I Was Born To
             Love You
 
             〜貴方を守るために〜



2.



 小屋に入った途端にボロミアは崩れるように座り込んだ。

 「ここに居てくださいね。」

 そう言ってもう一度立ち上がった。



 ファラミアは森に取って返し、両手に抱えられるだけの木の枝を持った。

 これだけではすぐに燃え尽きてしまうだろう。

 だが、これがファラミアの精一杯だった。

 小屋に戻ると兄は小屋の片隅で蹲って震えていた。

 「待っていてください。今、火を・・・」

 だが、ファラミアは火など一度も熾したことはなかった。

 「どうしよう・・・」

 ファラミアが泣きそうになった時、小屋の扉が開いた。



 「誰だ?お前たちは・・・」

 低くて力のある声にファラミアは竦み上がった。

 髭だらけの大男だった。

 (恐い・・・・)

 引っ込み思案で人見知りのファラミアは普段なら、兄の後に隠れてしまうだろう。

 だが、ボロミアは今、病気なのだ。

 自分がやらなくては・・・

 「留守中に勝手に小屋に入ったことは謝ります。ごめんなさい。でも、あの・・・

 この島に遊びにきて・・・ボートが流されてしまって・・・あの・・・雨で・・・
 
 兄が・・・具合が悪くなって・・・えっと・・・ここで雨宿りをさせて
 
 頂こうと思って・・・。」

 ファラミアは男を見上げて必死で言った。

 すると男がファラミアの頭をクシャクシャッと撫でた。

 「そうか。解ったよ、ぼうや。今、火を熾して上げよう。

 兄さんの服を脱がせなさい。濡れた服は体温を奪う。毛布を持ってきて上げよう。」

 見ると男はとても優しい眼をしていた。

 「はい。」

 ファラミアは頷いた。



 男は火を熾してくれた。

 ファラミアは意識が朦朧としているボロミアの服を苦労して脱がせた。

 「手伝ってくれるか?」

 男がファラミアに尋ねた。

 「何をすれば良いのですか?」

 「坊やの兄さんを寝かせるために藁を敷いてあげよう。そうすると暖かいから。

 藁を運ぶのを手伝ってくれるか?」

 「はい。」



 男・・・ジョンという名前だった・・・と二人で藁を敷くと、ジョンは、

 大きな布で藁を覆った。

 「さあ、ここに寝かせるといい。」

 そう言うとジョンは毛布に包まったボロミアを軽々と抱き上げて藁で作っ

 た寝床にそっと下ろした。

 「坊や、お前も服を脱ぎなさい。」

 ジョンが言った。

 「えっ?」

 「乾かすといい。寒いだろう?」

 気付けばファラミアもびしょ濡れだった。

 ファラミアは素直に服を脱いだ。

 ジョンはジョンの物らしい上着を貸してくれた。

 ファラミアはその上着で身を包んだ。 

 「坊やの寝床も作らないとな。」

 「いえ、兄のところでいいです。」

 ファラミアが言った。

 「ドル・アムロスから来たのか?」

 ジョンが尋ねた。

 「はい。」

 「ここは島の裏側だ。よく見つけたね。」

 「もしかしたら・・・小屋か何かあるかと思ったので・・・」

 ファラミアが答えた。

 「どうして?」

 「島の道が・・・獣道ではないちゃんとしたものだったから、人が居るかも知れない

 と思って・・・」

 ファラミアが言うとジョンが頷いた。

 「腹は減ってないか?」

 ジョンが尋ねた。

 そう言えば伯父上の屋敷で朝ご飯を食べて以来、何も食べていなかった。

 ファラミアが怖ず怖ずと「空きました。」と言うとジョンは大きな声で笑いながら、

 ファラミアの頭を撫でた。

 「暖かいスープを作ってやろう。それとパンもあるぞ。」



 ジョンの作ってくれたスープとパンはとても美味しかった。

 食事をしてお腹が一杯になるとなんだか眠くなってきた。

 「眠くなったか、坊や。」

 ジョンが笑いながら尋ねた。

 ファラミアが頷くとジョンが「寝なさい」と言った。

 頷いてファラミアがボロミアの隣に潜り込んだ。



 気付くと傍らに柔らかい暖かなものがあった。

 見慣れた金の髪。

 ファラミアは裸でボロミアの胸に頭を寄せて眠っていた。

 「ここは?」

 ボロミアが起き上がって周りを見回した。

 どこかの小屋の中だった。

 「どうだ?気分は・・・」

 その声に目を凝らして小屋の中を見た。

 火の傍に男性が座っていた。

 男はボロミアの傍に歩いてきて額に手を当てた。

 「熱は下がった様だな。服は乾いたよ。着なさい。着たらスープとパンがあるよ。

 お腹が空いているだろう?食べるといい。」

 男に言われて酷くお腹が空いているのに気付いた。

 言われるがままに服を着て、食事を食べた。

 「美味しい・・・」

 「それは良かった。」

 「ありがとうございます。助けて頂いたのですね。」

 ボロミアが言った。

 すると男は笑いながら言った。

 「お礼なら弟に言いなよ。」

 「え?」

 「あの雨の中、この小屋を捜したのも、ここまでお前さんを連れてきたのも、

 薪を拾ってきたのも、そのチビだよ。」

 男はそう言って笑顔でファラミアを覗き込んだ。

 「ファラミアが?」

 「小さいのにしっかりした子だね。ここの島の様子を見て人が居るらしいと

 気付いてこの小屋を捜し当てたらしい。なかなか出来ることじゃない。」

 「ええ。ファラミアは頭が良いのです。」

 ボロミアはファラミアを誉められたことがとても誇らしかった。

 「弟が余程可愛いらしいな。こいつも、余程お前さんが大事らしい。

 昨日、食事をしながらお前のことをずっと気にしていた。」

 酷い雨だった。

 ファラミアはあの雨の中を一人でこの小屋を探し、薪を拾って・・・。

 そう言えば、ファラミアが自分を庇う様にしてここまで歩いてきてくれたことを

 おぼろげに覚えていた。

 大好きだった。ずっと守ってやりたいと思っていた。

 だが・・・

 「私を守ってくれたんですね。小さなファラミアが・・・」

 それが嬉しくて少し淋しかった。

 ボロミアがファラミアの髪をそっと撫でた。

 「あにうえ・・・?」

 ファラミアが目を開けた。

 「起こしてしまったか?」

 「大丈夫ですか?」

 ファラミアはボロミアの額に手を延ばした。

 「良かった。熱、下がったみたいですね。」

 ファラミアがほっとしたように笑顔になった。

 その笑顔が愛しくて、思わず抱き締めた。




NIMAさんの相互記念リク第二回目です。

今回出てくる「ジョン」のイメージはギムリ役のジョン・リズ・デービスさん。

ただし、「普通の」役のときの彼のイメージです。

引っ込み思案のファラミア君、頑張ってます。

2005.03.19. Jeroen