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資金決済システム関連
証券決済システム関連
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2007年12月


金融庁が「金融・資本市場競争力強化プラン」を公表

 金融庁では、1221日に「金融・資本市場競争力強化プラン」を公表した。
20076月に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」において、わが国の金融・資本市場の競争力強化のためのプランを金融庁が取りまとめることとされていた。

 同プランは4つの柱からなっているが、決済システムについては、「Ⅰ.信頼と活力のある市場の構築」の中において、「3.安全かつ効率的で利便性の高い決済システム等の構築」として取り上げられている。

 この中で、①資金決済システムについては、「全銀システムにおいて国際標準化や顧客ニーズへの対応」を推進すること、②証券決済システムについては、株券電子化の円滑な実施に向けた取組みを進めたあと、「国債取引の決済期間の短縮化」(いわゆる国債決済のT+1化)を目指すこと、が謳われている。

 また、電子マネー等のリテール決済に関する新サービスについては、2008年春頃より、金融審議会での審議を開始することとされている。いわゆる「電子マネー法制」への取組みが本格化するものと思われる。
 詳しくは、ここから。

2007年12月


金融庁の「決済に関する研究会」が中間報告を発表

 金融庁の「決済に関する研究会」は、1218日に「決済に関する論点の中間的な整理について」を公表した。

 この研究会は、20077月に金融研究研修センターに設立され、12回にわたって、資金決済、証券決済、電子マネーなどに関する論点について議論を行ってきた。座長は、岩原紳作・東大教授で、このほか池尾和人・慶応大学教授、神田秀樹・東大教授などがメンバーとなっている。

 報告書は、①決済に関する新しいサービス、②資金決済システム、③証券決済システムの3本柱からなっている。

 第1の「決済に関する新しいサービス」では、資金移動サービス(収納代行サービスなど)、電子マネー、ポイント・サービスなどをとりあげ、規制のあり方やイノベーションの促進などの点について論じている。

 第2の「資金決済システム」では、現状を分析したうえで、今後の課題として、①国際化・標準化(通信プロトコル、メッセージ・フォーマットなど)、②顧客ニーズへの対応(金融EDI対応、全銀システムの稼働時間延長など)、③資金決済システムの運営等(全銀システムの運営主体の望ましい組織・運営のあり方など)、④業務継続体制(BCPの強化)の4点を挙げている。

 第3の「証券決済システム」では、やはり現状分析を行ったうえで、①STP化(相互運用性の確保や標準化)、②決済期間の短縮化(国債決済のT+1化など)、③証券決済システムの運営等(清算・決済機関の国際的連携など)の3点が課題として挙げられている。

 これらの論点のうち、主要項目については、年内に発表される「金融・資本市場競争力強化プラン」にも盛り込まれ、政府としての政策目標となる見込みである。
 詳しくは、ここから。

(注1):1217日付の日経新聞に本報告書に関する記事が出ていますが、報告書の全体の中では、比較的マイナーな点のみを取り上げていてミスリーディングであるため、報告書の本文(21ページ)に目を通されることをお勧めします。

(注2):本報告書の内容は、中島が20076月に金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」で行った報告も参考とされているようです。このときの報告資料と比較して頂くと、どの提言が受け入れられているか(どの提言が受け入れられていないか)が分かります。

2007年12月

株券電子化に向けたシステム整備の進捗状況に遅れ

 証券決済制度改革推進センターでは、1218日に「株券電子化に向けたシステム整備等の対応状況調査報告書」を公表した。

 同報告書は、11月時点における証券会社、受託計算会社(証券会社からのシステム整備の受託先)の株券電子化に向けたシステム開発の進捗状況について、アンケート調査およびヒアリング調査に基づいてとりまとめたものである。

 これによると、証券会社(自社で整備を進める先)、計算会社ともに、株券担保や区分口座の取扱い等に関する業務理解不足から、基本設計の工程における遅れが発生している。また、一部の証券会社では、ベンダーの選定の遅れや他の業務案件への対応に起因する進捗の遅れもみられている。遅れの程度は、計算会社で1ヵ月程度、証券会社では、先行稼働分について1ヵ月程度、全面稼動分について3ヵ月程度となっている。

 20091月の株券電子化の制度開始に向け、遅延の早期解消に向けた関係者の努力が求められる。詳しくは、ここから。

2007年12月

ECBT2Sプロジェクトに関するパブリック・コンサルテーションを開始

 ECB(欧州中銀)では、1218日に、T2Sプロジェクトに関するパブリック・コンサルテーションを開始した。T2Sは、欧州各国のCSDの証券口座をECBに集約して、シングル・プラットフォームにおいて証券決済を行おうとする計画である。

 今回のコンサルテーションの対象となっているのは、①ユーザー要件と②T2Sの経済的インパクトの評価方法の2つの文章である。このうち、ユーザー要件は、サマリー(9ページ)のほか、21章にわたる本文(491ページ)と17章にわたる付属書類(262ページ)から成っており、膨大な分量である。

 これらの文章に対するコメントは、200842日が締め切りとなっている。ECBでは、20085月のアドバイザリー・グループにおいて、受領したコメントについて検討を行い、その後に開かれるECB理事会で、T2Sについての最終決定を行い、システム開発がスタートする見込みである。
 詳しくは、ここから。

2007年12月

Fedが「ノン・キャッシュ決済サーベイ(2007年版)」を公表

 Fedでは、1210日、「ノン・キャッシュ決済サーベイ(2007年版)」(2007 Study of Noncash Payments)を公表した。この調査は、Fed が金融機関(1400行)やカード発行者などの協力により、全米における小切手、デビットカード、ACH、クレジットカードなどの利用状況を毎年まとめているもので、今回の調査対象は、2003年から2006年までの4年間である。

 今回の調査で判明した主なポイントは以下の通り。

 ①2006年の全米のノンキャッシュ決済は933億件であり、このうち小切手が306億件(ウェイト33%)、電子的な決済(デビットカード、ACH、クレジットカードなど)が、627億件(同67%)となっている。この比率は、2003年には、ほぼ5050であった。

 ②小切手は、年率△6.4%のペースで減少している一方で、電子的な決済は、年率+12.4%のペースで増加している(2003年から2006年にかけて:以下同じ)。

 ③電子的な決済の中では、デビットカードの利用が253億件とクレジットカードの217億件を上回った。

 ④伸び率でみると、ACHの年率+18.6%が最も高く、デビットカードの年率+17.5%がこれに次ぐ。クレジットカードの伸び率は、年率+4.6%に留まっている。

 ⑤小切手については、電子的な処理(トランケーション)が急速に進んでおり、2006年時点で40%の小切手が銀行間で電子的に処理されている。

 数字を見た感想としては、

 (ア)減ってきているとはいえ、小切手による支払いが、未だに3分の1を占めているというのは驚きである、

 (イ)米国は、「クレジットカードの国」というイメージが強かったが、ここに来てデビットカードが急速に普及しており、今やクレジットカードを凌駕している点については、認識を改めないといけない、

 (ウ)小切手の電子的な処理を可能とする「21世紀小切手法」が2004年に施行されて以降、小切手処理の電子化の進展は驚異的であり(ほぼ2年で40%が電子化された)、わが国でも、「チェック・トランケーション」について早急に検討を行うべきではないか(因みに先進国で紙ベースでの手形交換をやっているのは日本だけ。アジアでも香港、シンガポールなどがすでに電子化済み)、

 (エ)Fedでは、民間金融機関の協力を得て、毎年こうした調査を行っており、日銀でも、同様な調査を行ってくれると、小口決済の関係者にとって有用なデータとなるのではないか

 などの点です。 詳しくは、ここから。

2007年12月

CLS銀行が、NDFの決済サービスを開始

 CLS銀行では、127日に、「NDF」(ノン・デリバラブル・フォワード)の決済サービスを開始した。
 サービス開始時点での利用者は、CLS銀行の決済メンバー6行とサード・パーティ1社であるが、利用者は今後増加するものとみられている。
 CLSのサービスは、48通貨のNDFを対象としており、これらをCLS銀行での決済対象通貨15通貨によって決済することができる。

 NDFは、取引が薄くて流動性の乏しい通貨や、交換性のない通貨に関する先渡取引(forward contract)であるが、取引対象である現地通貨の受渡しは行わず、ネット金額(先渡取引の契約レートと決済時のレートとの差額)のみを、米ドル(または他の主要通貨)によって決済する取引である。

 CLS銀行では、NDFの契約期間にわたって、マッチング、時価評価、レポーティング、ネット金額の決済までを行う。ネット金額の決済は、CLSの扱う15通貨のいずれかで行うことができる。

 従来、NDF取引の約定後の処理は、標準化がほとんど進んでおらず、手作業によって行われていたが、CLS銀行のサービスにより、約定後の処理の自動化が進み、処理コストが削減されるものと期待されている。

