奄美〜屋久島宮之浦〜長崎
屋久島に接近種子島方向から朝日が昇る
2017 A6455H29 5/1(月)
古仁屋港→口之島沖太平洋
5:00 ポリタンクの軽油燃料を船の燃料タンクに移す。3.2体入った。すぐ出航する。
今日も晴れ、屋久島まで、その先も穏やかであって欲しい。
フェンダーを片付けメインセールが上がる。
5:50 海峡口から太平洋出る。弱い風で風見は正面、エンジンは今日も低いうなり音で
船を押し進めてくれる、エンジンって凄い。
左舷には奄美大島の山が灰青色の影で薄くなった水平線の先まで続いている。
7:10 左舷をガット船が北上して行く、思えば島で使うコンクリートの骨材事情は
どうなっているのだろうか気になる問題が増えた。
10:50 喜界島が右真横になる。左舷に見える大島空港へ降りる飛行機が頭の上を飛んでゆく。
風は弱いままで海面は油のようにねっとりしている。
笠利崎沖の岩礁域には漁船が4隻、漁をしている、大物がいそうな気配がする。
途中カツオが2匹かかったが、小さかったので放した。
この日の昼食は豪華だった、カツオのたたき、ちんげん菜の豚肉炒め、オリオンビール
赤ワイン、富山県産のパックご飯で話も弾んだ。
長らく左舷に見え続けていた奄美大島とも遂に分かれる、機帆走5.3kt.
14:10 カツオが釣れた。艇長をまねて巻いてみたらうまい事上がった、三枚おろしも
怪しいが何とかサランラップに包んで冷蔵庫へ。近くには牙のような形の小さな岩塔が
二つ有った、辺りに他に島はなくこれだけが突き出ている。これは危ない、夜はまったく
もってお手上げだ。GPSとGアースで確認したい。海図も有れば見たいものだ。
(N28°44.984' E129°47.830'を通過しました)
16:10 晴れ 絹雲、風弱い風見正面、波なし、船速6kt 見回しても陸は見えない。
17:40 トビウオを見た、船首下から左へ横切りカチカチと音がして同時に海から飛び出し
船の前へ飛行して行く、飛行の後半はヒレを伸ばしたままで何もしないで滑空していく。
他にも捜すがこの一匹だけだった。
11時方向に悪石島らしい影が見えないくらい薄く見える、目をそらすと背後の雲に同化して
見失う、GPS画面を見ればはっきりと分かる、GPSの無かった時の人々の苦労が偲ばれる。
深夜、中之島の横辺りでスクリュウに絡んだ海草を取る。この船はダブルエンダーなので
船尾もすぼまっている。そのおかげで海面近くまで身を乗り出すとスクリュウが見える。
ヘッドランプを付けて特製の引掛け爪付内外刃付鎌棒を持ち安全索を取りガンネルから
のり出し絡んだ藻を外す。大事な事はスクリュウを切らないで絡めて取る事だそうです。
この後、流れ藻が多くなり日本海の萩港を過ぎるまでに数十回これをやるはめになる
(全部艇長がやられました)
この邪魔な藻は中国の海岸の海草がちぎれて流れてくるらしいです、本船ならいいが
この大きさのスクリュウの船には大群をなして来る藻は大変な脅威です。
この後、前室で寝た。やけにピッチングが増えてきた、いよいよ黒潮の横切りにかかったの
だろうか。海面を見たかったが真っ暗でわからない、残念だ。
艇長は今夜も夜走り体勢に入ってゆく、体を半分に分けて交互に休ませているのだろうか。
船を走らせて行く強い強い思いがそれを成し遂げさせるのだろう。
2017 H29 5/2(火)
口之島沖の太平洋→鹿児島県枕崎市沖(晴れのち曇り夕方から大荒れ)
6:00 コクピットへ出る、今日も晴れ、船の前には島が、大きな島が立ちはだかっている。
屋久島である。なんとでかいのだ。船はその屋久島の中央を目指して進んでいる。
島の高さの中間に雲があり島の上と下が見えている。有名になった宮之浦岳はどれだろうか
一番高そうな山を捜すが同じような立派な高さのピークがいくつも有り迷う。
地図帳を見ると宮之浦岳は島の中央にあった、ならばあの奥まったピークだろう。
見慣れるにつれ谷の深さに気がつく、尾根はどれも細く弛みなく下がってきている。
だから谷も一気に稜線まで開いてV字峡谷だ。
右手から大きなタンカーが近づいてきて前を横切ってゆく、外国船のようだ。タンカーが行った
先を見ると口永良部島が見えていた。タンカーが行かないと見逃すところだった。
