V-02 オーディオ道楽の原点アナログ音響対策
オーディオの楽しみには、音を聴く楽しみ、音を改善する楽しみ、自作する楽しみもあります。若い頃から低コストがモットーですから、スピーカー自作にも2度挑戦しました。音質改善の試みは、楽しみも多くあり、失敗もまたたくさんあります。
ハイファイをめざすには、まずSN向上対策、次いで、動くべき部分はできるだけ動きやすく、動かざるべき支点はいかに不動とするか。第三がリスニングルームの音響調整、最後が伝達経路でのロスと歪みを押さえるケーブル対策でしょうか。これらはすべて、素人が可能な対策です。これを超えるのは、機器のグレードアップになりますが、際限ないのが趣味の世界、どこかで妥協が必要です。
さて、SN比向上対策。この点CDプレーヤーはきわめて高水準ですが、手を加えて音を変えることは難かしく、せいぜい電源まわり程度。またはトランスを介在させるとか、インシュレーターでお茶を濁すくらい。それらの対策も、結局は本質的に素性のよい製品に勝てないように思われます。
これが、アナログディスクプレーヤーなら、一つの対策で大きな効果があります。ADプレーヤーは設置対策だけでも際限なく考えられます。まずハウリング対策。指向性マイクをスピーカーに向けると、突然グワーンとスピーカーがうなる現象です。スピーカーから放射された音波が床を介してプレーヤーへ、または空気を介して直接カートリッジに再入力されるというループを断ち切る対策です。アース回路も重要です。
プレーヤーの制振、重いベースによって振動をダンプするか、ゴムのような軟弾性体で吸収するか。バネや空気でターンテーブルを浮かすインシュレート策もあり、マイクロのエアーベアリングは有名です。高級機では、プレーヤーの自重で外部振動をダンプし、かつ回転変動(フラッター)をターンテーブルの慣性モーメントの巨大化で解決すべく、メーカー競って数十kgを超えるプレーヤーが現れました。「回転変動はモーターに起因するだけでなく、ピックアップ時の針抵抗によっても生じる」、という江川氏の説も記憶にあります。
ワウ・フラッターは長短周期の異なる、回転変動に伴う音揺れです。これはモーターと、ターンテーブルへの動力伝達方式によって変わります。アイドラー方式、ベルト方式(変法として糸ドライブ)、ダイレクトドライブ等さまざまです。私は、初代がトリオのベルトアイドラーダブル方式、ついでデンオンのダイレクト方式、最後にラックスのベルト方式に落ち着きました。
オーディオは重厚長大をもって良し、とされた時代でした。スピーカーについても同様、DENON 中型モデルSCR99は、エンクロージャー内部にブロック状の重量物を貼り込んで重量62kgありました。私は、同クラスのヤマハNS1000X、ダイヤトーンDS2000HR、ビクターFX9を比較試聴して、FX9を採用しました。高低帯域バランス、透明感のあるほぐれた響きがトップでした。英国T社の薄板エンクロージャーは箱鳴りを聴くようなものと誹謗もありましたが、オーディオ機器は重ければよい、と言うものでもないようです。
次は、動く部分はできるだけ軽く動き、不動部分は決して動かない対策。これはアナログ機器では、音の濁りを避ける上で重要です。スピーカーの設置では、床の補強と、ガタを完全に取りのぞき、さらには良質なインシュレート材を探します。フェルト、ゴム、鉛薄板、コルク薄板と試して、簡単で音質変化も少ないコルクを愛用しましたが、現在は硬質金属の自作インシュレーターを採用しています。
さて、ADプレーヤーの可動部と不動部の徹底対策、江川三郎氏の説は色々実行しました。カートリッジの締め付け、リード線やワイヤー類の最短化のせいで設置の自由度はほとんどありません。現在は、良質素材導体によって、このセオリーも無用となりました。
プレーヤーの二代目はDENON製で、木製キャビネットにDP3000モーター、優美なアームDA-305。このプレーヤーは音の焦点が甘く、何とかしようと試みて失敗しました。サーボ制御のDD方式でしたが、慣性モーメント派の重量級ターンテーブルと較べて何とも頼りない。バランス調整のためか、ターンテーブルの周辺部に楕円の掘削がありました。慣性モーメントを高めようと、そこに深さの半分ほど鉛を流し込みました。音が滑らかになって、これは良しと深さいっぱいに埋めました。結果は、サーボが効かなくなった!
トーンアームベース固定部には、ゴムブッシュが介在していました。これは微細な情報を欠落させる要因になると判断、ゴムを取り払って鉛を流し込み、ナットを完全固定しました。音は激変、キンキンした高音部だけとなって、低音部とのバランスが全くとれない! しかも、鉛はどうやっても取り除くことができません。数ヶ月後、改造のことは内緒で下取りに出しました。これ購入した方、ごめんなさい m(_ _)m
さて、ラックスのバキューム式プレーヤー採用には、理由があります。ある日、DENONターンテーブルシートを裏返しにして(裏面はなめらかな平面)レコードを載せ、白く浮いた粉っぽい埃(レコード盤成型時の塗布材?)を、ナガオカのクリーナーでごしごしと拭いた結果、すばらしく微細な情報が聴けました。レコードを取り外そうとしてびっくり、静電気でゴム盤と一体になっていました。音溝と針先も電気的に密着してトレースできたのか? レコード盤とシートの一体化によるマスの増加は効果ありと判断しました。