 CLS銀行では、従来、外為取引における2通貨のPVP決済(同時決済)のみを行ってきたが、今回のNDFは、業務多角化の第1弾となる。
 詳しくは、ここから。

2007年12月

FESE(欧州取引所連盟)がT2Sプロジェクトに対する懸念を表明

 欧州の24の証券取引所が加盟しているFESE(欧州取引所連盟)では、124日に、ECBが進めている「T2Sプロジェクト」に対する懸念を表明する文章を公表した。

 T2Sプロジェクトは、現在EU各国のCSD(証券決済機関)で分散して行われているユーロ建ての証券(株式、国債、社債など)の決済を、ECBの運営する中央プラットフォームに集中して行おうとするプロジェクトであり、20084月のシステム開発の最終決定に向けて、現在、年内を目処にユーザー用件の取りまとめ作業が行われている。

 FESEでは、①T2Sのコスト面の分析(budgetary implication)が十分でないこと(このため、十分なコスト・ベネフィット分析ができない)、②機能面の詳細(exact functionality)が十分に明示されていないこと、などを批判している。また、③T2Sのガバナンス構造にFESEを参加させることを求めている。

 T2Sによって決済機能を奪われる形となるCSDの協会であるECSDA(欧州CSD協会)からは、すでにもっと強硬な反対意見が表明されているが、決済機能のユーザーである欧州の銀行界は、T2Sプロジェクトに対して積極的な支持を表明している。このため、今回のFESEの意見表明は、T2Sプロジェクトの帰趨には大きな影響は及ぼさないものとみられる。

 ただし、これまで、CSDなど決済レベルの機関を中心に機能の検討が進められてきたことに対して、証券取引所サイドとして警鐘を鳴らしたものと言えよう。
  詳しくはここから。

2007年11月

TARGET2が無事、稼働を開始

 ユーロの次世代RTGSシステムである「TARGET2」が、1119日に、無事、稼働を開始した。

 TARGETは、ECB(欧州中央銀行)が運営するユーロの大口決済システムであり、ユーロの導入と同時に19991月から稼働を開始しており、EU域内の1万行以上が参加している。従来のTARGETは、各国の中央銀行が運営するRTGSシステムをネットワークで結んだ「分散型の構造」(decentralized structure)となっていたが、TARGET2は、すべての決済処理を「共通プラットフォーム」(SSPSingle Shared Platform)で行う中央集中型のシステム構成となっている。ドイツ、フランス、イタリアの3中銀がSSPを構築し、運営にあたっている。

 TARGET2への移行は、3段階に分けて行われており、今回稼働を開始したのは、第1陣の8カ国(オーストリア、キプロス、ドイツ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、スロベニア)である。このあと、2008218日に第2陣の7カ国が、同年519日に残りの5カ国および欧州中銀(ECB)が移行を行う予定である。
 詳しくは、ここから。

2007年11月

6つのカード決済システムが「欧州カードスキーム同盟」(EAPS)を結成

 117日、欧州の6つのカード決済スキームが、共同で「欧州カードスキーム同盟」(EAPSEuro Alliance of Payment Schemes)を結成した。本部はブリュッセルに置かれ、加盟スキームの欧州全域での決済を可能とすること、新たな汎欧州のカード・スキームを導入することなどを目的としている。こうしたことが実現すれば、EAPS加盟スキームのカード保有者は、欧州全域でカードを使うことができるようになり、小売店もEAPS加盟カードを幅広く受け入れることができるようになる。

 今回、EAPSに加盟したカード・スキームは、以下の6つである。

カード・スキーム

イタリア

Pago BancomatBancomat

ドイツ

Deutsched Geldautomatensystem

ベルギー

EUFISERV

スペイン

EURO 6000

英国

LINK

ポルトガル

Multibanco

 これらの先は、合わせて2.22億枚のカードを発行しており、2.1百万台のPOS端末と18.9万台のATMを運営している。EAPSでは、他のカード・スキームの参加も歓迎するとしており、さらに参加先が増える可能性がある。

 ECBが本年7月に発表したSEPAの第5次プログレス・レポートでは、汎欧州のカード・スキーム(デビット・カード)を導入することを強く推奨しており、今回の動きは、こうしたECBの呼びかけに応えたものとみることができる。
 詳しくは、ここから。

2007年11月

EUの「金融商品市場指令」(MiFID)が発効

 EUの「金融商品市場指令」(MiFIDThe Markets in Financial Instruments Directive)が、111日に発効した。MiFIDは、従来の「投資サービス指令」に代わって、EUの証券市場や証券業者を規制する基本的な法制である。

 MiFIDは、20044月に採択され、200711月までにEU各国が国内法化するものとされていた。しかし、実際には、EU加盟国(現在27カ国)のうち、3分の1近くは、まだ国内法が制定されていない。これらの国の殆どは、2008年初めには国内法ができる見込みであるが、一部の国(スペイン、ポーランド)はされに遅れるものとみられている。

2007年10月

欧州委員会がe-invoicingに関する専門家グループの設立を決定

 欧州委員会(European Commission)では、1031日に「Electronic Invoicinge-invoicingと略称される)」(電子インボイス)について検討するための専門家グループ(Expert Group on e-invoicing)を設立することを決定した。

 e-invoicingとは、「インボイス情報(請求書データ、支払データ)をビジネス・パートナー(売り手と買い手)の間で電子的に交換すること」とされており、従来「金融EDI」と呼ばれていた概念に近い。決済システムを通じてインボイス情報が交換できるようになると、企業内の内部処理と決済データを連動処理できるようになり、大幅なコスト節約につながるものとされている(年間645億ユーロと推定されている)。

 欧州委員会では、SEPA(単一ユーロ決済圏)の構築により、EU全域にわたるe-invoicingの基礎ができるものとしている。専門家グループは、約30人で構成され、2009年末までに「欧州電子インボイスのフレームワーク」(European Electronic Invoicing Framework)を構築することがマンデートとなる。
 わが国でも、そろそろ電子インボイス(金融EDI)について、検討を始めるべき時期に来ているのかもしれない。
 詳しくは、ここから。

2007年10月

ECBT2Sプロジェクトの進捗レポートを公表

 欧州中央銀行(ECB)は、1026日、T2Sプロジェクトに関する進捗レポート(Progress Report)を公表した。T2Sプロジェクトは、欧州各国の証券決済機関(CSD)の証券口座をTARGET2のプラットフォーム上に集約して、中央集権的な証券決済インフラを作ろうとするプロジェクトであり、2007年末を目処にユーザー要件の取りまとめ作業が行われている。

 今回の進捗レポートでは、まず、200746月にかけて行われた「基本原則とユーザー要件の概要に関する提案」についてのパブリック・コンサルテーション結果についてまとめており、特に、提案に対する賛成が65%であったのに対し、一部反対とすべて反対を含めても26%にしかならないことが強調されている。

 次に、ワーキング・グループでの検討状況について触れており、順調に検討が進んでいるとされている。ユーザー要件についての3カ月間のパブリック・コンサルテーションは、予定通り2008年初に開始される見込みであるとされている。

 最後に、プロジェクトに対する市場のサポートについて触れており、CSDは引き続き慎重な姿勢(remain cautious)であるものの、多くの銀行やカストディアンからは強力なサポート(strong support)が得られているとしている。
 詳しくは、ここから。

2007年10月

ターコイズ・プロジェクトが、取引システムの提供者にCinnober社を選定

 大手投資銀行が共同で新たな証券取引プラットフォームを構築しようとしている「ターコイズ・プロジェクト」では、1025日に、取引システムの提供者(Trading Platform Provider)として、Cinnober社を選定したことを発表した。

 Cinnober社は、スウェーデンの企業であり、「TRADExpress platform」の技術をもとに、AMEXCBOTLiffe NYSE Euronext、ロンドン金属取引所、イタリア取引所などに取引システムを提供している。また、MiFID対応の取引報告システムを構築する「BOATプロジェクト」に対しても、システムを提供する予定である。

 この業者選定の遅れから、ターコイズの稼働開始は、早くても2008年半ばごろになる予定であり、取引システムがフル稼働(fully functional)となるのは、2008年末ごろの予定である。ターコイズでは、今年4月には、清算機関としてDTCCの子会社である「EuroCCP」を選定していた。

 また、ターコイズでは、プロジェクトの参加行が増えたことを発表した。これまでの7社に加えて、BNP ParibasSociete Generale Corporate & Investment Banking2行が参加し、プロジェクトへの参加行は9行となった。

 ターコイズでは、12月からCEOを公表した。新CEOは、Eli Lederman氏であり、現在はモルガン・スタンレーのSales& Trading DivisionManaging Directorである。
 詳しくは、ここから。

2007年10月

EU閣僚理事会が「決済サービス指令」を採択

 EU閣僚理事会(Council of the European Union)は、1015日に「決済サービス指令」(PSDPayment Services Directive)を正式に採択した。PSDは、4月に欧州議会を通過していた。

 PSDは、EU域内における決済(順送金、引落し、カード決済)について、国内決済と同様の取扱を求めるものであり、SEPA(単一ユーロ決済圏)を実現するための法的な基盤となる指令である。PSDはまた、決済サービスのすべてのユーザー(個人顧客、小売店、企業、公的機関)の権利や保護を強化している。また、PSDでは、「決済機関」(payment institutions)という新しいカテゴリーが設けられている。これは、決済サービスを提供するノンバンクの業者である。

