ありあまる才能を与えられながら、それを生かすことができない者の怒りであり、叫び声である。

「ジャレッドさん、ここは寒い。テントの中に入りましょう。俺はまだサッカーを本格的に始めたばかりです。でももし俺があなたに再び光を与えることができるなら、喜んでその役を引き受けます」

カールはジャレッドを抱きかかえるようにしてテントへと戻った。逃げる羊を追いかけて捕まえ、両腕でかかえて連れ戻していたカールにとって、人間を運ぶのはわけのないことであった。テントに入るとさっそくバーナーを取り出し赤ワインを温めた。

「飲んでください。ここは夜、かなり冷える。体が温まります」

ジャレッドは差し出されたワインを黙って半分ほど飲み、カールに返した。カールは残りを口に含み、ジャレッドに口付けした。

「口移しで飲ませてくれるのか」
「あなたにはそれが必用だと思ったから・・・・」
「よくわかったな、ずっと羊や馬を相手に暮らしていたんだろう」
「羊や馬と暮らしていたから人間がそばにいるとうれしくて、相手が何を望んでいるか、自然にわかるようになったのです」
「いい勘をしている。サッカーは言葉で伝えるのは間に合わない。ボールを受け取った瞬間、体が反応しなければならない。考えているひまはない。サッカーをやる時に、言葉はいらない」

ジャレッドはカールに口付けを返し、彼の体をまさぐり、足の間に手を伸ばした。固く立ち上がったそこは充分な手ごたえがある。早急に彼らはお互いの服を脱ぎ合った。ワインで温まった体は熱を帯びている。抱き合い、体を絡めてその熱を確かめあった。言葉は必要ない。今はただお互いの熱い体があればいい。ジャレッドはカールの太い指を誘導して自分の体の中へと押し込んだ。初めてのことだが、どうすればよいか体は自然に反応してくれる。軽い痛みと妙な違和感を感じたが大したことではない。これならいけるだろう。何も怖れることはない。たくさんの人間がやっていることなのだから・・・マットを敷いた狭いテントの中、四つん這いになった。手のひらとひざが小石にあたって痛い。マットを二重に敷いてあるのに感覚が研ぎ澄まされているためか手には土の感触がある。遠くからオオカミの遠吠えが聞こえる。湖のさざなみや星が流れる音まで聞こえる。目の前には小さなろうそくの光、それを吹き消すと何も見えない深い闇に包まれた。

「ジャレッドさん、いいですか」
「ジャレッドでいい」
「ジャレッド、愛している」

カールの囁き声が後ろから響いて体の中を通り抜けた。そして次の瞬間、ジャレッドは信じられない痛みに襲われた。余りの痛さに声も出ない。ひざは崩れ落ち、無意識に逃げようと前に体をずらすのだが、両肩をカールの大きな手でがっちり押さえられ、動くことができない。なぜ声が出ないのか。これは絶叫してもおかしくないほどのとんでもない痛みである。体が痺れてくる。意識を失いそうになっているのか。だが意識もしっかりしている。もし少しでも声が出せるなら、絶対イヤだ、もうやめてくれ!耐えられない、と叫んでいただろう。だが声は出ない。そしてそれはゆっくりと体の奥の方まで進んでくる。

「無理だ!・・・やめろ!・・・助けてくれ・・・やっぱり俺はゲイじゃない・・・・だめだ・・・痛い!・・・それだけは止めてくれ!・・・」

心の中であらん限りの叫び声をあげ、目から涙がこぼれ、体中から脂汗が出ているのに自分の叫び声はちっとも聞こえない。カールの荒い呼吸の音がやけに大きく聞こえる。オオカミの遠吠えも近い。あろうことかピストン運動まで始まった。もうだめだ・・・俺は死ぬ・・・もうサッカーなんてどうでもいい。

「ちょっと待て・・・俺は女じゃないんだ・・・そんなに激しく動くなばかやろう・・・ああー死ぬ・・・これは絶対死ぬ・・・無茶だ!二度とこんなことやらないぞ!・・・痛い・・・なんでこんなに痛いんだよ・・・ああー」

ジャレッドはもうわけがわからなくなって叫び続けていた。だがその声はカールの耳には喘ぎ声に聞こえる。

「ジャレッド、すごいよ・・・こんなに感じるなんて・・・ああ・・・まさかこんなにいいとは知らなかったよ・・・この世の中にこれほどの・・・・なんて素晴らしい・・・たまらない・・・あなたは本当に初めてで・・・・ああ・・・いい気持ちだ」

違う、俺は死にそうなんだ・・・痛くてたまらない・・・なんとかしてくれ・・・お前人の気持ちがわかるんだろう・・・・やめろ!無理だ!どうしてそっちの方角から・・・痛い・・・もう限界だ!・・・・たすけて・・・・死ぬ・・・なんか変な感じだ・・・俺は今気持ちよくなっているのか・・・・ああー死ぬー!





