I Was Born To
Love You
〜貴方を守るために〜
1.
「兄上・・・ごめんなさい・・・」
ファラミアが言った。
ボロミアは笑いながらファラミアの柔らかな金の髪をくしゃっと撫でた。
「ファラミア!もう何度謝ったんだ?何度も言っただろう?
お前のせいではないと。責められるべきは私だ。」
「でも・・・私がわがままを言ったから・・・」
「いや・・・もともと連れ出したのは私だ・・・」
「でも・・・」
そう言い掛けたファラミアの言葉をボロミアが遮った。
「もうやめよう。きりがない。そんな顔をするな。」
そう言ってボロミアはファラミアを抱き上げた。
「あにうえ・・・」
12歳にしては大柄なボロミアは7歳にしては小柄で華奢なファラミアを
易々と抱き上げることが出来た。
「とにかくここにいよう。」
ボロミアがファラミアを抱き締めた。
「はい・・・」
三度目ののドル・アムロスだった。
母フィンドゥイラスが亡くなるまではほとんど付き合いもなかった・・・
と言うよりも母フィンドゥイラスをミナス・ティリスに留めておきたいがために、
父デネソールが故郷に繋がるものを彼女の身近から全て排除していたのだが・・・
母の兄弟であるイムラヒル大公の元に、ボロミアとファラミアは最近は2人で訪れる
ようになった。
イムラヒル大公も二人を歓迎してくれた。
今回も二人で遊びにきていた。
「ボートで向こうの島に渡ろう。」と言い出したのはボロミアだった。
ファラミアは海があまり得意ではない。
ボロミアがイムラヒルに連れられて海に入って泳いでいても、ファラミアは
波が届かないところで座って見ているだけだった。
「ボートなら泳ぐ必要もないから。」と言い含めてファラミアを乗せた。
ファラミアは恐がってボロミアに縋り付いていた。
ボロミアはそんなファラミアが可愛くて、ボートで島まで渡った。
その時は、島から陸までは大した距離ではないし、いざとなれば泳いでも帰れる、
と思っていた。
だが、それは遠浅のドル・アムロスの干潮時のことだった。
島に渡ると、見も知らぬ花や木、海の風景にファラミアが夢中になった。
「帰ろうか?」
そう促したボロミアに「もう少しだけ・・・」とファラミアが言った。
ボロミアも楽しそうなファラミアを見ているのは楽しかった。
しばらくは二人で小さな島を探険していた。
ぽつりと冷たいものが落ちてきて、随分と時間が過ぎたことに気付いた。
もとの場所に戻る頃には雨は土砂降りになっていた。
ボロミアはもとの場所に戻って呆然とした。
満潮になった海では陸地は遥か彼方だった。
しかも、悪いことに雨と荒れ始めた海のせいでボートが海に流されてしまった。
「私があの時、素直に帰ると言っていれば・・・」
ファラミアが泣きそうな顔で言った。
だが、ボロミアも一度尋ねただけであとは一緒になって遊んでいた。
「お前のせいじゃない。」
ボロミアがファラミアを抱き締めた。
大きな木の下で雨を避けて立っていた。
ボロミアはファラミアが濡れないように庇う様にしてファラミアを自分の
腕の中に入れていた。
冷たい雨はボロミアの体温を容赦なく奪っていった。
(寒い・・・)
だが、今、それを口に出せばまたファラミアが気に病むだろう。
何より、ファラミアが不安になるに違いなかった。
(私がファラミアを護らなくては・・・)
身体もあまり丈夫ではない小さなファラミアをこんな目に遭わせてしまったことを
ボロミアは心の中で悔いていた。
自分をすっぽりと包んでいるボロミアの身体がガタガタ震えだしたのに気付いた
のは少し前だった。
ボロミアはファラミアが濡れないように、一番濡れない木の幹のすぐ傍にファラミアを
立たせ、自分の身体で包むようにして抱き締めてくれた。
恐かった。
だが、それを言えばボロミアが困るだろう。
ファラミアは心の中で言聞かせていた。
(兄上が居るから大丈夫。)
だが、その兄の身体が次第に震え始めていた。
心配になってボロミアを見上げるとボロミアはにっこりと笑ってくれた。
兄の笑顔はファラミアに束の間の安心を与えてくれた。
だが・・・
