カラー遺伝子による危険な交配(忌避すべき掛け合わせ)


命に関わる先天性疾患や、生涯に渡り重篤な疾患で苦しむ可能性が高いカラー・ブリーディングは、安楽死を容易に選択出来たり、疾病に苦しむ子犬と生涯を共にする覚悟が無い限り避けるべきです。
その為には、危険性を知り、避ける事を行えば良いだけです。
それ程多くの知識は要りませんし、危険なカラー・ブリーディングの種類も多くはございません。
危険な組み合わせを認識し、その子の持っている遺伝子座を把握しましょう。


*マール(ダップル)優性因子のホモ結合
 マール(ダップル)優性因子のテロ結合でさえ1/3以上、ホモ結合になると3/4以
 上の子に、視聴覚障害、内臓疾患、脳障害、早死が認められるという文献もありま
 す。
 更に高確率で先天性疾患に掛かっていると言う文献もあるようです。
 ダップル班の割合が大きい子、頭部にダップル班が広がっている子、眼部にアイパッチ
 の様にダップル班が掛かっている子は特に先天性疾患の危険が高い子であるとお考
 え下さい。


・ダップルの美しさは認めますが、犬への危険性が高い為、私たち犬舎はヘテロ結合で
 あろうともダップル・コートのブリーディングは行いません。

・ダップル班は、専門家であろうとも見逃しやすいの部位への発現、発現色が分り難い
 コートカラーもあります。
 ダブルダップル・メイキング(ダップルのホモ結合)を避ける為、ダップルが遺伝しているか
 を確認しておかなくてはいけません。
 判定しにくい色合いの、クリーム、ゴールド、ブラック&クリーム、ブラック&ゴールドと、
 ダップルとの交配は避けましょう。

・クリーム、ゴールド・コートのキャリア(劣性遺伝子のヘテロ結合による遺伝)ですと、ダ
 ップル・コートの子もクリーム、ゴールド・コートのキャリアの場合、子犬にはクリーム、ゴ
 ールドのダップルが生まれる可能性が高くあります。
 この場合も、ダップルが遺伝しているかを判定しにくくなりますので避けましょう。


*パイボールド因子のホモ結合
 ダップルほどの詳細な研究資料がないのですが、パイボールドもダップルと同様の、視
 聴覚障害、内臓疾患、脳障害、早死が起こる可能性が高いと言われております。
 やはり、パイボールドの白斑の割合が大きい子、頭部にパイボールドの白班が広がっ
 ている子は特に先天性疾患の危険が高いとも言われます。

・パイボールドは美しいコートとも思いますが、可能性として高い危険性が考えられる為、
 私たちの犬舎はヘテロ結合であろうともパイボールドのブリーディングは行いません。

・危険な可能性があるのですから、パイボールドのホモ結合は控えるべきです。

・スポット、ティッキングの遺伝子座は、他の遺伝子座に比べると解明が進んでおりません。
 生命に関わる先天性疾患の可能性もありますので覚悟を決めたブリーダー以外は携
 わるべきではありません。


*ダイリューション劣性因子のホモ結合
 Color Dilution Alopecia(CDA)と呼ばれる皮膚疾患を発症させる子がおります。
 これは、生後半年から2、3年の間に発症すると言われております。
 毛が抜け落ち、日焼けや寒さに過剰に弱い過敏性な皮膚症状を起こします。
 部分発症から全身発症など、発症範囲の個体差は大きいと言います。
 現状では有効な治療法は無く、抗生物質によって症状を和らげる程度しか効果は期
 待できません。

・ダイリューションの劣性因子が必ずCDAになることはありません。
 CDAが遺伝性疾患との確証は得ていませんが、可能性が高い為、CDAを発症した
 血統はブリーディング・ラインから外しましょう。


*カラー(アルビノ)劣性遺伝子のホモ結合
 cch(チンチラ)のホモ結合は色素退化を促します。
 過剰に繰り返し行うことによりアルビノを作出することに繋がりかねません。
 アルビノとは、ユーメラニン色素が全て抜け落ちてしまったカラー。
 瞳は、虹彩のユーメラニン(黒色)も無いので血管の色(赤色)に見えます。
 爪、ひげ、パット、アイライン、披毛(コート)にも全くユーメラニン(黒色)は無いので、ホワ
 イト一色に見えます。
 ユーメラニンとは、脳細胞や視聴覚器官、内臓などを形成する重要な細胞に重く関わっ
 ています。
 ユーメラニンが無いと言う事は、間違いなく、聴覚障害、内臓疾患、脳障害、早死が起
 こります。
 純白・赤目で大変稀少な犬として販売を行う大バカ者がおりますので気をつけましょう。
 ゴールド → クリーム → ピュアクリーム → ホワイトクリームと、コートを白に近づけ
 たいブリーダーも多くおりますが、繁殖犬の持っているユーメラニン色素の量を考え、あえ
 て色素の強い個体をブリーディングラインに入れるなどして慎重にブリーディングを行うべ
 きです。