 今後EU加盟国は、2009111日までに、この指令を国内法にすることが必要である。

2007年10月

欧州の5つのACHが相互リンクに向けたテストを開始

 Equens(オランダ+ドイツ)、Interpay(スペイン)、Seceti(イタリア)、STET(仏)、VovaLink(英)の5つのACHは、102日にSIBOSにおいて、SEPA(単一ユーロ決済圏)に向けた相互リンクの構築に向けて合意したことを公表した。これらのACHは、2006年に合わせて180億件の送金と自動引き落としを処理している。

 これらの5つのACHは、既にEACHA(欧州ACH協会)が作成・承認した「技術的な相互運用性フレームワーク」(Technical Interoperability Framework version 3.0)に基づいて、相互リンクを行うことを計画しており、すでにSWIFTNet FileActを使ったテストを開始している。これらの5つのACHは、EACHAにおいて中心的な役割を果たしている。
 詳しくは、ここから。

2007年10月

証券保管振替機構とSWIFTが覚え書に調印

 証券保管振替機構(JASDEC:以下、保振機構という)とSWIFTは、103日、ボストンで開催されていたSIBOSにおいて、証券メッセージの標準化に関する覚え書(MOUmemorandum of understanding)に調印した(竹内克伸社長がサインを行った)。
 この覚え書によると、保振機構では、2001年から運営している「決済照合システム」において、証券メッセージの国際標準であるISO15022ISO20022を採用する意向であり、SWIFTでは、その作業をサポートすることとなっている。
 わが国の株式等の約定照合・決済照合に幅広く用いられている「決済照合システム」では、標準的なISO15022とは多少異なったISO15022の変形バージョン(JASDECバージョン)が採用されている。
 国際標準化に向けた作業は、①JASDECバージョンと標準的なISO15022とのギャップ分析、②ギャップをなくすためのJASDECバージョンの変更、③ISO15022からISO20022への移行、といった手順で進められることが想定されている。現在は、ギャップ分析がほぼ終了した段階にあり、保振機構では、2011年ごろを目処にISO20022への移行を進めることを計画している。
 保振機構では、こうした国際標準への移行とともに、決済照合サービスのネットワークとしてSWIFTを採用することについても検討しており、これが実現すれば、わが国の決済インフラにおいては、初めてのSWIFTの採用となる。
 なお、SIBOSの開会式では、SWIFTCEOであるラザロ・カンポス氏が、「今後の最も有望なマーケット」として、具体的に日本と米国の名前を挙げており、関係者に注目されていたところである。
 詳しくは、ここから。

2007年9月

EPC(欧州決済協議会)が、中央データベースの運営先としてCB.Netを選定

 EPC(欧州決済協議会)では、SEPAの送金(SCTSEPA Credit Transfer)と自動引き落し(SDDSEPA Direct Debit)の中央データベース(central repository)の運営者として、リファレンス・データ会社である「CB.Net」(ロンドン所在)を選定した。

 EPCの策定したSCTSDDのルールを遵守することをEPCとの間で合意した先について、CB.Netでは「参加登録機関」(Register of Participants)として、金融機関の登録を行い、そのデータベースの管理を行う。
 参加者のデータベースは、EPCのウェブサイトから利用可能となるとともに、CB.Net提供するBankSearchPlus SPA Directoryに自動的に連動される。
 CB.Netは、今年6月に、EBAのプライオリティ・ペイメントの中央データ・ベースの運営者にも選定されており、この分野で地歩を固めつつある。詳細は、ここから。

2007年9月

欧州のACHが「欧州ACH協会」を結成し、相互リンクを進める計画

 928日、欧州の16カ国の18ACH(小口決済システム)は、ベルギー法に基づき、「欧州ACH協会」(EACHAEuropean Automated Clearing House Association)を結成した。

 これらのACHは、これまでも半年毎に10年以上にわたってインフォーマルな意見交換を行ってきたが、今回は、これを正式な組織として立ち上げたもの。EACHAは、ユーロ圏内に限らず、欧州のACHに広く門戸を開放しており、スイスや中東欧のACHも参加している。

 EACHAでは、当面の活動として、メンバーのACH同士をリンクするかたちで、SEPA(単一ユーロ決済圏)の送金(credit transfer)と自動引き落し(direct debit)を行うことを検討している。既に8月末に、EPC(欧州決済協議会)、ECB(欧州中央銀行)、ユーザーの銀行などに対して、相互リンクの原案を配布しており、2008年初には、最終報告書を公表する予定である。

 EACHAの設立メンバーは、以下の通りである。

ACH

フランス

STET

オランダ+ドイツ

Equens

スペイン

Interpay

イタリア

SSB

英国

VocaLink

イタリア

イタリア中銀

イタリア

SIA

ドイツ

ブンデスバンク

ノルウェー

BBS

スウェーデン

BGC

ベルギー

CEC

デンマーク

PBS

スイス

SIC

ギリシア

DIAS

ポルトガル

SIBS

クロアチア

FINA

ハンガリー

GIRO

ポーランド

KIR

 EACHAの理事(director)には、STET(仏)、Equens(オランダ+ドイツ)、Interpay(スペイン)、SSB(イタリア)、VocaLink(英)の5つのACHが就任しており、これらが中心的な役割を果たす見込みである。このうち、STETJad Khallouf氏が議長を務めている。

 SEPAに向けては、既にEBA(ユーロ銀行協会)の運営する「STEP2」が汎欧州ACHとして、欧州全域を対象とするACHサービスを提供している。今回のEACHAは、各国のACHが相互にリンクを構築することによって、これに対抗するようなサービスを提供しようとする(また、それによって各国ACHの生き残りを図る)動きである。

 STEP2では、すでにユーロ導入国15カ国とユーロ未導入の16カ国の計31カ国、約1,800行にアクセス可能な体制を整えており、EACHAの動きがどこまでSTEP2に対抗できるものとなるかが注目される。
 詳細は、ここから。

2007年9月

EquensがイタリアのSecetiと合併へ

 927日、オランダとドイツの小口決済システムの運営者であるEquensは、イタリアのSecetiとの経営統合の計画を発表した。
 この統合は、持株会社(Equens N.V.)のもとに、従来のEquensオランダ、Equensドイツに加えて、Equensイタリアを置く形で行われる。
 この統合により、統合後のEquensは、年間に87億件の小口決済と30億件のPOSATM取引を処理することとなり、この分野では、欧州で12%のシェアを占める最大手の決済処理会社(payment processor)となる。

 
Equensは、20069月に、オランダのInterpay とドイツのTransaktionsinstitut合併して誕生した企業である。今回の統合により、合併による規模拡大路線が明らかになった。
 
この統合は、デュー・デリジェンスを経て、2008年半ば頃に完了する予定である。
 詳細は、ここから。

2007年9月

クリアストリームとユーロクリアがISMAG(国際証券市場アドバイザリーグループ)を結成

 クリアストリーム・ルクセンブルクとユーロクリア・バンクの2ICSD(国際的な証券決済機関)では、927日に、他の市場関係者とともに、ISMAG(国際証券市場アドバイザリーグループ:International Securities Markets Advisory Group)を結成した。
 
ISMAGには、2つのICSDのほか、発行者、主幹事証券会社、エージェント銀行、投資家、業界団体(AGCICMAICMSA)などの代表が参加している。

 ISMAGでは、2010年を目標とした3ヵ年計画を策定し、実施に移していく予定である。この3ヵ年計画は、証券の発行プロセス、情報の提供、コーポレート・アクションの処理、元利払いの配分などについての標準化により、証券決済の効率性やSTP化率を高めることを目標としている。

 2つのICSDに預託されている証券は、20076月時点で7.3兆ユーロに達しており、しかも年率20%のペースで増加している。
 
2006年には、2つのICSDにおいて、20万銘柄以上が新規に発行され、25万件のコーポレート・アクションの処理が行われ、32万件以上の償還が処理された。ただし、コーポレート・アクションについては、STP化率が10%未満に止まるなど、効率化が十分でない面があるものとされる。
 当面は、①新規発行に関する情報提供の改善、②コーポレート・アクションに関する情報提供の改善が、焦点となる見込みである。詳細は、ここから。

  (注)AGCAssociation of Global Custodians
           ICMAInternational Capital Markets Association
           ICMSAInternational Capital Market Services Association

2007年8月

APACSがファスター・ペイメントの新たな稼動開始予定を公表

 APACSでは、延期されることになったファスター・ペイメントの新たな稼動開始予定を「20085月末」とすることを公表した。
 当初の稼動開始予定は、200711月であり、ちょうど6ヵ月遅れることになった。ファスター・ペイメントの概要については、本欄の20077月の項を参照のこと。
 詳しくは、
ここから。

2007年8月

LCH.Clearnetが、独証取と伊証取に傘下CCPとの完全な相互運用性を要請

 英・仏のCCP(清算機関)であるLCH.Clearnetは、「コード・オブ・コンダクト(行動規範)」に基づき、ドイツ証券取引所とイタリア証券取引所に対して、それぞれの清算業務を手掛けるEurex Clearing(ドイツのCCP およびCCG(イタリアのCCP)との間での完全な相互運用性(full interoperability)を正式に要請した(formal request)ことを明らかにした。

