U-08 エージング効果
 
 前回の比較試聴では、DL-305のヘッドシェルには、購入したばかりの新品audio technica AT-LH18 tecnihardを使用しました。あれから1と月、DL-305の使用時間は30時間を超えたでしょうか。どうも評価エラーがあったようです。前回の評価は、次のようなものでした。

 前回評価の要約★★★★
 音場表現に優れ透明感も高いが、低域〜中低域は軽め。分解能良好で中音域はクッキリした表現だが、ボーカルのサ行に強調感。高域にピリッとした硬質感があり、ffで中高域〜高域の分解が甘くなり音が混濁気味。分解能、Fバランスとも優れ、端正で正確、スピード感は中庸、ゆったりした大人の表現。

 表現力がかなり変わってきました。これは、前所有者が死蔵していたのを、毎日のように使用するようになって可動部が馴染んだのか、あるいは新しいAT-LH18 tecnihard付属のリードワイヤーのエージングによるものか、その両方の効果なのか、表現力に格段の違いを見せるようになりました。なお、前回の試聴条件との違いは、アームスタビライザーを鉄製500gから真鍮製の600gに変えています。

 今回の試聴評価★★★★★ 
 音場表現に優れ、左右・奥行き方向とも広々と見通しよく、音場の透明感は高い。最低域の力強さはないが、低域〜高域まで均一なバランスを保って、気になるような乱れがない。特に中高域の分解能は高く、密度感のある表現は、あらゆる音楽シーンを豊かに表現する。ボーカルのサ行で感じた強調感は消失し、高域に認められた硬質感も、ffでの混濁も全く気にならなくなった。このあたりが激変したことで、滑らかにほぐれた音の響きには豊かな音楽性が感じられ、特に女性ボーカルの表現は美しい。分解能、Fバランスとも優れ、スピード感は中庸、端正な表現と同時にエネルギッシュな激しさも表現できる。オールマイティである。
 
 実は、私はこれまでエージングなるものの効果について確たる実感を感じたことはなく、短時間でこれほどの激変を感知したのは初めてのことです。当初、音の変化が次第に現れてきても、「これは事実なのか?」 という疑問があって、しかし、それがやがて確信に至り、こうして書き込むまでに1と月を要しました。

 可動部が馴染んだのか、あるいはリードワイヤーのエージングによるものか、不明です。もしかすると、前所有者がオークションでコメントしていた、「使用時間50時間」 だとしたら、カートリッジ自体のエージング効果も考えられます。エージングは、ブレークインともいいます。使用することで、電流がマテリアルの分子状態の並び方を整え、電子の流れが滑らかになる、あるいはピックアップ動作によって、可動部や接合部の凸凹やバリのような物理的障害が滑らかになるというようなことが推定されます。

 何はともあれ、これで甲乙つけ難いリファレンスが得られたようです。楽器や人声の、リアルで端正な滑らかな表現はDENON DL-305に軍配。瞬発的な打音の鋭さや音楽の躍動的な流れ、スピード感はYAMAHA MC-1000が上かも知れない。
                                                  30th Aug '06