18、ドラゴンとの対決

僕とゴントはドラゴンの背に乗り、空を飛んでいる。夢のような素晴らしい景色だが、油断はできない。ドラゴンは高度を上げ、体を螺旋のように回転させながら空を登っていく。そうかと思うと急降下、まっさかさまに落ちていき、山にぶつかる直前で体をかわす。振り落とされないようにしがみついているのが大変だ。風が強くて寒くてたまらない。つかまっている手はかじかんで凍りつきそうだ。このまま飛び続けていては凍え死んでしまう。早くどこかに降りなければ・・・

「ファラミア、大丈夫か、寒くないか」
「寒くてたまらない」
「どうやって下に降りる?」
「いい場所が見つかったら、持ってきた宝の一つを投げ落として・・・ドラゴンの目の前にだよ。きっと拾おうとして下へ降りていく」
「もったいねえなあ、宝を捨てるのか」
「そういうこと言っている場合じゃないよ。宝はまた見つけられる」
「わかっているよ」
「下に家が見えた」
「俺には何も見えない」
「小さい山小屋がある。あの近くに降りよう。宝を投げて!」
「わかった」

ゴントが小さな光る石をドラゴンの目の前に投げた。目が赤く光、そして怖ろしい速さで急降下を始めた。ドラゴンの目は小さな宝石も見逃さない。それだけを見てものすごいスピードで降りていく。もうすぐ山にぶつかる。

「今だ!」
「飛び降りろ!」

僕達は同時に雪の上に飛び降りた。ドラゴンは小さな宝石を見つけて口に飲み込んだ。そして空高く舞い上がり、見えなくなってしまった。

「あそこに山小屋がある。狙ったとおりの場所に下りた」
「だけど誰かいるのかな?それに他の家など一つも見えないぞ」
「とにかく行ってみよう」

山小屋の中に入った。思ったとおり中には誰もいない。小屋自体もあちらこちらが壊れている。

「なんのためにこんな所に山小屋を作ったのだろう」
「烽火を伝えるためだ。すぐそばに烽火台もあった。今はまったく使ってないけど・・・昔ゴンドールは北方のアルノールと同盟を結び、危険が迫った時には烽火でお互いに連絡を取っていた。アルノールは滅びてからはこの烽火も使われてないだろうけど・・・」
「へえ、お前はそんな昔のことまで知っているのか」
「まだ少し薪が残っている。火をつけてみよう。煙を見てどこからか助けが来るかもしれない。烽火台があったぐらいだからドラゴンの山よりはまだ人が近くに住んでるかもしれない」
「そうだな、お前は本当に頭がいい。俺達の仲間にならないか」
「海賊になる気はない」
「怒ったか、冗談だよ。お前は執政家の人間だ。俺達とは違うからな」

僕達は山小屋にあった薪を烽火台まで運び、油をかけて火をつけた。火は瞬く間に大きく燃え広がった。

「これでよし、後は助けを待つだけだ」




烽火台の火を眺め、空を仰いだ。大昔、この寂しい場所で、他の場所から来るかもしれない合図を待ち続けてこの場所で長い時を過ごした人がいた。長い歴史の中でアルノールは滅びたがゴンドールは残り、そして今僕達はここにいる。僕はこれから先何かを見つけて、それを後の世界に伝えていくことができるのだろうか?

「おい、ファラミア、大変だ!あの黒い影は?」
「ドラゴンだ!しまった、ドラゴンがここに戻ってきた。宝を取られたことに気づいたんだ。どれくらい持ってきた」
「ゴメン、ついついポケットに詰められるだけ詰めて・・・」
「そんなに持ってきたのか!早くドラゴンに返せ!遠くの場所に投げ捨てろ!だめだ、間に合わない。僕達の方へ来る」
「ふせろ!」

僕達は烽火台の真下に隠れた。ドラゴンは炎の中に突っ込んできた。火がドラゴンの体に燃え移り激しく暴れている。激しい地響きがした。今度は雪の上に体を打ち付けている。

「ファラミア、逃げろ!」

頭の上から大きな叫び声が聞こえた。大きな鷲が3羽見える。そこに乗っているのは灰色の魔法使いと懐かしい兄。兄は大鷲の上から飛び降りた。

「兄上!」
「ファラミア、下がっていろ、ドラゴンは俺が相手をしてやる」

ドラゴンの体の炎は消えた。だがその体は真っ赤な炎の色に変わり、激しい怒りで燃えているのがわかる。ボロミアは剣と盾を構えた。空を飛ぶべきはずのドラゴンが今は地を這い、ゆっくりと僕達の方に進んでくる。

