太郎君へ 11月19日 ワシントンにて 父より
アメリカの電車 ケムリをぽっぽっと出して走るのは 中でだんろを焚いて
いるからです
電車のやねの上に坊の好きなからからが無いのは
電車道の真中にある狭く深い溝のある軌条があって
その代用をしているからであります
やあ 随分
太って来ましたね!
5月12日ワシントンを立って
丁度6ヶ月目に御父さんは又
ワシントンに帰ってきました
その時のことこれはこれは
暖かで外套もきておれぬわい
どうもどうもこれは太郎君の
御母さんが高い高い高下駄で
東京に来た時のようだ
うふ・・・
「バッファロ」の下宿の
おばさんや近所のおばさん達が
みんなして御父さんが帰って
しまうのを惜しがっている
ところです
御父さんはそれ程皆に
好かれました