V-23 ピックアップ音響経路をつめる工作
最近、カートリッジで生成した微弱電流の伝導に関わる電子動態に興味があります。もっぱらMCタイプを使用し、それも一時代前の0. 2mV以下の低出力タイプですから、せいぜい数十ナノWの原情報を数Wの出力まで1億倍の電力増幅となり、初段情報の大切さは他のソースの比ではなく、電子レベルで対応すべきと考えます。
リード線には課題が多く、当初は購入で解決をめざしましたが、費用が嵩んで自作やむなしと覚悟しました。これは意外に奥深く、ついにめざしていたレベルに達した成果は、広く同好趣味仲間に試みていただくことにしました。Moon Audio工房スタートは予想外の展開でしたが、ピックアップ回りにはまだまだ改善の余地ありです。
微細な音情報は、波動のある電流(電子に逆向)と物理的振動も加わって、カートリッジからヘッドシェル、トーンアームへと流れて固有の音色を作りだします。自由に振動させるかダンプするか、吸音すべきか共鳴か、異種材組みあわせて減殺するか、軟結合か剛体結合か、めざす改善方向から誤りなく判断しなければなりません。
カートリッジとヘッドシェルを結ぶリード線の最適組み合わせ、さらにユーティリティの向上は是非とも解決したい。SAECトーンアームと、シェルはULS-3X 4本の他、重量調整してAT-LH18を使用していますが、組み合わせとしては過渡特性が良く俊敏な響きのカートリッジはセラミック系を避け、ジュラルミン系と組みあわせます。
AT-LH18は癖がなく、左右水平バランスやオーバーハング調整ができますが、Finger hookが小さめで、最近、老化の影響か、つい勘が狂ってカートリッジを弾いてしまう事があります。さらにネジ山はシェル上面まで貫通ではなく、カートリッジ側にネジ山があるOrtofon等と組み合わせることはできません。ULS-3Xではエラー体験はありません。そこで、1.5mm厚アルミで鳶が羽を拡げたような大型のFinger hookを製作しました。これで指がちょっと滑っても、余裕があります。
ヘッドシェルとカートリッジとの締め付けは、スリット状の空隙よりも剛体結合となる一点貫通孔としました。Ortofon MC30Sで試作し、これは大成功!カートリッジとヘッドシェルを貫通して締めつける剛体結合によって、余計な付帯音が減じて音場がクリアになり、マスクされていた微細情報が美しい音となって立ち現れました。Ortofonの特色とも云える重層的響きはやや抑制され、輪郭の鮮明さと、響き具合の解け合い方が好ましい方向へと変化しました。
最後にBENZ MICRO GLIDER-SL。過渡特性の良い妖刀村正のような鮮烈な表現ですが、ハイライト部の輝きが強過ぎてpp(ピアニシモ)の余韻が不足、一本調子となりがちです。このスピード感命のカートリッジと、セラミック系シェルとは配合禁忌です。かといってAT-LH18では、ビス止めベース部が薄いため締めが軟結合になりがち、ウッドボディを架装した改善工作もイマイチ不満が残ります。
最後は、上下から締め付けるべくAUDIO CRAFTのAS-4PLと組みました。全体を蔽うように架装したウッドボディは、多分に視覚要素のためか閉塞感を感じたりします。どの程度蔽ったら響きが良いか試行錯誤的に詰めて、へそ出しミニスカート程度でベスト(笑) 本来の吹っ切れた開放感と、微弱情報の余韻感の両立めざして何度も改善の繰り返して、これもやっと到達点に辿り着きました。
14th Apr. '11
オーディオ導体ケーブルに関して、異常な高価格で高性能を謳い、あるいは逆にまったくのプラシーボ(偽薬)効果に過ぎないと、もっともらしい反駁もあります。オーディオとは微少な電気情報を電力増幅したエネルギーによって再生するのですから、オリジナルの原波形に内外ノイズによる歪変化を与えないことは重要、導体純度や振動、外部ノイズを遮断することで効果があるのは当然で、ケーブルも高音質化の重要パーツです。
ケーブルに限らず、オーディオ論争は屡々白熱します。オーディオは高度レベルとなるほど微妙な音の変化を追い求め、それは個人的嗜好によって磨かれるレベルの話ですから、評価の物差しが違ったりします。ブランド信仰であったり、高額機器信仰であったり、計測器をよりどころとするマニアであったり、使いこなしを至上とするマニアであったり、価値観の異なる論争は苦笑するよりありません ^_^;