 コード・オブ・コンダクト(European Code of Conduct for Clearing and Settlement)は、200611月にFESE(欧州取引所連盟)、EACH(欧州CCP連合)、ECSDA(欧州CSD連合)が合意したもので、これらの連合に加盟する組織は、自主目標(voluntary self-commitment)として、①料金の透明性の確保、②広汎なアクセスとインターオペラビリティの確保、③サービスの細分化(service unbundling)と細分化されたサービスの収入・コストの明示(accounting separation)という3つの目標の達成を目指すことになっている(最終期限は20081月まで)。今回は、LCH.Clearnetが、このコード・オブ・コンダクトに基づいて、独・伊の証券取引所に対する要請を行ったもの。

 この「完全な相互運用性」が実現すると、LCH.Clearnetは、独・伊の証券取引所における株式の取引についても、自らの清算業務の対象とすることができるようになる。ユーザーの立場からすると、ロンドン証取、virt-x、ドイツ証取、イタリア証取の4つの取引所での取引の清算をLCH.Clearnetにおいて集約して行うことが可能となる。

 こうした相互運用性は、ロンドン証券取引所(LSE)が、LCH.Clearnetx-clear2つのCCPに対して既に実施している(つまり、ユーザーは、2つのCCPのうち、どちらかで清算を行えばよい)。

 欧州における証券インフラの集約化に向けた動きとして注目される。詳しくは、ここから。

2007年8月

ユーロクリア・バンクがLCH.Clearnetとの連携を強化

 ユーロクリア・バンクでは、LCH.Clearnetへのマージン(証拠金)の差入れを「担保管理サービス」(triparty collateral management service)を通じて行うサービスを20078月から開始した。
 ユーロクリア・バンクと
LCH.Clearnetの両方を利用しているユーザーは、LCH.Clearnetから求められるマージンの差入れを、ユーロクリア・バンクに依頼して行うことができる。ユーロクリア・バンクでは、ユーザーが同行に預けている証券を用いて、担保の割当、担保価値の算定、担保の差し替えなどを、従来から提供している担保管理サービスの一環として行う。これにより、ユーザーは、煩雑な担保管理から解放されるとともに、保有する有価証券の有効活用ができることになる。 詳細は、ここから。

2007年7月

ECBSEPAの第5次プログレス・レポートを発表

 ECBでは、720日に、SEPA(単一ユーロ決済圏)に向けた第5次のプログレス・レポート(進捗状況報告書)を公表した。ポイントは、以下の通り。

(1)カード決済について
 この中で、ECBでは、欧州でのデビット・カードのスキームを少なくとも1つ以上、追加することを提案している点が注目される(“strongly recommend”とかなり強い表現になっている)。これは、マスターカードの「マエストロ」が独占的な地位を占めている現状に対して、競争原理を持ち込もうという意図とみられる。
 そして、その方法として、①全く新しいカードスキームを立ち上げること、および②各国の国内スキームが、国際的なブランドとブランド提携すること(co-branding)の2つの方法を呈示しており(どちらかと言えば、後者を強く推薦している)、EPC(欧州決済評議会)に検討を求めている。20081月時点では、こうした追加的なスキームが立ち上がっている必要はないものの、それまでに少なくとも設立に向けた方向性は示されるべきであるとしている。

(2)送金(Credit Transfer)について
 欧州域内の送金(SEPA credit transfer)については、①大手行は、20081月より、送金(send)と受取(receive)の両方をできるようにする一方、②中小銀行については、20081月からは、受取のみを可能とし、送金については、2008年中に可能とする、というEPCの見解を指示するとしている。
 「決済サービス指令」(200911月までに国内法化が義務付けられている)では、送金人が送金手続きを行った翌日までに受取人の口座に資金が到着すること(“D+1”と呼ばれる)を2012年までに実現することを求めている(現状は、最大D+3までに到着すればよい)ことから、EPCの送金(SEPA credit transfer)に関するルールブック(20076月に承認)の変更が必要としている。

(3)自動引き落とし(direct debit)について
 自動引き落とし(direct debit)に関しては、①EPCのルールブック(20076月に承認)によって、基本サービス(core scheme)が確定しているものの、すべての債務者のニーズを満たしていないため、EPCが追加の機能について作業中であること、②いくつかの業界では、現行の引き落としサービスとEPCの定めた基本サービスとのマッピング作業において困難に直面しており、より詳細な定義が必要であること、などが指摘されている。
 ECBでは、欧州全域で、SEPAに対応した送金、自動引き落とし、カード支払などができるという「到達可能性」(reachability)を重視しており、そのためには、すべての銀行が適切なSEPA対応を取るべきとしている。

(4)小口決済インフラについて
 欧州ACH協会(EACHA)が、相互運用性(interoperability)を確保するための基準(criteria)を作成し、20075月にコメントを募集している。これに基づき、ACH間のリンクによるネットワークが形成されることになる見込みである
 過渡期においては、
SEPAフォーマットと国内フォーマットによる取扱いが並行的に行われることになる見込みである(これを“parallel processing”<並行処理>と呼んでいる)。
 ACHにより、ビジネス・モデルが異なっており、SEPAによる基本決済機能のみを提供するACHを「SEPA専用ACH」(narrow ACH)、このほかに追加的な機能を提供するACHを「ワイドACH」(wide ACH)と呼ぶ。

(5)標準化について
 ECBでは、EPCに対して、送金の明細データ(remittance data)と自動照合(automatic reconciliation)についての標準の作成を求めている。
 IBANBICについては、個社ベースでの国内コードからの個別変換が困難なことから、共通ルールによる変換によって対応を行う方針であり、EPCなどに対して対応策の策定を求めている。 詳細は、ここから。

2007年7月

日本銀行が「決済システムレポート2006」を公表

 日本銀行では、718日に「決済システムレポート2006」を公表した。
 同レポートは、わが国の決済システムの動きを概観し、今後の課題を把握することを目的に、
20063月に「創刊号」が発刊された。今回のレポートは、それに続く2回目のものであり、主として、創刊号発刊以降の2006年中の動きに焦点をあてている。具体的には、日銀ネットの改善、証券決済システムの改善に向けた動き、業務継続体制の強化に向けた取組み、電子マネーの利用拡大、日本銀行の現金供給サービスの見直しなどを挙げている。詳しくは、ここから。

2007年7月

BISが外為決済リスクに関する報告書を公表

 BIS(国際決済銀行)の決済システム委員会(CPSS)では、717日に「外為決済リスク削減の進展について」と題する報告書を公表した。

 CPSSでは、これまでにも外為決済リスクに関するレポートをいくつか公表してきているが、今回は、現状における外為決済リスクの管理の現状についてまとめたもの。具体的には、外為市場における活発なプレーヤーである100以上の金融機関の外為決済リスクの管理の現状についての大規模なサーベイを行い、その結果をとりまとめている。そのうえで、更なるリスク削減に向けた提言を行っているが、その中で、①バイラテラル・ネッティングの利用拡大の可能性、②CLS銀行における当日決済や翌日決済の可能性(現状、外為取引はT+2決済)などに言及している点が注目される。

 なお、本報告書は、consultative report(市中協議報告書)であり、コメントの締め切りは、本年1012日である。詳しくは、ここから。

2007年7月

APACSが、ファスター・ペイメントのサービス開始を延期

 APACS(英国決済協会)では、当初200711月に予定していた「ファスター・ペイメント」(Faster Payment)のサービス開始を2008年以降に延期することを発表した。予想した以上に、テストに時間を要することが判明したことが理由とされている。新たな開始時期については、8月半ばに公表される予定である。
 英国の小口決済(BACS)では、送金人の送金依頼から、実際に受取人の口座に資金が振り込まれるまでに3日を要している。ファスター・ペイメントは、インターネットや電話による支払や継続的な支払(standing order)を対象として(これら3つを合わせて全体の支払の8%に相当)、ほぼリアルタイムの資金移動(near real-time transfer)を可能にする仕組みである。
 ファスター・ペイメントには、英国の主要13行が参加を表明している(この13行が、英国におけるすべての支払の95%以上を占める)。
 ファスター・ペイメントのシステムは、Vocalink社が開発・運営を行う。同社は、BACSの運営を行っていたVoca社と英国のATMのネットワークを運営するLink社が合併してできた企業である。詳しくは、ここから。

2007年7月

EBAが優先支払のスキームを開始

 EBA(ユーロ銀行協会)では、ユーロの緊急性の高い支払に用いる「プライオリティ・ペイメント」(EBA Priority Payment Scheme)のサービスを開始することを公表した。
 このスキームは、ユーロ圏において、送金人が支払銀行に送金を依頼してから、最大4時間以内に、受取銀行における受取人の口座に入金することを保証する仕組みである。EBAでは、2003年から同スキームの検討を開始し、欧州13カ国の26行によるパイロット・プロジェクトを行っていたが、このほど、実用化の目処がついたもの。
 プライオリティ・ペイメントに参加する銀行は、中央データベース(Central Repository)に登録を行って、このサービスを提供することになる。

