月の溶かされる夜(3)  注意 かなりきわどい表現がありますので、苦手な方は読まないように
                                       してください。と言ってもそういう話ばかりで今更ですけど(笑)

カッサンドロスは、静かに自分が身につけていた衣装を脱ぎ始めた。目の前に横たわっているのは半裸のヘファイスティオン、急ぐ必要など全くない。彼はもう自分の意志では思うように体も動かせないでいる。ミエザの仲間であるという理由だけで、こうも簡単に騙されるものかと、罠をしかけたカッサンドロスでさえ、少々驚いていた。身につけたものを自分で手早く剥ぎ取り、早くやれと言わんばかりにうつ伏せになっている。

「ずいぶん傷跡が多いな」
「お前のように傷ができることを恐れて戦ってはいない」
「これがお前の勲章か。こんなところまで敵に刺されるなんて無防備なやつだ。よく今まで生き残ってこれた」
「やめろ!傷には手を触れるな!」

ヘファイスティオンは叫んだが、カッサンドロスは遠慮なく両足を広げて腿の内側にできた傷口に手を触れた。天幕の中の淡いランプの光でもはっきりわかるほど、そこだけ赤い線がつき、縫い合わされた跡が盛り上がっていた。ヘファイスティオンの体には他にもいくつかの傷があるが、この腿の内側の傷が最も大きなものであろう。カッサンドロスはその傷口に香油の壷を近づけ中の油を垂らした。ヘファイスティオンは頭を少し持ち上げて振り返った。

「動くな、香油がこぼれてしまう」
「その傷はもう治っている。高価な香油を傷の治療になど使うな。必要な場所にだけ使えばいいだろう。お前の快楽を引き出す方法ぐらい、俺だって昔から知っていた」
「いや、少しも知ってはいない。この傷はいつできたものだ?イッソスか、それともガウガメラだろう」
「傷がいつできたかなんて、そんなことは一々気にしてはいない」
「お前は気にしなくても、アレクサンドロスは気にするさ。この傷ができてから、決してお前を第一線に配置することはなくなった。少し遅れて出撃させ、しかも周りに特別強いやつを集めた。お前はどんな大怪我をしても平気な振りをしたが、アレクサンドロスにはわかってしまったようだな。さぞ痛かっただろう。刺された痛みよりも縫い合わされた時・・・・」
「やめろ!傷口には触るなと言っているだろう」
「触れられたくない部分から、最も大きな快楽を引き出せる。だが、手術中に暴れられると危険だ」

カッサンドロスの手にはいつの間にか捕虜を拷問する時に使う拘束具が握られていた。巧みな腕さばきで体は仰向けにされて手を頭の上に拘束され、足を開かされて縛られ、その紐はベッドの枠に結び付けられた。

「カッサンドロス、お前は部下を拷問して、意のままに動かしていたのか。こんなものをいつも持ち歩いて・・・・」
「人聞きの悪いことを言わないで欲しいな。俺は捕虜の拷問や処刑を一番嫌う人間だ。残酷な行為は極力やりたくないし、見るのもいやだ。こういった道具は別の目的で手に入れた」
「好きにしろ。これから先、二度とお前のことをミエザの仲間とは思わない」
「ミエザの仲間など、子供時代のただの遊び相手。俺とお前はもっと深い絆で結ばれる。ミエザの仲間などという甘い言葉では呼んで欲しくないな、ヘファイスティオン」

カッサンドロスは体をヘファイスティオンの上に覆いかぶせ、唇で口をふさいだ。華奢に見えても戦士として鍛えた体は、驚くほどの重さと硬さを持っていた。アレクサンドロスほどの激しさや勢いがなくても、カッサンドロスもまた常に第一線で戦い、敵を蹴散らしてきた男である。その勢いに拘束されたヘファイスティオンが抵抗することなど到底できなかった。アレクサンドロスよりはるかに背が高く重い体を受け止めて口をわずかに歪めれば、たちまち舌を差し込まれた。手は太腿の傷を揉まれている。もうすっかり治った傷に痛みはないが、盛り上がって癒着した皮膚と肉は他の部分よりも遥かに敏感になっている。ほんの少し指で触れられるだけで、体は痺れ、中心が硬く立ち上がった。口の中に唾液がたまり、零れ落ちるのを感じた。塞がれた口が自由になって息をすれば、香油の強いにおいが鼻腔を刺激する。その油を別の腔にも注ぎ込まれ、もっと刺激を与えられるならば・・・・

「欲しいのか、ヘファイスティオン。お前の体は最高に欲しがっているぜ」
「俺はお前など欲しくはない!」
「その強情なところがますます俺を刺激する。傷跡なんかではもう満足できないだろう。待っていろ、もっと大きな傷跡を、今こじ開けてやるから・・・・」
「何をする!やめろ!」

