(1)、発見 ボロミア20歳、ファラミア15歳
長い遠征を終え、ようやくミナス・テリスに戻ってこられた。半年ぶりである。城門の中に入ると大勢の人に出迎えられた。今回の遠征は長い戦いが続いたが、わが軍の勝利で終わらせることができた。知らせは前もってミナス・テリスに伝えていた。
「兄上、お待ちしていました。今回も素晴らしい活躍だったようですね」
馬から降りるとすぐに弟のファラミアが走り寄ってきて俺に抱きついた。15にもなって、人前で抱きつかなくてもと思うが、俺もすぐ両手で弟を強く抱きしめた。
「わがいとしの弟、ファラミアよ。会いたかったぞ」
俺は少しオーバーに言ってやった。これぐらい言わないとなかなかファラミアは俺のそばを離れてくれない。父上やたくさんの部下達が見ている場所で、あまり弟とばかり再会を喜んでいるわけにも行かない。
「兄上にぜひお話ししたいことがあるのです。僕はすごい大発見をしました」
ファラミアは目を輝かして俺に話す。こんなに喜んでいる弟には悪いが、俺は内心「ああ、またか」と思ってしまった。ファラミアの大発見とは決まって、昔の本を読んで、第何代目のなんという王様がどんな活躍をしたか、というような知識で、俺にとってはどうでもいい話なのである。
「兄上、聞いているのですか?もしかしたらゴンドールの歴史を変えてしまうかもしれないようなすごい発見なのですよ。すぐに一緒に書庫まで来てください」
書庫、俺の一番苦手な場所である。ゴンドールのあらゆる本や記録が置かれているというが、俺は昔の字などほとんど読めないし興味もない。最近は父上ですらめったに利用することはなく、その部屋に入るのは時々ミナス・テリスに来る灰色の魔法使いとファラミアぐらいであった。弟はいつどうやって昔の字まで読めるようになったのか、暇さえあれば書庫に入り、昔の本を喜んで眺めていた。
「ファラミア、俺は戦いと長い行軍で疲れているのだぞ。それに今日は勝利を祝っての祝宴もある。悪いが書庫に行ってお前のその大発見の話を聞かせてもらうのは明日にしてくれないか?」
「そうですね。この話はとても複雑で、すぐには話せないと思います。わかりました。明日必ず書庫まで来てくださいね。約束ですよ。兄上はミナス・テリスに戻ってきても少しもじっとしていないで、すぐ馬に乗ってどこかへ行ってしまうから・・・」
「戻ってくる時、10日以上も馬に乗りっぱなしだった。しばらくはのんびりしたい。遠乗りになど行く気にはなれない」
「じゃあ安心ですね」
ファラミアはうれしそうな顔をして走っていってしまった。まったくあいつは・・・人の心がわかり、遠慮深い性格だと誰もが言っているが、俺に対してはちっともそうではない。そこがいいのかもしれないが・・・
次の日、俺は約束どおりに書庫に行った。ファラミアはいすに座り、一冊の本を読んでいた。俺が来たことも気がついていない。
「ファラミア!約束どおりに来たぞ!」
俺はわざと大声で言った。驚かしてやるつもりだったのだが、ファラミアは怖い顔をして言った。
「兄上、大きな声を出さないで下さい。この秘密は他の人に知られては困るのです。重大な秘密なのですから・・」
「そう怖い顔するな。なんだ、その重大な秘密というのは・・・もったいぶらないで早く教えてくれ」
「この本のここを読んでください」
ファラミアは持っていた本を俺の目の前に突き出した。
「俺は昔の言葉などちっともわからない」
「何言っているのですか。この本は今使われている言葉で書いてあります。エクセリオン二世の時代の書記長が昔の記録を書き写したもので・・・これくらいは兄上でも読めるはずです」
「俺は本を読むと頭がクラクラする。ファラミア、代わりに読んでくれ」
「だめです!僕たちがこれから調べようとしていることは、すごく複雑で、昔の字を読んだり、その言葉の意味を考えたり、もしかしたら隠し文字や暗号が使われているかもしれないので、それも考えなければいけないのです。今使われている言葉で書かれた普通の文章などスラスラ読んでもらわなければ困ります」
ファラミアの顔はますます険しくなる。しかたなく俺はつっかえつっかえそのページを読み始めた。
