約束の場所(4)

私の体はガタガタと震えていた。これからどんなことが起こるか見当もつかなかったが、ただ怖ろしさに震えた。

「ヘファイスティオン、もっと近くに来い」

フィリッポス王の大きな声が響いた。恐る恐る近づく私の体に王の腕が回された。キトンを脱がされ、上半身は何も身につけていない。

「なんとやわらかくさわり心地のよい肌、これこそ捜し求めていたものだ。おや、まだ震えている。王に抱かれるのが怖いのか」
「いえ、怖くはありません。申し訳ありません、王様の近くでお仕えするなど今までにないことで、どうしたらよいかわからず、ただ不安で・・・お許しください」
「何も心配せんでいい。ただ言われた通り振舞えばそれでよい。いいな!」
「は、はい」

幼い私にはまだ王のしようとしていることの意味がわからずにいた。フィリッポス王の手は私の下半身に巻きつけた布を解こうとする。

「王様、そこは、アアー、すみません・・・・手を・・・・」
「フフフ・・・かわいらしい声だ・・・・まだお前は子供だな・・・・なんとやわらかく・・・・」

フィリッポス王の手は私の体の中心に触れた。身につけていた布をすべて取られ、あらわになったそこをもみしだく・・・私の顔は恥ずかしさで真っ赤になった。

「お許しください。お願いです、もうやめてください」
「どうだ、ここを触ると感じるだろう」
「お願いです。やめてください」

私は泣きそうな声になり、必死で懇願した。フィリッポス王は身につけているものをすべてとり、私と同じように一糸まとわぬ姿になった。体中にあるおびただしい傷の跡、ある場所は血が固まってこびりつき、ある場所は鋭い切り傷があり、また皮膚が変色している部分もある。

「驚いたか、王の体の醜さに・・・だがお前のこの背中にも醜い鞭の傷跡がある。自分では見えぬだけだ」
「お許しください、どうかもう・・・・」
「ここに触れてみろ、王の命令だ」

王のそれは充分大きく固くなっていた。目の前に差し出されたそれを恐る恐る触った。

「我が息子、アレクサンドロスはここから生まれた。お前はアレクサンドロスを好いているか」
「は、はい」
「アレクサンドロスはたいそうお前を気に入っているようだ。お前も愛しているか」
「は、はい」
「息子を愛しているならこれも受け入れろ。お前の役割だ」
「は、はい」





フィリッポス王は軽々と私を抱きかかえ、ベッドにおろした。

「何をされても決して動いたり、声を上げたりするな。よいな」
「は、はい・・・・アアー痛い・・・やめて!」
「声を出すなと言っただろう」
「すみません」

うつ伏せにされた私の尻の穴に指が差し込まれた。あまりの痛さと驚きで悲鳴を上げた。だが王の指は容赦なく私の体の中に入ってくる。声を殺していることは不可能だった。あまりの痛さに泣き叫んでいた。

「大声を出すな!外に聞こえるだろう」
「すみません」

私の頬は叩かれ、口に布をあてられて縛られた。そして再び尻の穴に太いものがさしこまれた。余りの痛さに泣き叫び、逃れようと懸命にもがくが、体を押さえつけられ逃げることもできない。激しく叩きつけられ、杭を打ち込まれるような衝撃が体中に走った。何がなんだかわからなくなり、絶叫して泣き叫んだ。体に杭を打ち込まれ、殺されるのではないかというような痛みであった。少し和らいだと思うと、また激しい痛みに襲われる。何度も何度も同じことが繰り返され、やがて意識を失った。





気がつくと自分の部屋のベッドに寝かされていた。服もきちんと身につけている。ただ悪夢のような体験をした下半身はズキズキといたんだ。尻の穴は裂け、血が出ているのを感じたが、怖ろしくて自分で見ることもできない。