ヘファイスティオンの足を結んでいた紐は一度解かれ、さらに大きく開かれて腰を大きく浮かした状態で頭の方の枠に結び付けられた。両足をそのような形で結ばれると、元に戻ろうとする体の重みで足首が締め付けられ、激しい痛みを感じた。だがすぐに腰の下には丸めた毛布があてがわれ、足の痛みはなくなった。だが、足を高く持ち上げられているので呼吸をするのが苦しい。体の一番恥ずかしい部分はカッサンドロスの前に剥き出しで曝されている。ヘファイスティオンは唇を噛み締め、目を閉じた。

「いいながめだぜ。ずっとこのままお前の体を見ていたいが、それでは朝になってしまう」
「このことをアレクサンドロスにいいつけたら、お前はどうなる、カッサンドロス」
「いいつけることができるのか?お前には無理だろう」
「ならば早く終わりにしてくれ。俺は小姓にだってこんな無理な格好はさせない」
「俺もそうだ。いつでも手に入る小姓や女になど、手の込んだことはしない。だが、お前は特別だ。一度逃がしたら次に捕まえるのは難しいからな。だけどお前は無理な格好がよほど好きなようだ。さっきよりももっと硬くなっている」

カッサンドロスはヘファイスティオンのものに手を伸ばした。はちきれんばかりに硬くなったその先端からは、ドロリとした液体が少し染み出ていた。

「おっと、危ない、今ここで出されては困るんだよ。ヘファイスティオン、お前を舐めてやりたいけど、これ以上刺激は与えられない。ここも縛らないとだめか」

硬くなったヘファイスティオンのものに香油がたっぷりと注がれ、根本を軽く縛られた。ヘファイスティオンの声にならない呻き声が漏れた。カッサンドロスは無抵抗に曝された足の間の後腔に指を差し込んだ。体を捩じらせて抵抗すれば、心地よい刺激となって細い指を締め付けた。たれた香油を指で集めて後腔に塗りつければ、強い香りが鼻を刺激した。後腔から始まる刺激はヘファイスティオンの全身に広がった。

「ああー・・・・うわー・・・・苦しい・・・・もう終わりに・・・・」
「苦しいわけないだろう、お前の体はこんなにも喜んでいる。俺の指でさえ締め付けて・・・・」
「苦しい・・・・やめてくれ・・・・」
「もっともっと体を開いて楽になれ・・・・ほら、体が溶けていくようだろう。お前のここはゆっくりと溶け、全身を駆け巡っている」
「ああー・・・・・ひいいいー・・・・あ、あ、・・・・覚えていろ、カッサンドロス・・・・あ、あ、・・・やめて・・・」
「今、楽にしてやるから待っていろ」

ヘファイスティオンの足を縛る紐と手を結ぶ拘束具が外され、彼のものを縛る紐だけが残された。

「俺はお前を愛している。最後は一緒にいきたい」
「こんなことが、愛のわけ・・・・ああ、早く終わりにしてくれ・・・・」
「ふふ・・・・強情なお前がこんなにも体をくねらせて求めてくるとは・・・・」
「頼む・・・・わからない・・・・ああ、体中がおかしくなっている。どうしてこんな・・・・香油の匂いか、それともワインに混ぜて入れた薬か・・・・ああ、体がとろけるような・・・・お願いだカッサンドロス・・・・」
「俺のこと、愛しているか?アレクサンドロスより愛せとは言わない。ただ、俺のことも少しは・・・・」
「愛している・・・・愛しているよ、カッサンドロス・・・・ああ、もう一度あの・・・・頼む、欲しい・・・どうして俺は・・・・」
「いい子だ、ヘファイスティオン。お前は別に誇りを捨てたわけではない。ただ薬でおかしくなっているだけだ。安心して俺の言う通りにしろ・・・」
「欲しい、早く欲しい・・・・もう一度縛られてもいい・・・・ああ・・・どうして・・・・」
「願いをかなえてやるさ、ヘファイスティオン、そこに四つん這いになってごらん」

カッサンドロスはヘファイスティオンの長い髪をかきあげ、耳元で優しく囁いた。ヘファイスティオンは言われた通りの格好をした。カッサンドロスはもう一度丁寧に香油を自分のものに塗り、彼の後腔にあてがった。緊張で体がピンと張り詰めている。薬を使い、気が狂うほど求める状態になっても、ヘファイスティオンの体はまだ神に捧げる儀式としてその行為を感じているのだろうか。

