19、再会
ようやく弟のファラミアを無事助け出すことができた。ドラゴンに連れ去られて万が一のことを考え、また実際ドラゴンとの対決までしてしまった俺は急に力が抜けてその場に座り込んでしまった。
「兄上、大丈夫ですか?」
「俺は平気だ。お前こそ怪我はないか。万が一のことを考えて俺は生きた心地もしなかった。お前が無事でいてくれてよかった。お前を失ったら俺は・・・・」
急に言葉がでなくなった。胸の奥からあついものがこみ上げてきて、うまくしゃべれない。
「兄上、心配かけてごめんなさい」
「もう宝探しはやめて、ミナス・テリスに帰ろう。お前にもしものことがあったら宝なんて・・・どんな宝よりもお前の方がずっと大事だ」
「泣かないでください。ここは寒いから小屋の中に入って待っていましょう」
空はもう暗くなりかけている。烽火台の火が目印になるだろうが、だんだん不安になってきた。
「あの魔法使い、相変わらず遅いな」
「無理もありません。鷲だって兄上やあの海賊のように重い人間を乗せたら疲れるでしょう。気長に待っていましょう」
「ファラミア!お前もあの魔法使いのように俺は太りすぎだと言いたいのか!」
「あ、いえ・・・そんなことはないです。太って、あ、違います・・・・体が大きくても兄上は身のこなしは誰よりも軽くて、ドラゴンと戦っている兄上は本当にカッコよかったです。僕いつか本に書きます。兄上と一緒に冒険の旅に出たことを・・・海賊や野伏やホビットや魔法使い・・・いろいろな人に会ったこと忘れないように・・・」
「これでもお前、俺のこと身が軽いと言えるか」
「ちょ、ちょっと待ってください、兄上!」
俺はファラミアの上に飛び掛った。雪の上でファラミアの細い体を思いっきり締め付け、上に乗ったりした。弟はキャーキャー言いながらもうれしそうに笑っている。
「兄上、止めてください!もうだめです」
「俺がどれだけ心配したかわかっているのか」
「わかっています。だからもうやめて・・・たすけて・・・兄上は卑怯だ!・・・そんな大きな体で・・・」
俺達は雪の上で長いこと転がりまわり、戯れていた。こんな風に無邪気に弟と戯れるなんて小さな子供の時以来かもしれない。執政の子である俺達の周りにはいつも侍従や侍女などたくさんの大人達がいて、怪我をさせたら大変と目を光らせていた。ちょっとでもふざけたり、けんかなどしたらすぐに引き離されてしまった。子供のときからいつも人に見られ、手本となるような行動をするように躾けられてきた。でも今ここにはだれもいない。それにファラミアは本当に体が細く、力も弱い。ちょっと強く押せば、すぐに押し倒されてしまう。これではいけない。ゴンドールには戦が絶えない。いずれ弟も戦場に出なければならないのだからもっと鍛えてやらなければ・・・
「兄上、僕の負けです。もう許してください」
「だめだ!もう一度かかってこい」
「そんな・・・もう服も靴も雪でびしょ濡れですよ」
「後で乾かせばいい」
「ああ、ミスランディア、早く迎えに来てください」
「鷲たちは俺のような重い人間を乗せてここまで飛んできた。かなり休ませる必用があるだろう。ちょうどいい機会だファラミア、お前はいままで皆に甘やかされ過ぎた。15といえば俺は兵士の訓練所を一番の成績で卒業して実際に軍隊に入った年だ。それがお前は弓も剣もちっともうまくならなくてもう一年通うように言われているのだろう」
「違います。兄上が軍隊に入ったのは16の歳です。訓練所で学科の試験があまりよくなくてもう一年通うように言われていました。僕は試験の日のことをよく覚えています。父上がすごく機嫌が悪くなって、僕までいつもやつあたりされてました」
「そうだったっけ」
「忘れているのですか」
「俺は自分に都合の悪いことはすぐに忘れるたちだから」
「兄上!」
外は真っ暗になってしまった。俺達はあわてて小屋の中に入り、火を燃やした。濡れた服を脱ぎ、暖炉のそばに掛けて乾かそうとした。ファラミアが俺の方をじっと見ている。また太ったとイヤミでも言うつもりなのか。
「兄上の体、傷跡がたくさんあるんですね。僕には何もない」
「ああ、これぐらいは戦場に行けば当たり前だ。大したことはない。気にするな」
「僕もいずれは戦場に行き・・・」
「お前は・・・できれば戦いになど行かせたくはない。ミナス・テリスに残って父上の執政の仕事の手伝いを・・・無理かもしれないが、俺はそれを望んでいる」
「兄上・・・」
ファラミアの目がじっと俺の顔を見ている。
「大変だ!宝の地図まで濡らしてしまった。早く乾かさないと」
「ファラミア、宝のことはもうあきらめろ!」
「そんな・・・」
弟は火に掛けてあった自分の上着のポケットから地図を取り出した。そして叫び声をあげた。
「すごい!濡れたら全く別の文字が浮かんできた。これとあの色硝子で見たものを組み合わせて・・・ああ、でも僕一人ではこんな文字は読めない。どうしよう・・・」
「魔法使いにでも聞いてみろ、大した魔法は使えなくても長生きしているんだ。いろいろ知っているだろう」
「そうだね、兄上、だんだん見えてきたよ。僕達はまた1歩宝に近づいてきた。もうすぐ全ての謎が解けるよ」
目を輝かせてまた俺に古い字の話しなどをする弟。俺はこういうことは苦手なんだ。早く魔法使いが来てくれて、謎でも古い字でもわかりやすく弟に説明してくれ。それにしても来るのが遅い魔法使いだ。
−つづくー
後書き
兄弟が会えてよかった。二人一緒だと話もはずみます。
2005、10、24
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