*ブラウン劣性因子のヘテロ結合
 生命・健康に危害がある訳ではありません。
 劣性遺伝子のヘテロ結合と言ってもチョコレート色を発色させる劣性因子の影響を受け
 てしまう場合が多くあります。
 レバー色のアイラインや鼻やパットは、チョコレート・コート以外の子には、見た感じが良く
 ありません。
 ドッグ・ショーへ行かれましても欠陥ともなります。

・どちらか一方のみがチョコレート・コートになる交配は避けます。


*ブルー・アイ(青目)
 G(グレー)ルーカス、D(ダイリューション)ルーカスによるブルー・アイは関係ないことを先
 に明記します。(イタリアン・グレーハウンド、ワイマラナー、ダックスフンドのブルー・コート等)
 ダップル因子か、パイボールド因子により瞳の虹彩からユーメラニン色素が抜けてしまった
 ことによる先天性奇形です。
 ダックスフンドやシェットランド・シープドッグやダルメシアンなどで見受けられます。
 稀少(レア)な犬として珍重してはいけません。
 ほぼブルー・アイの瞳には視力が無い、盲目な犬であるとお考え下さい。
 ブルー・アイ自体は遺伝致しませんが、ブルー・アイを発現させた「ダップル」か「パイボール
 ド」が強く発現してしまった個体ですので、聴覚障害、内臓疾患、脳障害の可能性も高
 く持っています。
 その澄み切った美しく明るいブルーな眼はチャイナ・アイ(China eye)とも呼ばれておりま
 すが、マール(ダップル)の遺伝子が瞳に現れた不完全な目であることを理解下さい。


・次世代に障害を遺伝させる可能性が高いので繁殖に使ってはいけません。

他犬舎様とお比べ頂き、違いをお分かり下さい。
犬の壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)の病態解析
もう1つだけ記載させて下さい。

非化膿性壊死性髄膜脳炎  (Necrotizing Meningoencephalitis)
パグ脳炎            (Pug dog encephalitis)

カラー遺伝子による危険な交配とは全く違いますが、致死率が非常に高く、治療法もなく、成すすべなく死んでゆく恐ろしい病に付いて紹介します。

パグの発症が多い為に「パグ脳炎」と名付けられておりますが、ヨークシャー・テリアやパピヨン、マルチーズ、シー・ズー、フレンチブルドッグ、ポメラニアン、チワワ、ペキニーズにも発症が確認されております。

突然倒れたり、痙攣を起こしたりと言った水頭症や癲癇の様な症状を起こしたり、性格が変わったり、四脚に麻痺状態が起こったり、原因不明の白血球増加や金切声、盲目、意味の無い旋廻、失禁、傾斜を起こします…

発症年齢も非常に若く7〜8ヶ月から5才程度(7才の発症例もございます)まで。
突然発症し、数日から数週間で亡くなってしまいます。

原因は解明されておらず「遺伝」、「ウイルス」、「自己免疫疾患」ではないかと言われております。
限られた犬種だけに発症する為、遺伝的素因が関与されていると推測されるる方も多くおられます。
ただし、血縁関係のない同居犬同士が相次ぎ発症するケースも見られますので環境的素因が関与されている可能性も否定は出来ません。
ウイルスによる感染症である可能性すら捨て切れません。

どの様にしても、原因が分からない限り、決定的に防ぐ手段もない恐ろしい病であることに変わりはありません。

専門の設備が整った大学病院等で脳髄液検査やMRI検査を受けないと正式な見解は得られません。
ステロイド(脳の炎症を抑える)や免疫抑制剤、抗生物質(免疫力低下による感染を抑える)やフェノバール(癲癇発作を抑える)による治療が一般的ですが、緩和的治療であり、現代医学では完治することはありません。

悲惨な病です。
原因も治療法も解明されておりません。
私達は遺伝の可能性も高いと考えておりますので、パグ脳炎を発症した血統は問答無用に一切排除するべきと思います。

又、感染してしまった子には可哀想で申し訳ないのですが、該当犬種の飼育者とワンコは発症したワンコに「近寄らない」「犬具、毛布、該当犬に触らない」など心掛けて下さい。

わずかな可能性でも有るのなら、細心の注意を払い、危険から身を避けるべきです。
大切な我が子を守るのは、彼方の義務なのですから。

                                            2008.4/21

パグ脳炎に関しての国内第一人者である東京大学の松木准直章教授より、
  1. 4.17付「犬の壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)の病態解析」と言うレポートがアップされております。
ご興味のある方、パグ脳炎を研究している方など是非ご拝読下さい。

                                           2008.10/28

(社)ジャパンケンネルクラブ(JKC)でも、ホームページで「獰猛な性格や臆病な性格は遺伝によるところが非常に大きく、親の性格に似る」と掲載されています。
シャイな気質、異常に臆病、威嚇する癖がある、攻撃的、噛み癖、無駄鳴きなどの性格を持った親犬はブリーディングラインより外すべきと考えます。


カラー遺伝子は命に関わる交配にも繋がりますので、表記・記載ミスなどございましたらご
指摘願います。

                                            2008.4/21
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/vcpb/pug.html

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