(20)地図の謎
ドラゴンにさらわれ危うい経験までしたが、無事魔法使いミスランディアの操る大鷲の背中に乗ってホビットの村に帰ってきた。兄のボロミアは魔法使いが来るのが遅いとか、馬に比べて鷲は乗り心地が悪いとかさんざん文句を言っていたが、文句が出てくるというのは兄が機嫌のいい証拠である。心配事があったり、不機嫌な時、ボロミアは無口になる。例え文句であっても兄の口から言葉が出ている限り僕は安心だ。ホビットの村に着くとさっそく海賊のギヤマンドラ、バラバ、ゴントと北の野伏のハルバラドが出迎えてくれた。
「なんだ、お前達まだいたのかよ。ファラミアは無事戻って来た。もう海賊や野伏なんかに用はない。さっさと元いた場所に帰れ」
「なんだよ、俺達は仲間じゃないか。一緒に宝のありかを探そう」
「いつから仲間になった。俺は由緒正しいゴンドール王国執政家の長男だ。海賊などと仲間になるつもりはない。やい、魔法使いはどこへ行った!さっさとこの地図の謎を解いて俺とファラミアを案内してくれ」
ボロミアはかなり気が短く怒りっぽい性格でもある。だいたい今ここでミスランディアに宝の地図の謎解きをしてもらったら、海賊達の方が一足先に宝の隠し場所にたどりついてしまうかもしれない。そういう配慮が兄には足りない。僕はミスランディアの方を見て目配せした。
「ボロミア殿、魔法使いはお前さんのすぐ後ろにおる。そう慌てるでない・・・さて、これが宝の地図じゃな・・・ふむふむ水に濡れ、火で乾かすことによって隠された文字が浮かび上がるのか・・・そしてさらにこの色硝子で見れば、隠れた文字が・・・・ふーむ・・・・なるほど・・・はてさて・・・これは驚きだ!」
「何一人でぶつぶつ言っているんだ!さっさと宝のありかを教えろ!」
「兄上、静かに!ミスランディアは今重大な考え事をしているのですから、邪魔をしないでください」
「こ、これはなんと!・・・・なるほど、そういうことか・・・だがこれは危険もともなう・・・どうしたら・・・」
魔法使いのミスランディアは突然黙り込んでしまった。こうなるとボロミアだけではない。海賊の3人、そして野伏のハルバラドもイライラしながら次の言葉を待っている。
「宝の場所はわかった!これは地中深く、かってドワーフが掘った地下帝国よりもさらに深いところにある。それは闇の魔物、オークなどが住む怖ろしい場所だ」
「そうか、そんなところに宝があったとは・・・それで魔法使い、俺達をそこまで案内してくれるんだろうな」
「いや、待て、執政殿のご子息を案内できるような場所ではない。どんな魔物が地下深く眠っておるかわしにも見当がつかない」
「そうだな、万が一のことを考えるとそんな危険な場所に執政のご子息を行かせるわけにはいかない。そこで俺達海賊の出番というわけだ。俺達は危険な仕事になれている。海の上だろうと土の下だろうと戦いは一番の得意技だ。俺達に行かせろ。ちゃんと宝は持ち帰る、約束しよう。そしてあとから分配すればいい」
「海賊の言うことなんかあてにできるか、どうせ宝を持ち逃げするに決まっている」
「そんなことはない。お前達は海賊の歴史を知らないから・・・俺達だって祖先をたどれば元は由緒正しい家柄だった者が多い。だが戦で破れ、祖国を追われてしかたなく海賊になった。ヌメノールの血を引いている者だっているかもしれない。そこの野伏さんと一緒でさ」
「野伏と海賊を一緒にするな。俺達は身なりこそ粗末だがヌメノールの血を引く者の末裔として、国を守り、村を守って生きてきた。お前達海賊のように村人を襲い、わずかな富を略奪しながら生きてきた者とは全く違う」
「それはそうだ、だが俺達海賊だって夢はある。貧しい村人を襲ってわずかな富を巻き上げるのではなく、いつかは海賊らしく大冒険と魔物退治の後、莫大な富を手に入れたい。そんなことをいつも考えていたさ・・・」
話は海賊対野伏の生き方についてになってしまった。こうなると執政の子として今までのんびり生きてきた僕は口を挟むことなどとてもできない。
「まあ、よいではないか、それならば執政の子も海賊も野伏もみなそろって宝のある場所まで行けばよい。ただいますぐ地下へ向かって進むわけにはいかん。闇の魔物を退治するためには一度エルフの住む裂け谷へ向かい、エルフの鍛えた剣をもらわねばならぬ。宝を手に入れようと考えたらこの先まだまだ長い旅が続く。よいか、皆の者、抜けたいと思ったら今のうちだ」
「海賊の名誉とプライドにかけて、俺はこの旅に参加する。バラバ、ゴント、お前達もいいな」
海賊ギヤマンドラが真っ先に名乗りを上げた。
「野伏の代表として俺も参加しよう。ちょうど裂け谷にいるストライダーに話さなければならないこともある。いい機会だ」
「僕も行きたいです。ここまできたらぜひ宝も見つけたいし、裂け谷に住むエルフにも会いたいです」
「ファラミアが行くなら俺も行かないわけにはいかない」
「これで決まりか。長く険しい旅となる。お前達は今日から旅の仲間として身分や立場を乗り越え、協力していかなければならない。よいな・・・では明日裂け谷へ向かって出発しよう。今宵はこのホビット村でゆっくり休むがよい」
翌朝、僕達はたくさんのホビットに見送られ、たくさんの食料をもらってホビット村を後にし、裂け谷へと向かって歩き始めた。先頭を歩くのはミスランディアでそのすぐ後ろに3人の海賊、その後僕達が続き一番後ろをハルバラドが歩くという順番になった。
「兄上、本物のエルフってどんな姿をしているんでしょうね。この地上でもっとも美しく気高いと言われているんです。楽しみだな」
「そうか、俺はエルフよりも地下道でどんな化け物に出会うか、そっちの方が楽しみだ。今まで鍛えた俺の腕を試すいい機会だからな」
「兄上、無理しないでくださいよ」
「無理なんかするもんか。ただあの海賊どもに俺の腕前を見せ付けてやりたいだけさ」
ボロミアはどんな時でも変わらない。そこがいいところでもあるのだけれど・・・
−つづくー
後書き
指輪の話を更新するのは久しぶりです。長い間更新していないとまた前の方のページから読み返してみたり、それでももう1度書いてみようと思ったのはWEB拍手にメッセージが入っていたからでした。ありがとうございます。
2006、4、18
目次へ戻る