U-12 Old Jazz Vocal を聴きながら

 前回の試聴会で、翌週はMoonのシステム試聴の約束となっていました。これまで、自己流で組みあげてきたシステムを、他の方から評価いただくのは初のことですから、多少緊張しました。当日、数日前から風邪の兆候を訴えていた一名が欠席、アムクロン(CROWN)の教祖様と二人での試聴会となりました。教祖様の音楽ジャンルはジャズとロック系で、当方クラシックとポップス系です。

 オーディオは一人で楽しめる趣味ですが、交流があるともっと違った楽しみと、システム発展のきっかけとなるようです。教祖様宅での試聴会以降、教祖様はクラシック曲のレコードを引っぱり出したとのこと、今日の私はオールディーズの名曲ばかりのオムニバスCD”MIDNIGHT JAZZ VOCAL HITS!”(GS-1036)を買い込んで、結構なボリウムで、内心「きついなぁ」と思いつつ、ライブハウスの臨場感で書き込みしています(笑)

 教祖様とMoonのシステム評価には、唖然とする程大きな差がありました。まず、音場感と定位感のとらえ方、SP表現力の評価ターゲットとなる要点、その評価時に基準となる音量。さらには、再生に及ぼすアンプとスピーカの機能に対する考え方の差です。

 教祖様の重点となる評価基準は、アンプの駆動力と、ウーハーの制動力であると。『わたしが持参したライブのCDは、まさにそのウーハーの制動力を確認するためのものでした。あれだけの音が重なり合った状態の中でウーハーとバスドラムが如何に歯切れ良くタイトに再現できるのかが聞き所です。スネアのカンッ!というショットが如何にシャープに再現できるか、そのなまり具合がアンプの実力となります。ピーク性のある生のスネアの音のリアルな再現力がアンプの実力で、ジャズロックでは、余韻がなく歯切れ良く再生できないとハイファイとは言えない』となります。

 私の回答は、『音場感がなく、SPからまっすぐに突き刺すような音圧で迫ってくるシステムの正面での試聴は耐えられません。例えばアンプのパワーで低能率SPをねじ伏せるような音の出方と、大型SPからさりげないゆとりで再生される音場とで、音圧レベルと圧迫感は大きく異なります。実物大の再生音量で、小型SPからゆとりのあるさりげなさは出ません。クラシックコンサートでは、どんなフルオーケストレーションでも、しばらく後まで耳鳴りのような痺れが残ることはありません』と。

  試聴会では、SX-900 Spiritのウーハーを震わせるレベルで持参のCD再生が行われ、アンプの実力不足と音場感がないという、上記の評価となりました。全く違う評価基準では、全く違ったセットになるのは当然です。ジャズ・ロック系では、ドラムスを基準にした音量でSPから直接迫ってくる『リアル感』を評価し、クラシック・ポップス系の私は、ボーカリストがSPから離れた空間にぽっと立って肉声で歌い出し、微かなホールトーンが余韻を残すことを評価します。そのために、0.4秒程度の残響のある音場を作ろうと、SPの間にブラウン管をセットして綺麗なエコーを利用し、ムク材の壁にしているわけです。

 両者がめざす『リアル感』には違いがあって、同一の基準で語りあうことは出来ないと気づきました。そこで、友誼サイトに『音楽ジャンルで異なる実物大再生』という板を立て、audioでめざす生々しさとか、音場形成とか、ジャンルによってそれらがかなり違うことを確認しました。ジャズ・ロック系ライブでは、ほとんどがアンプで増幅した、ほぼ一定の音圧レベルが継続して圧迫感があります。それは熱気という雰囲気を盛り上げる重要な要素です。クラシック曲にはクレッシェンドとディクレッシェンドの起伏があって、フォルティシモの音圧はジャズロック並でも、アコースティク楽器自体の音と会場の共鳴音からは圧迫感ではなく包み込まれる感じを受けます。

 audio再生では、コンサート会場とスケールが違いますから、ボリウム位置として音圧レベルをどの位に設定するかも異なります。クラシックでは、アコースティクな音場が形成できるレベル、ジャズ・ロック系では、ドラムが実在感をもって迫ってくるレベルというのが、一般的な両者のヒアリング音圧ということになりそうです。

 ヒアリングを通じて、SPは一定以上の音圧では違った表現をすることに気づきました。SP能力評価は、微少入力時と一定の入力以上での表現力の双方評価が必要です。ハードードーム振動板は微少入力では間違いなく優れた表現をします。しかし、音圧が上がると固有の刺激的個性が顔を出します。

 中高域が、紙コーンとホーンとハードドームの差、同じハードドームでも素材の差はどうか、小音量時と大音量再生時で比較評価をしてみたい。どこかでそんなことやった報告はないでしょうか。素材よりメーカーのSP造りの総合技術差が大きいかも知れません。
27th. Jan.'07
 最近、聴きたい曲がアナログ盤で入手困難になって、CDが増えました。ラックに入りきらずににあふれて、ジャンクとなったテープデッキの上に溜まりますが、最近は美人シンガーが増える傾向です(笑)。