Seiren 8 2LCは、新たな工房を代表する神話シリーズ最上級モデルです。 Seiren(セイレーンは、妖しくも美しい陶酔の音響で船乗りたちを惑わすギリシャ神話の魔女で、この音響をイメージしたシェルリード線です。2020年3月にリニューアルした Seiren 8 2LCは、オリジナルSeirenから数えて5代目モデルです。

 Seiren 8 2LCの音質は、これ見よがしのHiFi 感より、むしろ深い透明感、艶のある緻密で豊かな中音域にあり、カートリッジの能力を余すところなく引きだしてLP再生の魅力を深めます。高品位なアナログ再生のトロリとした響きが感じられ、特に魅惑的な女性ボーカル表現は秀逸です。国産カートリッジにありがちな高域が神経質に感じられたり、あるいは潤いが不足しがちな場合にお奨めです。なお、当初やゝ甘く感じるフォーカスは、10時間程度のエージングで明瞭な輪郭に変化します。

 Seiren8 2LCは、超高純度ortofon 8N 素線材を鏡面仕上げし、精緻な二層構造導体(Double Layer Conductor) に仕上げました。二層構造導体は、表皮効果による表層の高域電流と、素線材の導体断面積による低域とパワー感との相対的な高低音質バランスに優れます。S eiren8 2LCは内層に ortofon 8N 0.254mmφ4本、 外層にortofon 8N 0.18mmφ7本、導体断面積0.355mm2は、シェルリード線として音質バランスに優れた理想的な規格です。

 リニューアルしたSeiren 8 2LCモデルでは、ハンドリングにも留意し、カートリッジ出力ピン接続側に1.20mmφシェル・チップを採用、ヘッドシェル入力ピン接続側には1.0mmφシェル・チップと、それぞれの端子接点の導電性と密着度を高め、スムーズな接続が可能になりました。使用ハンダは、最高級(株)日本スペリア社製鉛フリーハンダ、ゴールドニゲカス040で、音質、耐劣化特性とも優れます。

 鏡面仕上げ二層構造導体の製作法は、ortofon 8N素線の表面酸化皮膜を無害な薬品で処理後、不織布(クリーニング・クロス)でr ub処理して鏡面に仕上げます。 この素線を、手作業で内層に細撚線、外層に微細線を巻いて精緻な二層構造導体に仕上げます。右図は実際の製作過程で1/3程巻き終えています。
 
Seiren 8 2LC 二層構造鏡面仕上げ、導体断面0.355mm2 

 右図は多層構造による表皮効果の概念図で、径の異なる素線(細線、微細線)で構成した導体断面を示します。

 黄色で示したのは、導体表面からある深さの表層を流れる高周波電流でオーディオ帯域の高域情報に関わります。褐色で示した内層の細線・太線は低域情報と電力パワーに関わります。
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