「さあ来い!ドラゴンでもなんでも俺が相手をしてやる」

ドラゴンは大きな口をあけてボロミアに襲い掛かってきた。ボロミアはすばやく避け剣を振り回す。ドラゴンの尾の先と口が同時に襲い掛かってくるのだが、ボロミアは巧に剣を使い、体をかわしていく。僕も手に剣を握り締めているのだが、怖くて動くこともできない。ドラゴンが動くたびに激しい地響きが起こる。そして怖ろしいうなり声、だがボロミアは少しも慌てず、的確に剣を使い、急所を狙っている。だけど危ない、尾の先がボロミアの剣を叩き落とした。

「ボロミア!逃げろ!」

剣を構えてドラゴンの前に出たのは海賊のバラバであった。ドラゴンは驚いて動きを止めた。僕は自分の剣をボロミアに投げた。兄はそれを見事に受け取り、襲い掛かるドラゴンの口の中に突き刺した。

「グワー!!・・・グエー!!・・・」

ドラゴンは怖ろしいうなり声を上げ、空へと飛び立った。空中でのたうちまわりながら飛び、炎を噴出した。さびてボロボロになった僕の剣がすぐそばに落ちてきた。そしてドラゴンはもう一度叫び声を上げると、空高く飛んでいってしまった。





「さすがは執政家の長男ボロミア殿、見事な戦いぶりであった」

鷲から降りた魔法使いのミスランディアが僕達の方へ歩いてきた。

「何が見事な戦いぶりだ!やい、魔法使い、ボロミアはもう少しでやられるところだった。それをお前は空の上から見物していたというのか、魔法使いならなんかやることがあるだろう!ドラゴン相手に人間が一人で戦えというのか!」

海賊のバラバが真っ赤になって怒っている。僕とゴントも頷いた。本当にボロミアは危ないところだった。あの時とっさにバラバが前に出ていなければドラゴンにやられていたかもしれない。そして兄の危機だというのに動けなくなっていた僕は本当に情けない。

「まあ、そう怒るでない。わしとて、いざとなったらドラゴンと戦う気でいたが、その前にボロミアの剣がドラゴンを貫いておった。いやお見事じゃ、人間の身でありながら、そこまですばやく動けるとは、わしにはできん。ドラゴンも驚いてもう二度と人間を襲ったりはしないだろう」
「本当か、ドラゴンはもう二度と人間を襲わないのか」
「他のドラゴンはどうかしらんが、あのドラゴンはそうするじゃろう。ボロミア殿、人間の強さと勇気に驚いてな」
「あてにならない魔法使いだ。まあ、皆が無事でよかった。だけどこれからどうする気だ。今ではこの近くに人は住んでないだろう」
「もう一度、わしに乗って帰ればよい。だが一度にはだめだぞ。一羽の鷲に一人だけ、人間は重すぎるから一度に二人は乗せられん。お前さんたちのうち、二人はここでしばらく待ってもらう」
「それなら、俺とファラミアがここで待っている。その海賊たちを先に帰らせてやれ」
「おい、いいのか」
「せっかくドラゴンと戦って勝ったのだ。もう少しこの場所で勝利の余韻に浸りたい。ファラミア、それでいいか、こいつらを先に行かせても?」
「もちろんです、兄上」

僕はボロミアに抱きついた。ほんの少し離れていただけなのに、随分長い間離れ離れになっていたように感じる。兄のすぐそばで海賊二人と魔法使いがわしに乗って飛び立っていくのを見送った。

「全くあの魔法使いはいざっていうときちっとも役に立ってくれない」
「でも兄上をここまで連れて来てくれたのはミスランディアですよ」
「まあそうだな、そのことに免じて今回だけは許してやる」
「兄上」
「なんだ、ファラミア」
「会いたかった・・・兄上がいなくて心細くて・・・」
「俺もだよ、ファラミア、お前がいないと不安でたまらなくなる」

ボロミアは僕を強く抱きしめてくれた。烽火台の炎はまだ赤々と燃え続け、僕達を温めてくれている。いつの間にか日が暮れて、一番星が見えた。



                                            −つづくー




後書き
 兄上のかっこいい場面なのだけど、戦いの場面はどうもうまく書けません。映画でこういうシーン見たいなあ・・・
 2005、10、11


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