V-14  アーム更新、DL-1000Aの昇天と蘇生
 
 季節は突然に晩秋の冷気、芝生が初霜で白く光るアナログの季節到来!ハイインピー系カートリッジに使用の WE-308Nは、SAECのエントリークラスですがなかなかの実力、ステンパイプの微かな響きがのって軽やかで明るい分解能、若々しさがあってポップスには好適です。グレードアップするとどうなるのか、気になっていました。

  最近、SAECの最上級アームWE-308SXの中古価格が落ちつき傾向、チャンス到来と3本目のSAECアーム入手です。見た目はWE-308Nとそっくり、ナイフエッジにルビーを使用しています。帯域バランスを追い込んだ違いがあるようで、低音域が拡大して音の沈み込みが深くなり、弾力的で渋目のいわば大人の味です。これもステンの味がのって、熟成した大人のちょいワルオヤジを感じます。

 ついでながら、20年来使用しているWE-407/23は感度抜群、しかし癖がなさすぎて面白味がないか。コンコルド素材と共通といわれる素性に起因するものか、それとも設計全体に関わるものなのか、丁度AccuとLuxのアンプで感じるような違いがあります。

 役者がそろったところで、最近のテーマはリードワイヤーと周辺小道具の組み合わせを愉しむ毎日です。導体による音の変化は、導体金属の違いや純度、精製法による分子配列構造等による物性の違いによって、電子の流れの『速さ』と『ゆらぎ』が変わると仮説して、8NCu、7NCu、PCOCC、リッツ線、かなり昔のタフピッチ銅製まで、リードワイヤーは10種類近く集めました。

 久しぶりにDL-1000Aをセットし、サイモンとガーファンクルをセットし、盤面に針を落とす……。『ダンダ〜、ガ〜、ガガ〜ガラ、……』明日に架ける橋のイントロの弦の音が?何とショップで中古購入後、実使用時間20時間に満たないDL-1000Aが、昇天した! 数日来、Mixi仲間で折損談を競うように笑いあったばかり、ライラのヘリコンをターンテーブルにぶつけ、ZYXの針を3回飛ばし、Technicsの軽針圧カート……。皆で、笑いものにした祟りだ^_^;

 ガリガリ雑音の向こうから、不完全ながら曲を再生している。スタイラスチップの一部が欠け、カンチレバーの先端が細いため、その部分で音溝をトレースしているか? これは初体験です。まだ針圧調整リングが硬いWE-308SXで、カート丈が低い DL-
1000Aにあわせてアームの高さ調整したり、0.8gの微妙な印加……、どこかでミスしたかとの思いもよぎります。

 愛用キャノンでスーパーマクロ撮影、縦から見ても横から見ても、やっぱりチップはない……と、しかしよく見ると、チップがボロンパイプを突き破って裏側に出ています! YAMAHA MC-2000と軽針圧ローマスで1,2を争った極小チップは、接着剤も微少だろうし、経過年数による劣化か!

 analog誌紹介の、ラウンデールリサーチ案浦(あんのうら)さんに電話してみました。MC-1000は案浦さんがチップ付けして、Y AMAHAに納めたものだそうです。DL-1000Aのチップはボロンパイプに孔を開けて刺し込み、接着剤で固定しているとのこと、その劣化とみて間違いないようで、復活の可能性大です。

 案浦さんはすべてがアナログ、連絡も電話と手紙の世界です。実はYAMAHA MC-1000の復活も期待して、DL-1000Aと同封で発送したのですが、素人向け説明のつもりでしょうが、カンチレバーとスタイラスチップの区別なく『針交換できます』の回答、カンチレバー交換のようで、これは取り止め。

 10日ほどで修理完了。以前セットしていたULS-3XにはDL-3 05装着済みのため、AT-LH18と組みました。まだ、補修後のエージングが進まないせいでしょうか? 溌剌、クッキリ、高域にパンチのある張り! DL-1000Aが全く違った一面をみせます! オリジナルチップの接着が片面だけだったのを、両面接着に強化されて剛性が高まったのかも知れません。軽快さと芯のある溌剌さが両立した、私好みの音です。

 数枚のレコードを聴いて、トーンアームが代わって低域再生帯域が格段に拡大したことに驚きました。80年頃DENON PMA -970(PRA-2000と同等のEQA搭載)を初めて聴いた感慨、あのときの、ピラミッドバランスな腰のすわった音の出方を連想させ、L-540のやや腰高なバランスを払拭するとは!

                          11th. Nov.'07