T.Memory of My Audio: オーディオにまつわる思いとエピソード。
オーディオにまつわるエッセイ。従来のHPカテゴリーを三部構成として再編成し、オリジナル原稿が書かれた時代背景と現在のタイムラグを修正しつつ、稿を改めてスタートします。
転勤を伴う勤めを終えて2年後、終(つい)の住まいと念願の小さな専用ルームができました。趣味が再燃して、Audio談義がスタートしたのはこのときです。
オーディオ趣味とは、独善と自己陶酔の世界。それ故に喜びは深く、たかがオーディオされどオーディオの泥沼。思い返すと、オーディオに憑かれて50年近くなりました。メイン・ソースは当初から変わらずアナログLPですが、近年は価格高騰著しくサラリーマンの趣味から遠のいてしまいました。
いつの頃からか、オーディオ趣味とは高額装置を所有することであるようなメーカーとショップの姿勢、それに乗せられるユーザーによって、オーディオはマニアックな趣味と見られるようになって肩身が狭い。
そればかりか、自分が辿ったオーディオ生活は、誰にも容易だった趣味の時代ですら、妻の犠牲の上に成り立っていました。音響趣味なるもの、人の好みと快さという主観的な感覚でしかありませんから、共通の感性がない限り理解を得るのも難しい。
音響の不思議な魔力にとらわれ、快いイリュージョンに身を任せる至福の桃源郷、この贅沢な喜び。一度踏み込むと、さらなる高みへと犠牲を増大させる泥沼、天国と地獄を併せもつ趣味……。
遠い昔、オーディオ熱発症まもない頃、ショップのハイエンド試聴室の音に身を包まれた体験、あれは別世界の幻想だったのか? 最近のオーディオ機器でそんな体験は極めてまれで、価格だけは驚愕体験となったりします?
人と音楽の接点で、オーディオは進化していない。人を置き去りにしてオーディオ機器だけが進化している感があります。オーディオの衰退は、再生音響に携わる企業、技術者、そしてオーディオ道案内 Conductorの力量不足かもしれません。
2011年現在、少しは人に伝えたいこともあります。オーディオとは高額機器を弄る趣味ではなく、感性を養うことなんだ。快く音楽を聴くために使いこなしを知ること、工夫も工作もいとわないこと、これがA udio の王道だと……。
2011.12.14