 具体的なスキームは、以下の通り。
①支払銀行(sending bank)では、顧客から送金依頼を受けた後、90分以内に、かつ13:30までに、送金指図を発出する。
EBAでは、60分以内に、受取銀行に対して、送金指図を送る。
③受取銀行(receiving bank)では、送金指図を受領して(遅くとも14:30までに受領する)から90分以内に、受取人の口座に入金を行う。
 ①~③の合計時間が、4時間以内ということになる。
④送金メッセージとしては、
MT103+のフィールド23Bに「SPRI」のコードを入力することにより、このサービスの対象であることが認識される。また、口座番号にはIBAN、銀行コードにはBICを利用することが必須である(つまり、non-STPの送金メッセージは受け付けられない)。140文字の送金明細を添付することも可能である。

 本サービスは、SEPA(単一ユーロ決済圏)対応の一環である。
 詳細は、ここから。

2007年6月

SWIFTSEPAのテスト・プログラムを開始

 SWIFTでは、614日に、SEPA(単一ユーロ決済圏)のためのテスト・プログラムを開始した。このテストには、すでに185行の金融機関(SWIFTユーザー)6つのACHが参加を表明している。参加予定のACHは、Equens(オランダ・ドイツ)、SIBS(フランス)、STET(フランス)Seceti(イタリア)、InterPay(スペイン)、Dias(ギリシア)の6つである。
 ACHと各銀行は、EU域内の送金がSEPAの標準に準拠しているかどうかをこのプログラムを通じて、確認することができる。
 詳しくは、ここから。

2007年6月

SWIFTがネットワークの再編を計画

 SWIFTの理事会は、ネットワークの再編プログラム(System Re-architecture Programme)を暫定的に承認した。
 この動きは、昨年、米国・CIA(中央情報局)が、SWIFTの決済データをテロ対策のために活用した動きへの反応に対応したもの。20066月にこのことが明らかになって以降、SWIFTは、ベルギーやEUの情報保護局、欧州議会などから、欧州の企業・個人のデータを米国当局に不当に提供したとして批判の的となってきた。
 現在SWIFTは、欧州センターと米国センターの2センター体制で業務を行っており、バックアップのため、両センターがすべてのデータを同時に共有(mirroring)する体制となっている。今回のネットワークの再編により、分散データ処理・蓄積の体制が導入される(センターの数を増やすものとみられる)。この分散体制により、欧州域内(intra-European)のデータは、欧州内のセンターでのみ処理・蓄積されることになる見込みである。
 また、このネットワーク再編は、①SWIFTのメッセージ処理能力の拡充、②危機対能力(resilience)の向上、にもつながるものである。
 SWIFT理事会は、今年9月の会合において、本件に関する、より詳細な投資計画を最終承認することになる予定である。このネットワーク再編の実施には、34年を要することになる見込みである。プロジェクトのコストについては、今のところ明らかにされていない。
 このほか、SWIFTでは、データ・プライバシーに関するワーキング・グループ(メンバーは、ユーザーである銀行)を設立しており、今年79月に報告書が提出される予定である。
 また、SWIFTは、今年後半に「欧州-米国間のセーフハーバー合意」に含まれる予定である。これは、欧州の企業が米国内で業務展開している場合に、EUのデータ・プライバシー規制に合致する方法を提供する枠組みである。この枠組みに含まれると、SWIFTが米国に有する顧客データは、欧州のデータ・プライバシー規制と同様の原則で保護されることになる。
 詳しくは、ここから。

2007年6月

SWIFTが新しい参加者カテゴリーを追加

 SWIFTは、総会(AGM)において、「金融市場監督者」(Financial Market Regulators)を新たな参加者のカテゴリー(participant category)として追加することを、満場一致で決めた。
200711月に発効する「金融商品市場指令」(MiFID)においては、証券取引に関する監督当局への報告義務(reporting obligation)が強化されることになっているが、監督当局がSWIFTのネットワークに参加することにより、SWIFTのユーザー(殆どの金融機関)は、こうした報告義務を果たすことがより容易になる。
 新しいカテゴリーは、証券市場および資金市場の両方の監督当局をカバーする概念となる。
 詳しくは、ここから。

2007年6月

CMEが英国における清算機関の資格を取得

 世界最大のデリバティブ取引所であるCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)は、67日、英国FSA(金融庁)から、海外清算機関(ROCHRecognized Overseas Clearing House)の認可を受けた。
 この資格により、CMEは、ロンドン市場で取引されているOTCの通貨スワップなどのデリバティブ取引の清算業務を行うことができるようになる。
 清算機関も国境を越えて相互乗り入れの時代になってきている。

2007年6月

グローバル・カストディアン協会が、コーポレート・アクションに関するホワイト・ペーパーを公表

 67日に、グローバル・カストディアン協会(AGCAssociation of Global Custodians)は、コーポレート・アクションに関するホワイトペーパー(白書)を公表した。表題は、「コーポレート・アクションにおける普遍的で標準的なメッセージ利用の必要性」となっている。
 同白書では、コーポレート・ファイナンスについて、画一化されていないメッセージや紙ベースの方法によって連絡が行われている結果、金融機関や投資家がコスト問題や処理上の問題に直面している現状についてまとめている。また、こうした事態を打開するためのアクション・プランについても呈示している。コーポレート・アクションに関する情報交換を合理化・自動化するためには、カストディアン、そのエージェント・バンク、最終顧客である機関投資家などが、国際的に統一化されたメッセージ標準やガイドラインを利用することを求めている。
 コーポレート・アクションとは、株式分割、株式併合、自社株買い、企業買収、スピンオフ(部門分割・子会社分割)、オプション発行など、企業の自己資本に変動をもたらす一連の活動を指す。一般に、コーポレート・アクションには、株式や資金の移転・分配などを伴うため、迅速な情報提供、情報交換が必要となるケースが多い。
 AGMは、1997年に設立された非公式の団体で、10行のグローバル・カストディアンが参加している(殆どは米銀。邦銀は参加なし)。
 詳しくは、ここから。

2007年5月

スイスが証券関係の3機関を統合へ

 スイスの証券関係の3機関では、統合の覚書に調印した。これらは、証券取引所を傘下に有する「SWX グループ」、証券のCSDCCPを傘下に有する「SISグループ」、システムの開発・運用を行う「Telekursグループ」の3社である。この3社は、いずれもスイスの銀行界が保有する機関となっている。
 200711月に導入される金融商品市場指令(MiFID)の下では、欧州における取引所間の競争が激化するものとみられており、今回の統合は、それに備えた動きとみられている。
 SWXグループは、傘下にスイス証券取引所(SWX Swiss Exchange)、virt-x(ロンドン所在の汎欧州の優良株市場)を有する。
 SISグループは、傘下にスイスのCSDである「SIS SegaInterSettle」、スイスのCCPである「SIS x-clear」などを有する。
 Telekursグループは、傘下に、カード決済会社(MultipayCard Solutions)、資金決済システムの運営会社(Interbank Clearing)、電子インボイス会社(PayNet)、金融情報の処理・配信会社(Financial Information)などを有する。
 この統合により、スイスは、ドイツと同様な「垂直統合型」の組織(取引所とCCPCSDが統合された形)になることになる。株主や監督当局などの認可を得て、実際に統合が実現するのは、2008年初め頃とみられている。
 詳しくは、ここから。

2007年5月

ルクセンブルク証券取引所が清算業務をLCH.Clearnetに委託へ

 529日、ルクセンブルク証券取引所は、LCH.Clearnetとの間で、清算業務委託の覚書に調印した。
 監督当局の認可を経たうえで、LCH.Clearnetは、200712月にも、同取引所で取引が行われる株式、国債、社債のクリアリングを行うことになる予定である。
 LCH.Clearnetは、英国のLCHとフランスのClearnetが合併してできた欧州最大のCCP(清算機関)である。今回の合意により、LCH.Clearnetは、5カ国の証券取引所(フランス、ベルギー、オランダ、英国、ルクセンブルク)に対して清算サービスを提供することになる。
詳しくは、ここから。

2007年5月

Google Checkoutが英国でのサービスを開始

 検索サイト大手であるGoogleの決済部門であるGoogle Checkoutは、英国において、4月中旬からサービスを開始した。これは、2006年夏の米国でのサービス開始に次ぐもの。
 Google Checkoutでは、オンラインショッピングを行う消費者は、自分の決済情報を1度だけ同社のサイトに入力すれば、あとは同社のサイトにログインすれば、同社のサービスに参加しているすべてのウェブサイトでの決済が可能になる。
 欧州でのサービス提供会社となるGoogle Payment Ltd.は、電子マネー業者として、英国FSA(金融庁)の認可を受けており、FSAの監督に服することとなる。
 同様のサービスを提供するPayPalのライバル的な存在になるものとみられる。
 詳しくは、ここから。

2007年5月

PayPalがルクセンブルクで銀行免許を取得

 個人間の小額決済を手がけるPayPal(ペイパル)は、このほど、ルクセンブルクの銀行監督当局(CSSF)から、銀行免許を取得した。
 これまで、PayPalは、電子マネー発行体として、英国のFSA(金融庁)の監督下にあったが、これに伴い、欧州本部をロンドンからルクセンブルクに移転する。規制の緩いルクセンブルクを選んだのは、FSAの厳しい規制を回避するためではないかとみられている。
 
