太郎君へ 父より 9月25日「フォートライレイ」にて
御父さんは 今下町へ 散歩に来ました
「なっちゃいないな・・こんな ちっぽけな田舎町で 暫く暮らさねば
ならぬとは・・・
見物するところなんて ありやしないじゃないか せっかく米国に来て
何のことだい? だが自動車は馬鹿に多いなあ
これは御父さんが何をしているところでしょう?
「とてもむずかしいですね・・・
私もう覚える気なんかしないですよ」
「そうそう 足の踏み方はそれで
いいんだよ もう訳ないってばな・・
和田さんの奥さんだって
ちゃんとできるじゃないか」
おかしいではないか
これはこの間
御父さんが太郎君の御母さんに
自動車の運転を教えている夢を
非常にはっきり見たのでした
その時 御母さんはむずかしがって
もう泣き顔をしていました
太郎君は 御母さんのいうことを
聞くかね?
御父さんは
今度懐中電灯を買うたよ
「・・懐中電灯を買うたのは
十年振りかもしれないな・・
こんなに・・照らしてばっか見るなんて
自分ながら子供みたいだな・・
太郎はこれを見たら珍しがるだろうな
ほしいほしいというて
始末に行かないかも知れない
それにしても玩具のものくらい
あてがってもいい頃だろ
何時迄も自動車の玩具ばかり
いじっているんでは仕方がない
太郎のおふくろは
玩具で子供の知識を進めるということを
よく知っているかな?
これを1つ送ってやるかな
欲しかろうから