U-07 懐かしのカートリッジ鳴き較べ
 現在、手持ちカートリッジのうち、常用5機種のヘッドシェルは、SAEC ULS-3Xと a-technica AT-LH18 で重量を揃えています。これらを、2台のプレーヤーでハイインピーダンス系とローインピーダンス系とに区分して使用しています。LUXMAN PD-300プレーヤーにはSAEC WE-308Nトーンアーム、これには国産のローマス・ハイコンプライアンス・ハイインピー系(YAMAHA MC-1000,同MC3,DENON DL-305, a-technica AT33 VTG)、もう一方は、LUXMAN PD-310にSAEC 407/23、Ortofon(MC-30S, 20S)専用とし、MICRO MT500トランスのそれぞれに適したインピーダンスで受け、LUXMAN L-540のMM端子に繋いでいます。

 国産のハイコン・ハイインピー系カートリッジは、種類も多く自重もさまざまですから、トーンアームは重量バランス調整機能の優れたSAEC 407/23を使いたいところですが、WE-308Nの方がローマス・ハイコン系カートリッジとの相性は良さそうです。MC -1000と18gヘッドシェルとの合計重量23.3gに対してゼロバランスするサブウェイトを使用(18話、21話参照)していますから、他のカートリッジ自重をある範囲に限定すれば問題ありません。

 AT33VTG 発売時の定価 \40,000
今回の試聴評価★★★
 全域にわたって分解能に優れ、メリハリ良く、溌剌とした音楽を聴かせます。しかし、情報量は豊富なのですが、弱音部のデリケートな表現力に欠け、音楽が平板になります。何かしらCDに似ているようで、アナログ特有のなめらかな快さに欠けます。

 後に、シリーズの型番はPTGに変わり、大人気の記念モデル Art-2000を経て現行のRへと続きますが、基本素材とスペックは変わっていないようです。

 手持ちカートリッジを独断と偏見で評価しました。聴く度に評価が変わったりしますので、責任は負えませんが、少しは当たっているかも(笑)。
               30thJuly '06
 
適正針圧
自 重
シェル重
合計重量
±zero balance
目盛印加
MC-1000
1.2 g 
 5.3 g 
 18 g  
 23.3 g  
± 0 g 
+ 1.2 g 
MC-3
1.2 g 
 5.9 g 
 18 g  
 23.9 g  
+ 0.6 g 
+ 0.6 g 
DL-305
1.2〜1.5 g
 6.5 g 
 18 g  
 24.5 g  
+ 1.2 g 
+ 0.1 g 
AT33-VTG
1.8 g 
 6.8 g 
 18 g  
 24.8 g  
+ 1.5 g 
+ 0.3 g 
 
 前回は、新規購入したDL-305のとOrtofon MC-30Sとの比較試聴でしたが、今回はヘッドシェルの条件をaudio technica AT-LH18 tecnihardで等しくして、国産カートリッジの鳴き較べとなりました。

 MC-1000 発売時の定価 \52,000  今回の試聴評価★★★★★
 音場はさほど広くはないが、音場全体の透明感が秀逸。最低域から高域まで、Fレンジは広く、分解能、透明感とも高く、アタック音が崩れることもない。低域はよく伸びて、音階も明瞭。中域〜中高域の描写力に最も優れ、粒だちよくクッキリと明瞭でありながら硬さはなく、しっとりした表現力も兼ね備えている。高域まで滑らかに伸びて、ディップやピークを感じさせません。どんなジャンルの音楽でも、音楽性豊かにトレースして楽しめ、破綻を見せることはない。これだけオールマイティなカートリッジは類を見ない。

 MC-3 発売時の定価 \37,000  今回の試聴評価★★★★
 血は争えないものです。兄貴分のMC-1000の長所、程良い繊細感と陰影、溌剌とした表現力はそのまま、音楽表現に最も大切な中〜中高域の描写力に優れ、上下帯域とも程良くダラ下り。しかし、性格の違いは、図太い中低域の表現と、音場感の広がりです。MC-1000は内面を緻密に描写し、MC-3は、おおらかに楽しく音楽を聴かせます。低域表現が十分でない中小型スピーカーで、この表現が気に入ったら、MC-1000より高い評価となるかも知れません。ボーカルは実に快くフィットします。
 
 DL-305 発売時の定価 \65,000  今回の試聴評価★★★★ 
 音場表現に優れ、左右・奥行き方向とも広く、透明感も高い。低域〜中低域は軽めで、分解能は良好。中音域は密度感のあるクッキリとした表現で、ボーカルのサ行の僅かな強調感も質感が高く気にならない。高域にピリッとした硬質感があり、これはボロンカンチレバーの癖か、AT33VTGにも共通。ffで中高域〜高域の分解が甘くなり音が混濁気味。あるいは経年変化によるダンピング材やサスペンションが劣化しているのかも知れない。中音量以下では、分解能、Fバランスとも優れ、端正で正確な表現をします。スピード感は中庸、ゆったりした大人の表現。Accuphaseアンプに通じる音といえば理解しやすいかも。