T-24 オーディオ総括 f 特バランス
 audio趣味50年、居住環境を壊さず小遣いの範囲と云う条件で実践。転勤生活で、リスニングルームの音質への影響をさまざま体験。いつか専用ルームの願いは、最終勤務地札幌で実現。娘たちが近間の公立高〜国立大を家教バイトであがなって教育費僅少、その原資を振り向けて、終の住まいに小さなリスニングルームができた。

 好みの音楽を好ましい音響で再生したいと、工作と工夫、試行錯誤のセッティングと、システムを弄った。市販でみあたらないパーツは自作か特注。再生ノウハウは蓄積がある筈との浅慮は外れ、求める音響の形そのものが問い直され、未熟を思い知らされた。50年前MMカートリッジから、FR1-MkU、MkV、SATIN M-21、YAMAHA MC-1000と展開して、元気だがデリカシーに欠けるMM、芯のある再生が得意の鉄芯MC、ホログラフィックな空間立体音像の空芯型MCと、発電機構による再生の違いを感じた。しかし、そこから展開すべき試みは一時横道に逸れた。

 専門誌のライターは、新技術登場とCDをこぞって激賞!その言葉に踊らされて夢をみた。しかし、イメージした再生音は得られず、限界を感じた頃に新フォーマットが登場とは!そんな破廉恥技術を見限って元の立ち位置に戻り、求める再生音響は空芯カートリッジにありと確信し、空芯型を中心に20モデル程入手した。バキュームスタビ型プレーヤー3機に同一アームを備え、求める音の試み準備は整った。

 audio趣味の対象は、音か、音響か、その両立か?音の再生は容易だが、音響となるとリスニング環境や音楽ジャンルによって異り、それらが両立する空間音響技術はプロの領域。大型ホール音響に携わるプロから、大型ホールのクラシックライブでさえ座席位置に拘わらず好ましいプレゼンスを得る電気的措置が施されることを知った。目を閉じると、ミニルームの音響空間にステージのイリュージョン…そんな再生に挑んだ!

 MC-1000使用以降、80年代当時の技術で低出力カートからデリケートなpp音を高SNで引き出す一次増幅はトランス、今も再投資を避けてこれを踏襲。1 kgに満たないのから10kgもあるのまで試みた。重さと音質とはあまり関係なくDEN ON やSONYのハイエンドモデルに納得した。イクォライザーアンプはさらに個性豊かで無名の名機もあり、CR型でSNの優れた音質と表現力に魅せられた。

 プレーヤーとアーム・スタビ組みあわせで、興味ある体験。高級プレーヤーでは、ハイイナーシャとか重量級TTがもてはやされる。ハンドリングの悪さに目を瞑って、慣性質量1200kg・cmを謳うLUX PD-350に期待した。アーム・スタビは特注で正規品の1.5倍ほどの重量とした。しかし、重くて弾まない音…^_^;ムムッ このアーム・スタビを、ボックスタイプ筐体のPD-300に使用したら、頗る芳しいバランスとなった。システムを構成する、機器とパーツの組みあわせの妙……。

 狙いは輪郭鮮明で硬質感がなく、広帯域な音響が空間を舞う仮想音場を形成すること。やがて、そのベースとなる最重要テーマは再生帯域バランスと気づいた。高域寄りセットでは音は硬く鋭く尖り、低域寄りでは輪郭は甘く重くなる。重低音再生を求めるなら、太い導体、ダンプ材で暴れを抑え、吸音素材で高域吸音、重いスタビを組み合わせで多分成功する。高音のキレと分解能を求めるなら、その逆の素材で、要所要所をリジッドに締め上げ、再生SPの素材とそのモデル評価を参考すれば、狙う音質はほぼ実現できる。
  
 1億倍に増幅再生する低出力カートの可能性を求め、リード線を試作し始めて8年、芯のある質感表現に長けた鉄芯MCと単線導体、輪郭と空間描写に優れる空芯MC、輪郭をふんわりと軟化させる微細線束導体や編線導体等、カートにも導体素材にも方向があることを知った。その時々の回答を求め、最終段階では、吟味した導体素材とこれを最適化した二層構造導体に帰結した。

 測定機器を用いてf 特をフラットにして、音楽再生に優れるか?音質評価に絶対標準器はなく、それは評価者が蓄積した音響体験と、好みの音楽ジャンルと、その音楽自体のf 特性に依存する。ことさらの誇張を求めず広帯域で質感を求められるクラシック再生、演奏者やボーカリストの熱気が身近で弾けて迫るジャズ再生、ステージの歌い手とストリングスの表情や雰囲気を醸すポップス……。比較試聴体験少なくして評価は危うく、思い込みによる誤謬が紛れる。
 リスニング環境の反射、吸収、共鳴、機器を構成するパーツ素材、導体素材自体、それぞれ固有の音色がある。音色とは、素材固有の周波数帯域に関わる導電特性と、F特の凸凹なあばれや何らかの要因で生じた歪みに由来するか。機器自体からその要因を除くか、高額すぎるコストだったりリスクがあるなら妥協して、再生した音を二次処理する手もあり。発想したら何でもやってみることにして、2組のSPを並列駆動(Wide Area Cover Sound)、各Ch SPを逆オルソン配置、中央にビヤダルパラゴン音響反射板?

 優れた録音のテスト盤を聴き込むほどに、再生のどこかで、ここをこんなイメージで再生できたら…、と欲が出る。そこで妄想的音響仮説と発想が……。現在の課題は整音材、絹素材を用いて吸音試験中。
                                                      21th.May.2016