7:30 例の流藻の大群に会う。オートパイロットを手動に変え舵をせわしく切って間をぬう。
ここで少しして大きなイルカに会う、二頭が船首横に並んで泳いだ。
天気の良いうちに進んでおきたいので屋久島も種子島も寄らないで行く予定です。
8:20 屋久島の尾之間温泉沖1.5nmに来た。絡んだ藻を取る、大物なので10分程かかる。
種子島が霞の中に微かに見える。
10:50 屋久島空港へ降りる飛行機が横を飛ぶ、垂直尾翼が赤色だ。藻が多い、船尾から
流している疑似餌にも絡んで外す仕事が増える。
11:20 屋久島空港過ぎて針路を323°に向ける。予定を変えて宮之浦港で燃料補給を
していくことになった。明日からGWが始まるので給油を受けれない時に備えてである。
風見は正面を指している。
屋久島の滑走路と平行に進んでいる、突然大きなエンジン音が響き飛行機が離陸していく、
さっきの尾翼の赤い飛行機だった。プロペラ飛行機の音は人間になじむ。
12:20 宮之浦港着岸。スタンドでタンクローリー給油を頼み、スーパーで食料と電池式
給油ポンプを買い、船で弁当を食べ、ポリタンにも給油して、14:20出航する。
港は大きなフェリーが数隻入る立派な港で、町も多くの観光客で賑わっていた。
帰る予定のルートは豊後水道から瀬戸内海に入り関門海峡を抜け日本海へ出るのだが
最新海象予報では九州は東風が吹く。そのためこのルートは向かい風になり、よろしくない。
長崎を回って行った方が追い風になり理にかなう。距離も同じようなので長崎ルートに変える。
艇長の計画はよく変わる、それは状況の変化をすばやくつかむからなのだ。
自然相手の活動はこれが出来なくては命取りになると思う。
港口を出ると海象が悪くなっていた、東風が強まり 波は1mは有りそうだ。ジブは半分にして
機帆走。大隅海峡の竹島の東を通り薩摩半島坊ノ岬を目指す。
15:30 雲が全天を埋める、振り返ると宮之浦岳の稜線が薄青い色で白いガスの中に見えた。
ピッチングが大きい、この船はロングキール艇なのでバラストキールの底線が、さほど丸くならずに
船首船底を形作っている。つまり船底は波を両舷に適度に切り分けるのだ。そのため波に
当ってもバーンやドーンと言う音がしない、ザラーン又はザーーという音がして船底から
両脇へ波が分けられる。自艇のレプトン21は波に向かうとドーンと大きな音が響きます。
こんな時にまたスクリュウの藻落としになる、安全索を付け上半身をせり出す、ピッチングの
揺れは容赦なく体を転がす、ここん所も艇長の凄いところである、船酔いになったことがない
そうです。頭が真直ぐでも大揺れすると気持ちが悪くなる自分は、こんな体に憧れます。
17:50 10時方向に竹島を見る。霞と雲の中に濃い灰色で人の横顔が海面から出ているように
見える、すこし妙な感じである。 東10m超 波1.5m超 アビーム
19:00 風はゴーゴーと鳴り、波の大きなものは3mは有りそうだ。カッパとハーネスを付ける。
艇長は普段と同じ調子で動き、セールをトリムして足元の用具を整頓される。
スタボードのアビームで突風を受けると船は右へ切り上がり左舷側にグッーとヒールする。
海はガンネルを沈め甲板を走りコクピット横までやってくる。船が起きると排水穴から滝のように
暗い海へ流れ落ちる。その内、燃料を入れたポリタンの1缶がライフラインの隙間をすり抜けて
外へぶら下がり、他の1缶も船側の甲板に45度にぶら下がってしまった。
切れて落ちる事はなく油も漏れないと思うので、リーフしてヒールの量を減らしたほうが良い
のではないかと思い、パイロットハウスの艇長に進言する。
艇長は状況を見てすぐに手すりに支点を取り傾く甲板を進みポリタンの横へ、ライフライン側の
ロープを外しポリタンを持ち帰る、それを受け取り、2缶とも回収する。
それを床下の大きなロッカーへしまい込む。一仕事終わって、「あー、風がまた強くなったなー」
とポツリと一言。リーフするのだろうと思っていたのに、何もしないで現セールで進行する。
自分にとって今はとても悪い状況で僅かに進む程度にメインを小さくして何とかしのぎたいと
思うのだが、艇長はまったく動じていない。現セールの方が安定しているのだろう。
あー、それにしても雨に当らないのはありがたい。
