V-13 密閉型玉石スピーカーベース製作

 音のクォリティを高める試み、オーディオ基礎技術を組み合わせたり、新たな可能性を試行するのは愉しいものです。思いつきは、実践してみなければ答えのでないことも多いですが、明確な音響イメージをもって取り組まなければ迷い道に踏みこみます。求めるのは軽やかに舞う音響であり、自然な音場感と定位感です。

 スピーカーから放射された音は、SP周辺やリスニングルーム空間で反射したり共鳴したり、低域振動はエンクロージャーを揺すり、底板から床に伝わります。ピュアな音響を生みただすには床構造から対策するのが理想でしょうが、住宅の基礎からSP設置ベースまでコンクリートで固める話も聞きまが、やり過ぎると失敗も多いようです。SPの直接放射音と、共鳴や反射で生じる音響全体をバランスさせることが肝心です。

 まず手始めに床の弱さをカバーするSPベースや、インシュレーターなどのアクセサリーによるコントロール。久々の工作は、友人に奨められて『玉石ベース』の制作です。動機はSX-900Spiritと、ZERO FX-9のベースとの高さに差があって、これを揃える意図です。SX-900Spirit付属 Independent baseに外寸をあわせ、両SPユニットの高さをそろえる狙いです。この細工と調整、SPとあわせた重量は200kgを超える重労働になります。

 メープル無垢材あたりで制作したいと、企画図面を持参して資材店にでかけました。しかし、注文通りと言うわけにはいかず、結果は現物あわせ、コツコツ叩いていい音のするのを探して、ほとんどを道産材で調達しました。底板だけはパイン合板19mm厚、側板は白い木肌の赤エゾマツ無垢材24mm、天板は家具やバットに使うタモ無垢材22mm。那智黒石は大粒しか在庫がなく、密度を上げるため小粒ジャスパーと半々としました。

 

 かつてSP造りで鍛えた技、側板の接合面を45度傾斜カットで角は稜線1本となつて見栄よくします。そこに、底板が嵌って、ピタリと一体化するもくろみで……。しかし、何故か側板を組んだ枠に底板がピッタリ嵌りません。腕が落ちたなあ……。実は、企画図で予定した板厚と使用材の厚さが僅かに違って、カットした底板が一回り大きかったようです。

 さて、できあがった密閉玉石ベースの試聴では、クッキリ明瞭な音。しかし中高域が甲高く感じられ、以前の綺麗な余韻感が減じました。 低域の変化は大きく、伸びと音程が明瞭となりました。ただ、全体のバランスと印象は激変し、一言で表現すると、アナログLP音からデジタルCDの音への変化といったら、当たらずとも遠からず。改善されたという評価より、私の好みとは違う方向に変化した感があります……。

 玉石ベースの原理は、音の振動を玉石の振動摩擦で熱変換して減衰させるとの由、オリジナルはウェストミンスターで使用。アドバイスは玉石同士が密着するだけの圧力が必要で、玉石の上に直接厚板ベースを載せてスピーカー自重がかかること。音(振動)を石で直接受けるか、側板を介して伝えるかでは、かなり違います。私のは密閉ボックス構造ですから、玉石への直圧不足となって甲高い音になるのか……?

 翌日、できるだけSP重量圧を玉石で受けて、その圧を底板から床に伝えやすいように外枠を作り直しました。内部には那智黒石、ジャスパー、細粒状黒色角石、およびSS400綱インシュレーター試作品のあまりを天板が盛り上がるだけ入れて押し込み、木ねじと釘で止めました。完成重量21kg、さらに2度の細工で疵ついた側板をマホガニー塗装も。

 1度目の塗りが終わるころ天候急変、強風が吹き始めました。急ぎ2度目の塗りは原液そのまま厚塗りで、まだらを我慢して乾燥。3時間後には雨! まだべとついてシンナー臭の強いのを部屋に運び込みました。まだまだ重ね塗りが必要ですが、これはいずれまた……。

 セットして音だし。良いですね〜。すっかり変貌しました。柔らかで、鮮烈な切れ込みと美しい響きが出ます。 ダイアトーンの高級SPを柔らかく磨きあげた感じか? 中高域あたり、一寸突っ張る感じは、SX-900 Spiの個性かも知れません。ピアノ曲、ギター、女声ボーカルと聴き込んでいくと、SS400綱インシュレーターの特性がでているような気もします。

 これで東側2帖のスペースに、SP4個+ボード210kg、ラック×2+機器類190kg、TV+レコードの半分クラシック盤が300枚〜、おそらく500k gを超える重量が載っている筈で、妻が心配してます。私は『大工が、大丈夫と言ったから大丈夫』、とは言っていますが、ピアノくらいは大丈夫という話で、すでに倍の重量になってます ^_^;

31th.May.'07