「ヘファイスティオン、恐がらなくてもいい。俺達はミエザの仲間じゃないか。あの頃、よく知りもしないくせに、みんないろいろな相手と、いろいろなことをやっていたよ。お前だけがそれを頑なに拒み、ただ一人アレクサンドロスだけを受け入れていた。でもお前も気付いているだろうけど、アレクサンドロスは人間ではない、神の子なんだよ。俺達とは違う。お前が神だけを愛し、そして裏切られ続けたら、いつか気が狂ってしまう。だからそうなる前に俺達のところに戻ってこいよ。俺達ミエザの仲間は、決して仲間を裏切ったりはしない。いつも見守っている。ただ、その証として俺を受け入れてくれ」

ヘファイスティオンの体は小刻みに震え、目から涙を流していた。カッサンドロスはその体についた傷跡を舐め、後腔に舌を絡ませて丁寧に舐めた。注ぎ込んだ香油の強い香りがした。そして勢いよく自分のものを差し込んだ。

「ああ・・・・はああー・・・・どうして俺は・・・・」
「ヘファイスティオン、もっと力を抜け・・・・そう、体を楽にして・・・・気持ちいいだろう・・・・お前の体はこれを求めていた・・・・ああ、最高だ・・・・俺もまたお前を求めていた・・・・まさかこれほどとは思わなかったが・・・・素晴らしい・・・・俺の方がおかしくなりそうだ・・・・」

カッサンドロスの激しい勢いにヘファイスティオンは膝を崩して倒れた。なおも体を繋げたままの動きは続いた。

「もう限界だ、いいか、ヘファイスティオン、自分を解き放て。さもなければお前は狂ってしまう」

最後まで締め付けていた紐が解かれ、ドロリとした体液が先端から溢れ出た。同時にヘファイスティオンの後腔にも生温かい体液が満たされた。彼は少し眠った。穏やかな眠りであった。





「おい、もう夜が明けるぞ。自分の天幕へ戻れ」

ヘファイスティオンはカッサンドロスの声で目覚めた。

「結局こういうことになってしまったか。お前の天幕になど、来るものではないな」
「今なら見張りもいない。早く戻れ」
「カッサンドロス、お前は大臣アンティパトロスの子であるから様々な情報を持っている。それにミエザからの幼馴染だ。親しく話をしていても、誰も変には思わないだろう」
「それはそうだが・・・・」
「次に来た時は、間違ってもワインに変な薬は混ぜるな。ミエザの仲間は疑いたくない」
「ヘファイスティオン・・・・」
「アレクサンドロスは当分新しい花嫁に夢中になっているだろう。生贄に捧げられる子羊が途中で死なないよう見張るのも大臣の子として重要な役割だ」
「お前は俺を・・・・」
「たった一夜のことぐらいで、愛されているとうぬぼれるな。ただ、ミエザの仲間として受け入れてもいいと思っただけだ。俺はあれぐらいのことで溺れたりはしない」
「いつかお前を、俺なしでは生きていけないほど溺れさせてやる」
「アレクサンドロスは神の子だ。そんな彼に挑戦しようなどと思わない方がいい。俺は戻ってアレクサンドロスの様子を見てくる」
「まさか、お前は俺のこと・・・・」
「ミエザの仲間は裏切らない。どんなことがあっても・・・・」

ヘファイスティオンは来た時と同じ衣装を身につけた。

「香油の匂いが強すぎる。次からは、匂いの少ない物を使ってくれ。お前の方がよほど詳しく知っているんだろう」
「ヘファイスティオン・・・・」
「俺達はもう15の子供じゃない。一度や二度体を重ねたぐらいで、そう思いつめた顔で名前を呼ばないでくれ」
「あ、そ、そうか」
「カッサンドロス、他の仲間やアレクサンドロスには知られないようにしてくれよ。そうじゃなくても俺は今度の婚姻でみんなを敵に回してしまった。これ以上嫌われ者にはなりたくない」
「わかった、気をつける」

カッサンドロスが口ごもっている間に、ヘファイスティオンはさっさと天幕を出てしまった。カッサンドロスが急いで衣服を身につけ、天幕の外に出た時には、もう彼の姿はどこにも見えなかった。

「あいつ、子供の時に比べれば、少しは素早くなっているのか」
「カッサンドロス様、もう起きられていたのですか。申し訳ございません。すっかり寝過ごしてしまって・・・・」
「まだ寝ていていい。朝日が出たばかりだ。どうせみんな祝宴で遅くまで起きていたのだろう。俺ももう一度寝る。まったくあんな派手な祝宴は生まれて初めてだ」

声が聞こえて慌てて別の天幕から飛び出してきた小姓に、彼は笑いながら答えた。



                            −おわりー



後書き
 D様からのリクエストでラブラブのカッサン×ヘファの話を書こうとしたのですけれど、どうも力量不足であんまりラブラブな雰囲気になってくれなかったです。でもこの組み合わせ、書いていてとっても楽しかったので、ぜひまたこの続きも書いてみたいです。リクエスト、ありがとうございます。

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