PayPalは、欧州全体で35百万人(うち英国に15百万人)の顧客を有しており、欧州の約10万のウェブサイトにおいてPayPalによる決済が可能となっている。2006年における欧州の決済額は84億ドル(約1兆円)に上っている。
 PayPalは、1999年にサービスを開始して以来、急速に業容を拡大してきており、現在、世界の103市場に展開しており、このうち14カ国で各国言語によるウェブサイトを構築している。世界での顧客数は、1.4億口座にのぼる。
 なお、銀行免許を受けたPayPalヨ-ロッパは、PayPal Inc.の子会社の位置づけになる。PayPal自身は、ネットオークションの運営企業であるeBay100%子会社である。
 PayPalは、消費者がオンラインショッピングを行った場合に、売り手に自分の金融情報(クレジットカード番号、銀行口座)を明かさずに、安全な決済ができることがメリットとなっている。日本に本格参入した場合には、大きなインパクトが見込まれる。
 
詳しくは、ここから。

2007年5月

ECBがカード会社に対する監督の枠組みに関するコンサルティング・ペーパーを公表

 ECBでは、53日に、カード会社(CPSCard Payment Scheme)に対する監督(oversight)の枠組みについてのコンサル・ペーパーを公表した。この監督の枠組みは、クレジットカード、デビットカード、ギフトカードなどすべてのカードによる支払に適用される(ただし、電子マネーは対象外)。また、免除規定が設けられており、小規模なカード会社(カードの発行枚数、年間決済額による)は、適用が免除される。本提案に対するコメントは、82日締め切り。

 ユーロ域内の各国中央銀行では、すでにそれぞれが各国内のカード会社に対して、ある程度の監督を行っているが、本提案は、ユーロ域内におけるカード会社に対する監督に関する最低基準を定めるものである。

 本提案では、カード会社のリスクとして、次の5つを規定した。

①リーガル・リスク:法的なリスク
②財務リスク(financial risk):信用リスクと流動性リスクを含む
③マネージメント・リスク:会社の経営が適切に行われないリスク
④オペレーショナル・リスク:不適切な処理、システムのダウン、人的なミスなどに伴うリスク
⑤レピュテーション・リスク:不適切な行為により、顧客からの評価・評判が低下し、損害を蒙るリスク

 このうち、レピュテーション・リスクとオペレーショナル・リスクの管理が特に重要としている。
こうしたリスクの分析に基づき、本提案では、5つの必要条件(requirement)を提示している。

(1)法的な確実性
 すべての関係する国において、健全な法的な根拠を有しなければならない。

(2)透明性
 関係者に対し、財務情報を含む必要な情報を提供しなければならない。

(3)オペレーションの確実性
 十分なセキュリティ、オペレーションの確実性、危機管理を確保しなければならない。

(4)ガバナンス
 実効性があり、説明可能で、透明性のあるガバナンスを確保しなければならない。

(5)清算・決済プロセスにおけるリスク管理
 清算・決済のプロセスにおける財務リスクを適切に管理しなければならない。

 各必要条件毎に、主要なチェック・ポイント(key issues)と解説文(explanatory memorandum)が付けられている。 詳しくは、ここから。

2007年4月

JBネットが解散

 430日に株式会社債券決済ネットワーク(JBネット)が解散した。JBネットは、一般債(社債、地方債など)の登録機関を結ぶ中継ネットワークとして199611月に設立され、一般債の決済に大きな役割を果たしてきた。
 「証券決済システム改革法」(20031月施行)に基づき、証券保管振替機構(JASDEC)が、20061月から一般債の振替業務を開始し、殆どの一般債が保振決済に移行したことから、この度、歴史的な使命を終えて解散することになったもの。
 詳細はここから。

2007年4月

決済サービス指令が欧州議会を通過

 424日、「決済サービス指令」(PSDPayment Services Directive)が欧州議会を通過した。同指令案は、欧州理事会(EU首脳会議)に送られ、最終的に採択されることになる。

 PSDは、EU域内における決済(順送金、引落し、カード決済)について、国内決済と同様の取扱を求めるものであり、SEPA(単一ユーロ決済圏)を実現するための法的な基盤となる指令である。PSDはまた、決済サービスのすべてのユーザー(個人顧客、小売店、企業、公的機関)の権利や保護を強化している。また、PSDでは、「決済機関(payment institutions)」という新しいカテゴリーが設けられている。これは、決済サービスを提供するノンバンクの業者である。

 PSDは、当初2006年末までの欧州議会通過が予定されていたが、各国の足並みの乱れから、議会通過が遅れていた。
 EU加盟国は、200911月までに、この指令を国内法にすることを求められる。
詳しくは、ここから。

2007年4月

VocaEBA Clearingが接続の覚書に調印

 英国の小口決済システムであるBACSを運営している「Voca」と、EU全域を対象とするACHSTEP1STEP2)を運営している「EBA Clearing」は、419日、VocaのシステムとSTEP2を接続する覚書に調印した。
 Vocaは、20067月にシステム(VOCA Payments Engine)を大幅に能力増強しており、これにより、EU全体の決済ボリュームを4時間以内に処理する能力を有するとしている。
 このリンクが完成すれば、英国の銀行は、個別の海外コルレス銀行を使わなくとも、通常の国内送金と同様にVocaに決済指図を送ることにより、VocaからSTEP2を通じて、SEPA(単一ユーロ決済圏)の31カ国への送金が可能になる(これをguaranteed pan-European reachと呼んでいる)。STEP2には、現在107行が直接参加行、1,600行以上が間接参加行となっており、これらの先へのアクセスが可能となる。
 SEPAに向けたACH間の提携の動きとして注目される。
詳細は、ここから。

2007年4月

ウォルフスベルグ・グループとTCHが新しい決済メッセージを提言

 金融業界の標準作りを行っている民間銀行の団体である「ウォルフスベルグ・グループ(注1)」と米国の民間ACHの運営主体である「TCH(注2)」(ザ・クリアリング・ハウス)では、419日に、新しい決済メッセージ標準の開発と銀行業界におけるこうした標準の受入れに関する提言を行った。

 この提言では、国際的な送金(international payment)において、マネーロンダリングやテロリストの資金調達、制裁逃れの金融取引などを防止するために、①SWIFTの顧客送金用のメッセージ・フォーマットを変更して、送金者(originator)と受取人(beneficiary)が必ず含まれるようにすること、②銀行業界全体として、基本的な送金メッセージ・フォーマットを受入れること、を提言している。
 SWIFTがこの提案を受入れれば、200811月までには、こうしたメッセージ標準の変更ができるものとしている。
詳しくは、ここから。

(注1)民間の大手銀行12行により構成される民間グループであり、アンチ・マネーロンダリング、テロ資金対策、顧客確認(KYC)などに関する金融業界の標準を作成することを目的としている。2000年に、スイス北東部のウォルフスベルグ城に集まって結成されたことから、ウォルフスベルグ・グループと呼ばれている。同グループでは、これまでにも、「コルレス銀行業務におけるアンチ・マネロンの基本原則」、「マネロン・リスクの管理ガイドライン」、「投資ファンドに関するアンチ・マネロンの原則」などを公表してきている。同グループに参加しているのは、ABNアムロ、バンコ・サンタンデール、三菱東京UFJ銀行、バークレイズ、シティ・グループ、クレディ・スイス、ドイチェ・バンク、ゴールドマン・サックス、HSBCJPモルガン・チェース、ソシエテ・ジェネラル、UBS12行。

(注2)米国における民間のACH運営主体。ニューヨーク手形交換所(NYCH)が名称変更したもの。ACHのほか、外為決済を取り扱うCHIPSを傘下に有する。

2007年4月

ターコイズ・プロジェクトが清算機関にEuroCCPを選定

 7行の大手投資銀行が新たな証券取引プラットフォームを創設するプロジェクトである「ターコイズ」では、このほど、清算機関として「EuroCCP」を選定したことを公表した。また、決済エージェントとしては、Citiのグローバル取引サービス部門(global transaction services business)を選択した。
 このプロジェクトは、200711月に発効する「金融商品市場指令(注1)」(MiFID)により、取引所への売買集中義務が緩和されるのを受けて、大手の投資銀行が共同で、欧州全域を対象として、株式をより安いコストで取引できる自前の取引プラットフォームを持とうとするプロジェクトである。いわば、米国で発達しているECN(注2)の欧州版を作ろうという試みであり、複数市場を対象としているため、MTFMultilateral Trading Facility:多国市場取引機関)と呼ばれている。ターコイズは、2007年末までの取引開始を目指している。
 EuroCCPは、米国のDTCC100%子会社であり、ロンドンに所在。英国FSAの認可を受けて、認可清算機関(RCHRecognized Clearing House)としてビジネスを行う予定である。EuroCCPでは、メンバー間の取引を引受けたうえで、ネッティングを実施する。
 EuroCCPが、ネッティングを行った清算結果をCitiに通知し、Citiが、欧州各国のCSD(証券決済機関)において、決済を行うことになる。
 ターコイズ・プロジェクトを推進しているのは、シティ、クレディ・スイス、ドイチェ・バンク、ゴールドマン・サックス、メリルリンチ、モルガン・スタンレー、UBSの大手7社である。これの7社は、LSE(ロンドン証券取引所)においては、50%以上の取引シェアを有しており、特にLSEにとっては大きな痛手になるものとみられている。
詳しくは、ここから。

