U-23 AC-01再生をつめる

ファンには申し訳ないのですが、AudioCraftブランドには技術者はいても、音楽を奏でる器機は少ないと感じます。技術アイディアに凝って気難しい、堅い、面白みがない、音楽性に欠けると……。永く愛用しているのはフォノケーブル2本だけ、イクォライザーはじめその他器機は数年で放出、最近はAC-01も放出候補です。価格は中級クラスでもハイプライスですから、導入時にはそれなり身構えて、ヘッドシェルも同ブランドのAS-12KとAS-4PLを用意しました。しかし、デザインはなかなか良いが、音の方はどうもいまいち……。前回の評価でも、この価格で★無しはさびしい。そこで再生テクニックに誤りはないか、改善すべき余地があるか考えました。

上記ヘッドシェルは、パーフェクトロックと称して上下2ピン方式のジョイントで剛体結合を意図していますが、左右の傾き調整ができません。S字やJ字アームの場合、レコード盤面に降りた時点で垂直とはならず内周側が浮くように傾きます。これではLRチャンネルの読み取り精度は低下し、出力も不均等になります。愛用のSAECアームでは、専用のULS-3Xシェルとの嵌合部に僅かな遊びを設けて、この問題を解決しています。カラシニコフ銃のアイディアですが、CRAFTはこのあたり剛体化の前に基本試験を落としたようです。ついでながらortofon他、かなりのメーカーがこの課題を無視しており、技術評価としてマイナス査定します。フラットなヘッドシェル上面に水玉水準器を置いて確認すると簡単にチェックできますから、試みることをお奨めします。このことは、ヘッドシェルSuper Kite 開発の際に、AT-LH 18 tecnihardの長所として述べております。
http://www2.bbweb-arena.com/moon/myweb_maudio_028.htm

もう一点、リード線導体を入力ピンにハンダ付けして接点抵抗を低減していますが、技術進歩の洞察不足、より優れた導体開発の予見、ユーザーの好みによる選択と汎用性に対する配慮に欠けた技術的誤謬です。文頭で指摘したのは、これらトータルヴィジョンの欠陥を指します。シェル導入後、いずれもリード線交換できるようハンダ部を剥がしましたが、AS-12Kは通常ピンで汎用性がありますが、AS-4PLの方は、単線金属を断ち切った様な形で短く、しかも不揃い。シェルチップが抜けるので、やむを得ず特製の6NSilver線をハンダ付けしました。

画像1中央、AS-4PL右手オリジナル線と、交換した当時信仰の太め規格6N銀線。この状態で4年ほどになりますが、帯域狭く低域過多、抜けが悪く軽やかさがない。6N Silverは導電性が高く、断面積が大きくなるとパワー感とこの傾向が強くでます。PD-350の低域再生特性が、さらにこの傾向を強めている感もあります。問題点はあきらかでも、ハンダ付けしたピンの手直しが厄介で、死蔵品扱いしていましたが、このままでは勿体ないと手を付けました。

もう一点解決すべき問題があって、シェルかあるいは18gにウェイト調整したスペーサーの鳴きか、音にまといつく余韻で切れと軽快さが低下。スペーサーは非磁性体で硬質、タングステンかステンか? この付帯音発生をダンプし、先の左右傾きのキャンセル対策を併せて、手始めに外周側を厚めにした傾斜付き鉛板細工。

次にハンダ付けの6NSilver線を取り外し、以前AC-03(Mono)で、低域削減を意図して製作したZeusと替えてみたが、これは逆に高域が鋭くなって中域が薄い。6N Silver線導体Zeusは、試作段階で3本〜11本束まで試聴して、帯域バランス変化と癖はほとんど飲み込んで最適値の見当はつきますが、素材を浪費したくない事情があります^_^; そこで、AC-01の音質特性として高域にやや強い鋭さがあり、銀線の凜とした明瞭感とは違う優しさを与えた方がマッチしそうな気がします。

過去30年ほどの期間に販売された、いろいろな特性のリード線と
自作したリード線は売るほどありますが、問題点をクリアしてめざす音を引きだし得るのは数点しかありません。過去に試作した中から、これはとめぼしいのを取り出し、その構造と規格指標の一覧表と突合して??狎れによる怠慢、記録なし ^_^; 近作のようで導体表面の酸化皮膜は認められず、多分近作のA urora Ver.4近似の、ortofon高純度素材の試作品らしい(画像2)

ビス留めの上下双方にポリカーボネィトワッシャを噛ませて、やっとこのモデルが私好みになりました。空芯タイプではないようで、空間描写は好みとずれますが、気になっていた帯域は高低にバランス良く広がり、抜けの良い明瞭な弾む音、何処か優しさにあふれた音に変わりました。丸1日かけた愉しみ、結果は久し振りのヒット \(^O^)/ 前話の評価に★付けます(笑)
                            2014. 03. 04