ボロミアの身体がぐらりと揺れた。
「兄上?大丈夫ですか?」
「あ・・・ああ。大丈夫だ。」
「座ってください。ここは地面が乾いています。」
ファラミアは自分が立っていた場所をボロミアに譲った。
ボロミアは崩れるようにそこに座り込んだ。
ファラミアは恐る恐るボロミアの額に触れた。
燃えるように熱かった。
「兄上・・・熱があります。」
ファラミアの声がした。
ファラミアは心配そうな顔でボロミアを覗き込んでいた。
「大丈夫だ。」
ボロミアは笑顔を作ってみせた。
だが、ファラミアの表情は泣きそうだった。
とにかく寒かった。
ボロミア両手で自分の身体を抱く様にして縮こまった。
少しでも暖かくなるように。
だが、襲ってくる悪寒に身を震わせるだけだった。
ボロミアの顔色は真っ青だった。
(どうしよう・・・私のせいだ・・・兄上に何かあったら・・・)
ボロミアはファラミアにとって誰より大切な人だった。
辺りは真っ暗だった。
恐い・・・心細い・・・
だが・・・
(私が何とかしなくては・・・兄上は病気なのだ。私が・・・)
ボロミアを守りたかったから。
ボロミアを無くしたくなかったから。
「兄上・・・ここにいてくださいね。」
ボロミアは朦朧とする意識の中でその声を聞いた。
「ファラミア?」
「大丈夫です。雨宿り出来るところを捜してきます。」
ファラミアが言った。
「待て・・・私が・・・」
「兄上はここに座っていてくださいね。」
それだけ言うとファラミアが駆け出したのが解った。
だが、立ち上がることは出来なかった。
島の東側から上陸したのは解っていた。
東側は大体歩いた。島は自然のままに美しかったが、通った道は獣道ではなかった。
(つまり、誰かがこの島にしばしば来ているっていうことだ・・・)
だとすれば、うまく行けば小屋くらいは見つかるかもしれない。
(東側にそれらしいものはなかったから・・・)
西側に行けば・・・そう思って走りだした。
小さな島のこと、幸い、すぐに小屋は見つかった。
中は思いの外綺麗だった。
火を焚けるように簡素ながら暖炉も出来ている。
(森の中はそんなに雨があたっていなかったから、木もそんなに湿っては
いないはずだ。薪も取ってこよう。)
「兄上、立てますか?」
その声にはっとした。
「ファラミア?」
「少しだけ、歩けますか?」
重い瞼を上げるとファラミアが気遣わしげな眼でボロミアを見ていた。
「ああ・・・」
やっとの思いで立ち上がった。
ファラミアはボロミアの傍らに立った。
いつもと違うのはファラミアがボロミアを支える様にして腰に手を回したことだ。
ファラミアが自分を気遣ってくれているのが解った。
「大丈夫、歩けるよ。」
最後の気力を振り絞って歩き出した。
気が遠くなるほど長い時間のような気がした。
「大丈夫ですか?」
度々ファラミアが尋ねた。
ボロミアは頷いた。
「あそこです。」
ファラミアの声が遥か彼方で聞こえた気がした。
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サイト開設当時から私のサイトに通ってくださったNIMA様が「星の砦」という
サイトを始められました。
ありがたいことにNIMA様よりリンクの申し出を頂きました。
この話は相互リンク記念にNIMA様より頂いたリク「貴方を守るために」です。
戦いで互いを庇い合う話、とか色々設定を考えてみたのですが、今回は、子供時代に
幼い兄弟が自分のできる精一杯のことをして互いを守ろうとする話にしてみました。
タイトルはクィーンの曲より頂きました。去年だったかキムタク主演のドラマに使われて
いた曲なのでご存知の方も多いと思います。
「私は貴方を愛するために生また。貴方を守るために生まれた。・・・貴方は私のもの、
私は貴方のもの・・・」という歌詞の内容がピッタリなのではないかと・・・
NIMA様、書きあがるまで、話の長さの把握の出来ない私のこと、少し長い話になって
しまいました。サイトの邪魔者になったらどうしよう・・・とちょっとビビっています。
ごめんなさい。
2005.03.18. Jeroen