(注1)Markets in Financial Instrument Directiveの略。EUにおいて、従来の「投資サービス指令」に代わって、証券関連規制の柱となる指令であり、20044月に採択された。EU各国では、200711月までに国内法にすることが求められている(つまり、この時期にEU全域で発効する)。
(注2)電子コミュニケーション・ネットワーク(Electronic Communications Network)の略。証券取引所と同じ機能を持つが、取引所としては登録せず、コンピューターによる取引を営利目的で行う。

2007年3月

BISが、OTCデリバティブの決済に関する報告書を公表

 BIS(国際決済銀行)のCPSS(支払・決済委員会)では、「OTCデリバティブの清算と決済における新展開」と題する報告書を公表した。
 CPSSでは、1998年にも、OTCデリバティブの決済に関するレポートを公表しており、今回のレポートはその続編の位置づけになる。
 1998年のレポートでは、①取引当事者間のマスターアグリーメント締結の不備や約定確認(confirmation)の遅延によるリスク、②カウンターパーティ・リスク削減のための「担保」の利用の意義、③「CCP(清算機関)」の利用拡大の可能性、の3点が課題とされた。
 また、今回のレポートでは、④プライム・ブローカレッジの意義、⑤元の取引相手の承諾を得ない転売(novation)のリスク、⑥主要プレーヤーの債務不履行(default)に伴い「一括清算」(closeout)が行われた場合の市場への撹乱的な影響、の3点が新たな論点とされ、これら6つの課題について分析が行われている。

 本報告書では、さらに改善が必要な課題として、以下のような点を挙げている。
1)コンファメーション期間の短縮化。特に、クレジット・デリバティブ取引において、コンファメーション未処理分(backlog)の削減に有効であった手段を他の商品にも拡大することにより、コンファメーション期間をプレイン・バニラ商品でT5日までに、それ以外の商品でもT+30日までに短縮すること。また、長期的には、日時ベースのポートフォリオの照合(daily portfolio reconciliation)を実施すること。
2)主要プレーヤーの一括清算による市場へのインパクトを抑制する手段の特定。
3)CCPサービスや情報倉庫サービスなどのポスト・トレードのサービス業者は、「オープン・アクセス」と「インターオペラビリティ」を確保するべきである。
4)証券決済システムや資金決済システムに関する国際基準をデリバティブの清算・決済サービス業者に適用するべきかどうかについて、検討すべきである。
 *証券決済システムに関する勧告、CCPに関する勧告、コア・プリンシプルなど。
詳しくは、ここから。

2007年3月

ノルウェーとデンマークのカード決済業者が合併

 ノルウェーの決済処理業者であるBBS社(Banking and Business Solutions)とデンマークの決済業者であるPBS社(Payment Business Services)は、カード処理業務で合併会社を設立することを決定した。新会社の名前は、NETS社(Northern European Transaction Services)で、BBS社とPBS社が50%ずつ出資する。
 
NETSは、北欧において、クレジット・カード、デビット・カードの決済処理業務を提供し、処理件数を現在の年間30億件から2008年末までに50億件に拡大する意向である。すでに、北欧最大の銀行であるNordeaが、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンのカード業務をNETSに委託することを決めている。
 今回の合併は、SEPA(単一ユーロ決済圏)に備えた動きである。SEPAの実現によって国境の壁が取り払われるため、各国ごとに分立していた小口決済業者は、国境を越えた競争にさらされることになる。20073月に発表されたAccentureのレポートによると、SEPAの成立後は、VISAとマスターカードが欧州のカード・ビジネスを支配することになるとみられており、国別のカード業務で生き残れるのは、せいぜい4つ程度とされている。
 今回の合併は、昨年9月のオランダのInterpay とドイツのTransaktionsinstitutの合併によるEquensの設立に次ぐもので、国境を越えた小口決済システム業者の合併としては2つ目のものである。今後、こうした生き残りに向けた動きがどこまで拡大するのかが注目される。
詳しくは、ここから。

2007年3月

ECB理事会がTARGET2Securitiesプロジェクトにゴー・サイン、プロジェクトは次期ステージへ

 38日、ECBの理事会(Governing Council)は、TARGET2Securitiesプロジェクト(以下、T2S)について、次のフェーズに進めることを認める決定を行った。
 ECB理事会は、20067月に、ユーロシステム(ECB+各国中銀)の決済システム委員会(PSSCPayment and Settlement Systems Committee)に対して、T2Sの基本設計(blueprint)と詳細なフィージビリティを20072月末までに行うことを求めていた。今回の決定は、これらの提出を受けて行われたもの。
 T2Sは、EU内の証券決済をTARGET2においてまとめて行おうとするものであり、これにより、証券と資金(中銀マネー)との同時決済であるDVPDelivery versus Payment)を実現することができる。しかし、これにより、証券決済機関(CSD)は、自分達のビジネスが奪われることになるため、欧州のCSDの団体であるECSDAなどが反対の立場を表明していた。一方、欧州の銀行界は、条件付(要件設定に対する自分達の関与、T2Sへの直接参加)ながら、プロジェクトへの支持を表明していた。

 次期フェーズにおいては、次の2つが行われる。
①ガバナンス体制の決定
 プロジェクトのガバナンス体制について、20074月末までに決定すること(CSDとその利用者の意見を反映できるようにするとともに、ユーロシステムがプロジェクトを十分にコントロールできるようにする必要があり、両者のバランスをとる必要)
②ユーザー要件についてのパブリック・コンサルテーション
 ユーザーの必要な機能(user requirement)に関してのパブリック・コンサルテーションを実施する。これは、20074月末までに開始され、2007年末までに終了する。

 ECB理事会では、このパブリック・コンサルテーションの結果を受けて、2008年初めにT2Sの構築についての最終決定を行う予定である。ドイツ、フランス、イタリア、スペインの4中銀が、T2Sの開発および運営を行う意向を示している(TARGET2の開発・運営を行う3中銀に、スペイン中銀が加わったかたち)。
詳しくは、ここから。

2007年3月

VocaLINKが合併へ

 36日、英国で小口決済システムを運営するVoca(従来のBACSが社名変更)とATMのネットワークを運営するLINKLINK Interchange Network Ltd)が、合併を行う意向であることが明らかになった。合併後の新社名は、「VocaLINK」になる予定。
 Vocaは、英国の電子的な小口決済を担当しており、わが国では全銀システムにあたる位置づけ。英国における給与振込みの90%以上、家計の公共料金等の支払の70%、年金の支払の殆どがVocaを通じて行われており、取扱い件数は年間54億件に達している。Vocaは、銀行間の送金、引落しの担い手としては、欧州で最大であり、欧州の銀行間決済の15%の件数を取り扱っている。
 一方、LINKは、英国における6万台のATMを結ぶATMネットワークを運営しており、年間30億件を処理している。
 2008年にも一部実現するとみられるSEPA(単一ユーロ決済圏)の環境下においては、各国の決済システムがユーロ全域を対象として、同じ土俵で競合することになる。このため、小口決済システム間の競争が国境を越えて激化するものとみられており、今回の合併も、SEPA対応に向けて体制強化を図るためのもの。
 今回の合併により、年間に80億件以上を処理する欧州で最大の決済処理業者(leading payments processor)になるとしている。
 なお、新会社のCEOには、VocaのトップであるMs Marion Kingがつくこととなっており、Voca主導の合併であることが窺われる。SEPAに向けた小口決済の統合の動きとしては、このほかにもオランダのInterpayがドイツの小口決済サービス業者と合併して、Equens社を設立する(20069月)などの動きがみられている。
 詳細は、
ここから。

2007年2月

SWIFTFpMLのパイロット・プロジェクトを開始

 SWIFTでは、IPネットワークであるSwiftNet上で、金融派生商品用のメッセージ・フォーマットであるFpMLを交換するパイロット・プロジェクトを開始した。機関投資家とカストディアンとの間で、取引通知(trade notification)の交換を行う。
 FpMLFinancial Products Markup Language)は、金融派生商品(デリバティブ)の取引および情報共有のためのメッセージ規格であり、金利デリバティブ、株式デリバティブ、クレジット・デリバティブなどを扱うことができる。
 デリバティブ市場(特にOTC市場)では、取引の急増から、ポスト・トレードの処理が追いつかなくなっており、清算・決済のプロセスにおける効率化が喫緊の課題となっている。
 こうした状況を受けて、SWIFTでは、20066月にISDA(国際スワップデリバティブズ協会、International Swap and Derivatives Association)との間で、FpMLの利用について合意していた。
 パイロット・プロジェクトは、BONYPIMCO、ステート・ストリート銀行など、10社の参加を得て、20076月まで行われる予定である。その後は、実用化ステージに入り、すべてのユーザーの利用ができるようになる見込みである。
 また、2007年後半には、マッチング・サービスであるSWIFTNet Accordにおいて、FpMLメッセージのマッチング・サービスの提供を開始することも計画されている。詳細は、ここから。

