メッセージ(2006、5、29)

その一言に対する反応は予想以上に大きかった。最近はそうした話を題材にした映画がアカディミー候補になったり、大物俳優が次々とカミングアウトしたりしているから、そう騒がれることもないと思っていたのだが・・・まあいいだろう、それが目的で発言したのだから・・・

自宅にもどって数時間うとうとした。きっとあいつから電話があるだろうからぐっすりは眠れない。それにしても遅い。アメリカとヨーロッパで時差があることぐらい知っているが、今はそんなこと関係なしに、世界中にニュースは広まってしまうんだろう。だったら早く反応してくれよ、仕事中か、それともデート中、どっちでもいい、電話する時間ぐらいあるだろう。だんだん眠くなってきた・・・あいつも時差を考えて電話をかけるぐらいの常識を身につけたか。もうすぐ30だからな。





「おい、ジャレ、起きているか」
「今、こっちは何時だと思っているんだ!とっくに寝ている時間だ」
「ああいう発言をしておいて、よくぐっすり寝られるな」
「ちゃんと取り消しておいた。それにお前の名前は一言も出してない」
「名前を出さなくたって相手が誰か、いろいろな話が流れているぞ」
「どんなの話が流れている」
「やっぱり俺が圧倒的に多い。お前、映画公開の時もとんでもない発言をしていただろう。もしベッドシーンがあれば世界最高のシーンになっていただろうって・・・・」
「本気でそう思っているさ、俺とお前なら・・・」
「あの時はジョークということで決着はついたけど、今回はもっと広がるぞ。俺だけでない、今までの共演者、バンドのメンバー、果ては兄弟説までいろいろ出て大騒ぎになっているぜ・・・」
「へー、バンドのメンバーや兄貴までもか・・・」
「笑い事じゃない、お前今いくつだ?ああいう発言をしてジョークですまされる年齢か?これからの仕事のこと、バンドのこと、全部ひっくるめて考えて発言しているのか?」

あいつの声は興奮してきた。冗談ばっかり言っているやつの真剣な声・・・映画での共演以来かもしれない。演技のため、そう言い訳して初めての経験をした。撮影が終わった後も何かと理由をつけてあいつがやってきたので俺も相手をしていた。俺もあいつもひどく不安だった。これ以上はないと思えるほどの演技をしたのに映画はめちゃくちゃに叩かれ、その苛立ちを理解しあえるのは共演した仲間とあいつだけである。俺達は冗談ばかり言いながら抱き合い、本心は互いにすら見せずにいた。全てをジョークで片付けた。だからこそお互い仕事が忙しく住む国も違っているのに長続きしたのかもしれない。

「おい、ジャレ、聞いているのか。お前は俺と違ってそういうキャラで売り出しているわけじゃないだろう。おまけにお前の住んでいるアメリカはいろいろな宗教、人種がある。身の危険とか考えないのか!」
「コル、お前の怒鳴り声いいな・・・今酔ってないだろう・・・」
「当たり前だ・・・こんな気分の時酔えるか」
「何をそんなに怒っている。お前なんてもっとすごい発言があるだろう。どっちでもいい、なんていうこと言ったり、ビデオが流れたり、隙が多すぎる。もう慣れたからいちいち忠告しないけど、本当はハラハラしているんだ。お前の住んでいる国だって100パーセント安全とは言えないし、アメリカにもしょっちゅうきている。もう少し考えて行動しろ。もうすぐ30だろ・・・・」
「ジャレ・・・・」
「少し早いけど誕生日おめでとう。お前も俺も自分が思っているよりもずっと世間から注目されているんだ。俺の発言でよくわかっただろう」
「お前、そのためにわざわざ・・・・」
「そんなわけないだろう、新しいネタを提供したいだけさ。そろそろ体型も元にもどってそっちのネタが使えなくなったから・・・もういいだろう、電話を切るぜ」
「わかった、あと2、3時間後にはそっちに着く」
「おい、お前今どこにいる」
「お前と同じ空の下さ。あんな言い方して、俺がそのまま我慢できると思っているのか」
「気をつけてこいよ・・・見つからないように・・・あれはジョークなんだから・・・」
「わかっている、俺ももうすぐ30だ。少しは常識というものがわかるようになってきた」
「それならいい・・・・早く来い・・・・まっている・・・・俺は気が短いんだ、早く来いよ・・・・・・愛している・・・」

あいつもそうとう気が短い。俺の言葉を最後まで聞かずにさっさとケータイを切ってしまう。まあいい、数時間後に俺達はまた冗談を言いながらベッドで戯れているのだから・・・・俺からのメッセージ、あいつはどこまで本気で聞いてくれたのだろうか?


                                                 −おわりー



後書き
  問題発言を受けてのショートストーリー、もちろんこれもフィクションです。



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