「3319年 アル=ファラゾーン、ヴァリ・・読みにくいな」
「3319年 アル=ファラゾーン、ヴァリノールに攻め寄せる。ヌメノールの崩壊。エレンディルとその息子達は逃れる。こう書いてあります。続きは・・・」
「3320年 亡国者の王国、アルノールとゴンドールの創建」
冷や汗をかきながら読み終わり、おそるおそるファラミアの顔を見る。まだ険しい顔をしている。
「そうです。ここまでは兄上だって教わって知っているはずです。もう忘れたのですか」
「いや、おれはその・・・遠征の間は兵士たちを指揮したり、トラブルをふせいだり、やることがたくさんあって・・・」
「兄上が隊長として、非常に優れていることはよく知っています。でも兄上はただ軍を動かす隊長だけでなく、このゴンドールを治める執政となるべき人です。もう少しゴンドールの歴史について知っていてほしいです」
「わかった。時間のある時にしっかり勉強するから・・・ところでお前の大発見というのは一体なんだ」
「それはここに書かれています。エレンディルが直接書いたもので非常に読みにくいのですが・・・」
ファラミアは1枚の古い紙を見せた。書かれている文字も昔のもの、そしてところどころ穴があいたり、破れたりしている。
「この紙に書いてあることを読むのには随分苦労しました。兄上も読んでみますか」
「いや、俺はもういい。頼むから内容だけわかりやすく教えてくれ」
「わかりました。この紙にはこう書いてあります。私はヌメノールより持ち運んだ数々の秘宝をゴンドールのある場所に隠した。アルノールとゴンドール、二つの国は今は富み栄え、これらの宝は必要ではない。だがいつの日かこの二つの国は衰え、滅ぼされる日が来ないとも限らない。だが私は信じている。世界が闇で覆われ、国が衰えても、わが子孫が再び王国を再建する日が来ることを・・・その時こそこの宝を使って国を再建してほしい。宝はゴンドールに隠すが、その場所を記す地図はアルノールに伝えよう。そして秘密をとく鍵はヌメノールから来た翼とともに眠る・・・」
俺には何がなんだかさっぱりわからない。エレンディルがゴンドールのどこかに宝を隠したということまでは理解できたが・・・
「兄上、大きな戦いは終わったので、しばらく遠征に行かなくても大丈夫ですよね」
「ああ、そうだが・・・お前はよくいろいろなことを調べているな」
「それなら僕と一緒にこの謎をといて、ヌメノールの秘宝を見つけましょう。今ゴンドールは衰えています。こんな時のためにエレンディルは宝を隠しておいてくれたのです」
「なぞを解くって、いったい何をどうやったらいいのか・・・」
「まず始めに、秘密をとく鍵はヌメノールから来た翼とともに眠るという言葉の意味を考えてみましょう」
「翼といってもエレンディルは人間だから結局は船で海を渡ってきたのだろう」
俺は何気なく言ったのだが、ファラミアは急に喜んで俺に抱きついてきた。
「そうだ、船だ!エレンディルは船で中つ国にやってきた。海を渡って新しい国を見つけた舟は空を飛ぶ翼と同じ!兄上、素晴らしいじゃないですか。僕はこの言葉がずっとわからなかったのです。翼は見つけられなくても、船ならば・・・兄上、捜しに行きましょう」
「おい、ちょっと待て、本気なのか」
「もちろんです。兄上と僕で力をあわせればきっと宝は見つかります。行きましょう。宝を見つけてゴンドールを再び豊かな国にするのです」
「そうだな、俺たち二人でヌメノールの宝を見つけに行こう」
「やったー。兄上ならきっとそう言ってくれると思っていました」
ファラミアはうれしくてたまらないという顔をしている。俺もなんだか気分が盛り上がってきた。こうして俺たちの宝探しの旅が始まった。
−つづくー
後書き
ゴンドールの歴史については指輪物語の追補編から引用してあります。宝を隠したという話は創作なのでどこにも書いてはありません。この話の兄弟はベタベタしていますが、BLはない普通の兄弟です。漫才コンビみたいな二人です。
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