ロード・オブ・サッカー(8)
舞台 ウルフ国立サッカー競技場近くのバーと合宿所
登場人物 コリン(大王、アレキサンダー)
ブラッド(木馬、アキレウス)
ジョナサン(大王、カッサンドロス)
「コリン、今夜は俺のおごりだ。たくさん飲んでうさをはらせ」
「・・・・・」
「どうしてというような顔をしているな・・・お前の大変さは俺だってわからないわけではない。わかっているけどそれは見ないふりをしていなければ、こっちの身がもたない。せめてもの罪滅ぼしだ」
「罪滅ぼしだなんてそんな・・・あなたは素晴らしい選手です。代表に選ばれた時からずっと尊敬し、憧れていました」
ウルフ国立サッカー競技場近くのバーでブラッドはコリンと待ち合わせをした。5,6人しか入れない小さなバーのマスターはブラッドからの予約を受けるとすぐに表に「本日休店」の札を出した。
「俺達のために貸切にしてくれたんだ。たくさんの飲んでやらないとこの店が赤字になる。ここのマスターは口が固いから何しゃべっても大丈夫だ。いろいろ思うことあるんだろう」
「いろいろ気を使っているのですね」
「俺は少しでも外を歩けばすぐファンに取り囲まれてしまう。誰かと話すときでもこれは誰かに聞かれる会話なのか、そうじゃないか確かめてそれ相応の話をするくせがついてしまった。あ、煙草吸っていいぞ。煙草は肺に悪い、スポーツ選手は吸うな、などということは言わねえ。もっとも目立つ所では余り吸わない方がいいかもしれねえ。俺は人に見られない場所でしか吸わない」
「大変ですね」
「サッカー世界に彗星のごとくあらわれた期待のヒーロー、これが15年前初めて俺が代表に選ばれた時つけられた形容詞だ。彗星ということはどうせ長続きしないで一瞬光ってすぐ消えてしまうと思われたんだろう。ところがどっこい俺は15年間代表に選ばれ続けた」
「素晴らしいことだと思います」
「サッカー選手として一瞬輝くのは簡単だ。だがそれを維持するのは難しい。年々体力の衰えを自覚しながらそれでもファンは今以上のプレーを求めてくる。全力を出し尽くして戦い、試合の中に盛り上がる部分も無意識に作り、そして抜け殻のようになってようやく試合が終わったその瞬間、次の試合に向けてエネルギーを補給しなければいけない。さらに代表選手ともなれば試合だけではない。日常生活のあらゆる部分でファンの目が光り、英雄としてふさわしい行動をしているかチェックされる。サッカーの代表選手はスポーツ選手として己の技術を磨くだけではない。役者としてファンや観客が求める人物を常に演じなければならない。これほど過酷な人生はないかもしれない」
ブラッドはしゃべり終わると目の前に置いてあるグラスに入ったカクテルを飲み干した。コリンもそれに習い、そのあと煙草に火をつけた。
「一番大変なのはやっぱりブラッドさんだと思いますよ。後の人間は試合が済めばあとは適当なことをやっている。たったひとり理想とする選手がいれば、あとの選手は何をしていても気にしない、観客なんてそんなものですよ」
「本当にそうか、観客はお前のこともよく見ているぞ。キャプテンとしてどう動くか。私生活だってそれなりに監視されている。俺とエリックの争いも相当話題になっているようだけど・・・」
「その争いって百年以上前のものですよね」
「もちろんそうだ。エリックはどう思っているか知らないが、俺は今のあいつになんの恨みもない。だけどそれではドラマは生まれない。俺達二人が争ってそれでも同じチームの選手でいる。それこそが観客が求める筋書きだ。コリン、お前についてのシナリオもある」
「そんなもの書いている人がいるのですか」
「いや、あくまでも俺の推測だ。お前はキャプテンとしてチームメートに細かく気を使いながらも、私生活ではプレイボーイでいろいろな女優と浮名を流している。コリンに口説かれたことのない女優は一流ではない、などという話すらある。そのギャップがファンにはたまらない魅力なんだろう。本心は違うけどな」
「そうですね、確かに俺は意識していろいろな女優と浮名を流している」
「それもみんなあいつのためだろう。お前が本当に愛しているのはジョナサンだけだろう。だけどそんなことが噂になるわけにはいかないから、わざといろいろな女に手をだしている」
「その通りです」
「俺も適当にいろいろな女と付き合ってはいるが、それは表には出さない。英雄はその道一筋であんまり浮気っぽいと嫌われるからな」
「ブラッドさんのお相手は女だけで・・・」
「当たり前だ・・・俺はお前ほど体力がない・・・」
ブラッドは意味ありげな表情で笑った。
「お前は本当に体力があってうらやましいよ。今いくつだ?」
「29です」
「まだ20代か、俺も代表に選ばれる前は男との体験も多少あったが、今はだめだ。男相手は体力を使い果たしてしまう。それだけ与えても男は決して満足できない。ジョナを見てみろ、いつも砂漠でも旅しているような渇ききった目つきをしている」
「俺はあいつを愛して・・・」
「一生懸命愛して満足させてやっているというのだろう。それが相手が男か女かの大きな違いだよ。女は適当なところで満足してそれ以上やるとうっとうしく感じるだろうけど、男同士はそれが違う。異常なほどの快楽が得られる代償として、終わった瞬間にはまた次を求めて飢えと渇きに苦しまなければならない。ジョナは特にまじめでプライドも高いから他のやつとやることもできない。ただひたすらお前だけを求めている」
「そうなのですか」
「お、大分おそくなったな。もう帰れ、ジョナが待っているだろう」
「はい、あなたは・・・」