「ジャレッドさん、しっかりしてください。起きて下さい。もう朝ですよ」

カールの声でようやくジャレッドも目を覚ました。きのうのことは夢だったのだろうか。いや、夢でない。尻の穴がヒリヒリと痛い。

「ジャレッドさん、大丈夫ですか。俺つい興奮してしまって・・・あんなにいいとは・・・」
「そんなによかったか。俺もよかった。すげー気持ちよかった」

つい強がりを言ってしまった。きのうのことを思い出すと二度とあんな痛いことはしたくないと思う。そのくせ、もう1回やってみたいような複雑な気分だった。

「朝食を食べたら練習始めましょうね。俺、がんばりますよ。ジャレッドさんのためにも必ずボランチになっていい球をまわします」
「練習ってサッカーのか」
「そうですよ、俺、ジャレッドさんのように暗いところではボールが見えないんですよ。明るい時間にやっておかないと・・・」
「そ、そうだな。さっそく始めよう」

先輩の威厳を保つために笑顔で答えたが、この尻の痛さ、とてもサッカーなどできそうもない。ジャレッドはこんな相手を誘惑してしまった自分を後悔した。もともとカールはとんでもなく体力があってサッカーが大好きなやつだ。おまけに俺のこと天才ストライカーと認め、尊敬している。何もしなくてもいい関係を築けただろうに、なんでわざわざあんなことしたのだろう。もう絶対やるもんか。やらないぞ、あんなことは!





「ジャレッドさん、今日はどうも調子が悪いようですね。パスが随分はずれています」

当たり前だ、尻が痛くてそれどころじゃないんだよ。それでも笑顔でボールを蹴っている俺はなんて健気なんだろう。幻の天才ストライカー復活物語、神は俺に試練を与えるのが好きらしい。

「ジャレッドさん、危ない!」

大事なところにまともにボールを当てられ、俺はひっくり返った。あまりの痛さに今度こそ気絶したと思ったが意識はしっかりしている。もう俺の体はボロボロだ。前も後ろも大変なことになっている。こんなことしておきながら、カールのやつ何やっているんだ、俺のこと心配して助け起こしにこないじゃないか!と、思ったら目の前に手が現れたので握ってみた。ほっそりとした指でカールのとは違う。

「ジャレッド、君がボールに当たって倒れるなんて珍しいね。なんかあったのか?」

ほっそいとした指の持ち主はオーランドであった。試合でもないのに、かつらの金髪を風になびかせて優雅に微笑んでいる。

「なんだよ、オーランド、川くだりでお楽しみじゃなかったのか。なんですぐ戻って来た」
「僕はいやだったんだけどね。ヴィゴがどうしても心配だって言うから、先に戻って来たんだ」
「俺が新人いじめでもしていると思ってか、どうせ信用ないからな」

二人で話しているところにキャプテンのヴィゴもやってきた。

「ジャレッド、二人で仲良く練習していたようだな。カールの球の威力は大したものだ。お前が受け止められずに倒れるぐらいだから」
「ああ、あいつの球の威力は大したものだよ。キャプテン、すぐにあいつはあんたを追い越すよ」
「それは頼もしい」

ヴィゴはニコニコしていた。俺だって普通の時なら球に当たって倒れるようなことは絶対ない!ただ今は体の調子が悪いから・・・まあ、あんまりいろいろ言ってきのうの夜のこと突っ込まれても困るから黙っていよう。

「今から4人で練習を始めよう」
「あ、俺パス。昨日から腹の調子がおかしい。トイレいってくる」
「珍しいな、お前が体調崩すなんて・・・・」
「俺だって人間だから」

ジャレッドはみんなと離れ一人トイレへと向かった。なんだって俺がこんな目にあわなければいけないんだ!いや、これもサッカーの神が俺に与えた試練かもしれない。ならばこの痛みに耐えて練習を続けなければいけない。俺はサッカーを愛しているからどんな試練にも耐えられるはずだ!




                                             −つづくー



後書き
 あーあ、これでは完全にギャグですね。現代物をロマンチックに書くのは難しいです。
 2006、3、30



目次へ戻る