U-13  Ortofonカートリッジと AUDIOCRAFT EQA

 2基のプレーヤーで、ロー・ハイインピーダンス2系統のカートリッジを、それぞれ専用回路としました。ハイインピー系の音出しは一応の水準に達し、カートリッジ遍歴もとりあえず一段落。一方、Ortofonがめざす音響表現がいまいち見えず、評価は辛め、冷遇したまま放っていました。気になって、アナログ末期の数年間に入手した資料を取り出して、対応策を考えました。

 OrtofonカートリッジはMCタイプの元祖であり、時代によって出力は大きく異なります。オルトフォンジャパンからの技術移転か、高純度銀線や高純度銅素材の導入、また強力な磁性体等を採用して、出力が上がって使い易くなったといわれます。しかし、国産カートリッジの多くが軽針圧で癖のないフラットな性格を指向したのに対し、Ortofonはの音は、聴かせどころと響きを重視して個性的です。

 audio最盛期、札幌でも毎年大規模なaudioショーが開催されていました。ortofonとAUDIO CRAFTは出展が同じカテゴリー、ブースも隣あっていて親しい関係にあるように見ました。手元に当時のカタログが残っていますが、両社はローインピーダンスで剛性の高そうな金属ボディなど似ています。DENONがリードした国産カートリッジは、ローマス、ハイインピー、ハイコンプライアンスを追求し、カンチレバー素材にもボロンやベリリウム、あるいはアモルファス化等が盛んでしたが、Ortofonは、相変わらずアルミカンチレバーでハイマス、ローインピーダンス路線でした。

 ortofon は良質トランスとの組み合わせが基本と理解しますが、MC-20S、MC-30Sを使用して、機器のマッチングに疑問が生じました。アナログ最盛期のトランスは、低インピー入力のターゲットをortofonの低出力に絞って昇圧比を大きく設計している場合が多いようです。従って、上記シリーズ 0.5mVの高出力ではミスマッチとなって、微少レベルがつぶれたりします。

 4Ωで0.5mVにマッチするような、昇圧比の低いトランスはなかなかありません。トランスを噛ませる道筋をたてたのですが、うまく処置してやらないと高域に強い個性を出すし、ここをどう攻略するか御しかねていました。そこで、カートリッジ体験の豊富なS氏のアドバイスをいただく事にしました。 「Ortofon、あるいはAUDIO CRAFT等はお使いでしょうか。音出しのコツなどありましたら、ご教示願いたく……」

 返答のアドバイス。「MC-X0S系のカートは、一種の棘みたいなうるささを感じる事があり、これは高出力の磁気飽和によるものか、プリアンプとの相性に問題ありか。解決策として昇圧比が20dB程度と30dB程度の複数のトランスの所有すべき。」 しかし、奨められた昇圧比が低めで高品位なトランスはかなり高額です。予算の1.5倍ほどと、悩ましい。

 高域で感じる賑やかなうるささは、そこに何か共鳴音のような歪みがあるか、出力が高すぎてプリが飽和するのか、LUXMAN L-540のプリ部との相性の問題なのか。対応策として、トランスを導入して内蔵EQを使うべきか、外付けEQを導入すべきか迷います。

 そこで内蔵EQの性能テスト。0.5mVのMC出力をM M端子で受けます。当然のことゲイン不足で伸びやかさや立体感は減じますが、高域のうるさい感じはありません。どうやら、プリの昇圧系に問題ありと目星をつけました。

 さて、結果は画像のAUDIO CRAFTのPE-500 MM/ MC。昇圧トランスを内蔵するフォノEQの変わり種です。Ortofonにはトランスと決め、ターゲットは技術指向が等しいAUDIO CRAFT。問題を残さず解決するには、EQAも導入したい。そこで、手持ちのAE506と同額程度の予算で考えた選定です。

 MC-30Sの音だし20時間を超えて、評価が変わりました。滑らかなバランスと細やかな陰影感。長時間続けて聴きたくなる快さを醸します。DL-305がセンシティブな分解能力とバランスなら、こちらは微かなエコー感を伴う音色が快い。

 1年がかりで、2系統が楽しめるシステムがようやく完成しました。
                      21th.Feb.'07