2007年2月

SWIFTに対する監督について欧州議会とECBが対立

 欧州議会では、このほど、データ保護法の観点から、ECB(欧州中央銀行)がSWIFTを監督(オーバーサイト)すべきとの決議案を可決した。
 これは、昨年、米CIA(中央情報局)が、SWIFTの決済情報をテロ対策のために活用していることが明らかとなり(2006623日付、ニューヨーク・タイムズ紙)、これがEUのデータ保護法に違反しているのではないかと問題になった事態に対応するものである(結局は、大きな問題はなしとされた)。
 この決議案(法的な拘束力はなし)では、ECBに、SWIFTEUの決済システムが、欧州のデータ保護法を遵守していることを確保するようなアクションをとることを求めている。こうしたアクションがとられると、SWIFTでは、EUの個人や企業のデータを米国のコンピュータ・サイトにミラーリングしたり、域外にバックアップ用のデータベースを作ることができなくなるものとされている。
 これに対して、ECB側では、データ保護は、中央銀行の権限の範囲外であり、また、データ保護についてのみオーバーサイトを求める理由が明らかでないとして反論している。そして、ECBでは、むしろ、EUの立法当局が、テータ保護とテロ対策が相反するような分野について法的な確実性をもたらすような立法を行うべきであると主張している。
 なお、SWIFTに対しては、すでに、複数の中央銀行によるオーバーサイトが定期的に実施されている(主監督当局は、ベルギー中央銀行)。

2007年2月

LCH.ClearnetEuronextの持ち分の株式の買い取りで合意

 LCH.Clearnetは、英国の株式・先物などのCCP(清算機関)であったLCHLondon Clearing House)とフランスのCCPであったClearnetが、2003年に合併してできた清算機関であり、欧州では最大のCCPとなっている。
 LCH.Clearnetは、このほど、最大の株主となっているEuronext(パリ、アムステルダム、ブリュッセルの3取引所が合併して2000年に誕生した証券取引所)の持ち分を買い取ることで原則合意したことを発表した。
 LCH.Clearnetは、現在、45.1%を取引所が、45.1%をユーザーが、残り9.8%Euroclearが保有する株主構成となっている。
 中でも、Euroclearは、41.5%を保有する最大の株主となっている。このうち、24.9%が普通株、16.6%が議決権付の優先株である。
 このうち、優先株については、1.99億ユーロで買い戻しを行う。また、普通株については、110ユーロでの買い戻しを行うが、5%については、引き続きEuronextが保有することとしている。これによりEuronextは、LCH.Clearnetの役員会で1つのポストを維持できる見込みである(現在は4つのポストを占める)。
 今回の合意は、実施に移す前に、他の株主の同意と監督当局の認可を得ることが必要である。他の株主への正式な提案は、2007年第2四半期に行われる予定である。
 本件は、Euronextとニューヨーク証券取引所(NYSE)との合併に対する監督当局の認可と関係するものとみられている。当局は、証券取引所-清算機関(CCP)-決済機関(CSD)が資本系列にある垂直モデル(vertical model, またはvertically integrated model)に対しては、反対の立場にあるとされている。
 詳細は、ここから。

2007年2月

OmgeoAlertサービスをアップグレード

 トムソン社とDTCCの合弁会社であるOmgeo(米国)では、従来から、証券決済のためのSSIStanding Settlement Instruction)のデータベースであるAlertサービスを提供してきたが、このほど、これをアップグレードした「Alert Plus」のサービスを開始した。
 Alertは、証券取引の決済条件(証券口座、資金口座など)であるSSIのデータベースであり、このデータベースに決済情報を事前に登録しておけば、照合済みのデータから、決済指図データを自動的に作成することができる。Alertは、国際的な証券取引を対象とするグローバルなデータベースである。
 新サービスであるAlert Plusでは、機関投資家やカストディアンなどが、大量の口座や決済データを、ウェブ・インターフェースを通じて、より簡便に迅速に管理することを可能にするものである。Omgeoでは、大口ユーザーを250以上のサブ・アカウントまたは、5,000以上のSSIを保有する先と定義している。
 Alert Plus では、新しい(または変更された)口座やSSIを、1回の作業(one action)によって、複数の先に追加することができ、個々の口座ごとの修正作業が必要なくなる。また、複数の口座やSSIに含まれているデータを一括して変更することができる。Omgeoでは、これらの機能により、口座やSSIをメインテナンスするための煩雑な手作業が削減されるとともに、データの完全性(data integrity)が保持され、コストとリスクが削減されるものとしている。
 このほか、Omgeoでは、AlertSID(米国内の取引を対象とするSSIのデータベース)の2つのデータベースの統合についても作業を進めている。詳細はここから。

2007年2月
日銀が金融メッセージのXML標準であるISO20022に関する論文を公表

 日本銀行では、金融研究所のディスカッション・ペーパーとして、「金融業務で利用される通信メッセージの国際標準化動向-XML標準ISO20022(UNIFI)による統合化の動き-」を公表した。ISO20022は、送金、証券取引などの様々な金融業務で利用される通信メッセージを標準化する枠組みであり、米国や欧州、SWIFTなどで導入が進められている。
 国際的な動きに乗り遅れないために、関係者は必読!
 詳細は、ここから。
2007年2月
SWIFTの新しいCEOにラザロ・カンポス氏が決定

 SWIFTの新しいCEOに、銀行部門のヘッドであったラザロ・カンポス氏が4月23日付けで就任することが決まった。カンポス氏は、15年間にわたりCEOを勤めたレオナルド・シュランク氏の後を継ぐことになる。
 カンポス氏はスペイン出身の43歳。SWIFTには、1987年に入社し、2003年からはSWIFTの主要部門である銀行部門(banking industry division)のトップを務めていた。
 この人事は、SWIFTの議長(Yawar Shah: JP Morgan Chase)と2名の副議長(Stephan Zimmerman:UBS, and Wolfgang Gaetner: Deutsche Bank)からなる指名委員会の決定によって決まったもの。
2007年1月
SWIFTが企業のアクセスの新サービスをスタート

 SWIFTでは、企業がSWIFTのネットワークに参加できる新サービスを1月からスタートさせた。このサービスは、SCORE(Standardised CORporate Environment)と呼ばれる。従来からも、限定的な方法(CUG:Closed User Group)による企業のアクセスは認められていたが、SCOREにより、企業は、統一的な方法により参加ができ、また複数の銀行との間でSWIFTのネットワークを通じたメッセージのやり取りが可能となる。SWIFTでは、昨年6月の総会において、株主の圧倒的多数(98.6%)で本件を承認しており、また2006年からパイロット・プログラムを行っていた。
 パイロット銀行としては、ABMアムロ、バンク・オブ・アメリカ、バークレイズ、シティ・グループ、ドイチェ・バンク、HSBC、ING、JPモルガン・チェース、ノルディア、ソシエテ・ジェネラル、UBSが参加していた。
2007年1月
BISと世界銀行が国際送金サービスに関する報告書を公表

 BISのCPSS(支払・決済システム委員会)と世界銀行は、1月23日に「国際送金サービスに関する一般原則」を公表した。
 本報告書は、国際金融機関(BIS、世界銀行)、送金国および受取国の中央銀行の代表者からなる作業部会が取りまとめたものである。本報告書では、国際送金(international remittance service)を決済システムの側面から分析した上で、同サービスを改善するための5つの一般原則を提示している。レミッタンス(国際送金)とは、移民や出稼ぎ労働者などが本国に送る送金のことであり、2005年中には、2,300億米ドルにのぼったものと推計されている。レミッタンスは、小額の送金額に比して手数料が割高である点、銀行を通じた送金サービスが使えない場合があること、送金に時間を要することなどが問題とされている。
 詳細は、ここから。
2007年1月
投資信託のペーパーレス化が実現

 証券保管振替機構(ほふり)では、1月4日より、投資信託の受益証券をペーパーレス化(電子化)する「投資信託振替制度」を開始した。これにより、投信の受益証券は発行されず、ほふりのコンピュータシステム上の電子的な記録(振替口座簿)により、受益権の発生、消滅、移転が行われることになる。
 同時に、日銀ネットを通じて、投信のDVP決済が可能となった。
 有価証券のペーパーレス化は、CP、国債、一般債(社債等)に次ぐもの。残るのは、2009年1月に予定されている株式のペーパーレス化である。
 詳細は、ここから。
2007年1月
EUが27カ国体制へ、ユーロ圏が13カ国へ拡大

 1月1日に、ルーマニア(人口2,200万人)とブルガリア(同800万人)がEU(欧州連合)に新規加盟し、EUは27カ国体制となった。
 また、スロベニア(同200万人)が、中・東欧諸国では初めてEMUに参加し、単一通貨「ユーロ」を導入し、ユーロ圏は、13カ国に拡大した。スロベニアは、2004年にEUに加盟した中・東欧10カ国のうち、初めてユーロを導入した。









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