21:00 船酔いしている、そうでなくても戦力外なので、早々に寝かせていただく。
キャビンへ下がり、歯磨き、トイレをこなし寝る準備。相撲のしこを踏むようにして動く。手は
どちらかが何かをつかむ。横になり毛布をかぶる。ラジオなど聞こうとは思わない。
体が左へ押しやられ、船首を向いた左足で抗する。左手も棚底とクッションの間でクサビ止め
してみる。どれも長続きしない。頭が重い。船酔いしているのだが、ご飯は食べれるし、
もどす気配もない。少しは船酔いに強くなったのだろうか。あーヨット人の道は遠い。
艇長は静かに激闘の夜走りに入っていく。
絶え間なく襲来する流れ藻
長崎「軍艦島
2017 H29 5/3(水)
鹿児島県枕崎市沖→長崎港泊
7:20 起きてコクピットへ出る。艇長の第一声は、「死んだのかと思うとった」でした。
実は6:00トイレへ行って、静かになっているのを確認して、安心して二度寝をしたのです。
何という贅沢な。艇長様に感謝。
でも昨晩は大荒れで本当に死んでおりました。返す言葉はありません。
艇長は朝食が終わって、パイロットハウスで休んでいる。
自分も朝食を作る、餅にバターを塗りレンジでチン。早くて美味しい。牛乳とチーズと佃煮。
船酔いの後遺症が有るが悪いことはない。美味しく食べれています。
左舷に甑島(こしきじま)右舷には、いちき串木野市辺りが灰青色になって見えている。
10:30 1時方角に天草下島が見えてきた。2時方位は阿久根市あたりだろうか。
昼食はマーボ茄子の豚肉入り、パックご飯、おいしい。
船酔い後遺症で寝て起きたら3:30でした。昨晩の大揺れの後遺症が治らない。
一度陸に上がってリセットしないとダメのようだ。
1時方向の島々は長崎半島だろうか、右舷真横に島影はない、そこから6時方向には再び
陸が連なっている。陸が始まる3時に大きな高い煙突と左横にこれも大きな白い建物が目をひく。
火力発電所だろうか、帰ってから調べてみよう。
17:10 また起きる、10時に長崎の軍艦島、実物を初めて見ます。写真と同じです。
ここで石炭を掘っていた当時を想像しながら眺めます。風が弱いメインをしまう。
17:50 長崎半島2時方位に巨大な分譲住宅開発団地が見えてきた。山のほとんどが
クモの巣みたいに道路が巡り四角く家が中を埋めている。人間のやるこことに恐れ入る。
左舷に見える高島には6〜7階建てのアパートが沢山建ち並んでいる。島の開発具合から
みて不釣合いなアパートの数に見える。船で本土へ通勤してるのだろうか。
波0.5m うねりなし。NBCラジオが良く聞こえる、長崎造船所で12万超トンの客船が18時に
出航すると報じている。今まさにこの地の事だ。先に見えているオレンジ色の門形クレーンが
三菱長崎造船所なのだ。めったに見れない物が見られそうで幸運だ。
最初の橋をくぐり、次の橋を目指す。造船所の横が通り道なのでその客船が引かれて船尾から
出てきている。
でかい、太っている、高い、これが印象だ。船名はAIDA,船首に唇が書かれ、後ろに目があり
目じりが船尾へ波打って続いて行く絵が描かれている。ヘリが1機飛んで行ったが、周りは
いたって静かだ。お祝いでにぎやか等が無い。
これを横目で見ながら着岸先へ向かう。混み合った港の奥に入ってきた。艇長の目が
港内をなぞる。にぎやかに明るい一角の横のポンツーンを指示する。
間隔が近づいたところでロープを持って飛び降り船首舫う。19:05に着岸でした。
おじさんが一人手伝ってくれる。北海道からここへヨットで来て、ここが気に入り逗留中とのこと。
道へ出る出入り口の電気錠も開けていただき助かる。
すぐに買出しに出る、着岸場所の前はNAGASAKI DEJIMA WHARFなる観光地食事処で
大変にぎやかでした。近くのyoumeの地下の食品階で買出し、自分はお粥パックを買う。
消毒のアルコール類も忘れず仕入れる。
風呂に入りたかったのだが、時間が足りなくてポンツーンでシャワーすることになる。
大きなモーターボートの後ろで裸になる、が寒かったので頭だけ洗い、体は拭く。
だが艇長は完璧裸のシャワーでした。
久しぶりにさっぱりする。夜は毛布1枚は少し寒かった。
ヤードから引出されたばかりの「AID]12万トン
平戸瀬戸でセールボートとすれ違う