「ヘファイスティオン、どうしたんだ?父上はなんの用事だったの。ちっともおれの部屋に戻ってこないから待ちくたびれて寝てしまった。もう教練の時間だぞ」

窓の外は明るくなっていた

「ごめん、頭が痛くて今日は何もできない」
「どうしたんだよ」
「きのう、フィリッポス王から頼まれて、急ぎの手紙を読んでいたんだ。もう僕の父も家に帰っていて、すぐに読まなければならない大事な手紙だったから・・・・」

私は必死にうそをついた。ギリシャ語を父に幼い頃から習っていた私は、誰よりも早く正確にこの言葉を読み、マケドニア語に直すことができた。そのことで呼び出されたとアレキサンダーに言い訳をした。

「そうか、大変だったな。お前はこの王宮にいる人間の中で、一番ギリシャ語が得意だからな。言葉だけだったら家庭教師のレオニダスも越えているよ」
「それほどでもないよ。時間がかかってずっと遅くまで起きていたから、頭が痛くて・・・・」
「それなら、医者に言っておくよ。お前が頭が痛くて寝込んでいるって・・・早くよくなってくれ・・・俺は一人で教練に出るから」
「うん、明日は大丈夫だと思う」

私は精一杯明るい表情をして、アレキサンダーと別れた。





「すみません。頭が痛いので、痛み止めの薬をください」

やがて部屋にきた医者に私はそっけなくこういった。

「頭が痛いと言っても何か重大な病気かもしれない、体を見せなさい」
「いいです、薬だけください!」
「何か隠していることでもあるのか。アレクサンドロス王子やフィリッポス王には何も言わないから、ちょっと体を見せてみなさい」
「はい」

私はしかたなく医者に体を見せた。

「これは酷い、まだ血が完全に止まっていない。すぐに手当てをしないと・・・・フィリッポス王か・・・」
「何も聞かないでください」

私の目から涙が溢れた。止めようとすればするほど涙は溢れ出し、しゃくりあげていた。

「少ししみるかもしれないが・・・・血を止めるために薬を塗る・・・・かわいそうに・・・辛かっただろう。よく辛抱した・・・今なら泣いてよい。誰にも言わないから・・・・」

医者にやさしく頭をなでられ、私は激しく泣きじゃくった。途中薬を塗られた痛みもあったが、一晩中我慢していた涙が後から後から出て止まらなくなっていた。医者は長い間私を抱きしめ、思う存分泣かせてくれた。

「少し、落ち着いたか。フィリッポス王はかなり酔っていたのだろう。あの方はやたらにいろいろな女性と関係を結んでいるが、それも考えがあってのこと、たまたまお前は運悪く・・・」
「わかっています。王様を憎んだりはしません。ただこのことはアレキサンダー王子には決して言わないで下さい」
「わかった、そう約束しよう。もし、万が一だが、またこのようなことがあって血が止まらなくなったら、すぐに私に言いなさい。手遅れになると命が危ない」
「はい、わかりました」





医者は出て行き、夕方アレキサンダーが私の部屋にやってきた。

「ヘファイスティオン、治ったか。どうした、目が赤くなっている」
「薬が余りにもまずくて吐いてしまった。おかげで頭が痛いのは治ったけど、今度は気持ち悪くてしょうがない」
「医者に言っといてやる。ヘファイスティオンにまずい薬は飲ませるなと・・・」
「そんな無茶なこと言わなくていいよ」
「心配なんだ、お前のことが・・・お前体力なくてすぐ倒れたりするから、病気になんかなったら気になって・・・・」
「大丈夫だよ。僕はそんなに弱くはない」

私は笑って見せた。その頃の私はまだ幼く、その行為の本当の意味はわからないでいた。わからないながらもアレキサンダーに知られてはいけないと懸命に隠した。


                                             −つづくー



後書き
 その行為の意味もわからない年齢で無理やり体験させられてしまったヘファイスティオン。心の傷はもっと後になってから裂けて痛み出します。
2006、2,7



目次へ戻る