近江時計眼鏡宝飾専門学校
講 座
《 時計の魅力 》
千三百年の昔、近江大津京に漏刻(水時計)を創設され、我が国に
時刻の制度を定められた天智天皇の御事跡を顕彰して、大正九年六月
十日、「時の記念日」が制定されてより、本年にて85年を数える事
となります。この記念すべき年に、時計の初歩的知識を申し上げる事
といたします。多少なりとも御参考になれば幸いです。
古代の時計
紀元前数千年の大昔に生活していた人には、太陽や月が周期的に動
いていることを知っていました。人類が最初に考え出した時計は、そ
の太陽の周期を利用して時を計る「日時計」であったのです。しかし
この日時計は日光により棒などの影を利用するため、夜間、雨天の日
などは使用出来ないという欠点があります。
その欠点を補うために、水や砂などの流れを利用した「流動時計」
が考案されるに到り、人は時間の保持をする事が出来る様になってゆ
きます。又、物の燃える早さを利用して時を計る「燃焼時計」等も作
られ、それらの流動時計は、十四世紀中葉に機械時計が出現するまで
の長い期間、使用されて来たのでした。
機械時計の発達
機械時計は、十四世紀のョーロツパに登場してまいりました。初期
のものは大変大仕掛なもので、精度も悪く指針は現在の時針に相当す
るものが一本あるのみでした。動力にはかなりの重量の重りを用いて
いたため、その時計を管理する人は重りの巻き上げに大変な労力を費
やしたことと想像されます。
また指針のまわる方向は今日と同じ右まわりで、それはおそらく日
時計の影の動く方向に合せたという説が有力です。私達がよく用いる
「時計まわり」という方向のルーツは日時計の影の動きからでたとい
う訳です。ヨーロッパの寺院の壁に取り付けられている日時計は、ま
さに時計の文字板であり、影はあたかも針のように動くことから納得
するしだいです。
その後の機械時計の発達は正確さの追求と小型化の歴史でもありま
した。それらの発達に貢献した主なものとして「振り子の等時性の発
見」から振り子時計が作られ正確さが飛躍的に向上します。「動力用
ゼンマイの発明」により持ち運ぶことができる時計が作られ「テンプ
」と呼ぶ振動体と「脱逸機」と呼ぶ機構が改良され、だんだんと小型
高精度の時計が作られてゆきます。
昨今では指輪やネクタイピン、カフスボタンに用いられる時計があ
るのはご存じの通りです。
時計の電子化
機械時計の小型高精度化が現実のものとなっても、人々は時計に
「完全」を求めます。それは常に正確であり、いつまでも動き続ける
ということです。その為時計を電子化させる方向に発達して、現在で
は一日の誤差○点何秒で数年間も動き続けるクォーツ時計の全盛をむ
かえております。この電子化の波はとどまるところを知らず多種多様
の附加機構を持った時計が次々に出現しそれらを完全に使いこなすた
めにかなりの労力が必要なことに皮肉を感じます。これら高性能化実
現のウラにはなんといってもIC技術の発達があったことがあげられ
ます。
時計の精度
時計の精度を表す呼び方に一日(二十四時間)当り何秒達うかを表
した「日差」があります。普通のゼンマイ式腕時計の日差は二〇上二
〇秒程度です。なんだそんなに狂うのかと思われるかも知れ ません
がこれを別の見方をすれば大変な精度であることがわかります。二十
四時間は八六、四〇〇秒でTからもし二〇秒狂う時計では八一八、四
〇〇分の二〇、即ち約○・○UO二となり一万分の二の誤差であると
云えます。これを身近な計測類の物差しに置換えてみますと一〇メー
トルの測定でニミリの誤差に相当します。クォーツ式ではこの日差は
更に百分のーほど少く百万分の一の誤差程度でこれは物差しではーキ
ロメートルの測定で誤差一ミリ程度となります。もしこのような精度
の物差しを求めようとしたならばとても時計購入の金額では無理でし
ょう。
現在最も正確な時計として「原子時計」があります。セシウム原子
の振動を利用したセシウム原子時計では、数万年から数百万年に一秒
程度の誤差という驚くべき精度であります。このような超々高精度の
時計の出現で私達の用いている「秒」は「原子秒」として定義される
ようになっています。それはセシウム原子の振動数九、一九二、六ご
二、七七〇回をもって一秒とするということです。
時計の価値
価格二万円のごく普通の時計を例にとりその重さを五〇グラムとし
ますと時計の重量一キログラム当り四〇万円となります。これを他の
ハイテク商品とくらべてみますと重量五〇〇キログラムで一〇〇万円
の自動車では二、〇〇〇円、重量二〇キログラム五〇万円のパパ
ソコンでは、二五、〇〇〇円、重量四〇キログラムニ○万円のテレビ
では五、〇〇〇円となり、時計が一番重量当リの単価が高くなってい
ます。
これはほんの概算ですので皆さんもお待ちの時計と他の物とくらべ
てみて下さい。時計はこのように貴重な資源をいかに有効に利用した
産物であるかがわかっていただけると思います。
時計の保守
皆さんが愛用されている時計の保守について少し述べてみたいと思
います。掛時計・置時計などでは設置場所が適切かどうか検討してみ
て下さい。湿気の多い台所などには専用のものが結局長持ちします。
また最近は電池を用いたものほとんどですがこの時計の場合止った
らただちに電池を取り出し下さい。そのまま放置しますと漏液と云っ
て電池内の薬液が流れし機械部を腐蝕させまた場合によっては大切な
壁を汚してしまう事もあります。
腕時計において注意していただきたいことは水に入れてしまった
場合の処置です。このとき時計が止ることがなくてもできるだけ早
く近くの時計店に理由をいってお持ちになるのが一番です。時計店
では水入時計として処置をしてくれる筈です。放置時間が長くなる
と修理代がかさみときには使用不能にもなります。以上はあくまで
防水時計でない場合です。また水に入れた覚えがないのにガラス内
側に水滴がつくことがあります。これには色々理由がありますが、
これも時計店に持参して処置してもらって下さい。電池を利用して
いるクォーツ時計では止り又は電池交換サインがあらわれたらすみ
やかに時計店で交換して下さい。
そのまま放置しますと前述同様漏液して寿命を短くする原因になり
ます。また長い間使用しない場合は電池を取り出して保管されるほ
うが安全です。
機械時計が出現して六〇〇年、今私達は素晴しい時計を求めること
ができます。時計の偉大さ素晴しさを再認識し、私達の生活リズムの
根源である時計に感謝しながら時計関係の仕事を続けて参りたいと思
っております。
時の記念日や漏刻のこと、日本の時計のことなど他にも説明不足が
多々ありますが、それらにつきましては次回の講座でお話させていた
だきます。
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