「俺も待っている女がいるよ。やたら強い女優だけど・・・・」
コリンとブラッドはバーを出てそのまま別れて歩いていった。
合宿所に戻るとまだサッカーコートに明かりがついていることにコリンは驚いた。ウルフ国の選手は監督がいる練習の時ですら必ず1人や2人さぼるやつがいる。親善試合が終わったばかりの夜わざわざ明かりをつけて自主練習をする選手がいるなど信じられない。だが、確かに人影が見える。サッカーコートに向かってひたすらゴールしている人間、それはジョナサンであった。
「なんだお前、自主トレをしているのか」
「ああ、なんだか急にやりたくなって」
「こんな夜中にか」
「俺はひねくれものだからな。誰もいない時の方がやる気が出たりする。相手チームがいると、どうもイエローを出させたくて自分のプレーを見失うことがある。たった一人なら俺とゴールの間には何もない。雑念が入らない分ゴールに入れることだけに集中できる」
「お前は試合中は雑念だらけだからな」
「せっかくストライクのコツつかみそうだったけど、お前が戻ってきたならしかたない。相手をしてやるよ」
「いや、お前、練習したいならもう少し続けろよ」
「あれも一種のイメージトレーニングだ。なかなかまわってこないチャンスに苛立ち、ジリジリと焦がれながらお前の方をじっと見つめ、やっとまわってきたお前の球を俺は足元で受け取り、そしてゴールへと解き放つ。よく似ているよ、あれとサッカーは・・・その一瞬の快楽の虜になってそれ以外の辛い時を過ごさなければならない。一瞬の麻薬のような瞬間のために・・・・
合宿所の狭いベッドの上で、ジョナサンはコリンの足のマッサージを始めた。幼馴染の彼がどこにどう触れれば感じて勃つかわかっていたが、わざとそのポイントをはずしてさすり続ける。自分の飢えと渇きは頂点に達している。だがそれをどこまでぎりぎりがまんできるか、それはコリンも同じであろう。だからなるべくポイントをはずして体に触れた。それでも触れられるだけでコリンのそこはたちまち勃ち上がり熱を帯びてくる。
「もうがまんできない。いいか」
「まだだ、まだまだ・・・・」
「お前の準備は・・・・」
「指はいらない、直接お前が突いてくれれば・・・」
そう答えるジョナサンは自分の体内の深淵から体液が滲み出るのを感じていた。このことをコリンには知られたくない。自分の体がいかに彼を待ち焦がれているかを・・・
「わー、よせ・・・やめろ!」
「なんだ、お前こんなにベトベトになって」
指を差し込まれるのを感じた。必死で逃れようとするが指は容赦なく奥の方へと侵入してくる。内壁を触れられるたびに体液は溢れ出し、びちゃびちゃと大きな音を立てているように感じた。ジョナサンは声を出さないようベッドの端を掴み、顔をシーツに埋めた。子供の頃からずっとコリンだけを見ていた。彼と同じジュニアチームに入り、同じハイスクールに通った。コリンが代表選手に選ばれた後すぐ自分も選ばれてどれほどうれしかったか、そして彼と初めて結ばれた夜、どれほど感激したか・・・だが同時にそれは彼の苦しみの始まりでもあった。プライドの高い彼は最愛の人の前ですら弱みを見せられず、自分がどれほど求めているか訴えたくはなかった。それなのに反応してしまう体が恨めしい。いっそうのこと渇ききった穴に差し込まれ、その痛みに耐える方がどれほど楽か・・・
「何をするんだ、人の体を弄んで・・・」
「いいだろう、お前のここはこんなに喜んでいる」
固く目を閉じ、体をよじって体液がにじみ出るのを押さえようとするのだが、それは意思とは関係なく溢れ出る。そして充分な体液で溢れた体にコリンのものは差し込まれた。
「ああー・・・ふうー」
どれほど慣れ、体液で濡れていようとも挿入の瞬間には激しい痛みに襲われる。だがそれもすぐに慣れ、喘ぎ声が漏れそうになる。再び掴む所を捜して必死に掴んだ。痛みによる叫び声はもらしても、喘ぎ声は聞かれたくなかった。
「感じているんだろう、声をだせよ」
「別に俺はこんなことどうってことない。ただお前が女とできない夜に欲求不満にならないよう体を貸してやっているだけだ」
「そうかい、では思う存分貸してもらうよ」
ゆっくりとした動きで体液が滲み出している時も、激しい動きで悲鳴をこらえている時も、これほどの快楽は他の事では決して味わえないだろうとジョナサンは思った。麻薬などはまだ経験ないが、麻薬など比べ物にならない、この世の中にこれ以上の快楽があるわけがないだろうと思える。この瞬間が永遠に続いてくれれば・・・・
「もういきそうだ・・・」
「俺はまだだ・・・まだいけない・・・・」
「もういいだろう・・・あ、だめだ・・・」
コリンの動きがひときわ激しくなり、体内に性液が吐き出されたのを感じた。そして結びついていた体は二つに別れ、それぞれ別の人間になって体を清めた。ひととおり済むとコリンはすぐにベッドに倒れ込み寝息をたててしまう。
「お前はいいよな。俺は永久にいくことはできない・・・・離れた瞬間にはまた次を求めてしまう・・・・」
裸のまま寝てしまったコリンの背中に触れ、ジョナサンはつぶやいた。
−つづくー
後書き
コリジョナです。あんまり見かけないけど、アレカサ、カサヘファ、コリジョナとジョナカッサンは誰と結び付けてもそれなりに美しく情熱的になりそうです。もちろん基本はアレヘファ、コリジャなので、はやくジャレをこっちの国につれてこなければいけませんが・・・・
2006、4、20
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